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インドの村から四ツ谷へ。生まれた場所にかかわらず、「努力が報われる」世界を目指して。

💡2024年3月にフォースバレーにジョインした萩原さん。プロサッカーへの挫折・トヨタ勤務・インド駐在…興味深いそのご経歴と、みなぎるパッションの根源についてお話を伺いました!

萩原 望(はぎはら のぞむ)

1993年生まれ、岡山県倉敷市出身。3歳よりサッカーを始め、Jリーグのユースチームや大学の体育会サッカー部で競技に打ち込む。大学卒業後、トヨタ自動車株式会社に入社し3年間勤務。その後、国際NGOの駐在員としてインド最貧州・ビハール州に赴任。赴任中、空き時間にサッカーボールを蹴っていたところ子ども達が集まるようになり、サッカーを教えるようになる。NGO駐在員の満期退任後は、外資系会計監査法人のインドオフィスに勤務しながら、ビハール州でのサッカー活動を継続するため、コミュニティ型のサッカーチーム・一般社団法人FC Nonoを創設。その後、FC Nonoをはじめとするインドでの国際貢献活動をよりサステナブルなものにするため、転職を決意。2024年3月フォースバレー・コンシェルジュに入社。

キャリア|国連職員を目指してトヨタを飛び出す

私は幼少期からサッカーの練習に明け暮れ、プロのサッカー選手を目指していました。しかしながらプロチームから声はかからず、夢を叶えることができませんでした。大学卒業後はトヨタ自動車に就職し、充実した社会人生活をスタートさせましたが、3年目を迎えるころ、今後のキャリアについて考えるようになりました。そして、幼い頃から興味をもっていた途上国の人々への支援、その中でも最も大きい範囲で関わることのできる’’国連”の職員になることを志しました。

とはいえ、国連の職員にいきなりエントリーできるわけではありません。応募条件として、少なくとも実務経験3年以上、または修士号の取得が必要でした。もちろん、英語力も身につけなければなりません。この条件をクリアするため、シアトルのNGOに行ったり、オーストラリアの遠洋漁業でお金を稼いだりと様々な道を模索しました。

余談ではありますが、この遠洋漁業は「ほんとうにキツい」仕事でした。その中に、日本の石川県で技能実習生をしていたインドネシア人の同僚がいました。日本の歌を歌ってくれたり、日本語で励ましてくれたり、数週間にわたる海上での生活において、心の支えになってくれた彼は忘れられない恩人です。日本で働いた外国人と密接に関わった経験は、今思うとフォースバレーに就職する道筋だったのかもしれません。

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そしてトヨタの退職から8ヶ月後、日本のNGO団体へ入局をすることができ、2021年からインド駐在することになりました。派遣されたのは、インドの中でも最貧といわれるビハール州です。ビハール州では有機農業プロジェクトに携わったのですが、貧しい村々には娯楽がなく、禁酒州法のためにお酒すら飲むことができません。他にすることもなかったので余暇にサッカーボールを蹴っていたところ、子ども達が集まってきて、サッカーを教えるようになりました。

新しい目標|インドで最も貧しい州の現実

子ども達と過ごしていると、彼らが置かれている環境は「努力が報われない」世界であるという現実を知りました。特に旧カースト制度の風習が残る地域において、最下層カーストに生まれた人々にはあらゆる限界があります。勉強を頑張っていても、学校の教材やコンテンツには限りがあり、それ以上のクオリティのものにアクセスする方法がありません。サッカーを頑張っても、プロを目指せるようなきっかけも環境もありません。

さらに、女性は幼い頃から家事や子育てを手伝い忙しく、日本でいう高校生くらいの年齢になると親が決めてきた相手と結婚します。いわゆる児童婚と呼ばれる問題が根強いのです。世界の児童婚の3分の1は南アジア(インド・ネパール等)の地域で起きていると言われています。そういった環境ですから、女性が家庭の外で活動する姿を見かけることはほとんど無く、サッカーの練習に来るのも男の子ばかりです。

私は幼少期からサッカーを練習して、その努力の結果、推薦をいただいて進学できたりと、「努力が報われる」という経験を多くしてきました。でももし、私がこの環境に生まれていたら同じような人生は歩めなかったはずです。そう考えた時に、この環境にいる人々のために何か出来ることがないかと考えるようになりました。

転機|フォースバレーが目指す社会との共感

2022年にNGO団体での活動が満期を迎えた後も、どうにかしてこのインドの子ども達のために活動したいと考えた私は、”FC Nono”という一般社団法人を立ち上げました。

▶︎FC Nonoについて

FC Nono | Football for Social Inclusion インド・ブッダガヤのサッカーチーム
FC Nonoはインド・ビハール州ブッダガヤの子ども達の貧困・栄養失調・性差別・薬物・児童労働などの問題をサッカーを通じて取り組むソーシャルサッカーチームです。FC Nono is a football team based in Bodhgaya, Bihar State, India. We tackle the many social issues such as poverty, malnutrition, gender issues, education through football act
https://www.fcnono.com/

その一方で、イギリス企業のインド支店に転職し、引き続きインドで生活をしていました。この会社では、日系企業がインドに進出する際の国際税務等をサポートする仕事に務めました。この職務も広義ではインドの経済発展に寄与するものですが、どうしても、手触り感のあるサポートはできません。どうすれば、自分のキャリアとやりたいことを両立させながら、長いスパンで活動していけるのか。そう考えていた時にフォースバレーと出会いました。

▶︎萩原さんが初めてフォースバレーを知ったきっかけはこちら

私は、代表の柴崎さんが語る「国を超えて、世界のすべての人が輝ける場所をつくりたい」というビジョンに共感しています。現在のフォースバレーは、世界の国々から日本へ人材を送り込むサポート事業が多いですが、日本に限らず、全ての人が国を超えて最も輝ける場所で働くことのできる未来を目指しています。その理想は、私が心を寄せている「努力が報われない」環境に生まれた人々が、自分の未来を選択できる社会の創造につながると感じました。

柴崎さんを始めフォースバレーの皆さんと面談を重ねる中では、私がインド現地に身を置いて活動したい想い等、大きいことも小さいことも含め、それらがどのように実現できるのかを真摯に話し合っていただきました。そして、私が人生をかけて取り組みたい、インドの子ども達の「努力が報われる」世界を作るために、フォースバレーは欠かせないパートナーだと感じることができたので、入社を決めました。

仕事はスタートしたばかりですが、今後は現地人材のサポートをしていく他、私の培ってきたインドとの関係性を生かして、ありとあらゆる事業活動に携わりたいと思っています。

発見|日本とは全然違う「インドの当たり前」

普段はなかなか経験のできない、インドという国での暮らしについても少し紹介したいと思います。インドでは、日本とは全く異なる光景を多く目にします。一つ取り上げるなら、「自分が人に迷惑をかけるのは当たり前・人から迷惑をかけられるのも当たり前」という文化です。日本では、小さい頃から周りの人に迷惑をかけないよう教えられることが多いと思います。でもインドでは、日常の中に助け合いが溶け込んでいます。

例えば、私が道を歩いていると、どこからともなく村の人がトラクターを運転してきて、目的地まで連れて行ってくれることがあります。そして、私を降ろすとなにも言わずに去っていくのです。逆に、私がバイクに乗っている時、大荷物のおばあさんの横に留まり、手で「乗って」と合図をすると、おばあさんは後ろに乗り、そして目的地あたりで止まると無言で降りていくのです。「ありがとう」と言わない人も沢山います。それだけ日常の中で、互いに見返りを求めず、知らない人同士が助け合って生活している社会がそこにあります。私はそんなインドの世界観がとても好きで、肌に合っていて、心地よいと感じました。

決意|インドという国で私に何ができるか

そんなインドでの暮らしですが、先ほども述べたとおり、女性の貧困や差別と言うものは根深く残っていました。道端ではじまったサッカー練習には、もともと男の子しかいませんでした。でも、その男の子達の家に行ってみると、実はお姉さんや妹がいて、兄弟の「サッカーをする姿」「新しいことにチャレンジする様子」を羨望の眼差しで見ているのです。その視線に気がついた私は、両親と話し合いを重ね、姉妹も練習に参加できるよう取り付け、その後も継続してコミュニケーションを取りました。

一緒に練習を続けるうちに、貧困エリアの女子児童にとって、何かに新しくチャレンジすること、そして、サッカーを練習して「できるようになった!」という成長体験を得ることは、これまでにないSelf-confidence(自分と自分の能力への信頼)を与えるのだと気がつきました。さらに、次第に試合の良い結果も付いてくるようになると、自治体や政府からの表彰をいただき、子ども達の家族もサッカーの活動を認めてくれるようになりました。

もし、私たちがいきなりインドに乗り込んで、社会活動的に「男女平等!」と叫んでも、その意図は伝わらないでしょう。けれどもサッカーは、女子児童に成長体験の機会を提供するひとつのツールとなってくれました。この時はサッカーがきっかけとなりましたが、他にもあらゆる方法で、子ども達の未来を拓きたいと想うようになりました。

今後はサッカーに限らず、フォースバレーのFourth Vally Academyをはじめ、機会が限られた社会で生きる人々に、成長体験と進路を提供できるよう、活動を続けていきたいと考えています。

希望|わたしのハピネス

私のストーリーを振り返ってみると、トヨタを退職するときに決めた、「国連職員になる」というゴールは変わりました。でも、インドの子ども達をはじめとする貧困の中にいる人々の選択肢を増やし、1つでも多くのハピネスをつくりたい。というマインドは変わっていません。

誰かの幸せをサポートすることは、自分の幸せでもあると感じています。そして、これからのフォースバレーでの仕事において、また、FC Nonoの活動において、これまで培った経験やコミュニティーが繋がり、様々なことが実現できるとワクワクしています。

おわりに

私が志す「努力が報われる社会」と、フォースバレーが目指す「国を超えて世界のすべての人が輝ける社会」の実現は、とても密接に関わり合っている未来像だと思います。

この未来の実現には、様々な手段や関わり方があると思いますが、例えば、FC Nonoでは多くのプロボノ*の仲間が活動を支えてくれていますし、フォースバレーでは社員が事業として取り組むことで、継続的かつ大きなアクションを起こせています。そして私にとっては、どちらの活動にも全力で向き合うことで、経験や実績が活かされ、相互の成長に繋がると確信しています。

この記事を読んで共感してくださった方は、ぜひ一緒に働く仲間になってくれたら嬉しいです。私はこれからも、人生のテーマとして、インドをはじめとする国々の子どもや学生達の未来に携わっていきたいと思います!

*社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動のこと


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