私たちの社会はいま大きな変化を迎えており、気候変動やパンデミックなど、さまざまな課題を世界規模で共有しています。従来の「当たり前」が通用しない中、より良い世界や社会を構築するための、新しい基準や価値観が生まれています。その新しい基準や価値観を生み出す中心にいるのが、まさにZ世代やミレニアルズです。
そんなZ世代やミレニアルズの生の声を起点に、国内外でいま生まれている新しい基準や価値観をご紹介する「ニュースタンダードセミナー!!」の第一回が、1月19日にオンラインで開催されました。
セミナーでは、「VUCA社会と反脆いZ&M世代」「プラントベースフード」「推しエコノミーとイミ消費」をテーマにセッションを行い、Z&M世代のリアルボイスを引き出しました。
今回はそのセミナーから「推しエコノミーとイミ消費」のパートを、ダイジェストでお届けします。
Z世代とミレニアルズから生まれる
新しい基準や価値観を知る
【今回のセミナーの登壇者】
久志 尚太郎 (NEW STANDARD株式会社 代表取締役)
浅井 康治(NEW STANDARD株式会社 執行役員/ストラテジックプランナー)
金沢 桃花(NEW STANDARD株式会社 Social Media Planner)
湯瀬 胡桃(NEW STANDARD株式会社 Social Media Planner)
エンタメ業界を激変させた
「推し」のパワー
2021年の新語・流行語になった「推し活」。Z世代の80%以上が「推しがいる」と答えているニュースを、皆さんも読んだことがあるかもしれません。 エンタメ業界では、この「推し」という概念によって、過去に例を見ない大転換が起こっています。エンタメ社会学者である中山淳雄さんの著書『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』は、この時代の生活者のインサイトを読み解く上で、欠かせない一冊ではないでしょうか。
私たちNEW STANDARDは、この「推し活」を「イミ消費」だと捉えています。欲しいからではなく、「推し」に貢献している実感や「推し」の成長を「応援する」という新しい意味を消費行動に見出しているのです。
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「推しエコノミーとイミ消費」を象徴する事例として、最近の推し活に関するトピックをご紹介します。世界的アーティストBTSのメンバーの誕生日に、ファンが資金を集めて”誕生日広告”を出稿したことが話題になりました。
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グッズやコンサートチケットの購入のように、明確な対価のないものにも、数百万から数千万といった資金を投じるこうした行為。ファンダムのパワーを集結し、推しに貢献することにイミを見出す消費形態のひとつと言えるのではないでしょうか。
また、エンタメ業界以外のところでも、こうした「推し」由来のイミ消費を見て取ることができます。例えば、ナチュラルワインにまつわるエピソードをご紹介しましょう。
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いま流行りのナチュラルワインですが、「美味しいから」とか「ナチュラルだから」という理由以外に、「あの造り手、私の推しなんだ」と言わんばかりに、造り手の哲学や考え方に共感・傾倒して買っている人も増えています。
SNSによってこうした造り手の情報発信も盛んになり、消費者が共感したり応援したりしやすくなったことが要因としてあるでしょう。他にもこうした文脈でさまざまな事象をみてみると、「推し」の意味が非常に多様になり、エンターテイメント業界以外でもそうしたトレンドが出てきていることが分かります。
ここからは、実際のセッションの中からZ&M世代のリアルボイスを抜粋してお届けします。
Q:推しを教えて?その理由は?
周りの子は推し活してる?
湯瀬(Z世代):私は実は昔、「推し」にすべてを捧げていた時代があるのですが……注いだお金とか思い出したくないので、黒歴史とさせてください(笑)。いまは「推し」はいませんね。年々、芸能人にハマるといった感覚は薄れているかもしれません。
でも逆に、さきほどの事例にあったように、いま私、喫茶店にハマっているんですよ。喫茶店でお茶を出してくれるおじいちゃんが「推し」で通っているようなところがあるなと思いましたね。アイドルや芸能人に限らず、お店や食みたいに人ぞれぞれ多様な「推し」があるんだろうなと思います。
周りにも「推し活」に夢中な友人はたくさんいますよ。でも最初は「リア恋(リアルに恋している)」だったのが、だんだん「母性」になってきていますね(笑)。YouTubeなどのライブ配信とかでも、交流とか投げ銭が気軽にできるようになって、もう「育てるぞー!」というモードになっている子が多いです。
浅井(M世代):僕も湯瀬さんと近い感覚で、ブランドとかアーティストで推したいものがありますね。周りがまだ誰も知らないものを自分が最初に推していることに価値を感じたりします。
自分と同世代のミレニアル世代は、モーニング娘。とかAKB48といったまさに「推し」の最初期を経験している世代ですが、当初はやっぱり「個人で推す」感覚が強かったですよね。だけど今はそれだけじゃなくて、ファンダム、ファンがみんなで作り上げる推し方も出てきて、「推し」も多様化しているなと思っているところですね。
金沢(Z世代):私は正直、「推し活」をするほど推しているものはないですね……。周りの友達はアイドルの「推し」のために地方に“ライブ遠征”したりしていますけどね。「推しがいる生活」は楽しそうだなぁとは思います(笑)。彼女たちは「推し」を恋人のような母親のような目線で応援しているから、とても情熱的なんですよ。自分のぽっかり空いた穴を埋めてくれてるような感覚になってると、みんな口を揃えて言ってます。
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その他にも、こんなキーワードがありました🔎
・「推し」がいる人の情報収集スキルは、ハンパじゃない
・「推し活」で得られるネットワークは、「反脆弱性」にもつながる?
・大ヒットゲーム『ウマ娘』は、「全方位的に本気のクオリティ」が最強シナジーを生んだ?
次回レポートは、多様化する美の基準 ルッキズムを乗り越えるための「『美しさ』は外見ではなく内面にある」についてダイジェストでお届けします。
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