「2年前と今じゃ、何もかも違いますよ」。スタートアップのスピード感の中で、レガシー産業と言われる建設業界に変化を起こす。そんな無謀とも言えるチャレンジに真っ向から挑むプロダクト責任者がいます。
源生さんは執行役員としてプロダクト開発を牽引するエンジニア。25才という若さでプロダクト責任者に抜擢され、メンバーと共に機能を磨き上げてきました。
前回のインタビューから約2年半が経ち、その間に組織もプロダクトもかなりの変化を遂げたとのこと。まだ売り始めてもいないゼロの状態から現在に至るまでの、進化の歴史を聞いてみました。
プロフィール
武田 源生さん(27歳)執行役員
高専プロコンで優勝したのをきっかけにDeNAに新卒入社。セカンドキャリアでは動画配信スタートアップの取締役CTOとして、プロダクト開発およびカスタマーサクセスに従事。事業成長の過程で「せっかくやるならでかいことを」と考えるようになり、日本トップクラスの市場規模である建設業界へ飛び込んだ。
顧客の経営状況を可視化できるようになった
2年半前と比べて、組織はどう変化しましたか?
2021年6月時点ではたった6名の少数精鋭チームで、それぞれがかなり広い範囲を担当していました。
それが今では正社員が16人、業務委託メンバーを含めると22人にまで増えました。機能群が10以上あるので、担当範囲に合わせて3チーム+QA専属チームに分かれて動いています。兼務が減って属人化もマシになりましたし、触る範囲が狭くなったので、現場メンバーとしては担当領域に集中しやすくなったんじゃないかなと思います。
ちなみにオフィスの移転とかもありましたが、プロダクトのメンバーはほぼ月1くらいでしか出社しないので、変化とは感じていないです(笑)。
プロダクトはどう変化しましたか?
プロダクトに関しては、変化しかないですね。今作っているクラフトバンクオフィス(以下、CBO)は、前回のインタビューの時はまだ売り始めてもない「ゼロ」の状態でした。工事会社の経営状態もキャッシュフローも全然見えていなかった。
それが、今では売上5億未満くらいの規模の工事会社さんであれば、業務・労務・経理などの一通りを一括で可視化・管理できるようになりました。いわゆるERP(Enterprise Resources Planning)を提供して、ヒト・モノ・カネを適切に動かすお手伝いができるところまで来ています。
会計ソフトとCBOを並行で使っているお客様にキャッシュフローを見せてもらったところ、会計ソフトの結果とCBOの数値がほぼほぼ一致したんですよ。「経営状況を可視化できるプロダクトになったな」と実感しています。
さらに請求書を自動で発行したり、日報を自動で集計したりといった、業務効率化も進んでいます。
顧客の声で作ったから、シンプルに売れた
想定していたものが仕上がってきたイメージですか?
実を言うと、2年半前の想定とは全然違うプロダクトになりました(笑)。当時は労務やお金の管理に踏み込むことには消極的で、あくまで手配を自動化しようとしていましたから。
でも、結局は僕らが「こういうのあったら便利でしょ」と開発するんではなく、お客様が欲しいと言うものを作ってきました。
今も、何を作るか決めて動いているわけではないんです。半年以上先のマイルストーンは置いていなくて、その時々で営業やCSから上がってくる顧客の声を聞いて、開発するものを決めています。だから、作るものが変わってくるんです。
元々は手配の自動化ツールを作ろうとしていたところから、顧客の声を聞いて現場管理や労務管理を含めた経営全般を扱うプロダクトにシフトする時は、各方面からいろいろ言われたのを覚えています。
「案件管理では日報やスケジュールも一緒に使えるようにしてほしい」という希望があったりして、一般的なWebサービスにはない構成だったので、メンバーからも「それ、作るの難しすぎるのでは?」と言われて。投資家などからも「そんなにすぐに方針転換して、大丈夫なの?」と聞かれて。
それでもお客様が欲しいと言っているんだから作るしかない! という気持ちだったので、まずは自分でデモを作って「こんな感じでいいんじゃないか」と見せたんです。難しいってわかってるものをメンバーにぶん投げるだけってのも気が引けたし(笑)。
そうしたらみんな、じゃあやってみるか、ということでCBOの開発が始まりました。いい人たちなので、やるとなれば協力を惜しまずやってくれるんです。内輪揉めも事故もなく、ここまでやってこれました。
最近では誰もが知るような会社から数億円規模のERPのお話をいただいたり、議論の場を持てるようになってきました。でかいことをしたいと思って入ってきた業界で、でかいことをできそうな手応えがあるので、だいぶ遠くまで来たと実感します。
短期間でこれだけ売上が上がったのは、当時から尋常じゃないくらいヒアリングをして、顧客の声で作るスタンスを貫いて粛々と開発してきたからだと思いますね。
変化の土台にあるのは、変わらぬ想い
自分自身の変化は感じていますか?
以前の記事を見ると、自分の言っていることや思考が浅い! と思いました(笑)。
特に以前掲げていた《寝てても工事の受発注を完了できるまでUI/UXを磨き上げる》という目標は、今ならそうは言わないですね。
当時は建設業をよく知らなかったので、どうして多重請け構造になっているのかもわからなかったし、すぐにペーパーレス化できるだろうと思っていたんです。綺麗なところしか見えてなくて、現実的にそうせざるを得ない理由やパターンを把握できていなかった。業界のルールを変えるには、まだまだ時間がかかると感じています。
でも、業界全体のDXを押し進めるようなプロダクトをつくって、少しでも本来の「職人技術を活かす仕事」にコミットしてもらえるような環境にしたい、という思いは変わっていません。
CBOを通じてバックオフィス業務が一瞬で終わるようになったって事例も出ているので、まだまだ改善できるけど理想に近づいているのかなと感じますし、少しは理解や考えが深くなってきたのかもと思うとポジティブな変化ですかね。
今後の展望について教えてください!
これからもっと幅広いお客様にCBOを活用していただけそうなイメージがあるので、今以上に規模の大きな企業や一次請企業の方向けの開発もしていこうとしています。でもこれは複雑さや難易度がさらに跳ね上がる話になるし、CSのコンサル力も試されるフィールドなのでかなり大変です。
クラフトバンクの強みはコンサルもプロダクトも全部自社で抱えていることなので、そこは崩さずに人材育成や採用にも力を入れていく必要があります。
ただその先にはでかいマーケットで異常に高い単価をもらって業界を変えられるっていう面白みがあるので、ビジネスが好きな人にはたまらない未来が待っているんですよ。建設業界にITを入れることで発揮する価値ってめちゃくちゃ大きくて、可能性が死ぬほど眠ってるんです。
ただ2年半も作り込んできたので、新規事業をやっていこうかという話もあります。僕としては楽しそうなので、新規事業もやりたいですね!
最後に、クラフトバンクはどんな方におすすめですか?
本気で「裁量が欲しい」って人ですかね。
すでに入ってくれたメンバーにもよく言われるのは「現場のメンバーが決める文化が強い」ってことなんです。全体的に性善説で回っているので、意思決定の判断を上長がするってことがほぼありません。
「たしかに裁量欲しいって言いましたけど、思ったよりあって困ってます!」とか「もっと指示してください! こまめに確認してほしいです!」って人もいるくらい……(笑)。今後はどんな人も困らないように整えていきたいところですが、自分でドライブできる人が向いてますかね。
リスク管理はちゃんとやっているので、重要な意思決定にはちゃんと僕も噛みますし、異変があればすぐにキャッチできる仕組みも整えています。失敗したとしてもなんとかなるから、僕も安心して任せられるんです。
もっと早くいいものを作っていくために、ビジネス好きな方にも、技術的に難しいことをやりたいギークな方にも、ぜひお会いできると嬉しいです。