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YAMAPに転職したエンジニアが語る「一緒に働く仲間は、最高の福利厚生」

YAMAPのフロントエンドエンジニアとして働き、今年退職する馨子さん。

「一緒に働く仲間は、最高の福利厚生」と語る馨子さんに、仕事のこと、開発チームのこと、入社して変わった自分のことなどを聞いてみると、感謝の気持ちを込めて包み隠さず語ってくれました。

目次
▶ 美容師からエンジニアへ
▶ 緊張感と安心感が絶妙な開発チーム
▶ フラットな環境が効率を生む
▶ ユーザーとともに作る機能
▶ 一緒に働く仲間は、最高の福利厚生
▶ 入社して見えてきた、社会の中の自分

美容師からエンジニアへ

元は美容師だったという馨子さん。確かに、見た感じはエンジニアというよりそちらの方がしっくりくる。180度のキャリアチェンジのきっかけは職業訓練校だった。かなりハードだった美容師時代は、寝るためだけに家に帰り、休みも十分に取ることができない生活。これでは続けられないと、デザインに興味があったこともあり、デザイナーを目指すつもりで職業訓練校に通う。そこでカリキュラムの一つだったプログラミングと出合う。

馨子「すごく楽しいと思いました。自分が書いたことがそのまま画面に表示されて動くことに快感を覚えたんです。職業訓練校の先生もとてもいい先生で、WEBの成り立ちや歴史を教えてくれて、そこにロマンも感じました」

その後、プログラマーとして就職。前職でも今と同じフロントエンドエンジニアだったが、主に企業の業務システムを開発する会社で、次第にユーザーからのフィードバックを得ながら開発ループを回す経験をしたいと思うようになる。馨子さんは、YAMAPへ入社した動機を次のように語る。

馨子「登山文化を作ろうとしているところが面白いと感じたんです。利益重視だけでなく、純粋にいいことをしようとしている会社だなと思いました。その社会性と経済性を両立させていこうというスタンスにも共感できたし、登山を通して多くの人に自然に触れてもらいたいという思いで動いているところも面白いと感じました」

馨子さんの担当業務は、アプリの開発と改善や、CSチームからくるユーザーの技術的な問い合わせへの対応など。開発チームの中の、職能で分けられた二つのチームに所属する。一つはウェブサイトの見た目を作るチーム。もう一つは、アプリの見た目を作るエンジニアや、データを管理するエンジニアなど、機能開発のために必要な職能が集められたチーム。チームの雰囲気は、緊張感と安心感のバランスがちょうどいいと話す。緊張感と安心感とは?

緊張感と安心感が絶妙な開発チーム

馨子「みんな真剣なんです。例えば何かの仕様を決めるとき、意見をたくさん出し合って、納得するまでひたすら話しています。真剣に物づくりに取り組んでいて、なあなあなところがないというか、緊張感がありました。入社した当初、ミーティングの時はピリピリした空気を感じていました。私はそういう空気感が苦手だったので、和ませようとしていたんですけど、ここはそうじゃないんだと気付きました。空気が悪いのではなく、真摯に取り組んでいるだけなんだと。くだらない話をしているときもあったりしますけど、そのバランスがちょうどいいんです。

安心できるのは、分からないことを分からないと言っても大丈夫な空気感があることです。山のことに関してもそうだし、技術的なことでも分からないことを聞けばみんな丁寧に伝えようとしてくれます。基本的に何を言っても大丈夫な雰囲気があるんです。もし間違ったことを言えば指摘してもらえます。そんなところも私にとっては安心感になりました。オープンに自分の意見を言い合うようなコミュニケーションが苦手な人には合わないかもしれません」

開発チーム改善のためにアンケートが実施された際、「あなたが失敗した時、チームの人は責めずに問題解決のために協力してくれますか?」という質問に対し、エンジニア全員が「はい」と答えていたそうだ。馨子さんは、失敗してもそこから学べば大丈夫という空気感があり、挑戦しやすい環境だと話す。その分、一人一人が自律しているとも。

馨子「みんな自律していて、自分の意見を持ち、議論も活発でオープンです。自分なりの方法で自分の考えをアウトプットしている印象があります。自分ごととして仕事をするから、マイクロなマネジメントが不要なのかなと感じていました。それで成り立っているからすごいなって思います」

一人一人のレベルが高くないと成り立たない環境とも受け取れるが、そんなレベルについていけないと感じたことはなかったのだろうか?

馨子「最初は、何で私ここに入社できてしまったんだろうって思いました(笑)。仕事のスピード感とか、議論するときの深さや回転の速さについていけなくて、脳ミソを溶かしながらやっていました。でもやってやるぞ!みたいな気持ちは持っていたし、分からなくても聞いたら教えてくれるので、思い切り自分らしくやっていいんだと思えました。あとは自分次第みたいな」

学ぶ環境も整っている。エンジニアの組織理論やデザインに関することを、ざっくばらんにワイワイガヤガヤと学べる勉強会、“ワイガヤ会”が、2週間に1回ほど開催されている。実際の開発はどういう思想で行われているのだろう?

馨子「ユーザーに早く価値を届けたいという考えのもと、イシュー度とスピード感を大事にして行われています。改善によって与えるインパクトが大きいものを優先して、それぞれが自発的に仕事を取っています。毎週、何かしらの改善やリリースが行われていて、実装して、レビューしてもらって、修正しながら並行して他のこともやりつつリリースを繰り返していくのは、入社して2ヶ月くらいはゼーハー言っていました。前職は受託開発で、決まったリリース日に向けて開発を進めていたんですが、YAMAPでは常に何かしらリリースされている感じです」

毎週リリースしていても改善点は山積みで、それは多分なくならないと馨子さんは言う。ユーザーの声が近いYAMAPならではのジレンマもあったようだ。

馨子「前職では、YAMAPのようにユーザーさんの生々しい意見を聞くことはありませんでした。でも、いただく声は納得できるものばかりで辛くはありません。歯がゆいのは、『分かる分かる』と思っていても、優先度のためになかなか対応できないところです。めちゃ直したいんだけど今は手を付けられない…みたいなこともあります」

フラットな環境が効率を生む

ユーザーの声にスピード感を持って応えるためにYAMAPが大事にしているのは、ユーザーから集まるデータだ。入社して馨子さんが驚いたことは、職種に関わらず全員がデータドリブンだったこと。データ分析チームがその基盤を整え、プログラミング言語が分からなくても、簡単にフィルタリングしデータを抽出できる環境が整っており、全てデータをもとに議論がなされる。もう一つ驚いたことは、社内がかなりフラットで、色んなところから提案が上がって来ることだった。

馨子「“Kibela”という社内wikiを使っているんですけど、そこに機能提案が頻繁に上がってくるんです。エンジニアやデザイナーだけじゃなくて、営業さんもいろんな提案をしていて、全員が見られるようになっています。私もウェブサイトのパフォーマンス改善を提案して、採用されかけたことはあります。必要だという話まではなったんですけど、そこに割くリソースが取れなくてそのままになってしまいました」

忙しい中でも、YAMAPでは丁寧なコミュニケーションが取られている。2週間に1度、直属の上司との30分間の1on1が行われ、この2週間と次の2週間の話をする。馨子さんの1on1リーダーは、コーチングとティーチングをうまく切り替えてくれていたそうだ。

馨子「基本は壁打ちなんです。何かアドバイスをされる訳ではなく、意見を聞いて引き出してくれます。これはちょっと教えてあげた方がいいんじゃないかとか、自分で到達するには厳しいんじゃないかと判断された場合はティーチングに切り替えてアドバイスをしてくれました。そこで自分の考えがまとまったり、一歩進むためのアドバイスをもらえたりしました。一人一人の仕事ぶりをかなり見てくれている印象がありました。

代表の春山さんも年に2回、全社員と面談してくれます。その時に、毎回お勧めの本を教えてくれるんです。この前は、『アルケミスト 夢を旅した少年』でした。確かめたことはないですけど、みんな同じだったりして(笑)。デンマークに行くので、出発前に読もうと思っています」

馨子さんが入社したのは2年前。ちょうどコロナ禍に突入する時期だった。それまでは完全出社だった体制が、すぐにリモートワークへと切り替えられた。社会の状況変化に対応する会社のスピード感に驚いたという。

馨子「以前は、ベンチャーの割にはフル出社でガッチリした感じだったんです。コロナ禍になって、すぐに体制を転換してリモートワークの環境が整えられました。私が入社した時期は、リモートワークがスタートするタイミングだったんですけど、不安なくスムーズに入れました。毎月手当をもらえたり、コミュニケーションのためのイベントを計画してくれたり、ツールを導入してくれたり、かなりハイスピードで対応してもらえました」

ユーザーとともに作る機能

入社して嬉しかったことの一つは、入社動機でもあったユーザーのフィードバックを得られること。ユーザーの声が近いことは、喜びと同時に苦しみも伴うのでは?

馨子「時折厳しい声もいただきましたけど、ありがたかったです。DOMOというプロジェクトに携わっていたんですけど、リリースしたときは反発やネガティブなご意見をいただきました。慣れ親しんでいた機能の方がよかったり、使いづらさを感じたりしたんだと思うんです。でも、私たちがやろうとしていることを汲み取ろうとしてくれるユーザーさんもいて、『これから活用します』と言ってくれたりしてすごく励みになりました。

マイナスな意見はとても貴重で、その裏にどんな痛みがあるのか、解決するためにはどうすればいいのか考えながら開発を進めることができます。ユーザーさんと対話をしながら機能を作っていける一連のプロセスは楽しいです」

企業のサービスを開発していた前職との大きな違いはどこにあるのだろう?

馨子「全然違いますね。エンジニアの仕事の一つとして、課題を解決することがあると思うんですけど、YAMAPの場合は特にその面が強いと思います。プログラミングをして終わりではなく、エンジニアが、プログラミングで何を解決するのかということまでセットで考えてプロダクト開発に参加できるのはいいところだと思います。偉い人が仕様を決めて、はいどうぞではなくて、みんなでユーザーさんのデータを見ながら、あーだこーだ言っている感じです。

世の中のエンジニアには、技術にしか興味がないような人も多いと思うんです。YAMAPのエンジニアは、自分の持っている技術を使ってどう貢献するか、ユーザーにどうインパクトを与えるかを考えています。技術でオラオラしてないというか(笑)。自分の利益だけでなく全体最適みたいなところで仕事しているような空気感を感じます」

一緒に働く仲間は、最高の福利厚生

ここまで聞くと、どんな人たちが働いているのか気になってくる。YAMAPでは全社員の半数をエンジニアが占める。プライベートはどんな感じの人たちなんだろう。やはり山好きが多いのだろうか?


馨子「みんながみんな登山大好きというわけじゃないです。登山よりキャンプが好きな人もいます。社内登山という制度があって、月に1度、業務時間中に登山が好きな人に引率してもらって山へ行けるんです。それで自然とみんな山を好きになっていくというのはあります。登山経験がなくても不安に思わなくて大丈夫だと思います。

YAMAPはディープな人が多くて面白いです。みんな多趣味なんです。しかも広く深い。いい意味でオタク気質な人が多いですね。例えば、岩登りをする人がいるんですけど、岩にインスパイアされてできたゴルジェというジャンルの音楽があって、音を作ったりDJをしたりしています。音楽好きかと思えば、本を大量に読んでいたりして、この人の時間軸おかしいなと思いました(笑)。いい意味で面白い人がたくさんいます」

そんなディープで面白い人たちが集まったYAMAPだが、かっこいい仕事をする人たちと一緒に仕事ができたことが嬉しいと馨子さんは言う。かっこいい仕事とは?

馨子「ユーザーさんのことをすごく考えていて、自分の登山経験も踏まえてこういう機能が必要じゃないかとか、その一つ一つが、そこまで考えているんだと思えるようなものでした。なぜ困っているのか、一歩深く考えていました。毎回、自分は考えが足りてなかったと感じながら仕事をしていました。

本当に仕事が楽しかったんですよね。みんなやっていることに対して筋が通っていて、それに対して踏み込む姿勢がかっこいいなと思えてすごく影響を受けました。何よりみんな当事者意識を持ってるんです。刺激的で成長意欲をかき立てられました」

馨子さんは、「何をやるかも大事だけど、誰とやるかって最高の福利厚生だ」と語る。そんな刺激や影響を受ける環境で、自身に変化はあったのかと聞いてみると、「社会を自分の手でよくしていきたい気持ちが芽生えた」という。どうしてそう思えるようになれたのだろう。

入社して見えてきた、社会の中の自分


馨子「春山さんの考え方が反映されているとも思うんですけど、会社が、社会にとっていいことと経済的なところを両立させてやっていこうという姿勢で、山に対して当事者のスタンスなんです。YAMAPに入社したときにちょうどコロナ禍になったりして、社会的な問題が起きたことも関係しているかもしれないけれど、これまで自分が社会の一員だなんて、ほぼ考えたことなかったんです。入社してからは、自分も社会の一員なんだという感覚が強くなったと思います」

馨子さんは、「社会を自分の手でよくしていくために自分の専門性を高めたい」とも思うようになった。そこまでに至ったのは、次々と社会や自然環境の問題に取り組む現場にいて、自分たちにもできることはあるという手応えがあったからだろうか?

馨子「そうですね。実感は持っていたと思います。小さな目標は着実に達成しているし、できる、できないじゃなくて、それを達成するためにどうするかを常に考えています。小さなことでもきっとつながるだろう、いつか到達するだろうという気持ちになれることは確かににありました。社会っていうとすごく大きい枠組みだと思うんですけど、そういう意識を持ってちゃんと生きようみたいな気持ちが芽生えました。これまでは、自分と家族のことしか考えていなかったんですけど、地域のことや社会とか、そういったものに目がいくようになりました。実際YAMAPは、自治体と連携していたりもするので、視野は広がると思います」

本来仕事とは社会的な行為であって、そうあってしかるべきなのだろうけれど、会社の利益追及のために忙殺されているのが実際のところ。そのためにボランティアなど、仕事と離れた場所で社会的な活動に取り組んでいることはよくある。特に山や、自然に関わる分野ではそれが目立つ。仕事と繋がっていたり、仕事を通してそう感じられたりすることは幸せかもしれない。YAMAPが自然環境や登山文化のために取り組んでいることは、全て社員に返ってきているような気がした。

馨子「働いていると、どうしても仕事に対して疑いみたいなものが出ることがあると思うんです。これって本当に必要なことかなとか、意味があるのかなみたいな。でもYAMAPの仕事って、その疑いがなかったんです。そういう意味ではすごく幸せな環境だなと思います」

ここまで読むと、やや怖気付いてしまう人も中にはいるかもしれない。入社を考えている人に向けて馨子さんが伝えたいことは?

馨子「裁量は大きいかもしれないけれど、みんなが親切に助けてくれるので大丈夫です。自分がYAMAPの中で成長すればするほど、それがプロダクトに反映されていくのを感じられます。技術者としてだけじゃなく、一人の人間として視野が広くなります。もし登山未経験者であれば、自然との出合いは本当にいい体験です。純粋にいい環境なので、知ってもらえるきっかけがあるといいなと思います。みんなカジュアル面談に来て欲しいですね」

会社について語りながら、少し寂しくなってしまった様子の馨子さん。数ヶ月後には、語学と文化を学ぶためデンマークへ発つ。テントを担いで旅もするそうだ。YAMAPに入っていなければ、そんなことも考えつかなかったと話す。そんな自分の変化が嬉しいとも。ご家族は、馨子さんの変化に驚きつつも、年々自分らしくなっていると応援してくれるそうだ。

会社の一員として自分らしくいることは、大切だけど大変だ。でもYAMAPには、入社したことで自分らしくなれた人がいた。馨子さんのこれからが楽しみだ。そしてどんな人が新しくメンバーに加わるのか、そしてこの会社にどう影響を受けるのか、それもまた楽しみだ。

                                  (文=米村 奈穂/2022年4月)

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