今回紹介するのは、金さん。2021年12月からソラテクノロジーでインターンを始めた古参メンバーの1人で、ソラテクが事業展開する上で欠かせない水たまりのデータ収集や分析といったソフトウェア領域を担ってくれています。大学時代はロケットエンジンの研究、大学院では、極超音速機の概念設計の研究をしながら、最近はプロペラと翼の統合設計を研究しています。大学院を卒業後、新卒社員として入社してくれることになっています。
ソラテクノロジーの魅力を聞きました。
名前
金 周会 Juhoe Kim
経歴(取材当時)
兵庫県出身、名古屋大学工学部 機械・航空工学科 → 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程。専攻は無人航空機の最適設計及び製造自動化。1995年6月生まれの28歳(取材時)
Q、ソラテクノロジーでの担当を教えてください。
金さん)(以下、金)
ソラテクノロジーが西アフリカの国々で展開しているドローンとAI(人工知能)を組み合わせたボウフラ駆除手法、ソラマラリアコントロール(SMC)って私たちは呼んでいますが、そのSMCのソフトウェア全般を管理しています。
SMCは
- 1 ドローンで水たまりを検知すること
- 2 検知した水たまりにボウフラがいるかどうかを判別する
という2段階のステップを踏みます。
私が担当しているソフトウェア分野は、飛ばしたドローンが水たまりを自動で探して検知する画像認証技術と、検知した水たまりにボウフラがいるかどうかを人工知能を使って判定するという領域があります。
技術チームでのミーティングのようす
Q、それぞれの領域で難しい部分を教えてもらえますか。
金)
画像認証ではドローンが飛行したエリアでしっかりと水たまりを検知する部分です。水たまりは水たまりが存在している場所で8パターンに分けられます。
例えば、沼地や田んぼはもちろんですが、貯水池や水路なども水たまりですよね。それを撮り逃すことなく検知できるために捕捉する精度を向上させないといけません。
Q、ところで、水たまりにボウフラがいるかどうかは実際にその水たまりの水をよく観察しないといけないと思いますが、社員が現地にずっと滞在しているのでしょうか?
金)
出張という形で年に数回渡航はしていますが、駐在はしていません。シエラレオネの場合は、現地にある大学と協定を結んで現地の大学生に水たまりのデータを収集してもらっています。
温度計で水温を測定し、メジャーで水たまりの大きさを計測してもらうなどして、どんな条件の水たまりならボウフラがいるのか、またはいないのかの判定に活用します。
日本とは異なる環境。物品調達とデータの正確性の確保をしっかりと
Q、日本からシエラレオネという離れた場所のマネジメントは聞くだけで大変そうです。データ収集作業で苦労する点を教えてください。
金)
計測に必要な物品を揃えることとしっかりデータを取ってもらうことです。
シエラレオネは最貧国の一つと言われていることもあって、温度計だけでなく水をすくうための柄杓といった道具を入手すること自体が日本と違って難しいです。まずは品質のいい物品を揃えること。デジタルの水温計だと電池が切れたときの替えを用意するのが難しいので、できるだけアナログのものなどそういったところでも日本とは違ってきます。
あとは、データを正確に測ってもらうことですね。我々からすると思いつかないような方法で計測して「できた」と言ってきてしまうことケースがあります。例えば、水温計を使わないで、指を水たまりに浸して「これぐらいの温度だろう」というような。測ったとは言えないんですが、正確な計測にはなっていません。
データの正確性を担保することも難しいですね。もちろん今は体制がしっかりと整ったので、そうしたことはないですよ。
雇用を作って現地の方々の生活水準も底上げできれば
Q、SMCの今後の展開を教えてください。
金)
理想系として二つのパターンがあると思っています。
一つ目は、水たまりの検知から薬剤散布までを完全に自動で行うことです。毎日決まった時間にドローンが飛び立ち、検知とボウフラ判定を行い、ボウフラがいそうな水たまりに殺虫剤を散布することまで行います。
もう一つは人間が介在するパターンです。
日本と違ってアフリカでは労働人口は多いですが、仕事が少ない状況なんですよ。ですので、雇用を生み出すという視点からも殺虫剤の散布は現地の人にやってもらうという形です。
個人的には、雇用創出という側面からも、後者のパターンの方がいいのかな、と思っています。
社会貢献とビジネスが両立する。これ以上、理想的なことはない
Q、新卒でスタートアップに入るのは勇気がいると思いますが、ためらいはありませんでしたか?ソラテクノロジーの魅力をどこに感じますか?
金)
ドローンに関しては、社会的な需要とビジネス面が両立するケースが少ないと思っています。ただ、ソラテクノロジーが取り組んでいるマラリア対策は、社会的な意義も需要も大きいですし、ビジネス面での期待もできるのが魅力です。アフリカは空が広いのでドローンを飛ばすには最適です。
ドローンでアフリカを発展させてゆくゆくは「アフリカ航空工学の父」と呼ばれたいです。
日本で働いていて仕事でアフリカに行くことは限られていると思いますが、ソラテクノロジーはアフリカが主戦場なので頻繁に行きます。僕が最初にいったのはシエラレオネでした。確かに衣食住の環境は良好とは言えませんが、慣れてくるとアフリカに行くことが癖になります。日本とはまったく違うアフリカを知るとアフリカの魅力に気付かされますね。
Q、記事を読んでくれている人へメッセージがあればお願いします
金)
ドローンとAIを使ってマラリアを撲滅するという事業自体に夢やロマンがありますよね。これに取り組んでいる他の企業はいないと言ってもいいぐらいなので、拡大するしかないと思います。
マラリアは年間約2億4700万人が感染し、推計61万人が死亡しています。その人たちのためにやっていると思うと社会的な意義が大きい仕事です。
社会貢献をした上で、ビジネスとしても稼げる。これ以上、理想的なことはないはずです。
■あとがき
ソフトウェア分野でソラテクノロジーを支えてくれている金さん。参加した国際学会で「best students paper」に選出されたことあるほどの知識とスキルを備えています。そんな金さんは、社内でムードメーカーで愛されキャラです。
写真から分かる通り、金さんの周りには笑顔が溢れています。研修旅行のカラオケでは歌でみんなを笑わせてくれました。
ソラテクノロジーに欠かせないキーパーソンの金さんのこれからの活躍を、いやがうえにも期待してしまいます。