マクドナルド、メルカリ、SHOWROOM。
名だたる企業の、しかもマーケティング部長や人事責任者、COO(最高執行責任者)といった要職を歴任してきた、唐澤 俊輔(からさわ しゅんすけ)さん。
2020年には独立してAlmoha(アルモハ) LLCを創業、また著書『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』を出版しました。
Almohaでは新規プロダクトの開発に勤しむかたわら、2021年の2月からは株式会社wevnal(ウェブナル)に経営アドバイザリーボードの人事・組織担当としてジョインしています。
本記事では、wevnal代表・磯山との対談を通して、唐澤さんのwevnal参画の経緯や、その後に行われたMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)刷新の裏側、そして今後目指すwevnalの組織像などについて、話を伺いました。
(聞き手:wevnal DX事業部 マーケティング担当 藤本)
MVV刷新の裏側について、磯山に単独インタビューした記事はこちら↓
「3年後を見とけ。」1度死んだチャットボットに新たな命を吹き込む、下克上社長の野望
プロフィール
唐澤俊輔氏。Almoha LLC, Co-Founder COO。大学を卒業後、日本マクドナルド株式会社へ入社。28歳にして史上最年少でマーケティング部長に抜擢され、全社のV字回復に貢献。株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長を務める。その後、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業と組織の成長を推進。現在は、Almoha LLCを共同創業し、組織開発やカルチャー醸成のコンサルティングおよび、組織開発のためのサービス開発に取り組む。グロービス経営大学院 客員准教授。
磯山博文。株式会社wevnal代表取締役社長。大学を卒業後、新卒で入社した会社にて新規事業の立ち上げなどに従事した後、2011年にwevnalを共同創業。現在は自社のチャットボットプロダクト「BOTCHAN(ボッチャン)」の開発・提供を中心とするDX事業部と、SNSマーケティング事業部の2事業部体制で組織を運営。この度、広告代理店からSaaS事業会社への変革の渦中である自社のフェーズを「第3創業期」と位置付け、約5年ぶりにMVVを刷新。
きっかけは突然やってきた「一通のDM」
━━まずは、唐澤さんのwevnalジョインの経緯から伺えればと思います。最初のきっかけは、どういうものだったんですか?
唐澤
2020年の11月に、西田さん(※wevnalの取締役COO)からTwitterのDMをもらったことですね。
wevnalの取締役COOを務める西田
唐澤
DMの内容は「いま事業モデルと組織モデルの両輪を構築し直しているところで、ぜひ相談の時間をもらえないか」というもので。最初にお話しした際には、西田さんが当時まとめていた資料も具体的に共有してもらいながら、議論しました。
当時、西田から唐澤さんへ送ったDM
━━西田さんとは以前からのお知り合いだったんですか?
唐澤
いや、正直DMをもらうまでは、存じ上げていなかったです(笑)。ただ、今回の西田さん以外でも、連絡いただいた方と実際に話すってことはけっこうありますね。新しい出会いのきっかけになるし、やっぱり「本を読みました!」と言ってもらえるのはうれしいので。
━━そこから磯山さんと唐澤さんが初めて会ったのは、いつくらいだったんですか?
磯山
2021年の1月くらいかな。まずは唐澤さんと西田の2人がオンラインで話して、そこからもう少しいろいろ話しましょうということで、自分も含めたメンバーでご飯に行って。
ただ、実際に唐澤さんに会う前から『カルチャーモデル』自体は読んでたのよ。しかも、すごく面白い本だなあと思ってて。
━━あ、そうだったんですね。
磯山
例えば経営スタンスを4象限に分ける考え方は、いままで自分のなかになかったなと思って。
それで、wevnalがこれから目指していきたいのは「全員リーダー経営」だけど、現状は「チームリーダー経営」が近いかなあ、みたいなことも考えてた。
経営スタンスの4象限
「HPでMVVだけを見てたら、絶対に入社してないです」
━━唐澤さんに人事や組織領域のアドバイザーとして入っていただくにあたって、当時wevnalが抱えていた具体的な課題は、どういうものだったんですか?
磯山
「人事評価制度」を変えなきゃっていう話を、経営陣でしてたんだよね。
今後SaaS企業として自社プロダクトを主体としたテックな組織へと転換していくにあたって、どうしたらもっとエンジニアに興味を持ってもらえるんだろう?っていう課題を抱えていて。
だから逆に言うと、今回結果的に刷新したMVVの話は、最初は全くしてなかったんだよね。
━━え!そうだったんですか。ではどういう流れで、MVVを変えることになったんですか?
磯山
さっきの課題を唐澤さんに打ち明けるなかで、別に人事評価制度だけを変えることもできなくはないけど、本当の意味で機能させるには、会社の根幹であるMVVから見直さないと意味がないよねって話になって。
実際、前のビジョンは「スゲェ会社」だったんだけど、中途で入ってきていま活躍している社内のメンバーに、wevnalのMVVについて聞いたのよ。
そしたら「磯山さんとか前田さんとか森元さんとか、経営陣と実際に会わずHPでMVVだけを見てたら、絶対に入社してないです」って、全員から言われて。
━━西田さんも以前のインタビューで「当時のMVVに共感してwevnalへ転職したわけじゃない」と言ってましたもんね。
磯山
じゃあ改めて、wevnalが今後どういう組織を目指していくのかとか、どういった価値観を大事にしていくのかとかってことを、整理していかなきゃねとなった。
ただ、これをいまの経営陣だけで整理するのは難しいですってことも唐澤さんに伝えたら「どうしましょう?ライトに壁打ちからやります?もしくはガッツリ入り込んでやりますか?」と聞かれて。
こっちとしては「え、むしろガッツリやってくれるんですか!?」って感覚で(笑)
━━唐澤さんからガッツリ路線を提示してもらう、まさかの展開。
磯山
それで、せっかくだったらガッツリやりたいですねって話をして。結果的に、2021年の2月からwevnalの経営陣と唐澤さんとで、新しいMVVの議論を始めた。
「今回の変化って、経営陣にとってものすごく怖いはずなんです」
━━新しいMVVの議論は、どれくらいの頻度でされていたんですか?
唐澤
毎週しっかり1時間半ですね。
━━本当にガッツリ。
唐澤
そうですね。ありがたいことに、何社かのコンサルティングを並行してさせてもらってるんですけど、一番入り込んで手も動かして関わっているのは、wevnalさんですかね。
定例会議ごとに宿題もたくさん持ち帰って、次に向けての準備もしてるので(笑)
━━それくらいガッツリwevnalにコミットしてくださるにあたって、wevnalのどういうところに興味を持っていただいたんですか?
唐澤
経営陣の皆さんが持つ「wevnalを次のフェーズに進めていきたいんだ!」っていう想いの、本気度ですね。
これまでのwevnalの10年は、創業者の3人が中心となって組織を拡大してきて、外部からの資金調達もせずに自力で収益を上げ、着実に成長してきたわけです。当然そこには、成功体験もある。
だからなにか課題があったときに、自分たちのこれまでのやり方を踏襲して解決していくという発想に、本来なりがちですよね。
wevnalの創業者3名。左から前田、磯山、森元
━━ここまで自分たちの力でやってきたという自負がありますもんね。
唐澤
最初にwevnalの前のビジョンである「スゲェ会社」を見たときは、正直僕も「ヤベェ会社だな」と思いました(笑)。
ただ、そういった「現状」と「理想」との差分を埋めるために、「やり方が分からないので一緒に考えてください」って素直に言えるところが、すごく素敵だなあと思って。
━━これまでの自負とかプライドとかを捨てて、外部の方の力を借りるってことですもんね。
唐澤
しかも、さっき磯山さんの話でもあったように、これまでのwevnalは創業者3名が中心となって意思決定していく「チームリーダー経営」のタイプで、且つ営業力が強い会社として組織を拡大してきたんですよね。
それが今後はメンバーの一人ひとりに権限委譲していく「全員リーダー経営」で、しかもテクノロジーやプロダクト、エンジニアリングをビジネスのコアとする組織に、生まれ変わろうとしている。
━━すごい大きな変化ですよね。
唐澤
この変化の大きさにしても方向にしても、本来はwevnalの経営陣にとって、ものすごく怖いはずなんです。でも経営陣のみんなが、本気で「変わりたい!」と思っている。
だから、「僕が関わることで貢献できる面が結構あるのでは」と感じたし、wevnalが今後の日本や世界に対してより大きな影響を与える企業になるなと思いました。
「いままでの決め方は『妥協』や『不満』が生まれることもあった」
━━実際にMVVの議論を進めるなかで、「これが大変だったな」って印象に残っていることはありますか?
磯山
やっぱり、経営陣4人の意見をすり合わせるところだね。MVVの議論かどうかに関係なく、4人それぞれの性格とか価値観とかはバラバラだから、出てくる意見は違っていて。
ただ逆に、これまでもたくさん議論はしてきたから、だいたいの方向性の認識は一致してるんだよね。
━━大枠の意見は同じだけど、具体的な細かい話になると少し違う意見が出てくるんですね。
磯山
それでいままでの場合だと、4人の意見が割れたときは「誰か1人の意見を採用する」か、もしくは「4人みんなの意見をちょっとずつ取り入れた折衷案にする」かのどっちかに落ち着くことが多かったのよ。
ただ、それってある意味での「妥協」とか、意見が採用されなかった誰かの「不満」とかにつながってしまうこともあるんだよね。
━━たしかにそうですね。
磯山
それが今回、唐澤さんにも議論に入ってもらったことで、全員が納得するまでトコトン話し合うことができた。
話がちょっと複雑になり始めたら、唐澤さんが「いまの論点ってここですよね?」って整理してくれたり、我々が少しフワッとさせたまま話を進めようとしていたら「いや、ここはもっとちゃんと話し合いましょうよ」って注意してくれたりして。そこはすごくありがたかったね。
「良いなと思ったのは、磯山さんが『社長は俺だから』と言わなかったところ」
━━次に唐澤さんの観点からだと、MVVの議論をするなかで「これが大変だったな」って印象に残っていることはありますか?
唐澤
まあ、経営陣4名の意見をすり合わせるところですね(笑)。ただ、さっき磯山さんからもあったように、世の中や組織に対する根底の問題意識は、みんな一緒なんですよね。
それを言語化する過程で、それぞれの価値観が反映されてちょっとずつ違う言葉が出てくるので、そこをすり合わせるのが大変なんですけど。
━━それぞれの細部のこだわりだからこそ、お互いに譲れないところもあるのかもしれないですね。
唐澤
ただ、そのときに良いなと思ったのは、磯山さんが「社長は俺なんだから」と言わなかったところで。
他の企業であるあるなのは、議論がもつれたときにリーダーが「自分は絶対にこういう風にやっていきたいんだ!」と言い張って、周りの人間も「まあ、トップがそこまで言うなら」と納得することなんですね。
━━最後の最後に責任を取るのはトップなので、それもひとつの決め方としてはありですよね。
唐澤
はい、そういうスタイルもありです。先の4象限でいうと「カリスマリーダー経営」に当たりますね。でもwevnalは、磯山さん以外の経営陣メンバーも、最後まで自分の意見を主張するんです。
例えば前田さんは作りたいプロダクトへのこだわりがめちゃくちゃ強いし、森元さんは「これまでのこういう経緯も踏まえた方がいいんじゃない?」っていう、wevnalの既存メンバーへの配慮があって。
西田さんは経営陣のなかで唯一の創業メンバーじゃない人間だからこそ、意図的に3人とは違う観点からのボールを投げるんですよね。
━━それはたしかにすり合わせるのが大変そうです。
唐澤
ただ、これがwevnalのやり方なんだなと思ったから、どこまで議論が紛糾しても「じゃあ最後は磯山さんが決めてください」とは僕は絶対に言わなかったし、「4人みんなが納得いくまで徹底的に話し合う」ってことを意識してましたね。
━━ちなみに、議論の進め方以外で唐澤さんが感じたwevnalの経営陣の特徴ってありますか?
唐澤
ありがたかったのは、毎週90分、経営陣4名全員が参加し続けてくれたことですね。
━━それって、けっこう珍しいものですか?
唐澤
組織領域の話って、事業領域の話と比べたときに優先順位が下がりがちになるんですよね。やっぱり目先の売上とか、数字をどうやって形成していくとかってめちゃくちゃ大事なので、仕方ない部分ではあるんですけど。
だから他の企業さんでありがちなのは、途中から一部の経営陣が「これは他の人に任せます」と言って参加しなくなったり、「今週は緊急のアポが入ったので欠席します」って抜けたりすることなんですよね。
━━そういうこともあるんですね。
唐澤
でもwevnalの経営陣の皆さんは、毎週必ず全員が議論に参加してくれました。
改めて「あ、やっぱり本気で組織を変えに行こうとしているんだな」と感じたし、だからこそ「人とテクノロジーで情報を紡ぎ、日常にワクワクを」っていうミッションや「コミュニケーションをハックし、ワクワクするユーザー体験を実現する」っていうビジョンなど、今回のMVVが全員納得した質の高いものになったのだと思います。
「あ、wevnalのMVV浸透はいけるな」
━━では最後に、今回MVVを刷新したwevnalが今後やっていくことについて、教えてください。
唐澤
まず、今wevnalが「第3創業期」と謳っているのは、他の企業もよく言う「第何創業期」とは違う、本気でまた別の会社を作るくらいインパクトのあることだと思っていて。
しかも0から新しく会社を作るよりも難しいのは、既存事業や既存の組織とうまく融合させながら進める必要があるんですよね。そういう意味で、wevnalはいまものすごくチャレンジングなことをやろうとしています。
━━たしかに、いろんな変化を一気に起こそうとしているんですね。
唐澤
ただそれを成功させるための重要な要素である「MVVの浸透」に関しては、僕はwevnalなら大丈夫だなと思っていて。例えば今回、コーポレートサイトには4つのValueそれぞれに細かい定義や解釈を載せずに、あえて単語だけにしているんですね。これって、実はすごく勇気のいることで。
なぜなら、説明しないことによってメンバーから絶対に「この言葉ってどういう意味があるんですか?」と聞かれるから。でもそこでwevnalの経営陣は「メンバーも含めてみんなで議論していくことで、組織としての定義をすり合わせていく」って道を選んで。
コーポーレートサイトに掲載されたwevnalの新しい4つのValue
━━サイトのValueが単語だけだったのは、そういう意図があったんですね。
唐澤
加えて、僕からは「じゃあ浸透させるために、現場メンバーも巻き込んだプロジェクトをやりましょう」と提案したんですね。そしたら「いや、まずは経営陣である自分たちが率先してやる」と言って、役員陣がまず体現するための役員チームを作って。
その瞬間に「あ、wevnalのMVV浸透はいけるな」と思いました。そして今後は、今回作ったMVVをベースに人事評価制度や目標管理手法などを変えていきつつ、事業モデルとの連動も進めていきます。人事責任者の方も募集しているので、ご興味ある方はぜひ一緒にこれからの組織作りをやっていきたいですね。
━━ありがとうございます。では最後に磯山さんから、今後の組織作りに関しての構想を教えてください。
磯山
これまでも何回かwevnalはMVVを変えてきてるんだけど、役員陣みんなでチームを作って率先して浸透させていくってことは、なかったんだよね。だからそこはひとつ、今回の新しくて面白い取り組みかなと思っていて。
ただ「まず役員陣から」というのは、逆にそれは組織全員でこのMVVについて考えていくための、きっかけ作りだから。これからwevnalのメンバーみんなでMVVをアップデートして浸透させて、より良い組織や事業を作っていきたいね。
wevnalでは現在、自社のチャットボットプロダクト「BOTCHAN(ボッチャン)」を中心としたテック組織への変革を一緒に行なっていく方を、募集しています!
その先頭となる人事責任者の方はもちろん、経理やエンジニアなど、様々なポジションの方を募集中です。
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そしてwevnalの経営陣4名に、今回のMVV刷新の背景をインタビューした連載もあるので、MVVのより具体的なメッセージについてご興味を持っていただい方は、下記からぜひお読みください!
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