モノサスでは自分たちのWebサイトにスタッフが交代でコラムを書いています。 今回はその中から、ビール好きが集まって作った、「ものさすオリジナルビール」が完成するまでを紹介した記事をご紹介します。
今年から「ものさす探求隊」というコーナーが始まったことをきっかけに、「ものさすビールをつくろう」という探求テーマで、オリジナルビールを造る機会をいただきました。
この探求テーマについて、以下の3回シリーズで記事を掲載していく予定です。
【其ノ一】導入編:ビール造りのきっかけ~経緯、ビール造りにかける思い
【其ノ二】仕込編:ビール工房での製造工程~当日の様子
【其ノ三】完成・乾杯編:Before~乾杯!~After
今回は、【其ノ一】導入編ということで、「ものさすビール」を造ることになった経緯とビール造りにかける思いを、モノサスビア部(社内非公式)主宰の児嶋が、自身の歴史も織り交ぜながら、ビール愛を込めて暑苦しく語らせていただきます。
クラフトビールとの出会い
© 2017 Anheuser-Busch InBev.
私が、クラフトビールと出会ったのは、時を遡ること1996年。
当時勤めていた仕事の関係で食に関する見本市に行った時に、運命的な出会いを果たす。
生まれて初めてドイツビール(Franziskaner:Hefe Weissbier)に出会ったのだ。
恥ずかしながら、このビールに出会うまで私はいわゆる量販店で売っているナショナルビールしか知らず、ビールとは『のどごしを楽しむ』お酒でしかないと思っていた。
しかしこの時、このビールを一口飲み、雷に打たれたような衝撃をうけたのだ。
それはそれはもう、本当にマンガような 『THE 雷に打たれる絵』である。
この時の心の声をだだ漏らすとするなら、
「フルーティーでスパイシーで濃厚でなめらかで香しい!なんじゃこりゃぁぁ!」
である。
ビールに苦味以外の味覚『うまみ・香味/フレーバー』と、のどごしではなく『口当たり』がある、というのがあまりにも衝撃的だった。
これがきっかけで、私の中のビール観がすっかりひっくり返ってしまった。いや、ひっくり返ったなんていう表現ではぜんぜんぬるい。異次元の世界にワープしてしまったぐらいすっかり変わってしまったのだった。
そこからはもう沼へダイブである。
クラフトビール沼、ズブズブ
ここから、ビールへの飽くなき探求心が日夜私を襲うようになってしまったわけなのだが、ちょっと寄り道して、私がはまっていった沼の扉を少しご紹介しようと思う。
【壱の扉】よなよなエール
ヤッホーブルーイング社のエールビール。
日本国内でのクラフトビールの黎明期である1990年代後半に、私が初めて飲んだ国内のクラフトビールだ。私はこれで、日本でもドイツビールみたいな濃厚な味わいのあるビールが飲めることを知った。
ちなみに、最近ではコンビニでも見かけるようになったので、よかったら飲んでみてほしい。
【弐の扉】オクトーバーフェスト/ビアフェス
ざっくり一言で説明すると、日本国内で行われるオクトーバーフェストとは、『ビールの祭典』(※本場ドイツは、「大規模な秋祭」でビール祭なわけではない)。ビアフェスとは『クラフトビールの見本市』。どちらも端的に言えば『多種類のビールが飲めるお祭』だ。
ここでは、缶やビンではなく、生であの濃厚で芳醇なビールや、想像のナナメ上をいく斬新なビールが飲める。
とくに、ビアフェスでは、ビール醸造所(ブリュワリー)ごとに『ビアフライト(飲み比べセット)』を飲むトキメキと幸せを覚えてしまった。
【参の扉】blog:ビール現場主義
(http://beer-kichi.cocolog-nifty.com/)
このブログで、マイクロブルワリーが全国各地にあり、それぞれが思い思いのビールを造っていることや、ビールを生で飲める機会というものが、フェスだけでなくバーやレストランなどにもあることを知った。とくに、ブリュワリー併設のレストランのビールは本当においしい。『ペアリング(ビールとフードとの食べ合わせ)』というものがあることを学んだのもこの時期だった。
ちなみに、個人的なお気に入りのペアリングは、
『柚子山椒ホワイトエール』×『魚料理』
『ラオホ(スモークビール)』×『スモーク料理』
である。
このサイトとの出会いをきっかけに、旅の目的にマイクロブリュワリーのクラフトビールを飲むことが加わった。
【肆の扉】工場見学
現場に行くことが増えたことがきっかけで、工場見学にも行くようになった。
工場では、ビールの種類や製造工程、歴史を体系的に知ることができた。今まで飲んできた経験と製造の知識がここでマッチングを果たした感じである。さらに、工場見学がきっかけでテイスティングセミナーにも参加した。ビールの評価指標を知ることで、感覚値だけに頼り切らない分類や整理をすることができるようになった。
いかがだろうか?
いろいろと端折ってしまったが、私がクラフトビール沼にハマっていった経緯は、おおむねこんな流れである。
ごく個人的な扉の紹介であったが、誰かのクラフトビールワールドへのきっかけとなったら、うれしいと思う。
新たな課題、『マイ十八番ビール』
さて、本題に戻ろう。
こんな形でずぶずぶと沼にはまり込むうちに、段々と自分の中に見えてきたものがある。
『自分の好みのビール』というやつだ。
自分の好みがわかり始めたものの、クラフトビールはなかなかに時期限定の「生もの」で、ビンゴな味のビールにいつでもありつけるわけではない。
ブリュワリー定番以外の「季節もの」や「スペシャルもの」は、おろした樽が終了してしまうともう飲むことができなかったりする。もちろん、あたらしい好みのビールを探し求めるのも刺激的だし楽しいが、マイ十八番はできれば安定的に飲めるようにしたい。
そんなおりに、常盤野ネストで有名な木内酒造さんに「手造りビール工房」という、誰でもビール造りができるという施設があるという情報を入手した。
「これならマイ十八番を年中キープできるのでは??」
いつしか、自分で手造りビールを造ってみることは私の長年の夢となっていた。
そして今回、チャンスが巡ってきた!それぞれ好きなことに挑戦し、ものさすサイトで記事にしていく「ものさす探求隊」というコーナーで、挑戦する人の募集が始まったのだ。この機会を逃す手はないと思い、応募したのだった。
もう一つの想い
ここまで語ってきたビール愛も、もちろんこの企画に参加したかった理由の一つではあるのだが、もう一つ、私にはかける想いがある。
ビールの美点とはなんだろう?
味も香りも独特の苦味も、私は全部大好きだ。だが、それに勝る美点が今回のビールにはあると私は感じている。
それは『人と人とをつなぐ鎹(かすがい)となりうる』点だ。
新型コロナウィルスの感染拡大で自粛ムードが広がる今、皆が顔を合わせて一堂に会することは難しくなってしまった。いち酒飲みとしては、わいわい楽しく飲める機会が減り非常に残念というか、寂しく思っている。
いち酒飲み的にまじめに思うこととしては、「同じ釜の飯を食う」「焼き肉をたべる仲」という表現があるように、人って、ごはんたべたり酒を一緒に飲んだりする場では、素直にオープンな状態で、人と人が心の柔らかいところや深いところに触れ合うことやつながり合うことができやすいのではないかと思っている。コミュニケーションを通して、癒されたり、発散したり、刺激しあったりすることで新しい発想や流れが生まれたり、ということが好きなのだ。
コロナでそんな機会が減ってしまったことが何よりも惜しい。
今回我々が造ることになった『ものさすビール』。
このビールがあれば、飲む場所は各々違えども、同じものを飲み、同じ時間を共有することで、つながりあえる機会を進んで作り上げるきっかけ/一助になるのではないか、と思ったのだ。
それが私の『ものさすビール』造りにかけるもう一つの想いである。
モノサス周年パーティーにて。画面の向こうの仲間と乾杯!
同じ思いの心強い仲間とともに
ここまで、わたしのことばかり書いてしまったが、実は、私と同じような思いでビール造りを考えていた人がいる。
それは、この人(↓)。大久保さんだ。
木内酒造さんへの道中。本日の段取りについてまじめに打ち合わせ中。写真左が大久保さん。
大久保さんは、モノサスビア部(しつこいが社内非公式)で一緒に活動している仲間で、ビアフェスなどでも一緒に飲んだくれる心強い?!最強バディだ。
私が、ビール造りの思いを温めていたときも、大久保さんも同じことを考えていて、『ものさす探求隊』の挑戦者募集の情報が社内に流れたとき、すぐさま、「ビール造りしかないでしょう!」と、ツーカーで意気投合したのだった。
そして、もう一人、我々にとってなくてはならない存在のこの人。齊藤さんだ。
手造りビール工房にて。写真右が齊藤さん。
齊藤さんは、ぜんぜんお酒が強くないのだが、いつも一緒に酒飲みに付き合ってくれて、飲んだくれトークを温かく見守ってくれたり、酔っぱらった我々を駅までちゃんと連れて行ってくれる、ナイチンゲールのような最強のサポーターだ。
今回も、齊藤さんに、飲んだくれる我々にはできない「記録係」と「無事に連れて帰る係」を担当してもらった。
この暑苦しく熱くあたたかい最強のトリデンテで、オリジナルビール造りのプロジェクトは始動したのだった。
そして、こんなビールをつくることに!
熱い思いを秘めてさっそく企画会議を行った。せっかくつくるのだから、やっぱり、モノサスのことを考えて、モノサスらしいビールをつくりたいねぇ、という話になった。
結果、こんなコンセプトで制作を進めることになった。
1.モノサスらしさをだす。
・元気で明るい、そして、すごく個性的
・コツコツもしているし、寄り添うやさしさがある
の2面性を表現できるようにする。
2.魂を込めて丁寧につくる。
3.ビールへの愛を込める。
こんなコンセプトとともに木内酒造の手造りビール工房へ。
実際に、原材料のセレクト~計量~麦汁をつくるところまでを体験して、+6週間の発酵・熟成期間を経て...ついに!!2種類のビールが完成した!!
ものさすBEER White Ale【左】 ものさすBEER IPA【右】
■ものさすBEER IPA
ABV(アルコール度数):7%
IBU(苦味):50.9
原材料:麦芽・ホップ
IPA(Indian Pale Ale)の名の通り、インドへの輸送に耐えられるよう、麦汁濃度を高くしホップをたくさん使用することで誕生したスタイル。
アルコール度数は高め、ホップの香りと苦みが非常に強いのが特徴で、ガツンとパンチがきいています。
一口飲んで、くぅ~~~~~っと唸りたい方におすすめです。
■ものさすBEER White Ale
ABV(アルコール度数):5%
IBU(苦味):19.9
原材料:麦芽・ホップ・コリアンダー
小麦麦芽とスパイシーなホップのビール。白く濁った見た目、爽やかな柑橘系のような酸味、はなやかな香りが特徴でホップの苦味は抑え目です。
いろいろな料理にも相性がよく、ビールが苦手な方でもスルスルっと飲みやすいです。
さっぱり爽やかライトな感じがお好みの方におすすめです。
制作過程のあれこれ話や、お披露目その後のお話については、次回以降の記事で。
ご期待ください!
■『ものさすビールをつくろう』の記事
【其ノ一】導入編:ビール造りのきっかけ~経緯、ビール造りにかける思い
【其ノ二】仕込編:ビール工房での製造工程~当日の様子
【其ノ三】完成・乾杯編:Before~乾杯!~After
(2020/12/22 ものさすサイトに掲載)