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WELL ROOM(ウェルルーム)株式会社が企画・運営・開発を行う「WELL ROOM」は、日本企業で働く外国人従業員のヘルスケアサポートを目的に、2021年11月にリリースされたBtoBtoE(employee:従業員)向けのWebサービスです。三菱地所が行う新事業提案制度へのプロジェクト採択をきっかけに、本サービスは誕生しました。日本に暮らす外国人が、日本人と同じように当たり前の暮らしが行えるよう、多言語や異文化に対応したサービスの提供を通し、生活上の課題や不安の解消に向けた支援を行います。
WELL ROOM概要
- サービス名WELL ROOM
URL:https://wellroom.jp/ - お客様名:WELL ROOM株式会社 様
- 提供内容:戦略コンサルティング、UI・UXコンサルティング、要件定義、システム開発、保守・運用
- アルサーガパートナーズの基本体制:戦略コンサルタント1名、開発ディレクター1名、デザイナー3名、開発エンジニア5名、QA(品質保証)エンジニア2名
アルサーガパートナーズは、WELL ROOMの開発・運用パートナーとして、2021年5月より開発戦略~実装、保守運用までをワンストップで提供しています。今回はWELL ROOMでの開発を振り返り、同社代表取締役 下田さんと担当ディレクター村川との対談形式で「お客様の声」としてご紹介します。
プロフィール
WELL ROOM株式会社 代表取締役 /三菱地所株式会社 新事業創造部 下田さん
2018年に三菱地所株式会社へ新卒入社後、投資マネジメント事業部にて当社グループの不動産ファンド運用会社のサポート業務や計数管理に取り組む。その後、社内ベンチャー制度である「新事業提案制度」にWELL ROOMの原型となるサービスを提案し、採択される。2020年4月に新事業創造部へ異動後、自ら提案した新事業WELL ROOMの担当者として事業化を推進し、2021年に三菱地所100%子会社としてWELL ROOM株式会社を設立の上、代表取締役に就任する。その後、同年11月に在留外国人対応ヘルスケアサービス「WELL ROOM」を正式リリースし、現在に至る。
アルサーガパートナーズ株式会社 ディレクター/ QAエンジニア 村川
前職のIT企業でQAテスター、QAエンジニアとしての経験を積み、不具合を検出する役割にとどまらない品質保証業務を経験。2020年12月にアルサーガパートナーズへQAエンジニアとして入社。エンドユーザーのユーザー体験向上のため、要件定義から本質的なQA業務に取り組む姿勢が評価されディレクターに抜擢。現在「WELL ROOM」のほか、教育系、福祉系サービスのディレクターとして活躍。
Summary
課題
・コロナ禍において、「日本で働く外国人」という顧客ニーズを満たしたシステム開発と仮説検証にどう取り組むべきか悩んでいる
・開発会社との連携が初めてのため、スムーズに開発を進めるための相談や適切な依頼方法に不安がある
課題に対するアルサーガの対応
・顧客像と属性の近い社内の外国人メンバーにヒアリングし、海外のトレンドや仕様を踏まえ、提案を重ねた
・ヒアリングを元に開発の優先順位を提案し、将来的な実装を見越した開発を実施
・ディレクターを中心に、どのメンバーともコミュニケーションが取れる体制を構築
リリース後の成果
・リリース後、1カ月も経たずに複数社が導入し、医療機関でも使用されている
・従業員のメンタルヘルス支援、産業医との連携など他サービスの運用に向け、開発を継続
日本在住の外国人が抱える医療問題を解決したい
――多言語や異文化に対応した健診実施医療機関の紹介をはじめ、メンタルヘルスや産業医への相談が行える『WELL ROOM』ですが、サービスに込めた想いを教えてください。
WELL ROOM 下田さん
このサービスを立ち上げたのは、日本で暮らす外国人が、日本人と同じように、気軽に医療サービスを受けられるようになってほしいと思ったからです。そのきっかけをくれたのは、結婚して3年になるスペイン人の妻でした。妻と暮らす中で、外国人ならではの大変さやさまざまなペインポイントがあることを知りました。その一つが医療です。そもそも、外国人は受診できる病院を探すところから大変です。まず、英語が通じる先生がいるのかなどの基本的な情報収集に苦労します。そして、英語を話せる先生に診察してもらえたとしても、日本と外国では検査内容や診察の方法が異なり、薬の効き方も日本人と外国人とでは違います。こうした相手の文化背景を考慮した上で診察してくれる先生は、かなり少ないんです。
――今回、WELL ROOMで多言語に対応する医療環境の提供に取り組むことで、どのような影響を社会にもたらすことを期待していますか?
WELL ROOM 下田さん
日本で暮らす外国人は、令和2年末時点で約288万人と、近年、増加傾向にあります。日本全体の人口から比べるとまだまだ多くはありませんが、これから日本で働く外国人労働者が増えていく中で、WELL ROOMが気軽に医療へつながるきっかけになると期待しています。例えば、当社はメンタルヘルス事業も行っていますが、外国人に対応している精神科の医師はほとんどいません。外国人の方が、病状によらずどの科でも受診できるよう、いつでも頼れる存在であることが、社会に貢献できるポイントだと思います。
――WELL ROOM株式会社は三菱地所の新規事業制度から誕生したスタートアップですが、専門とされていた領域とは全く異なる分野への挑戦に不安はありませんでしたか?
WELL ROOM 下田さん
もちろん、これまで培ってきた経験や業界とは違うため、不安だらけで進んできたというのが正直なところです。会社としても不動産業とは遠い飛び地事業ではありましたが、三菱地所が行う必要性やニーズを説明すると重要性を理解してもらうことができ、今では会社を挙げて応援してもらっています。
「当事者目線でサービス開発に取り組んでくれる」決め手は外国人メンバーの存在だった
――WELL ROOMのシステム開発にあたり、着手前に課題に感じていたことは何でしたか?
WELL ROOM 下田さん
2つあります。一つは、コロナ禍中での開発ということで、医療機関や外国人の方のニーズを満たしたシステムかどうか、しっかり仮説検証できるかに難しさを覚えました。もう一つは、僕が開発会社とプロダクトを開発するのが初めてだったので、適切な依頼ができるかどうかが心配でした。
アルサーガパートナーズ 村川
こうした課題感や不安点を伺い、私たちとしては、社内の外国人メンバーを積極的に巻き込みながら開発を進めるようにしました。また、開発会社とのプロダクト開発が初めてとのことでしたので、ヒアリングや連絡を密にとることを心がけました。またやりとりを重ねる中で、最初にご相談をいただいた内容だと、どうしても開発規模やリリース時期的に難しいところがあったため、はじめから大きく全体像をつくるのではなく、今後のサービス拡大を意識した開発をご提案しました。具体的には、事業追加やToC向けの導線設計など、将来的なシステム拡張の余地を残しつつ、ヘルスケア予約システムの基盤づくりからスモールに開発する方法です。
――今回、なぜ、アルサーガを開発パートナーに選ばれたのでしょうか。決め手を教えてください。
WELL ROOM 下田さん
決め手は、コンペ提案時に拝見したUIサンプルの内容が具体的で、完成度も高かったことです。本件に外国人社員が参加していることを伺い、日本在住の外国人ならではの目線でサービスを考えてくれるという期待もありました。プレゼンテーションから人材選定まで、総合的に良かったの一言に尽きます。
アルサーガパートナーズ 村川
そのように仰っていただき光栄です。実はWELL ROOMの初期段階から関わっていたコンサルティングメンバーのひとりが外国人で、そのメンバーがサービスを触る中で感じたことや、外国人視点でのデザインやアドバイスを反映しながら、提案の準備を進めていました。また当社には、エンジニアやデザイナーとして多数の外国人社員が在籍しています。そのメンバーにも、WELL ROOMに触ってもらいながら、ヒアリングに協力してもらいました。
着実に情報を集めた背景には、多言語対応のサービス開発経験はアルサーガとしてはまだ実績が少なく、特に今回のような医療関係、多言語、BtoBの団体予約運用を兼ね備えたサービスは当社としても初めての取り組みだったことが関係します。外国人も日本人も利用するため、どのユーザーが利用しても操作に迷ったり、システム的に齟齬が発生したりしないよう、常に外国人メンバーへのヒアリングは心がけました。
外国人目線のUI提案がユーザーファーストなサービスへの第一歩
――開発中の思い出やアルサーガ開発チームへの印象などを教えてください。
WELL ROOM 下田さん
特にUI・UXは、村川さんと相談しながら開発を進めたため、思い入れが強いです。アルサーガさんの外国人メンバーから、プロフェッショナルな視点のコメントと併せ、海外でのUI・UX事情を加味したアドバイスも受け、開発を進めました。当初、僕が考えていたモックアップは、シンプルでありながらも一つのページにさまざまな情報が詰め込まれている、いわゆる日本式のWebシステムでした。アドバイスを参考に、情報量を減らしたり、予約までの動線を見直したりと、よりユーザーを考えたWebサービスに昇華でき、結果として良かったと思います。
アルサーガパートナーズ 村川
将来的に日本のITサービスが海外のように進展することを見越して、WELL ROOMでは、海外標準の感覚に寄せたUIを目指しました。結果として、UXの向上にもつながるからです。特に日本のシステムは1つの画面にいろいろな情報を入れる傾向にあるため、外国人メンバーからは「もう少しアイコン推しでいこう」「海外標準だとここにボタンがあるのが浸透しているから、設置してはどうか?」「見た目をすっきりさせつつ、気持ちよくボタンが押せる場所へ移動しよう」などの提案があがりました。そのため、一旦今の日本基準の環境に妥協点を置きながらも、将来的な改善の余地を残しつつ、設計を行いました。
▼洗練された健康診断の受診手順画面
▼マップを白黒にすることで病院の位置を分かりやすくしたデザイン例
WELL ROOM 下田さん
普段は主に1人で事業を進めており、かつ僕も日本人なので、「日本人だったら〇〇かもしれませんが、外国人目線だったら△△の方が分かりやすいですよ」などのアドバイスは、「こんな視点もあるのか」と気付かされることが多かったです。そのため、アルサーガの皆さんとはワンチームとして、事業を進めている気持ちで開発が進められました。
――アルサーガとして、開発時に意識した点を教えてください。
アルサーガパートナーズ 村川
医療機関における団体予約を自動で受診可能な枠へ振り分けられるようにしたのは革新的だと思います。これまでは医療機関と企業側の労務担当者が電話等でやりとりをしながら、人力で日時を振り分けるのが一般的だったからです。今回、1日の定員数と受診時間が重ならないよう申し込めるように、システム設計を行いました。また、個人情報をはじめ、患者様のセンシティブな情報も多く扱うため、データの暗号化やハッシュ化など、セキュリティ面にも十分考慮しながら進めました。
――先ほど、下田さんのお話でワンチームで開発を進められたというお話がありましたが、改めて全体を振り返る中で、お二人の思い出に残っているエピソードを教えてください。
WELL ROOM 下田さん
僕が特に印象に残っているのは、リリースもあと1カ月と迫ったタイミングに、村川さんが諸事情で2週間休暇をとることになり戦線を離脱したときです。正直、ここまで二人三脚で進めてきたので、不安はありました。ただ、双方が常にワンチームとして情報共有から仕事まで意識して行動していたため、村川さんが抜けても、他のメンバーとのやり取りは変わらず円滑に進みました。休暇後の村川さんも、スムーズにチームへ復帰されていたので、スケジュールに大きな支障はありませんでした。
アルサーガパートナーズ 村川
その節はご迷惑をおかけしました。ディレクターとしてチーム内の情報共有はもちろん、各担当者が下田さんにコンタクトを取れる体制をSlackで構築しており、お互いがコミュニケーションを取れる状態を常につくっていました。アルサーガとしてのスタンスもありますが、下田さんが常に皆で仕事を進めるという姿勢で私たちに向き合ってくださったことも大きかったと思います。
WELL ROOM 下田さん
自分が大事にしているスタンスでもありますが、外部の人であっても、お互いに変な遠慮はせず、しっかりと伝えることは伝え、切磋琢磨し合ったほうが、いい雰囲気で仕事ができると僕は考えていて。その方が、結果としていい成果につながりますから。
「実現に向けて開発は止めない」目指すは国籍に関係なく平等に医療が受けられる世界
――2021年11月にリリースし、早いもので約1カ月(取材当時)が経過しましたが、ユーザーの皆さんからの評判はいかがでしょう。
WELL ROOM 下田さん
ローンチ後1カ月で複数の企業及び医療機関に導入いただき、順調に連携、稼働しています。医療機関からは、これまでになかった新しいサービスということで、好意的にご利用いただいています。企業、医療機関ともに「シンプルで使いやすい」という声をいただき、嬉しい限りです。2022年2月末にはメンタルヘルスケアのサポートや産業医への相談が行えるサービス実装を予定しています。既存サービスの改善を行いながら、皆さんの声を参考に、サービスをどう進化させていくか、日々検討している最中です。
――最後に、今後WELL ROOMを通し、実現したい世界観についてお伺いします。
WELL ROOM 下田さん
私が本サービスを通し目指す世界観は、日本人でも外国人でも「病気になれば病院に行ける権利」を言語や文化の壁を感じずに、平等に享受できる環境です。理想は、WELL ROOMのようなサービスがなくても、当たり前に医療が受けられる環境になることでしょう。その世界に向けた橋渡しとして、本サービスがお役に立てられたらと思います。
アルサーガパートナーズ 村川
私たちとしても、医療・企業・外国人と複数の人々の意思や思いを1つのサービスで完結させるWELL ROOMの開発は、挑戦的であり、やりがいにもつながりました。正直申し上げると、国内の医療機関は、ITに対し保守的な運用がまだまだ多いと思っています。今の時代と合う、シンプルでモダンなシステムを浸透させるためにも、ITリテラシーや国籍等に関係なく扱えるよう、引き続き技術的な支援を行っていきます。
WELL ROOM 下田さん
改めて今回の開発を振り返ると、アルサーガのチーム全体で「なんとか実現しよう」とする姿勢は、大変心強かったです。こうした社会課題型ビジネスは日本ではまだまだ浸透していませんが、解決できれば皆がWin-Winになります。アルサーガの皆さんには今まで通りの和気あいあいとした雰囲気で、当事者目線の意見も交えながらご協力いただけると嬉しいです。今後も頼りにしています。
――本日はありがとうございました。
アルサーガパートナーズは、WELL ROOMのように多言語で文化的な背景を考慮したサービス開発においても、開発戦略~実装、保守運用までをワンストップで対応できる開発会社です。実際の対応事例も含めお伝えさせていただきますので、少しでもご興味を持たれましたらこちらhttps://www.arsaga.jp/contact/ からお問い合わせいただけますと幸いです。
(取材・執筆:スギモトアイ、写真:広報室 宮崎)