薬剤師としてのキャリアを積んだ後、現在はエンジニアとして活躍する今泉さん。今回はエンジニアとしての「成長」をテーマにお話しいただきました。
今泉 隼人(いまいずみ はやと) プロフィール
薬学系の大学を卒業後、一部上場のドラッグストアや地域密着型の薬局にて薬剤師として、OTC・調剤業務に従事。その後、自身の会社を立ち上げてシステム開発広告、住宅系の開発やディレクションを行う。
2023年4月ファストドクター株式会社へエンジニアとして入社、インフラ基盤・アプリケーション開発でオンライン診療や予約管理システムを担当。
まずは今泉さんが開発の道を選んだ理由について教えていただけますか?
ーー今泉:元々は調剤薬局で薬剤師として勤めていました。業務をしている中で、患者さんが医師に処方された薬が薬局にあるかどうかが薬局に行かないとわからないことや、お薬手帳を忘れてしまうと患者さんが何のお薬を飲んでいるか分からない、等の課題が、ITの力を使えば解決できるのではないかと感じていたんです。それで、当時私はITの知識が全くなかったので「まずは自分で勉強しよう」と思ったことが、エンジニアとしての始まりでしたね。
ただ自分で少し勉強し始めてから、1人だと挫折する・・・と思ったので、思い切ってITエンジニアが多くいるシェアハウスに住むことにしました。それによって分からない部分をエンジニアの方に気軽に聞くことができるようになり、継続して勉強に取り組むことができました。その代わり、私の得意分野である健康や薬のことについては、相談を受けていましたね。笑 そうして知識をつけていく中でありがたいことに、副業としてエンジニアの仕事をいただけることになりました。独学しつつ、エンジニアのコミュニティに参加をし、エンジニアにわからないところを質問して実践する、という事を繰り返していました。
その後、本格的にエンジニアにキャリアチェンジしたんですね。
ーー今泉:はい。副業がある程度軌道に乗り始めたタイミングで、薬剤師から完全に転身し、本格的にエンジニアとしての道を進もうと決意しました。「チャレンジするなら早めにやったほうがいい」と思ったんです。
そこで一人法人として独立し、約2年間活動しました。広告と不動産業界の開発に関わらせていただき、クラウドエンジニアとしてインフラの基盤構築をしたり、お客さんとやり取りしながらPMOとしてチームの管理をしていました。
ファストドクターに転職したのはどういう経緯だったのですか?
ーー今泉:大きく2つの理由があります。一点目は、独立して2年間は医療ではない別業界でエンジニアとしての経験をある程度積ませていただいたので、初心に立ち返って原点である医療に携わりたい、なかでも過去の体験から「医療DXで効率化に挑戦したい」と思ったためです。二点目は、このまま自分だけでやっていると「クライアントワーク」になってしまい、プロダクトを自分ごととして改善していくことが難しいと感じていたためです。そのため「医療に携わりたい」かつ、自分だけでやるのではなく「チームでプロダクトを育てるような環境」という軸で企業を探していたところ、ファストドクターのエンジニアの求人を見つけました。
医療系の企業は多くありますが
・実臨床に近く、現場でクイックにやりとりをして新しい医療体験を作っていけること
・保険診療に携わる人員のリソース不足を医療品質を保ちつつ、生産性を高めて持続可能な医療体制を保てるようにすること
これらをテクノロジーで解決していけるというところに強く共感して、入社を決めました。
入社後、どういう事業に携わってきましたか?
ーー今泉:入社して最初の半年くらいはクラウドインフラを担当していました。ファストドクターに登録する約5,000人の医師が使うポータルサイトの基盤を作ったり、社内システムの基盤をAWSに移行したりしました。その後は、オンライン診療のビデオ機能のPMOを担当し、そこから徐々にアプリケーション開発にも携わるようになりました。
現在はオンライン事業の慢性期のサービスに携わっています。その中でも予約管理システムには注力をしました。というのも、元々ファストドクターは「救急」に特化していたため、事前に「予約」するという概念がなかったんです。そのため慢性期のサービスとして新たなシステムの構築が必要でした。
新たなシステムを構築する中での課題やエンジニアとして対応したことを教えていただけますか?
ーー今泉:オンライン診療の予約管理システムの開発プロジェクトには、2024年春にアサインされ、リリースまでのリードやアプリケーション開発を担当しました。
予約管理システムの構築と聞くとシンプルですが、ファストドクターの場合はアーキテクチャとしてマイクロサービスを採用しており、予約管理システムは7つのマイクロサービスが連携した複雑性があります。さらには、オペレーションチームが使う基幹システムの業務ロジックを当てはめて動かすことが必要で、私がプロジェクトに参加した時点で多くの残実装があり、その課題の解決は大変でした。他にもテストを重ねたにも関わらず、インフラ基盤では本番環境が立ち上がらないなど、課題は多かったです。
取り組んでみて、いかがでしたか?
ーー今泉:課題が多かったからこそ、エンジニア目線で言うとフロントエンド、バックエンド、インフラと、フルスタック的に開発をできたので、エンジニアとして成長できたと強く実感しています。弊社ではフロントエンドはNext.js、 React、バックエンドはNestJS、インフラはAWS、IaCはTerraformとモダンな技術で開発できるので、技術的にも良い環境ではないかと思います。
無事にリリースした後の保守フェーズでも、機能不具合に対してクイックに追加開発したり、Datadog導入をリードして、オブサバビリティを改善する対応を進めたりしました。予約時に行っていただく事前問診の解答率がほぼ100%という事業としての成果にもつながったので、ここを評価いただけたのは嬉しかったです。
左:予約管理画面 右:ビデオ画面
エンジニアとして、事業成果につながっていることを実感できるのは嬉しいですね!
ーー今泉:はい、ファストドクターの開発組織ならではのやりがいだと思います。
またオンライン診療事業部のメンバーとディスカッションをして対応方針を一緒に考えたり、他のエンジニアとのコードレビューや設計レビューを通じて、多くの知見をもらいました。「一人で完結する」というよりは、少人数でお互いの強みを活かして協働する文化が根付いていると思います。また、それぞれの開発の知見や経験を惜しみなく共有してくれるので日々学びがあり、業務以外でも、技術本の輪読会など技術力を向上させる機会も多くあります。
また2024年の夏から部内で「CTO賞」という表彰制度が始まったんです。この初回の表彰で、予約管理システムのリリースについて表彰をしていただきました。
それで表彰されると、CTOからプレゼントをもらえるんですよ。ちょうどその時「AWSのイベントに行けるチケットがあるよ」と、CTOの西岡さんから共有を受けたんです。私はもともとインフラエンジニアでAWSには興味がありましたし、現地の最新情報をキャッチアップすることで良い勉強になるのではと思い、「ぜひ!」とお返事しました。
AWSのイベントってどんなものなのでしょうか?
ーー今泉:まず、AWSについて簡単に説明すると、Amazonが提供しているIT周りのサービスです。ファストドクターではシステムのインフラの大部分をAWSが支えています。サーバーだったり、コールセンターサービスだったり、様々なものがあり、ファストドクターはAWSに支えられていると言っても過言ではありません。
今回私が参加した「AWS re:Invent」は、Amazon Web Serviceの年1回の大イベントです。毎年ラスベガスで開催されていて、AWSの新サービスの発表、勉強会、現地でしか参加できないワークショップや交流会などがあります。世界中からいろんなエンジニアが集まります。毎年参加人数が増えていて、今年の参加者は過去最高の約6万人とのことでした。
今回具体的にどんなことをしたんですか?
ーー今泉:一例としては、アメリカでは医療プライバシーとセキュリティの基盤となる重要な規制であるHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act:健康保険の携行性と責任に関する法律)という法律があります。これに準じた基盤を構築するワークショップに参加しました。デモ用の問題があって、AWSを使いながら実際に一人で構築に取り組みました。
非常に実践的ですね。現地に行ってみてどうでしたか?
ーー今泉:現地のAWSの盛り上がりを直に感じられたのが非常に良かったです。特に、オンラインセミナーでは体験できない「実際にシステムを触りながら学べる」「AIの使い方など、最新の情報を実際に手元で触れる」という経験は非常に貴重でした。
次はAWS Certified Solutions Architect - Professionalの資格取得に挑戦したいと思っています。このような成長の機会をいただいた会社に感謝しています!
業務でチャレンジすることでの「成長」だけでなく、インプットできる「成長」環境があったんですね。
ーー今泉:CTOの西岡さんを始め、エンジニアとしての成長を会社全体で支える文化があると思います。AWS re:Inventへの参加も、単に表彰のプレゼントとしてではなく、「学んできたことをチームに還元してほしい」という期待も込められていました。実際、イベント参加後には社内勉強会で学びを共有する機会もいただきました。
今後どういう力をつけていきたいですか?
ーー今泉:さらに事業インパクトを出せるエンジニアになりたいと思っています。そのため、単に作業やプロセスを遂行するのではなく、最終的に実現したいことをプロダクトから逆算して考える。「結果」や「成果」に焦点を当てる”アウトカム志向”を身につけていきたいですね。
また技術面ではより「フルスタックエンジニア」として活躍できるよう知見を広げ、プロダクトに愛情を持って技術観点での提案をもっとしていけるようになりたいと考えています。
とても素敵な考えですね!ファストドクターの良いところは、まだまだ成長途中の組織であるからこそ自分の興味や強みに合わせてキャリアを選べる点だと思います。今泉さんはキャリアとしてはどのように考えていますか?
ーー今泉:そうですね、これまで私自身もインフラからアプリケーション開発、そしてプロジェクトリードと幅広く経験させてもらっています。
ファストドクターでは、「技術専門職としてスペシャリストを目指す道」もあれば、「Engineering Managerとしてマネジメントを担う道」をはじめ、様々なキャリアを検討できます。私の場合は技術力を高めながらも、事業のアウトカムを出していけるような立ち位置を目指しています。「決まったキャリアパス」が敷かれているわけではなく、自分で道を切り拓いていける環境だと思います。
今泉さん、ありがとうございました。
ファストドクターでは社員のひとりひとりが成長できると実感できる環境を作ることを目指しています。
今回の今泉さんのAWS re:Invent参加は、最先端の技術や知識を学ぶ機会を積極的に提供した一例です。
「1億人のかかりつけ機能を担う」というビジョンの実現には、技術的なイノベーションが不可欠です。例えば、今泉さんが開発した予約管理システムは、診療予約を効率化し、医師と患者双方の体験を向上させました。エンジニアの技術力が直接、医療アクセスの向上という社会課題の解決につながっています。
まだ少数精鋭のエンジニア組織だからこそ、プロダクト全体に関わり、自分の技術や知識が直接事業成果につながる実感を得ながら成長できる環境です。医療DXという社会的意義の高い分野で、技術を駆使して課題解決に取り組みたいエンジニアの方、ぜひ一緒に働きませんか?