ミイダスは2020年4月、転職・採用を科学する研究組織として、HRサイエンス研究所を創設したことを発表。新しい仕事を得たいと思う求職者のユーザーと、仕事に適した人材を求める企業にとって、よりよいキャリア・働き方・仕事を提供するべく、研究を進めています。
今回はそんなミイダスのHRサイエンス研究所所長の神長と機械学習の第一人者として知られる大羽にHRサイエンス研究所の実態について話してもらいました。
ーーまずは、HRサイエンス研究所がどのような組織か教えてください。
大羽:私たちは転職に関連した様々な事象を科学的な手法で検証し、ユーザーや企業の新たなアセスメントやマッチングの方法を開発しています。
例えば、ミイダスのユーザーの特性を過去の検索履歴やコンピテンシー診断などを元に明確にして、特性に合った求人を推薦するシステムなどを作っています。
神長:研究所のミッションとしては「あらいだす(仕事とスキルを定義)」「みいだす(人材の発見と見極め)」「ふみだす(転職という新たな挑戦への後押し)」という3つのコンセプトに紐づけて研究を行っています。
研究の手法としては、データサイエンスと心理学や脳科学などのヒューマンサイエンスの2つのアプローチをとっています。
研究を世の中に役立てたい。ユーザーの手元に届くまでを実現する、厳しさと面白さを体感
ーーお二人とも10年以上も教員や研究員をされていたとのことですが、なぜ民間企業に転職されたのですか?
大羽:私自身は、もともと教員として働き出した頃から民間企業で働くことに興味がありました。自分の研究内容がいつかは実用的に活用される場に行きたい気持ちが強かったんです。神長さんはどうでしたか?
神長:私は逆に研究所にいる頃は、本当に基礎研究が面白いと感じていたので民間企業への転職は考えていませんでした。
でも、2010年にヨーロッパの学会に行ったときに、パスツールの象限という話を聞いて応用研究に興味が出てきたんです。
一般的に、基礎研究と応用研究については、研究をというものを考えた軸の一方の端に基礎があり、その反対に応用があると言われています。そのため、軸の真ん中にあるような研究は、中途半端でだめな研究と捉えられることが多くあるんです。ストークスという方が提案したパスツールの象限はそうではなく、新しい発見があるか・それが世の役に立つかという2軸で考えたら、両方要素を兼ね備えた研究が一番いいよねという話でした。
その話を聞いてから自分のアイデアを現実に応用させることに興味を持って、最終的にミイダスに転職しました。
ーー大学や研究所で働いていた時と、違いやメリットと感じることはありましたか?
神長:以前と比べて大きな違いは、研究に向き合う時間の多さです。大学では研究だけでなくティーチングも必要で、バランスに関してはティーチング比重が非常に高かったです。
ミイダスは教育機関ではないので、ひたすら研究に専念できるというメリットは大きいと思いますね。
大羽:一般的には教員として働く=安定というイメージがあると思うのですが、私としては多様な場所での経験を持つほうが変化に強いと思っています。その点では、ミイダスで働くこと自体が安定だとは考えていませんが、研究の経験を生かして次の場所へ動くことができたことは非常によかったと思っています。
圧倒的なスピード感。研究者としてワクワクできる、無限の可能性
ーーさまざまな企業がある中で、ミイダスを選んだ決め手は?
大羽:もともとHR業界には興味があって、特に「人材をアセスメントして、最適に配置する」というミッションに魅力を感じたからです。社会に対して大きなインパクトがありますし、夢があると思いました。
加えて、ユーザーの心理的・生理的特性を計測することによるアセスメントと、統計的なデータ処理技術の開発をしていると聞いて、自分がその両面で貢献できるイメージがすぐに湧きました。
神長:私は逆に、HR業界については特に興味があったわけではありませんでした。でも、適材適所で働けるというミイダスの実現したい世界観の話を聞いたときに「業務や職種ごとに、適性を見る」ということは、様々な環境と心の働きを限りなく見られると気付きました。そして、その挑戦は心理学者として非常に面白いと思ったのが決め手です。
もう1つ魅力に感じたのは、スピード感ですね。
大羽:たしかに私にとってもスピード感は魅力でした。大学にいると研究のペースはだいたい決まっているのですが、ミイダスではその2倍以上のスピードで実現するにはどうしたらいいかを考えています。色々と工夫しながら、サイクルを早く回すことができるのは研究者として非常に面白いですし、やりがいに繋がっていますね。
ーー現在のチーム体制について教えてください。
大羽:2021年1月現在は7名体制です。アカデミア出身が多いですが、全員ではなく元々はWebのエンジニアとして入社された方もいます。
7名だけでは求めるスピード感が実現できない部分もあり、大学や研究所と共同研究もしています。
神長:自立性の高いチーム組織を目指していて、各自が研究テーマを1つ持つようなイメージで回していますね。
もちろんディスカッションをしたり、スキルの部分で助け合うこともありますが、各自が必ずミッションとして持っているテーマがあるので、それを進めていくというイメージです。
「ないものは自分たちで作ればいい」。これまでになかった“共感スキル”の概念を作り出すところからのスタート
ーーお二人は具体的に、どのような研究に取り組まれていますか?
大羽:その人が思ってもいなかったような仕事を推薦するためのアセスメントを研究しています。
転職者は今就いている仕事の延長上に自分の転職先があると思っています。それ自体はもちろん間違ってはいないのですが、ミイダスのサービスとしてもっと驚きのある提案もできたらいいなと思っています。
同じような経歴を持っている人が活躍しているまったく違う職種を、データを用いて提案するイメージです。
神長:今あるコンピテンシー診断はアンケート形式のものですが、今後は様々なデバイスを利用して反応時間を計ったり目の動きを測ったりすることもアセスメントの指標になると考えています。
アンケートの答えだけではわからない「自分」という情報が得られるので、推薦の精度が高まります。より良いコンピテンシーのテストを作って、最終的には1本の論文としても通用するような品質の研究を心がけていますね。
もちろん、適性やコンピテンシーについて世界中で研究されています。ときにはそういった他の研究の成果をうまく利用します。でももしそういったものがなければ、「ないものは自分たちで作ればいい」と考えています。
実際に、共感スキルという新しい概念を提案して、それが実際にどのような職種の活躍につながるのかを研究しています。
共感=人の気持ちがわかるといった概念がありますが、働く上では、ただ相手のことがわかり感情移入できることだけが重要とは限りません。ときには共感した上で、職場として適切な行動をとる必要がありますよね。
その場面に応じて自分の感情をコントロールしつつ、職場にとって最善の選択肢を取れるスキル=共感スキルという新しい概念を作って、それに関するテスト第一弾を作りました。
これは筑波大学との共同研究でおこなっています。
ミイダスでは転職者だけではなく、求人掲載企業の社員の方にも受験していただいているので、企業内で評価が高い人と低い人では共感スキルにどのような差があるかなども調べています。
大羽:データの量も膨大ですし、実際の社会の動きを反映したものなので、量だけではなく質も高いですよね。実際の働く人たちのデータで、きちんと説明できたときの喜びというか、面白さが期待できます。
神長:他にも、音声の研究もしていてそれもとても面白いです。
ミイダスのセールス社員の音声データから、どんな話し方の人が営業成績が高いのかを調べているんです。声そのものに起因するのか、それとも話し相手との間の取り方や表現の豊かさなどに特徴があるのかなど様々な切り口でアプローチしています。
まるでSF?人間が理想とする世界の実現に挑むミイダスが目指す未来とは
ーーミイダスのHRサイエンス研究所が描いている実現したい未来とはどんなものですか?
大羽:人はそれぞれ、スキルや性格が違います。その違いに本人自身も気付いていないことがあります。また、その人が所属している職場もその人の性格を理解しているとは限りません。
そんな中で、性格を上手にアセスメントでき、どういう場所とまわりの人の環境であれば実力を発揮できるのかのベストマッチを作っていくことができれば、世の中は大きく変わると思います。
合わない職場で無理矢理働いていた人が、新しい職場にうまくマッチして、弱点がカバーされ長所が増幅されるようになると、生産性は上がり、みんなが幸せになると思っています。
神長:大羽さんとよく、近未来の話をするんですね。
職業を自分で選ぶのではなく推薦してもらうシステムというのは、SFの映画やアニメなどによく出てくる話です。
社会全体の中で自分が最も活躍できる場所を教えてくれるサービスがあったら、それを使いたいという人はたくさんいると思います。
とはいえ、そのシステムの信頼感はどうやって作るのか。「●●になりなさい」とシステムに言われたとき、納得してその選択肢に従う根拠については、SFの中でもまだ語り切れていない部分です。近未来のそこに、どういうシナリオがあるのかを話せるところがものすごく面白いんですよね。
ミイダスが描く未来は、人間が理想として思い描く世界の1つの形になるかもしれません。チャレンジングな課題だと思う一方で、それに貢献できることへのやりがい・充実感があります。
今はまだ全体の5%。これから始まる未来への道のり
ーーその未来に対して、現状の達成度は?
大羽:今はまだ、目標が見つかったぐらいですよね?
達成度で測れるようなものではないですが、あえて数字でいうと長期的にやりたいことの中で10%や5%というところです。
神長:組織としてもまだできたばかりですからね。本格的に研究所としてスタートしたのは2019年4月からです。ですので、基礎の部分から一緒につくり上げていきたい方にジョインしていただきたいです。
ーー目標に向けて、現状の課題はありますか?
神長:一緒にやってくれる人が足りないことですね。
大羽:そうですね。やはり1つのミッションは1つの木みたいなもので、どんどん枝が伸びていって、その枝によっては、その先がとても広い。
やりたいことも本当にたくさんあるし、どんどんそのさきが広がっていくので人が足りていないところはありますね。
神長:さっき1人1つのミッションといっていたのですが、大羽さんと私はもうすでに1つじゃなくなっていますよね(笑)。
もう一つは、他の企業がアセスメントなどに対して違うアプローチを取ってくれたり、いい意味でのライバル関係ができると良いと思っています。
理想を実現するという意味で考えたら単独の企業だけではなくて、いろんな企業が競争した方が社会の変化は早いと思っているからです。
現状はまだ、このような研究に力を入れている企業は国内ではミイダスの他にありません。
ーーどのような方にジョインしていただきたいですか?
大羽:研究者としては、我々が持っているものとは違う専門性を持った人が入ってくると非常に面白いなと思っています。
今はいないのですが、物理学・経済学・政治学の方もHR領域で活躍できるのではないかと思っています。
これらの分野の方々で、HR領域の課題に対して共感を持っていただける方がいれば最高ですね。
神長:そうですね。全く違う分野も大歓迎ですし、まだまだ既存メンバーと同じように生物学や統計学、心理学のバックグラウンドを持った方にもジョインしていただきたいと思っています。
研究に関する長年のスキルがある人だけが良いということではなくて、面白いアイディアを具体的に検証可能な形に落とし込める人であれば経験が浅くても大歓迎です。我々のように教員や研究員としての経験がなくても、まったく問題ありません。
ー最後にHRサイエンス研究所で働くことに興味がある方へメッセージをお願いします。
大羽:私たちが目指しているものは、これまでに世の中になかった新しいものです。新しい概念やシステムをつくっていくことであったり、ご自身の研究を世の中に実用的に生かすことに興味がある方がいればぜひ一度お話ししましょう。
神長:新しいものをつくるというのも大事ですが、まずは何ができそうかを話し合うところからでも良いと思います。
具体的に案や考えがなくても、話してみる中で、きっとお互いにできることが見えてくると思うので少しでも興味があれば気軽に話を聞きにきてください。
これまで誰も実現できなかった人材と働く場所との理想のフィッティングを、一緒につくりあげていきましょう!
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