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インドネシア人デザイナーが語る、自由と鍛錬とクリエイティブの関係。

ノーブルな雰囲気と人懐っこさを合わせ持ち、入社数ヶ月にも関わらずすっかりKonelに溶け込んでいるデザイナー、アディト。インドネシア出身の彼は、デザインという領域に身を置きながらも、つついてみると出るわ出るわの幅広い関心事。「協調してるように見えて本当はエゴが強いんです」と語る、アディトの頭の中をのぞきました。

中学生から留学、3カ国で磨いた感性

―この春Konelに入社したばかりのアディトだけど、実は入社前のことってあんまり聞いたことがないよね。どんな生い立ちだったの?

インドネシアで生まれて中学2年まで住んでました。中学3年になるタイミングで単身シンガポールに留学して、それから日本に来るまではずっとシンガポールで学んでいたので、僕のルーツはわりとそこにある気がしてます。

―中3で単身留学って、すごいね・・・。

親がけっこう教育熱心だったので、東南アジアの中では先端都市であるシンガポールに行くように勧められたんです。インドネシアからも近いし、優秀な学生が各国から集まってくるから学ぶ環境も良くて、やりたいことに向かって攻めている人が多い印象でしたね。良い友人もできて、中学高校はたくさん刺激を受けました。
当時は数学や物理学が得意だったので卒業後は建築の学校に行く予定だったけど、何かが違う気がして、もともと好きだった絵を描いたりグラフィックを学べる大学に進学したいなと思うようになりました。

盟友に恵まれたシンガポール時代の一枚。飛び級して1年早く高校を卒業した

―そこから日本の大学に進学したんだね。でもなぜまた日本に?

僕、日本は昔から好きだったんですよ。子供の頃からドラえもんやドラゴンボールが好きで漫画を読んでいて、その中で描写される日本の生活や文化には親しみを感じてました。それで高校3年の時にバックパックで東京から別府まで2週間の旅をして、やっぱり良いなぁと思って。細田守や新海誠の映画で見ていた世界が実際に目の前に現れると感動しましたね。渋谷のスクランブル交差点の描写とか、「わー本物だ!」と(笑)。

アディト自宅の本棚。最近オフィスに「宇宙兄弟」を全巻持ってきてくれた

―来日してからは東京ではなく関西にいたんだよね?

はい。日本は好きだったけど日本語ができるわけではなかったので、語学を学びながらデザインを勉強できる学校を探していて、その条件に合致するのが京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)だったんです。僕の家には、やりたいことがある時は父にプレゼンして説得しなきゃいけないという習慣があったので、その関門をクリアするためにも目的をはっきりさせて挑まないといけなかったんですよね。自分がどうしたいのかをよく考えて、無事父にGOサインがもらえたおかげで今に至ります。

本名はAndraditya Dhanu Respati。(何度も読み方を教えてもらったけど結局発音できなくて、ごめん...)

―大学卒業後はNOSIGNERでいろいろと面白そうな仕事をしてましたね。

大学で原田祐馬さんや服部滋樹さんら著名なクリエイターが担当しているプロジェクトに参加していたのですが、その繋がりをきっかけに原田さんから紹介してもらったのがNOSIGNER代表の太刀川英輔さんでした。
すごくラフな飲み会の場で紹介いただいて、右手にビールジョッキ持って左手で僕のポートフォリオを渡した、みたいな感じでした(笑)。で、次の日にお礼のメールをしたところ「インターンしてみない?」と言われ、後日夜行バスで日帰りのインターンに行きました。
そこから「東京防災」の仕事を担当するようになって、NOSIGNERに入社することになったんです。

―フィーリング重視な感じがなんだか良いね(笑)。NOSIGNERに所属していた頃に学んだのはどんなこと?

NOSIGNERは太刀川さん・先輩デザイナー・僕の3人とか、少数精鋭なチームでプロジェクトを担当することが多くて、そのおかげでプロジェクトの川上から川下まで全部を見ながらデザインをするという力はついたんじゃないかなと思います。
当時関わった政府のプロジェクト「東京防災」や、そこから派生した備蓄食の「東京備食」の製作は学びが多くて印象に残っています。あと、文具ブランドのプロダクトデザインもやったので、“売れるデザインを作る”というシンプルかつ責任のある仕事への関心も高まっていきました。この頃からプライベートでも自分で立体物を考えてちょこちょこプロトタイピングするようになりました。

「東京備食」のパッケージ(NOSIGNERウェブサイトより)

Konelに入ったのは、自主プロジェクトを思い切りできそうだったから

―Konelとの出会いはどんなきっかけだったの?

NOSIGNERには4年半在籍してすごく面白かったんですが、まだ1社目だし経験の幅を広げてみようと退職しました。その後しばらくはスタートアップに所属しつつ、フリーとしてもアプリ開発やブランディングの依頼があったので、二足の草鞋で活動していました。今思うとここでUIの経験を積んでいたことが、Konelに入ることにも繋がっていたんだなと思います。というのも、「東京防災」の時にご一緒した電通の方の紹介で、Konelが手がける教育系アプリ「Kocri」の開発にフリーで参加したのが、Konelとの最初の仕事だったので。なんか楽しそうな会社だなと思って距離が近づいていった感じです。

電子黒板と組み合わせて使う教育向けアプリ「Kocri


バーチャファイターesportsプロジェクトのロゴデザイン企画にも携わった

―アディトって、仕事の幅も広いけど、プライベートでもたくさん“自分の世界”を持っているイメージがあるよね。

もともと一つの活動に集中するよりも幅広くいろんなことをやりたいと思っていたので、NOSIGNERからKonelに移るまでの時期はイラストを描いたりファッション系のメディアの撮影を手伝ったりと、公私でいろいろ試して楽しんでいました。
実はKonelにコミットしようと決めたのも、まさに「個人でやりたいプロジェクトも自由にできそう」と感じたから、というのが大きいんです。皆、遊ぶようにに好きな表現活動して、それがうっかりビジネスになったりしてるじゃないですか?(笑)

―ああ、そういう面はあるかもね。売れるのそれ?っていうものでもとにかく面白いからやりたいからやる、という無鉄砲さはある(笑)

そう。「仕事」をやりながらも自分の興味から生まれたプロジェクトも並行してやっている人が多いのは魅力的でしたね。だからフリーや兼業ではなく、深くコミットしたいなと思って社員という働き方を選択しました。今はUIデザインを手がけることが多いですが、個人的に興味のあるプロトタイピングやプロダクト制作など、形あるものを作る実験を増やしていきたいなと思ってます。

Konelメンバーの似顔絵。アディトのチームのSlackアイコンは皆これ

自作の財布・コインケース・エコバッグ。普通に欲しい

―実際のところはどう? 4月の入社以来、みんなのイラスト描いてくれたり、自作の雑貨もいろいろ見せてもらったけど、思うように自主プロジェクトはできそう?

それが・・・想像してた以上の忙しさで、正直思うようにはできていないですね。平日のうち一日は17時に切り上げて好きなことやろうと思ってたけど、なかなか、ね(笑)。

―今アディト売れっ子だからなぁ。ぜひ今回のインタビューを機に、そういう時間を作れるような舵取りができますように。

仕事のためにはよく遊ぶのも大事だと思っていて、特にクリエイターはいろいろなものを見る・試す時間を作る必要がありますよね。デパ地下をひたすら回ったりとか、趣味で出会う人たちと飲み会をするとか、そういう日常の中にもクリエイティブのヒントがたくさんあるし。だから仕事としてアウトプットする時間は80%くらいにおさえて、残り20%はプライベートを含めたインプットの時間にしたい。そして二者をハッキリ分けずに行き来しながら、すべてを楽しい!と思って生きていくのが理想です。一言で言うと、僕は「とにかく自由に楽しく生きたい」んだと思います。

スポーツ好きでボルダリングにハマっている。休日はこんなジムで登ったり

こんな岩を登ったりしている

自由に生きるために、自分を鍛え続ける

―今後チャレンジしたいことは?

Konelはエンジニア・プロデューサー・アーティスト・デザイナーetc…幅広い職種の人がいるから、なんでも作れるポテンシャルがありますよね。実際アート作品やインスタレーションなどいろいろ作ってるけど、実は量産して一般向けに「商品」として流通しているものは少ない。そろそろ“Konel印”の商品を世に出しても良い気がしてるので、そこは率先してやっていこうと思っています。

―たしかにお店で売ってるものを「これKonelが作ってるんだよ」って友達に自慢できるようになったら誇らしいなぁ。

今、若手メンバーと相談を始めていて。ストラップとか下駄(!?)とか、自分たちが欲しくて日常的に使えるものを作ろうとしてます。
あとは僕、空間作りとかインテリアも好きなので、車を改造するような感覚で、空間を思い切りカスタマイズしまくる場所を作りたいなとも思っています。皆でワクワクしながら構想を練ってます。いつか「何なんだここは!」という空間を作って、コワーキングスペース的に開放することで、外からも作ることが好きな人が集まってくれたら楽しそう。

―良いね。入社してまだ数ヶ月だけど、そうやって楽しそうなことでKonelのみんなを巻き込んでいる姿は素敵です。

チームで何かを作ることが好きなんですよね。あ、でも僕けっこうエゴは強いです。仕事でクライアントのために作ることも、チームで好きなものを作ることも、全部自分のためにやってます。自由に生きるためには自分自身が鍛えられてないといけないじゃないですか?ボルダリングと一緒で、練習して鍛えて昨日までできなかったことができるようになるのが、僕にとってのクリエイティブの一番の醍醐味。一つ一つクリアして世界を広げていくべく、日々活動してます。

―なんか最後にすごく良い言葉をもらった気がする・・・。エゴイスト万歳だね。今後のアディトの活動を楽しみにしています!

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聞き手:丑田美奈子(Konel)/撮影:松﨑啓(Konel)

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