アフリカ全土のスタートアップに投資をするVerod-Kepple Africa Venturesが計60億円を調達、JICAや日系大手企業が出資
株式会社ケップルアフリカベンチャーズ(本社:東京都渋谷区、代表:神先 孝裕)とナイジェリアの大手プライベートエクイティ企業が運営するベンチャーキャピタル、Verod-Kepple Africa Par...
https://corp.kepple.co.jp/press/20230320
こんにちは!ケップルの神先です。
「アフリカ訪問記」と題して、4月に訪れたナイジェリアでの出来事を綴っています。前回の記事では、ナイジェリア訪問の目的やラゴスの街の様子について触れました。2回目となる今回は、現地で視察したスタートアップ企業についてご紹介していきたいと思います。
私が代表を務めるアフリカのベンチャーキャピタル「Kepple Africa Ventures」(以下、KAV)がナイジェリアのプライベートエクイティ企業「Verod Capital Management 」(以下、Verod)と共に設立した新たなファンド「Verod-Kepple Africa Ventures」(以下、VKAV)は、すでにアフリカのスタートアップ企業8社への投資を完了しており、引き続き、ファンドレイズと投資活動を進めています。
また、KAVは2018年の設立以降、アフリカで11ヶ国103社への投資を完了しています。今回は現地を視察し、実際に投資先企業のサービスを体験してきました!
まず、KAVの投資先であるMoniepoint(旧社名:Teamapt)のオフィスを訪れました。Moniepointは、ナイジェリアを中心に金融プラットフォーム「Moniepoint」を運営する企業です。
Moniepointは、モバイルで送金、支払いなどの金融取引を行うことができる電子決済サービスです。また、実質ATMとしても機能するエージェントネットワークを展開しています。最寄りのエージェントを通じて、現金の引き出し、預金、送金などのサービスにアクセスできます。2022年にはナイジェリア中央銀行から銀行ライセンスを取得し、事業者に対してビジネスバンキングサービスも提供しはじめました。
2019年にリリースされた同サービスは、現在では年間の決済総額が1700億ドルを超えるほど、金融インフラとして急成長を遂げています。
▲(左)サービス端末(右)決済後レシート
こちらがMoniepointのサービス端末です。支払いの際に店員が操作し、客がモバイルで電子決済をします。レストランや街の市場のような店でも、とにかくあらゆる店舗でこの端末が普及していて、取引が行われています。
一番特徴的なのは、銀行口座とつながっていることです。通常、クレジットカードで支払われると、事業者に入金されるまではタイムラグがありますよね。ところが、Moniepointでは、利用者の口座から直接支払われるのです。事業者からすると決済後すぐに着金され、誰から支払われたのかわかるのはとても大きなメリットです。
実は昨年末に、ナイジェリア政府は通貨であるナイラの新紙幣の発行と旧紙幣の回収を行いました。旧紙幣を市場から吸い上げたのですが、新紙幣の発行が追い付かず、市場から現金が無くなるという事態が起き、経済の混乱を招きました。その結果、Moniepointのような電子決済サービスの普及がさらに進みました。
元々は、口座を持たない人々向けの金融サービスとしてはじまりましたが、徐々に中流層向けの店舗へも広まり、事業を拡大しています。
▲(左)街中の売店(右)ラゴス市内のアートカフェ どちらもMoniepointを利用
Moniepointのオフィスを訪問してみると、実は全然人がいませんでした(笑)オフィス周辺のエージェントをサポートする方々が数名いた程度で、基本的にみんな現場に出ているそうです。とにかく現場主義だということがよくわかりました。
▲Moniepointの受付
Moniepointが導入されている小売店も訪れて、いろいろと話を伺ったのですが、やはり着金が速いことがメリットとして大きいとのことでした。そして、担当者の対応が良いのでとても信頼していると。他にプレーヤーが出てきたとしてもそう簡単には変えられないだろうとのことでした。現場主義の姿勢が、利用者にとっても魅力となっているようです。今後のさらなる飛躍が楽しみな企業です。
次に、VKAVの投資先であるShuttlersのサービスを利用してみました。Shuttlersは、交通シェアリングサービスを提供する企業です。
ナイジェリアに限らずアフリカは、公共交通網が整っていない国が多く、個人ドライバーが自身の車輛を使って自由気ままに運行する、いわゆる❝野良バス❞があちこちを走っています。他に手段が無いため、人々は野良バスを利用するしかなく、目的地にスムーズにたどりつかないという問題を抱えています。運賃も決まっておらず、時間通りにバスが来ないのです。
Shuttlersはそのような問題を解決すべく、個人のバスドライバーを加盟者とするシェアリングサービスを展開しています。利用者は、モバイルで運行ルートを確認し、予約、運賃の支払いが可能です。停留所がきちんとあるので、予定通りにバスに乗り込むことができます。ドライバーは、顧客管理や売上予測ができ安定した収入を得ることができます。
▲(左)私たちが利用したバス (右)Shuttlersロゴ入りバスも運行していました
私たちが乗ったのはこの黒いバスです。後からどんどん乗ってきて最後は満席になりましたが、スムーズに目的地にたどり着くことができました。
▲車内の様子、VKAVのメンバーと
電子決済も公共交通網も、日本では当たり前のことですが、アフリカはあらゆるインフラが整っていないので、このようなサービスが人々の生活の向上に直結します。その点において、スタートアップの役割が日本とは大きく違うと考えていますし、一度人々に受け入れられ、その利便性やメリットを認識されると一気に拡大するのがアフリカのスタートアップマーケットの魅力です。
そのため、ケップルが掲げるミッション「Create New Industries ~世界に新たな産業を~」が最も実感できるエリアのひとつだと思います。今後も人口爆発を続けるアフリカ大陸は、まだまだ大きな可能性を秘めています。現地で実際のサービスを体験することで、その想いはますます強くなりました。
アフリカ訪問記③では、VKAVでのディスカッションの様子やVerodチームとの交流についてご紹介してまいります!
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