イツノマが毎月主催しているオンラインコミュニティ「まちづくりカレッジ」で、図工改革!地域と教育をつなぐ「ものづくり」と題し、スペシャルゲスト山内佑輔さんをお迎えして開催しました。
若者流出や人口減少に歯止めをかけるには、いかなる教育をしてどんな人材育成を目指せばいいんだろう?図工や探究学習はなぜ必要で、どんな学びを得られるんだろう?などなど、白熱した2時間の様子をお届けします。
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若者流出を食い止める第1歩は、実際の数字とにらめっこすること
3年前に都農町に移住し、現在は「こども参画まちづくり」に取り組んでいるイツノマ代表 中川は、冒頭こんな話をしていました。
人口減少や若者流出が課題だ!って声はよく聞くけど、もっとブレイクダウンして実際の数値とにらめっこしたほうがいい気がする。
たとえば都農町の現在の小学6年生は89人いるけど、そのうち何名が町内の中学校に進むのか。さらにその先進学して就職する際に、何名が都農町を選び町内の会社で勤務するんだろう。
厳しい現実かもしれないけど、そうやって実際の数値と向き合わないと過疎地が直面している課題は解決できないと思っていると中川は話していました。
Uターンを増やすヒントは教育にある
そうやって現実と向き合ってみると、大人になっても都農町に住んで、働く道を選ぶ人は1〜2割しかいないことがわかってきました。
しかも、この先もっと状況は厳しくなっていくでしょう。そんな中で、いまできることは何か、未来のまちづくりのために何をすべきなのか。
そこで注目したのが、町の未来を担うこどもたちであり、総合的な学習の時間だったと言います。
都農中学校では、総合的な学習の時間を活用して「つの未来学」を行なっています。各学年15コマずつ、年間45コマがつの未来学に割り当てられ、今年で3年目に突入しています。
特徴は、一次産業の担い手不足や商店街再生など、まちのリアルな課題に取り組んでいることです。
こどもの頃に「アクションを起こす楽しさ」や「まちは自分で変えられるんだという実感」をもつこどもたちを増やしたい。そうすれば、進学や就職で一度まちを離れたとしても、Uターンが選択肢にあがってくるんじゃないか。
過疎地の課題に向き合い、未来のまちづくりを考える中で、自然と教育に対する思いが強くなっていったと中川は語っていました。
そんな「まちづくり×教育」の領域に「ものづくり」も掛け合わせたらさらにおもしろいんじゃないかということで、今回はスペシャルゲスト 山内佑輔さんをお呼びすることになったんです。
図工には大きなポテンシャルがある
山内先生の図工の授業はこんな感じです。
しんぶんしパーティー
10,000個でつくる
とにかく強調されていたのは、教えるんじゃなくて一緒に楽しむスタンスが大事ということ。
材料がいっぱい手に入ったから、一緒に遊ばない?
今これに熱中してるんだけど、ここが難しくて困ってるんだ。誰か手伝ってくれない?
みたいな感じで、先生と生徒という上下の関係ではなく、あくまでフラットな関係で接し、生徒だけでなく先生自身もワクワクすることを大事にした図工の授業をされているんです。
そんな山内先生の授業を受けたこどもたちは本当に楽しそうで、担任の先生が「あんな表情はじめてみた」とびっくりされているほどでした。
なぜ図工は必要なの?どんな学びがあるの?
でも、こんな疑問が浮かびませんか?
図工っていうより、ただ遊んでるだけなんじゃない?
将来職人になるなら別だけど、ふつうの人が図工に力を入れる意味ってあるの?算数とか英語とか勉強したほうがいいんじゃない?
そんな素直な疑問に対して、山内先生はこんな返答をされていました。
みんな今日の夕飯なにたべる?正解の夕飯ってあるかな?
友達とけんかしちゃったあとの仲直りに、正解のやり方ってあるかな?
将来25歳になった君にとって、正解の職業ってあるかな?
実は「正解があること」って意外と少ないんだよ。
そういう「正解がないこと」に向き合う練習ができるのが図工の時間なんだ。
大量の新聞紙や紙コップを渡されて、最初は戸惑うかもしれない。でも一生懸命悩んで、ちぎったり重ねたりしていると、やりたいことが生まれてくるかもしれない。友達のやってること見たら、自分もいいこと思いついちゃうかもしれない。
そうやって自分でやりたいことを見つけ出し、かたちにしていく。図工はいま強調されている探究学習にとても近いところがあるし、すごく大事な力を育む教科だと思っていますとおっしゃっていました。
これからの過疎地のまちづくり
過疎地の教育をテーマに「まちづくり」と「ものづくり」について語り尽くした2時間。
ふしぎなことに、終盤ぴたっと意見が重なるタイミングがありました。
どれだけ「いいこと思いついちゃった!」を増やせるかが重要ですよね。
「いいこと思いついちゃった!」を連発できる人は、やりたいこと・おもしろそうなことの種を見つけるのが上手な人でしょう。それが「めちゃくちゃやりたいこと」にまで育っていくと、1人で突破したり仲間を巻き込んだりして、ほんとに実現しちゃうかもしれません。
いいこと思いついちゃった人間がたくさんいる町は楽しそうだし、人口が減っても活気がありそうです。
図工はそんな力を育むのにぴったりだし、総合学習を活用した「つの未来学」でまちのリアルな課題に触れることで、よりよいまちをつくるためのアイデアを思いついちゃうかもしれません。
小中学校の図工や総合の時間を活用して、いいこと思いついちゃった人間を都農町に増やしていきたいね!それができたら日本で1番イケてる町になれるんじゃない?と盛り上がった夜でした。
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山内先生のプロフィールはこちら。
新渡戸文化学園 VIVISTOP NITOBEチーフクルー。プロジェクトデザイナー。東京造形大学非常勤講師。
大学職員、公立小学校の図工専科教員を経て、2020年4月に新渡戸文化学園へ着任。
VIVITA JAPAN株式会社と連携しVIVISTOP NITOBEを開設。2021年「VIVISTOP NITOBE FURNITURE DESIGN PROJECT」がキッズデザイン賞最優秀賞内閣総理大臣賞受賞。2021年3月からPodcast「山あり谷あり放送室」を配信し、第3回JAPAN PODCAST AWARDSベストウィルビーイング賞ノミネート。