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「パーパス」策定のために企業やブランドは「新しい意味」を発見する必要がある

いま企業経営において「パーパス(存在意義)」の重要性が高まっています。自分たちは社会のなかでどんな存在でありたいのか、会社は何のために存在するのか──。そうした疑問に応え、企業やブランドがパーパスを策定するためのプロセスについて、NEW STANDARD代表の久志尚太郎が考察します。

いま、『パーパス 「意義化」する経済とその先』や『パーパス・ブランディング』、『ハーバード・ビジネス・レビュー』の「PURPOSE」特集が発売されるなど、「パーパス(存在意義)」という考え方が急速に注目を集めています。

『パーパス・ブランディング』の著者である齊藤三希子氏は「パーパス・ブランディング」について次のように説明します。

「個別の事象で課題を解決していくのではなく、企業や組織の根幹となる拠り所=『パーパス(存在理由)』を見つけ、究極的にはそれひとつで判断・行動をし、課題を解決していくこと」

また、「パーパス」に関する論考でよく引用されるのが、マーケティングコンサルタントのサイモン・シネックによる『WHYから始めよ!』に登場するゴールデンサークル理論です。

優れたリーダーとして人々の行動を促すためには「WHY→HOW→WHAT」の順番で説明することの重要性を訴えたフレームワークですが、企業やブランドにおいても「WHY」を所与のものとして扱うのではなく、この「WHY」を再解釈し、そこから発信していくことが重要になっています。

「意味消費」の時代に
支持されるブランドとは?

いまパーパスが注目されている背景には、消費者やサー ビ ス利用者がSDGsや複雑な社会課題を理由に、「モノを買う人、サービスを利用する人」から「社会を良くするための市民」へと自らを変化させ、企業やブランド の存在意義や志をより重視するようになったことが挙げられます(『パーパス 「意義化」する経済とその先』より)。

また、「ステークホルダー資本主義(企業活動を通して顧客、従業員、サプライヤー、地域社会、株主などのステークホルダーの利益に資する)」を達成するために、そうした人々に支持されるための企業やブランドの社会的大義の重要性が挙げられるでしょう。

わたしたちNEW STANDARD社は、企業のブランドやプロダクト、サービスに対して従来とは異なる意味や解釈を与えることで、消費者や社会にとって「新しいスタンダード」となりえるものを提供してきました。

「意味(価値)」の付与と解釈という考え方の下敷きになっているのが、ミラノ工科大学のロベルト・ベルガンティ教授が提唱した「デザイン・ドリヴン・イノベーション」や「意味のイノベーション」の理論です。従来のデザイン思考とは異なり、解決手段ではなく「意味」を革新するというアプローチです。

関連記事:新しいスタンダードは、「意味(価値)」の解釈を変えることで生まれる

パーパスの「策定」と「浸透」を支援

こうした理論を背景としてNEW STANDARDのアプローチをまとめたのが、「意味解釈の全体プロセス」の図になります。図のBからCに向かう際には、意味の解釈者として企業やブランドの新しいパーパスの策定を支援。その後のCからDに向かう際には、ユーザーとの対話やコミュニケーションを重ねながら、そのパーパスの組織内外への浸透を支援していきます。

このアプローチは、イノベーションにおける「ラディカル・イノベーション」と「インクリメンタル・イノベーション」の考え方にも近しいものです。ラディカル・イノベーションとは、技術の面でもビジネスモデルの面でも、従来の延長にないまったく新しい技術革新・変革のこと。本図で言えば、BからCのプロセスになります。

一方でインクリメンタル・イノベーションとは、既存の製品・サービスやビジネスプロセスにおいて、小さな改善を繰り返し行っていくタイプの変革です。本図ではCからDのプロセスになります。

「デザイン思考」における問題解決のみでは不十分という背景から「意味のイノベーション」の概念は登場しましたが、わたしたちはその両者を組み合わせ、フレームワークに落とし込むことで、企業やブランドのパーパス策定と浸透のふたつを支援していこうとしています。

NEW STANDARDではメディア『TABI LABO』を通じて、世界中のミレニアル/Z世代のインサイトの発信、BUSINESS DESIGN & BRAND STUDIOでは、そうした人々とブランド価値を共創していきたい企業の発信やブランディングを支援してきました。

これまでの企業の「ブランディング」支援と、メディアやそのほかのチャネルを通じた「発信」に取り組んでいたからこそ、企業やブランドパーパスの「策定」と「浸透」の両側面を支援できると考えています。

VUCAの時代における「羅針盤」をつくる

では、パーパス・ブランディングにはどのような事例が存在するのでしょうか。前述の書籍なども参照しながら、いくつか事例を紹介していきます。

『パーパス 「意義化」する経済とその先』で紹介されている事例のひとつが、、SONYが2019年に策定したパーパス、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」です。企業の長期的な持続可能性のため、社員とともに存在意義を共有しながら、半年かけてPurpose策定を実施。 2分間のブランドムービーでは多岐にわたって展開している事業を通してメッセージを発信しています。

CEOの吉田憲一郎氏はパーパスの重要性について「各部門のリーダーが自律的に舵取りできなくてはならない」と 従来のトップダウン型ではなくパーパスドリブン型の考え方を語っています。

また、前述の『パーパス・ブランディング』ではAirbnbの「誰もが、どこでも「ビロンギング(居場所)」がある世界をつくる。」というパーパスが紹介されています。全世界約400万人のホストにより、約8億回の宿泊利用を誇るAirbnbは、お互いを理解し合える居場所を提供し、 その居場所を増やして、世界中をつなげるという想いのPurposeを表明。

パンデミックによる影響を受けた際のCEOによる意思決定も、そのPurposeに則した人情的で透明性のある行動をとり、2020年12月にはナスダックへの上場を果たし、初値は公開額の2倍を超えたことが話題となりました。

もうひとつの事例が、パタゴニアです。2019年に現在のパーパスである「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」を策定。冒頭の私たち(We)には、パタゴニアのスタッフだけでなく、他の企業や団体など、 みんなが当事者意識を持って取り組んでほしい、というメッセージが込められています。

その中で生まれた取り組みには、『Worn Wear(新品よりずっといい)』というプロジェクトがあり、いま既に持っている服を長く着てほしいというメッセージのもと、修理が必要な衣服を無料でリペアする取り組みを行いました。

NEW STANDARDではまだプロジェクトの過程ではありますが、公開後に皆さんに「パーパス」策定のケーススタディを共有していければと考えています。

VUCAの時代における「羅針盤」をつくり、企業やブランドのパーパス策定のみならず、その浸透までを取り組んでいきたい企業の方はぜひNEW STANDARDにお声掛けください。


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