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食を通じて、がんと共に生きる方々を支えたい。『ヘルスケア Kit コース』に込めた想いとは?

国立がん研究センターがん情報サービスによる統計調査(2019年データに基づく)によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は「男性65.5%、女性51.2%」とされており、今や2人に1人ががんになる時代です。一方で、近年のがん治療の進歩により、入院せずに家事や仕事をしながら療養生活を送る方が増えています。

食品宅配サービス『Oisix』では、がんと共に生きる方々を支えたいという想いから、がん患者さんとその家族の食事サポートを目的としたヘルスケア Kit コースを立ち上げ、現在サービス検証を行っています。今回、サービス開発を担当しているサービス進化室の宮川泉さんに、サービスの裏側にある想いやこれからの展望について話を聞いてみました。

がん治療中に感じる食生活への不安とは?

── はじめに『ヘルスケア Kit コース』の開発に至った経緯を教えてください。

宮川さん:
Oisixでは、お客さまのご意見を基にサービスの向上を図る文化が根付いており、定期的なアンケートやインタビューを通じてお客さまの声を収集しています。そうした中で、Oisixをご利用いただいているお客さまの中に、がん患者さんが多くいらっしゃることがわかってきました。

そのようながん患者さんにOisixをご利用いただいている理由について伺ったところ、「がんに罹患してから、外出が困難になった」「新型コロナウイルスの影響もあり、人混みを避けたい」といった理由が多く、食品宅配というサービスの利便性を評価いただいていることがわかりました。

その一方で、なるべく健康にいい食事を心がけているものの、「本当にこれでいいのだろうか?」「私の食生活は大丈夫なのだろうか?」と食生活に不安を感じている方が多いことも明らかになり、そうした課題を解決したいと思ったところが出発点となりました。

宮川 泉さん。
管理栄養士。美容業界で栄養指導やマネージメントを経験後、食に関する社会課題をビジネスで解決するという企業理念に共感し、2021年1月にオイシックス・ラ・大地へ入社。サービス進化室 ヘルスケアセクションに所属し、新サービスや新商品の企画を担当。

── がん患者さんは、どういった要因で不安を感じていらっしゃるのでしょうか?

宮川さん:
不安を感じる要因のひとつとして、がん治療中の食事について様々な情報が出回っていることがあげられます。例えば、インターネットで検索すると、「がんには〇〇がよい」「〇〇は食べてはいけない」といった情報が山のように出てくるんですね。

医師から「栄養バランスのいい食事を食べてくださいね」と言われても、具体的にどのような食事がよいのかがわからない。なるべく身体によい食材を取りたいれけど、たくさんの種類の食材を集めるのも料理するのも大変。こういったお悩みを抱えている方が多くいらっしゃいます。

また、ご家族と一緒に暮らしている方だと、身体によい食事とわかっていても、家族が一緒に食べられないと続けられないというお声もありました。自分だけ別メニューになると、準備が大変だったり、一緒のものが食べられないことが辛くなってしまうし、家族に合わせてもらうのは申し訳ない気持ちになってしまうと。

このように、自分自身のことだけでなく、家族の食事に関してもお悩みを抱えている患者さんは多くいらっしゃいます。かつてはスムーズにこなせた食事の準備が困難になり、その変化が辛いと感じたり、自信を失ってしまう方もいらっしゃるようです。

栄養素の摂取はもちろんのこと、調理のしやすさや家族全員で食べられるかどうかも重要な要素であることが明らかになり、「気持ちの部分まで汲み取って、サービスや商品を開発していかないといけない」と感じました。

『ヘルスケア Kit コース』ならではのこだわり

── では『ヘルスケア Kit コース』の具体的な内容について教えてください。

宮川さん:
国内外の「がんと食事」に関するガイドラインをベースに、医師や管理栄養士の監修のもと、バランスのとれた健康的なメニューを開発しました。栄養バランスへの配慮はもちろん、家族みんなで美味しく食べられることを大切にメニューを作っています。

通常の『KitOisix』同様に、必要な量の食材とレシピがセットで届き、主菜と副菜の2品を20分で作ることができます。また、週替わりで様々なメニューをご用意しています。

栄養バランスという面では、がん治療において重要と言われるタンパク質を1食あたり27g以上とりながら、カロリーは500kcal前後に抑えるようにしています。乳がんの患者さんの場合、カロリーを気にされている方が多く、この栄養基準を設けました。

また、身体の中から元気になる食材を多く使用するようにしています。例えば、発酵食品であったり、香味野菜、スパイス、n-3系脂肪酸を含んだ食品などですね。

(▲)『ヘルスケア Kit コース』のメニュー例

宮川さん:
また、調理のしやすさという面も意識してレシピ開発をしています。例えば、副作用によって手先が上手く使えない方が怪我をしないように、ピーラーなどの調理器具をなるべく使用しない。また、レンジで加熱するだけで完成する簡単なメニューも揃えています。

他にも、細かいところで言うと、塩分量や1食で摂れる品目数、購入いただく際の栄養量や栄養素マークの表示など、『ヘルスケア Kit コース』ならではのこだわりは数多くあります。がん患者さんやそのご家族の方々のご意見を伺いながら、少しずつ改善を加えていったものばかりです。

さらに『ヘルスケア Kit コース』では、毎週、「栄養や生活の豆知識」という情報提供カードを商品と一緒にお届けしています。

がん患者さんの食事や生活に関するお悩みを解決するという『ヘルスケア Kit コース』のコンセプトに沿って、「商品だけではなく、エビデンスに基づいた食に関する正しい情報提供も重要」という考えで、取り組んでいるものです。

(▲)栄養や生活の豆知識のメニュー例

食生活への自信によって、気持ちが前向きに

── 現在、『ヘルスケア Kit コース』はサービス検証中ということで、プレ体験ユーザーのお客さまにご利用いただいていますが、どのようなお声をいただくことが多いですか?

宮川さん:
ありがたいことに、「自分の食生活に自信がもてるようになった」というお声をいただくことが多いですね。

「タンパク質を十分に摂取するには、これくらい食べる必要があるんだ」とか、「摂取カロリーは少ないけど、こうやったら満足感のある食事になるんだ」とか。そうしたことを『ヘルスケア Kit コース』のメニューを食べることで実感できたというお声を多くいただきます。

いい食生活を継続するためには、頭で理解するだけではなくて、「どういったものを、どれくらい食べるといいか」を感覚で身につけ、それを無理なく実践できることが大切だと思うんですね。

私自身、管理栄養士の資格を持っていますが、栄養指導だけでここまでいくのは難しく、それが無理なく実現できているのはスゴいことだと思います。

── ミールキットを強みとするOisixだからこそできる価値ですね。

宮川さん:
そうですね。他にも、『ヘルスケア Kit コース』を使いはじめたことで、気持ちが前向きになったというお声をいただくこともあります。

患者さんにお話を聞いていくと、「自分の身体のために頑張りたい」と思っている方は多くいらっしゃいます。でも、頑張りたい気持ちはあるのに、何をしたらよいのかがよくわからないので、すごくモヤモヤした気持ちを抱えてらっしゃったりします。

そうした中で、エビデンスに基づいた食生活を実践していくことで、「自分の身体に対して、いいことができている」といった感情が芽生え、「がん治療に対して、前向きな気持ちになれた」という言葉をいただきました。

こうした気持ちの部分でもサポートできているというのは、とても嬉しいことですし、食の重要性を改めて感じた瞬間でした。

社会の役に立っている実感を感じられる仕事

── 最後に『ヘルスケア Kit コース』の展望について話を聞かせてください。

宮川さん:
当面の目標としては、サービスのリリースに向けて、プレ体験いただいてるお客さまの声を聞きながら、サービスをより改善していきたいと考えています。

ありがたいことに、多くの医療従事者の方々からも『ヘルスケア Kitコース』は評価をいただいています。患者さんたちにサービスをご案内いただいたり、施設内にサービス案内のチラシを置かせていただいたり、熱心にご意見をくださる方々も多くいらっしゃいます。

評価いただく要因として、しっかりとした医学的なエビデンスに基づいた商品開発を徹底していることと、患者さんやご家族の方々の声を聞きながらサービスを改善させていることが大きいと感じています。

こんなに多くの医療従事者の方々から応援いただけるとは思ってもおらず、「こだわりをもってサービス開発をしてきて本当によかった」と思いますし、これからもその部分を大切にしていかないといけないと感じます。

── 宮川さんご自身も、すごくやりがいを持って、『ヘルスケア Kit コース』を担当されているように感じますね。

宮川さん:
そうですね。私が仕事において最も大切にしていることは、自分がやってることが本当に社会の役に立つのかどうかです。そういった点で、この『ヘルスケア Kit コース』は、すごく意味を感じられる仕事だと思います。

一人でも多くのがん患者さんにとって「なくてはならない存在」になれるよう、これからも『ヘルスケア Kit コース』を進化させ続けていきたいです。



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