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テーブルのようなアップルパイ
「例えて言うならこのテーブルのような…」と自分で話しながら可笑しくなりました。寒い時季に暖房の効いたカフェで、アイスクリーム添えの温かいアップルパイが提供できたら良いと思うのですが、どんなものならば錢屋カフヱーらしいのかを伝えたくて、会議の場で出た言葉です。試作で出されたのは薄くスライスされたリンゴが丁寧に重ねられた繊細で可憐なパイで味も良かったのですが、ダメ出しをしました。どう思ったか知りませんが、それでも若いスタッフは神妙に聞いてくれていました。「らしさ」は、こう言うと大袈裟に思われるかも知れませんが意思と意識の賜物です。スタッフには、それほど大切なものであると知って欲しかったのです...
初収穫…失敗して想像した古代の日本
去年の2月から始めた「耕さない、肥料や農薬を用いない自然の営みに添った農業」ですが、11月に初めての収穫となりました。とは言っても、うるち米はほぼ全滅し古代米の赤米だけが育ってくれました。うるち米はトヨサトという品種で、この地で自家採取されたものでしたから環境には合っていたはずですが、夏の暑さに加え、強風も吹きましたし、そもそも私が下手で水を十分に回せなかったこと、他にもモグラ、カメムシ、鹿、猪…様々な要因が考えられます。おそらく猪だと思うのですが、周りの稲をさんざん食べたすぐ横で、きっと寝ていたであろう腹立たしい窪みも2ヶ所ありました。初めてのことは失敗も楽しく、失敗からは学ぶことも多...
四季折々、観察中
出勤するときいつも目に留まる、高層マンションのベランダがある。緑がにょきにょきと顔を出している、3階のベランダ。春になると花が咲き、夏には青々と葉が茂る。秋にはその葉も色づき、冬には枯葉がさみしく揺れている。どんな人が暮らしていて、他にどんな植物が育てられているのかはわからない。けれど、あのベランダには、必ず季節がやってくる。植物たちは3階から、私たちに季節を知らせてくれているのだ。スマホを見ながら通り過ぎるのは、あまりにもったいない。それに気づいてからというもの、私は少し斜め上を向いて通勤している。ちょっと目線を高くすると、小さな発見があるものだな。5月、空気の澄んだ季節になると、「今...
本棚のコスモロジー
本が好きな人であれば、“本棚を見るとその人が分かる”という言葉がなんとなくでも分かると思う。実は、近鉄百貨店上本町店の11階にあるジュンク堂書店の一角に錢屋本舗本館の選書コーナーがある。二段のうち一段は錢屋本舗本館で開催したイベントや発信したい価値観の関連書籍を。もう一段には定期開催している本のイベントのレポートや、その中で紹介された本を展開することもある。この本棚をきっかけにイベントに来られた方もおり、その人の本がこの書棚に並ぶかもしれない。文字通り宇宙の一部となるのだ。無秩序に並んでいるようにも見えるが、この書棚を見れば錢屋本舗本館とはなにか?がきっと分かるはず。分かったならばすでに...
成長を祝い成果を分かち合う文化
文化祭の季節です。類型は海外にもありますが、運営の自主性や出し物の多様さにおいては日本独特の文化のようです。文化的なことも祭りも好きな私としては、そもそも「文化+祭」というネーミングが素敵で、誰がどんな目的で考案したのか調べてみたのですが、残念ながら言葉としての起源は不明でした。戦後教育の中で生まれ、学校行事として広まったようですから役人が考えて制度化したのかも知れません。時々、名もなき名作に出会いますが、文化祭もその一つだと思います。教育成果を披露する機会としてならば、原型は江戸時代の寺子屋や手習塾に「席書き」と呼ばれる習字の発表会があり、これには晴れ着を着て参加したようです。大正10...
同じ釜の飯を喰う
会社のことを英語でカンパニー(company)と言いますが、その語源はラテン語の「com-」(一緒に)「pains」(パン)から成り「食(パン)を共にする仲間」という意味を持つそうです。英語圏以外にもフランス語、スペイン語圏、イタリア語、ポルトガル語圏と言ったラテン語起源の各国では同様に広く使われているようです。日本では「同じ釜の飯を喰った仲間」と言ったりしますが、類似性が興味深いです。そう考えると「会社」という言い方は「社」に多少は共同体的意味合いを感じますが、味気ないですね。特にキリスト教圏ではパンはキリストの体を連想させますから信条や信仰まで共にするような感覚を彼らは感じているのか...
ナニナニの虫
錢屋本舗本館では色々なイベントを企画して実施していますが、好評でシリーズ化されるものも少なくありません。『錢屋本舗本館本の虫クラブ』という本好きが好きな本を持ち寄って互いに紹介し合うイベントに参加してみました。私も本の虫です。ところで、古代の人は体の中に虫がいて何らかの作用を及ぼすと考えていたようです。自制できないくらい夢中になるのは人よりも体内の虫が勝るからなのでしょうか。日本語だけでなく英語やドイツ語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、オランダ語などでも本好きを「本の虫」と言うそうです。多言語にまたがる共通点に興味をもって調べてみたらフランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル...
みんなの「ちょっとしたことを、ちゃんと考える」を繋ぐリレー
毎月企画・制作・発行している月刊ZENIYA&LIFEには、錢屋本舗本館が発信している価値観を、スタッフそれぞれの言葉で発信するコラムがあります。今回はその中から、2名のコラムをご紹介します。#子ども扱いをしない(企画部 尾松) 私は幼少期のころから、毎日絵を描いています。家でひとり描くのも好きですが、子どもたちと一緒に描くことも好きです。親戚やよく行くお店のオーナーのお子さんと出会えば「なんか描いて!」と、お互い持っている色鉛筆や自由帳を広げて、お絵描きタイムがはじまります。 机の上にあるコップ、道端に咲く植物、空想の水族館。よく観察して描いてみたり、想像して描いてみたり。歳の差がいく...
<ゼニヤのソト>帰り道のこけこっこ
会社からの帰り「こけこっこ」という焼き鳥屋さんの前を通る。いつも入り口の扉が開いていて店内の様子が少しだけ見えるのだが、タバコと焼き鳥のモクモクの煙の中に見えるお客さんはいつも笑顔で楽しそう。老若男女、家族連れも見かける。居酒屋というよりも実家のような安心感さえ覚え、最近はこういうお店も減ってきたなと思う。先日、仕事帰りについにお店へ行ってみた。暖簾をくぐり、店内に入ると店主が威勢良く入口側の席に案内してくれた。梅酒と日本酒をミックスした“コケロック“という名物を注文。蒸し暑い夜にピッタリなさわやかな1杯。焼き鳥の“こころ“もふわふわで美味しい。常連客も多いため少し身構えていたが、初めて...
石ヶ辻と地蔵信仰
8月23日と24日はこの地域の地蔵盆です。錢屋本舗東館(浜学園)の角には「石ヶ辻東延命地蔵尊」が祀られていて、地蔵講と呼ばれる世話人の集まりによって地域の信仰が守られています。由来書によると昭和31年に石ヶ辻東地区の住民の延命長寿、家内安全、諸願成就の願いを込めて地域の有志が発起人となり四天王寺より勧請して鎮座願ったとあります。錢屋本舗創業者の正木繫吉も発起人の一人であったことが縁で、元は今の場所よりは西寄りの場所に鎮座され、錢屋本舗東館の建築時に現在の場所に遷座されました。地蔵菩薩はこの桃丘地域では町会ごとに祀られるほどなじみの深い存在ですが、どのような仏様かご存知でしょうか?厳密には...
いくたまさーんワッショイショイ
7月11日(宵宮)と12日(本宮)は生國魂祭りです。氏地にあたる10町会の氏子が集まってご奉仕するのが習わしです。中央区が東区と南区に分かれていた頃の区分に従い東地区が枕太鼓、南地区が獅子舞、そして天王寺地区が神輿方を担います。例年、錢屋本舗本館は神輿巡行の際には休憩所になります。神様が氏地を巡行されながら、お立ち寄りくださって休憩しておられると思うとありがたい気持ちになります。昭和の時代は錢屋本舗の社員も神輿の担ぎ手をしていました。今は地域の神輿方に加えて清風高校や上宮高校の柔道部やアメフト部員らが手伝ってくれています。祭りの起源について明確な史料はないようですが江戸時代には行われてい...
<ゼニヤのソト>ナイター・イン・ザ・ダーク
自社ビルの屋上からは石ヶ辻町の風景が見える。ある夜、その中に一際目を引くソリッドな建物を見つけた。その建物の屋上は、白い光の中に鮮やかなグリーン。光回線のモデムみたいにチカチカと動くシルエット。あれはなんだろう?入社してすぐの、この辺の地域にあまり詳しくない頃だったので分からなかったのだが、その建物は清風高校で、気になる屋上の設備はテニスコートだった。屋上ではきっと涼しい風が吹いていて、そこでするテニスはさぞ気持ちいいに違いない。都市計画のキーワードに「夜景は都市の骨格」という表現がある。それでいうと、このテニスコートは石ヶ辻町の骨格に華を添えているなと感じる。夜に屋上の7階でイベントが...
見たこともないものに気がつけるか?
新入社員が入社し1か月が経ちます。まだ殻を被っているように見えますが、芽吹きを楽しみに見守るつもりです。芽吹きに例えるのには理由があって、今年になって農業を始めたことはお伝えしたと思いますが、4月に田の開墾をし、苗床をつくって種おろしをしていました。私もこの農村では新人です。新人らしく張り切って、その翌週にまた訪れたのですが苗代の稲の発育を確かめることもせずに周辺の草刈りをしていたら、農業指導してくださる方に、その方の言葉をそのまま引用すると「ずっと見ていて、初めての割にはよくできているし、きっとあなたは仕事ができる人なんだろうけど、ここではその前に稲を心配する愛情をもって下さい」と言わ...
<イベント>日本の染色文化に触れる
水色、浅葱(あさぎ)色、空色、露草色、縹(はなだ)色、紺色…。様々な色と名称、意味があり、日本の文化を感じる藍。徳島県はこの藍染めの元となる藍染料「すくも(植物染料の一つ)」づくりの本場として、現在もその伝統が引き継がれており、徳島でつくられた「すくも」を阿波藍と呼びます。日本一の藍の産地とも呼ばれる徳島県で、大学在学中に藍染・草木染を学ぶためにテキスタイルを専攻し、現在は徳島を拠点とした染色作家として活動されているmacoroonの三木 真由美さん。天然灰汁醗酵建て(てんねんあくはっこうだて)と呼ばれる、江戸時代から変わらない技法で藍液を仕込み、丁寧に染めた作品を生み出されています。藍...