ニジボックスは、デザイナーがリクルートグループ各社にジョインし、『SUUMO』『じゃらん』『カーセンサー』『ゼクシィ』など、さまざまなサービス・メディアのクリエイティブ制作に携わっています。同じリクルートグループ内ということもあり、各事業会社のプロジェクトチームの一員として業務を行う、「共創」をキーワードとした唯一無二の協働スタイルでの働き方が特徴です。
今回は、「共創」をキーワードにタッグを組むリクルートとニジボックスのクリエイティブワークについての対談を二部構成で行いました。
前半で登場するのは、リクルートグループ全体のデザイン統括組織でデザインマネジメント部のマネジャーを担当し、ニジボックスのクリエイティブ室を兼務する磯貝さん。ニジボックスのクリエイティブ室室長として、デザイナーやディレクター、フロントエンドエンジニアを統括する齊藤さんです。お二人には、リクルートとニジボックスのクリエイティブ共創がどのような経緯でスタートしたのか。一般的な常駐の働き方とどう異なるのか。さらには、今後の未来計画までお話いただきました。
後半で登場するのは、リクルートグループの各拠点に参画し、実際にクリエイティブ制作を行うデザイナーの塩原さん、北村さんです。お二人にはリクルートの各サービスでのワークスタイルについてお話しいただきました。
リクルート×ニジボックスのクリエイティブ共創
-クリエイティブ共創の発端、これまでの経緯
磯貝さん(以下、敬称略):リクルートは初期から「デザイン経営」という考えを大切に、クリエイティブに力を入れてきた企業です。しかし、2012年にサービスの領域ごとに分社化され、紙からデジタルに主体が移り変わったことをきっかけに、デザインのガバナンスが効かなくなっていきました。さらに、現場では多くのフリーランスや派遣のデザイナーが制作に携わっていて、人材の入れ替わりも激しく品質管理が難しくなり、体制の見直しが必要な状況でした。それまでも対処療法的に「点」での対策はとっていましたが、より組織的に解決するため、リクルートグループにおけるサービスのデザインを統括する、デザインマネジメント部を立ち上げたのが2019年のことです。
齊藤さん(以下、敬称略):その頃のニジボックスは、他社のWebサイトやキャンペーンサイトの制作案件が増え、制作会社としての色が濃くなっていました。もともとリクルートからスピンアウトして、ゲームなどモバイルコンテンツの制作を行っていた会社でしたが、時代の変化と共に事業の軸も変化していったんです。
ニジボックスはリクルートグループということもあり、労働時間超過などはほぼなく、労働環境の良い企業だと思います。しかし、その頃は新たな事業展開を模索していた時期でもあり、代理店からの相談も受けていて、キャンペーンサイトの制作など、短納期でのプロモーション案件が増え、結果的にデザイナーやディレクターの労働時間が増えてしまっていたんです。そんな状況が続き、これはまずいと。
直接クライアントから依頼を受け、スケジュール管理も自分たちでできるような制作体制をいち早く築く必要がありました。また、そのような体制を実現するためには、クライアントと長期的に根本から携わり、課題解決の提案をできるナレッジを蓄積していくことも急務だと考えていました。そんな矢先、「『SUUMO』で参画してくれるデザイナーが欲しい」とリクルートから相談がありました。
磯貝:2016年のことですね。当初は同じグループ内であることに加え、組織ナレッジの親和性も高かったことを主な理由として、ニジボックスに声をかけました。
一緒に「点」での改善を積み重ねて行く中で、ニジボックスの担う領域もどんどん拡大してゆき、結果としてその後の組織的な対応にもリンクして行ったんですよね。
齊藤:歴史ある大規模なメディアに携わることができれば、ニジボックスも制作会社としてより高いところを目指していけると感じました。
クライアントがグループ内のリクルートであれば、UI/UXから提案を行い、コンサルタントから制作まで落とし込むことができる。そんな考えもあり、参画の依頼を受けたんです。
これが、リクルートとニジボックスのクリエイティブ共創の始まりでした。
その後、続々と参画するデザイナーのメンバーは増え、拠点も増えていきました。今では、リクルートが運営するほとんどのサービスやメディアにニジボックスのメンバーが参画し、デザイナーは50名以上、フロントエンドエンジニアやディレクターを合わせると70名以上がリクルートのサービスに制作メンバーとして携わっています。
-リクルートの現場にジョインする「共創」スタイルの働き方
齊藤:実のところ2016年当初は、リクルートへの参画の話をメンバーに持ちかけると、中には不安に思う人もいました。他組織への参画と聞くと、世間一般的なSESや客先常駐などをイメージする人が多かったようです。そんなメンバーも実際に参画することで、共創モデルのメリットを身をもって実感したようでした。
もともとニジボックスはリクルートからスピンアウトした会社で、評価制度や文化もかなり親和性が高いんですよね。全く関係のない会社に出向するというよりは、同じグループ会社の一員として参画できます。
また、リクルートの社員は同じ目的を持つメンバーであれば、壁を作らず接してくれる人が多いことも、働きやすさにつながっていると思います。
磯貝:圧倒的にフラットな環境ですよね。グループ会社だからというよりは、そういう文化なんだと思います。所属会社や役割、立場などは関係ないんですよね。
-リクルートのクリエイティブに携わること。デザイナーにとってのメリットとは?
磯貝:リクルートは、多岐に渡る領域のさまざまな大規模サービスやメディアを運営しています。それらの現場に携わることで、自分たちのクリエイティブが世の中の多くの人の目に触れ、影響を与えていることが実感できる。これが、一番の醍醐味だと思います。
関わるプロダクトのフェーズもさまざまで、0を1にするものがあれば、1を10にする成長フェーズのプロダクトもあり、さらに10を100にする成熟フェーズのプロダクトも存在します。
それぞれのフェーズでデザイナーに求められることも違うので、複数の案件に携わることでデザイナーとしての幅広い経験を積むことができ、個人の成長スピードもおのずと速くなります。
齊藤:一つのサービスを運営するベンチャーや、同じ領域のサービスだけを運営する企業だと、こうはいきませんよね。その他にもリクルートの案件で培ったナレッジを活かして、他社のサービスやメディアの制作も請け負っているところが、ニジボックスならではだと思います。このように幅広い経験ができる環境は、デザイナーにとってとても貴重だと思います。
-クリエイティブ共創の今後
齊藤:今後、さらに協働を進めていくことで、リクルートの力になれればと思いますし、機会提供することでニジボックスのデザイナーの成長につなげていけたらと思っています。
磯貝:現場にいるメンバーは気づいていると思いますが、リクルートはかなりロジカルで、ビジネスを重視している企業です。デザインができるだけのデザイナーではなく、ロジカルな思考もできるデザイナーが求められています。ただ、そのようなデザイナーは、市場にあまりいないと思うんです。仮にデザイナーを業務委託で招いても、リクルートにフィットするかは働き始めてみないとわからないこともあります。
一方、ニジボックスのデザイナーは、リクルート文化を理解していて、組織の親和性も高いので安心感があります。今後も継続的に力を合わせていきたいですね。
齊藤:より連携を強めていきたいですね。
ニジボックスのデザイナーの中には、駆け出しのメンバーも多くいます。
「ニジボックスに入れば、デザイナーとして必ずステップアップできる」という一人ひとりの成長を応援する会社でありたい。そのための機会をより多くのデザイナーに提供していきたいです。
クリエイティブ共創の現場
-『じゃらん』『カーセンサー』現場でのワークスタイル
塩原さん(以下、敬称略):私は、リクルートライフスタイルが運営する『じゃらん』の現場に参画しています。私を含めて10名のニジボックスのデザイナーが在籍しており、メンバーのマネジメントもしています。
北村さん(以下、敬称略):リクルートマーケティングパートナーズが運営する『カーセンサー』の現場に参画しています。リクルートマーケティングパートナーズでは、他に『ゼクシィ』と『スタディサプリ』の運営も行っていて、ニジボックスのデザイナーは私を含めて10名です。塩原さんと同じで、メンバーのマネジメントもしています。
-新規メンバーを受け入れる際、気をつけていること、大切にしていること
北村:新しくメンバーがジョインする時は、最初にインプットの時間をとり、現場の体制やツール周りの情報などを一通り伝えます。その後もスキルレベルに合わせてレビューを行い、継続的にフォローしていきます。何か困ったことがあればすぐに相談に乗れる、チームの雰囲気づくりを心がけています。
齊藤:取り組みの開始時期は一人のメンバーに負荷をかけてしまうケースも発生してしまっていましたが、北村さんや塩原さんたち、現場をマネジメントしてくださる皆さんのこのような取り組みのおかげか、現在は離職率も低い状態です。
磯貝:ニジボックスのメンバーは、新規参画メンバーをすごく温かく迎える風土があって、そういう所も関係しているのかもしれませんね。参画メンバーのSlackチャンネルを拝見していると、その点を強く感じます。塩原さんはどうですか?
塩原:そうですね、特にここ最近はずっとリモートが続いているので、新規のメンバーは不安になりやすい環境だと思います。ですから、これまでよりもさらに手厚くフォローしたいですね。業務中も、新規メンバーが不安になったり、孤独に陥ったりということがないように、テレカンツールをつなぎっ放しにする試みもしています。集中したい時は個々でミュートも可能なので便利です。チームのメンバーからは、隣にいるような感覚になれるので、気軽に壁打ちができて良いと好評です。
-リクルートのプロジェクトに参画することのメリット。デザインの現場
塩原:磯貝さんもおっしゃっていましたが、ロジカルな思考が求められる現場です。デザインを完璧に作ったとしても、提案する際にきちんと言葉を添えて、ロジックで説明しないと納得してもらえません。始めの頃は苦労しましたが、逆にロジックをしっかりと固めていけばこちらの意図も伝わりますし、評価してもらえるんですよね。そういったところは、リクルートの現場にいることの面白さの一つです。
北村:私の現場でも「なぜこのUIなのか」ということは、検討段階も含めて追求する姿勢が強いです。私自身も今の現場に入ってから、かなり意識をするようになりました。
塩原:そうですよね。なので、この現場で適切に立ち回れれば他のどんな会社でも通用すると、個人的にも自信につながっています。
磯貝:リクルートは、デザイナーに限らず「なぜ?」と聞かれる場面が、本当に多い会社ですね。
もともと私は、リクルートに入社する前は受託制作の会社にいましたが、ここまで「なぜ?」と聞かれたことはなかったかな(笑)
そういう面でリクルートは突出した環境だと思いますし、プロのデザイナーとしての力量がどんな会社よりも試される場所。ここを経験すれば、どんな現場でも通用すると思います。
齊藤:デザイナーというと、エモーショナルというか、感覚的に制作を行う人も多いと思います。それはそれで力はつくと思いますが、ロジカルに制作できるデザイナーでないと、デザインの必要性や価値をその会社の中で示すことが難しいんですよね。
デザイナーの価値を向上させていくためにも、リクルートのようなロジカルに物事を進めていく現場で経験を積んでいくことができるのは、デザイナーにとって良い経験だと思います。
塩原:先ほども磯貝さんや齊藤さんがお話していましたが、一つの会社にいながらいろいろな領域のサービスに携われるチャンスがあることは、良いですよね。「やりたい」と言えばそれが通りやすい環境です。
以前も「後輩を育ててみたい」という話を上長に話したら、半年後には機会がやってきて、そのスピード感にびっくりしました。自分の中では、3年後くらいのつもりで話をしたんですが(笑)。
北村: 私がこの現場にいて良いなと思っていることの一つは、携わった案件のリリース後の結果が分かるところ。その結果を次にどう生かすか、というところも経験できます。制作会社では、納品したら終わりでその後の結果を知ることができない場合もあり、今のように結果までを知ることができるのは貴重だなと思います。
塩原:大きな案件が多いので、SNSでもサービスについてつぶやいている人がたくさんいて、ついつい目がいっちゃいますよね。
齊藤:リクルートのサービスやメディアは時代に即したものが多いから、反響も大きい。最新の社会情勢を知っておかないといけない案件もあって、デザイナーとしてそこまで視野を広げて見ていけるようになることは、良いところですよね。
磯貝:リクルートは、人の人生のほぼ全てにサービスを通じて関わっています。社会情勢にもかなり影響を受けますよね。そういうところに目を向けられることは、デザイナーにとっても良いことだと思います。
-リクルートに期待すること
塩原:リクルートの現場では、参画メンバーにもサービスとしての考え方や目的などが案件ごとに共有されることが多く、それ自体は部分最適化してゆくにはやり易いと思っています。ですが、知識やノウハウが個々の部署内に閉じ込められ、特定の人しか知らない情報が増えていってしまうことに課題を感じています。とくにデザインのトンマナは、サービス全体で統一感をもたせた方が良いこともあるので、横との連携をもっと強めていけたら良いなと思っています。
北村:私が期待することは、自分が関わっている領域以外のデザイナーとの交流です。
以前は他領域のデザイナーとのナレッジシェアがあったり、席の近いデザイナーさんと声をかけあうこともあったのですが、リモートになったことで担当領域でのやりとりのみになり、交流する機会が減ってしまいました。ただ、リクルートのデザインマネジメント部が主催しているデザイン会に先日参加して、その時には久しぶりに交流することができたので、とてもよかったです。
磯貝:デザイン会はぜひ、活用してください。北村さんだけでなく、他のメンバーにもぜひ参加してほしいです。その他にも、デザインに関するナレッジを共有し合う勉強会を一緒に開催したいですね。両社のデザイナーが全員集まれば、その分グループ内のナレッジも増えると思いますので。
塩原さんも北村さんも、横のつながりをもっと広げたいという話でしたね。
横をつなげるのは参画先であるリクルートの社員の役目だと思うので、私が中心となって横のつながりも強化していきたいと思います。