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無添加にこだわるのは無駄な時代がやってきた

F&Pジャパン(株) 代表による社内報を公開する「オープン朝礼」記事です。
この記事は、2023年5月にF&Pジャパン社内向けに発信された内容をもとに編集を加えて公開しています。

最近、いよいよ「無添加」って意味ないなーと思うようになってきたんですが、今日はその話をしたいと思います。


2013年に創業したF&Pは、日本でも珍しいスムージーとジュースの専門業態だったので、
原材料にも当然のようにこだわりを持ち、生産者からの直送で有機野菜や減農薬の農産物を集めていました。

当時、F&Pと時を同じくして開業した「スムージー」「コールドプレスジュース」業界の同期たちがいて、こぞって競い合っていた時代です。

F&Pをはじめ業界全体がメディアに注目されていたので、次々に新興参入が相次ぎ、群雄割拠で賑わっていて、
「いったい誰がこの業界のてっぺんを取るのか?」みたいなことが業者内共通の関心のような雰囲気でした。


旬。有機。無農薬。無添加。産地直送。

まるでそれらが、当たり前のお作法であるかのようになっていて、
かくいう僕らも、特別栽培の生産者を開拓するために全国を回ろうとしていた時期もありました。

しかしふとある時気づいて、
「あれ。もしかしてこれ、あんまり意味ないな」と。


実は、有機とか無農薬とかは、多くの消費者にとっては購買意思を左右するほど重要ではない、
「スムージー」「ジュース」のスペックにこだわるのはごく一部のコアな層だけだろうということに気づいたのです。


材料のスペックにこだわるほど、結果的に販売価格に跳ね返ってしまって、消費者の手の届かないものになってしまう。

業界の同期たちはメディア露出競争を追っていたので、少しでもウケのいい訴求ネタを探して商品スペックを上げることに奔走していました。

しかし、「スムージー」「ジュース」というニッチな業界はまだまだそれ以前の問題で、メディアが映す虚像に浮かれている場合じゃなくて、まずは足下で1人でも多くの人に手に取ってもらうことを考えなくちゃいけない。


そこからF&Pは「入手可能性や経済性とのバランス」や「FRESHLY-FROZEN」を方針として、冷凍技術の進歩を追いながら冷凍の優位性を磨く方向性に舵を切り、有機や無農薬へのこだわりを捨てていきます。


当時、同期の同業の皆さんは、力を込めて話していました。

「無添加にどれだけこだわれるかが勝負」
「完全無農薬こそ差別化の鍵」


僕が当時感じていた感情を表してみると、こんな感じになります。

「いや、僕らの業界、まだそんなところまで行ってないよ」
「1回だけでも試してもらうこと、体験してくれる人を1人でも増やすことがまず先決なんだよ」
「それを業界のみんなでやっていかなくちゃいけなくて、同業どうしで争ってる場合じゃないんだよ」

当時、露出を追いかけスペックを高めることに奔走していた同期たちも、残念ながら年月と共に1人また1人といなくなっていきました。


一方、近年盛り上がった「食品D2C」の業界に目をやると「無添加」を訴求・追求しているプレイヤーさんが多くいらっしゃいます。

しかし、実はこの訴求はあと1年足らずで無効化されます。

「無添加」はそもそも曖昧な表現で、事業者側の勝手な過大解釈で表示しているのが実態でした。
「無添加」という言葉だけだと、「余計なものは足さない」「悪いものを加えない」というイメージがあって、シンプルにそれだけで良いものだと誤認してしまいます。


いよいよ、消費者庁から「無添加の表示に関するガイドライン」が出て、僕たちは今その猶予期間にいます。

F&Pではこれに備えて、「無添加」表示をどんどん消しています。
(事実なんですが、引っかかるので)

その後、客数は下がるどころかきちんと増えています。


先日オープンした新しいパートナーショップさん (加盟店さん) が、スムージーメニュー表に記載された「合成添加物不使用」という表記について、テナント出店先の館から指摘を受けました。

まだ猶予があるのに、厳しい館だなあとは思ったんですが、
これはもういよいよ「無添加で訴求する時代は終わったよな」と実感するきっかけになりました。


そこに来て、先日悲しいニュースがありました。
「無添加をウリにしているマフィンで集団食中毒」が起きた事故です。
(2023年11月)

この事故の一連の様子を見て、同じ食品事業者としてさまざま複雑な感情を覚えて、いろんな意味で遺憾に感じました。

(遺憾その1)
食品知識を欠き、ずさんな衛生管理状態で製造している現場を見て、
「酷いな・・」と思ったこと

(遺憾その2)
「決して他人事ではないし、自分が気を抜けばいつだって同じことが起こりうる、明日は我が身だ」と思ったこと

(遺憾その3)
事故を起こしてしまった側の気持ちを想像できない人たちが、製造者を加害者扱いして誹謗中傷に走ってしまう社会

(遺憾その4)
事故の原因は「食品知識の欠如」「ずさんな衛生管理」なはずなのに、
「保存料無添加だから事故が起きた」と、「無添加」や「オーガニック」が悪者扱いされてしまっている実情


これはやはり、「無添加」に過剰な期待が寄せられているし、正しく理解がされていない。

もちろん僕は、オーガニックな世界観の素晴らしさを伝えていきたいと思ってはいますが、今ここにある「無添加神話」は正直崩れてほしい。

無添加と書いてあるだけで売れちゃうのは問題だし、
大意なき無添加は淘汰されるべきで、
大意ある無添加は評価されるべき。

人の命を守っている食品添加物について、
正しく理解がされてほしいんです。


ただいずれにせよ、無添加で訴求する時代は終わった。

国の方針が決まっている以上はもう、四の五の言う時間は無駄で、
僕たちがやるべきは、こうした変化をいち早く察知して、変化を受け入れて、変化に順応することです。

「え、無添加って、いいものじゃないの?」
「なんで規制されてるの?」

という疑問を抱かれた方は、拙著「フードリテラシー宣言!」の中でも詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください!

(この記事は、2023年5月にF&Pジャパン社内向けに発信された内容をもとに編集を加えて公開しています。)

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