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【職人のテツガク⑥】「人を使い捨てにしたくない」。師弟関係から見る「異能、異端を和える」チームビルディング

人間には特性があります。だれしも欠点を裏返せば、突出して優れている点にもなりうる。Faber Companyではそれを“特異”と呼び、「異能、異端を和える」、つまり得意や特異を活かし合う経営に取り組んでいます。
「会社に合わせて人を変えるより、人間中心の経営で収益が伸ばせないか。本気でそれ、やりたいんですよね」と語る取締役・山田明裕。彼の下で技能を磨き、月間1,200万円もの粗利を出せるマーケターに成長した松本千紘。2人の師弟関係を通じて、特異・得意を活かすチームビルディングとは?を考えます。

左:山田明裕(やまだあきひろ)

取締役
1976年東京都新宿区生まれ。学習院大学経済学部経済学科卒業。いくつかの職歴を経てみずから起業しアフィリエイトやメディア事業を手掛ける。2012年Faber Companyに入社。
現在は取締役としてコンテンツSEOを担当する。趣味は食べ歩きと筋トレ。

右:松本千紘(まつもとちひろ)

R&D事業部
1992年、静岡県静岡市生まれ。前職で金融機関の個人営業を経験した後、2016年12月当社入社。趣味は漫画・ゴルフ・占い。毎日漫画を読み、週末はゴルフの練習に明け暮れる。占いは自分で占えるようになりたいと勉強中。

「自分も周囲もぐるぐる混乱させる」性格

「中途半端や“いい加減”ができない性格で。気になることがあると、納得するまで追求しなければ先に進めないんです」。

松本の欠点はズバリ「決断できないこと」でした。

とにかく悩む。時間がかかる。思い詰める。「私、占いでも言われたんですよ。『自分をぐるぐる混乱させ、他人も巻き込みぐるぐる混乱させる性格だ』って(笑)」

ーーどんな時にそう感じたのですか?

松本:新卒で入った地方銀行で個人向けの営業をしていました。金融商品の販売によって、お客様の課題を解決するという業務です。私は人と話すことが大好きで、すぐに打ち解けられるので、結構おじいちゃんおばあちゃんから頼りにしてもらったりして…それが嬉しかったんです。でも、いろんな商品がある中で、「あれもいいですよねー。これもいいですよねー」と一緒に悩んでしまう。「これ買いましょう」「おすすめです」がなかなか言えない。「この人にとって幸せかな?」って考えてしまうんです。営業って決断をお手伝いする仕事じゃないですか。逆に悩ませてしまって、向いてないと実感しました。

ーー小さい頃はどんな子でしたか?

松本:小学生の頃って足が速いとかっこいいじゃないですか?でも私は足が遅くて、何か「すごい!」と思われたくて、勉強で全教科満点とれるように頑張っていました。

ーーそれは一番になりたいから?

松本:うーん、というより…「自分に負けるのが悔しい」という感じ。「95点でも悔しい、なんで満点が取れなかったんだろう」「親にとっての理想の自分じゃない」と、思い詰めるタイプ。

ーーそれはすごい…。完璧主義だ…。

松本:中途半端だと自分が許せなくなるんです。習い事でやっていたピアノは、一回間違えたら全部最初からやり直し。最後まで弾き切れないことが多かったです。中でも塾は一番上のクラスにいるのがポリシーで、80点取ったらギャン泣きするような子でした。

ーー山田さんが松本さんと最初に出会った時は、どんな印象でした?

山田:面接の時、「こんなスキルがある」という具体的な実務の話をするじゃないですか。僕はそれも大事だけど、一緒にいてピンとくるかどうかを大事にしていて。松本さんはピンときたんですよね。なかなか言葉にできないですけど、「一緒に仕事するイメージが持てた」んです。

「山田さんはどんなに時間がかかっても付き合ってくれた」

ーー「毛色が合う」みたいな直感があったんですね。入社後はどんな仕事を?

松本:研修期間を除くと、ずっとリスティング広告の運用です。山田さんの下で、美容サロンなどアフィリエイトメディアで来店申し込みを伸ばす施策に携わってきました。ユーザーに行動を促すために、Googleアナリティクスやヒートマップツールを使って集客ページ(LP)を分析して、広告の文言を変えたり、ページを改善したり。改善はスピードが命なのですが、自分が納得する完璧なものができないと、先に進めない、という状況が続いて。だから「山田さん、ちょっと相談いいですか」って捕まえては話を聞いてもらってました。

山田:よくわからないことをわからないまんまにしないんです、松本さんは。しつこくしなくていいところまで、しつこく追求する。「よしなに」ができない。合理的に動けないので、残業も長くなる。僕もさすがに急いでる時があるから「またそこに戻るの?」ってこともあったんですけど(笑)、それでも諦めずに掘り下げる。

でも、ある時から思ったんです。「それがやめられないんだったら、その特性と付き合っていくしかないよね」って。

松本:山田さん、ホントずっとつきあってくれたんですよ。役員で忙しいはずだし、時間給だって高いのに、1〜2時間平気で一緒に話してくれる。私がぐるぐる考えていると、「大丈夫?考えてるんじゃなくて、悩んでない?」って声もかけてくれたし、入社当初は毎日ランチにも誘ってくれてました。私は自分で納得いかないと終わらない。途中で夜も更けて来ることが何度もありました。すると山田さんは「ご飯行きながらしゃべる?」って。そこから平気でまた2〜3時間、付き合ってくれたんです。

ーー「もうよくない?」と突き放すでもなく。

山田:松本さんがそういうタイプなら「徹底的に向き合って話そう」と。勉強には答えがあるじゃないですか。でも仕事にはない。終わりもない。そして話していると僕も気づかされるんです。「こちらが解決する必要がない」ことに。

自分一人で整理して進めるのがうまくないだけで、松本さんは話す中で自分で整理するんです。「それってこういうこと?」とか聞いたり、図式化してあげさえすれば、話しながら整理していって「モヤモヤが晴れました!」と先に進めるんです。あとは残業の管理だけが大変だけど(笑)、彼女自身の力で月間1,000万円を超える粗利も出せるようになりました。

ーー徹底して寄り添ったことで、特性が活きたんですね。

松本:当時の市場の状況も良かったし、仲間のおかげです。特に山田さんという上司に出会えてほんと良かったなって。山田さんが誰よりも一番頑張ってて、人一倍努力している姿も見ていました。たくさん本も読んでいて、私やチームメンバーに1日おきにぐらいに「これ読んだら?」って貸してくれたりもしました。で、私は読まなくて、借りたまんまの本がまだ5冊ぐらいあるんですけど(笑)、すごく時間かけてくれるから、それに恥じぬようになりたい、力になりたいと思ったんです。

各人が“カブトムシをワクワク捕まえに行く”景色を創る

ーーとはいえ、マネジメントの本には、「部下をより効率的に動かす」ノウハウが溢れてますよね。

山田:僕は「育てる」と思うこと自体が不遜だと思っています。「育つ」は自動詞、「育てる」は他動詞じゃないですか。「育てよう」とすると、目標達成の手段としてその人をコントロールしようとすることにつながります。それを突き詰めていくと「目標に到達できない人=いらない人」ってなりますよね。僕は本当にお金のために人をコントロールしていいのか、という問題意識があります。僕は何度も人をコントロールして失敗をしてきました。だから、その人が「育つ」、「育ってしまう」ような道を模索しています。綺麗ごとですよね(苦笑)。

ーーおお…徹底してますね。

山田:子どもの時、こういうことなかったですか?夏休みにカブトムシ捕まえに行くとする。虫かごと虫網をつかんだ瞬間にもう、面白くなってますよね。その時に大人が出てきて「網はこう持つんだ」「こうやるのが効率的だ、こうやらないのはよくない」って口出しされたとすると、途端に面白くなくなる。

やってるそばから面白いことを見極めて、自動詞で勝手に自走できるようにしたらいい。各人が『楽しいから』自然と手が動いて、収益が伸びるのが理想形ですよね。

松本:そう、山田さんは現実的な話より、理想の話から入ってくれるんです。「現実的に考えて、これ無理だよね」と諦めるのではなく、「理想の形を実現したいよね。じゃあどうする?」と一緒に考えてくれる。だから私も「もっとここの部分まで考えるべきだった、自分が悩んでいたことが狭い、低い視点だった」と気づくんです。もっと高さや広さをもたないとと、視野が広がるんです。

ーー既存のノウハウとは真逆でうまくいくのでしょうか。

山田:先ほども言いましたが、僕もさんざんコントロールしようとしたことはあったんですよ。でもそれじゃ真の力は出ない。「やりたいことは何?」と聞いてもなかなか出てこない人には、「やりたくないこと」を聞くと意外と出てくる。なので、そこから「好き」を探っていくんです。

僕は今年4月頃に影山知明さんのご著書を読んで、「目標達成のために人を手段として使ってはいけない」と、より強く思うようになりました。何年かかってもメンバーの『好き』や『楽しい』を掘り起こして、その上で利益をあげられる構造にできないかと。その成功例を、自分の部署から作りたいんです。当社がゆくゆく上場企業になっても、その理念に共感してくれる投資家と一緒に、「人間を使い捨てにしない社会」を作れたらなって。


マッキンゼー&カンパニーなどを経て、現在西国分寺でカフェ「クルミドコーヒー」や多世代型シェアハウスを経営する影山知明さんの著書。「ゆっくり、いそげ」(大和出版)、「続・ゆっくり、いそげ」(クルミド出版)

「弱いつながりの強さ」を活かす働き方

ーーだとすると、新人さんに任せるミッションも「本人がイヤじゃないもの」をまず見極める必要がありますよね。

山田:はい。若い人たちは何が合っているのか、どこがツボか、つつかないといけない。何がしたくないのか、嫌いなのか、具体例を集めていくとツボがわかってくる。ツボを見つけるまで探す覚悟を持つのがマネージャーの仕事だと思います。

ーー松本さんの場合の「イヤ」は、「決めること」だった?

松本:ホントそうです。Webマーケティングの好きなところは、A・B・Cと案をいくつも作れるところ。必死に考えても1つに決められないなら、ABテストで全部試せるんです。すると当たり外れはデータで判断できる。「A案に魅力を感じる人」と「B案に魅力を感じる人」、それぞれに別の訴求もできる。ぐるぐる悩んでしまう時は、1週間ごとにABテスト→計測する→改善案を考える→また試す、とPDCAを回すと決めて、山田さんに背中押してもらいながらやっていたから、成果が出ました。


ーー特性と合ってたんですね。一方で、好きや興味を軸にするなら、就業形態も一律ではうまくはまらない場合がありますが…。

山田:そうです。週5正社員が窮屈な人は週4で働いてもらう。あるいは業務委託。さらに特性を活かせる分析業務だけをやってもらうケースもあります。雇用形態としての会社とのつながりが薄くても、当社にとっては欠かせない人たちがFaber Companyには少なくありません。「自分の興味の赴くまま、前のめりになれる仕事がやりたいんだ」という人たちと一緒に紡ぐ「弱いつながりの強さ」を、僕は大切にしたいんです。

特異・得意を見つけたい人に来てほしい

ーー松本さんは今、どんな仕事してるんですか?

松本:リスティングで培った広告運用の手法を生かして、今年の1月からはWebマーケターと企業をマッチングする「ミエルカコネクト」というサービスの集客を担当しています。

ーーダーゲットはガラッと替わったでしょうね。

松本:はい。これまではBtoC向け。つまり一般ユーザーが相手でしたが、今はBtoB向けでマーケティング人材を探している企業が相手。全く畑違いでニーズが測れないので、問い合わせが来たら自分で電話して、どんな仕事にどんなマーケターが必要なのかをヒアリングし、合致する人材を提案したりもしています。

ーーおお!苦手な営業もやってるんですね。

松本:そうなんです…!でも広告からの集客実績がゼロだった新ジャンルなので、広告文やLPの訴求するにはニーズがわからないと。マーケターさんと企業の三者面談も同席してますが、やっぱり苦手で。「企業とマーケター、どっちにもいい提案」がズバッとできないので、また悩んで(笑)。別チームに出向中ですが、山田さんに今も時々相談に乗ってもらってます。

ーー最後に、お二人はどんな人にFaber Companyに来てもらいたいですか?

山田:今は無くてもなんか自分の才能見つけたい人は大歓迎です。何者かになりたい、自分にしかないもの見つけたい人。心が疲弊して「こうなりたい」と思わない人もいるけど、本人の希望を軸に、やれる場所を見つけるのが僕の役割だと思っています。

松本:山田さんと同じですけど、何者になるか、自分がどこに萌えがあるか、何としても見つけたいんだって人と一緒に働きたいです。合う・合わないはやってみないとわからない。だから最初は「なんでもやってみる」精神が必要だと思います。まずやってみて、そしてそこから「好き」の欠片をいつか形にしたいと頑張れる人に、向いてる会社です。私も中堅になってきているので、山田さんにしてもらったことを、今度は若い社員たちに返せたらなって。

今は代表の古澤さんに「会社の展望」を創るプロジェクトにも声かけてもらって、取り組んでいます。経営層相手にも、自分の「こうしたい」はもちろん、「そういうの、違うんじゃないですか」も言わせてもらっています。

山田:当社には1991〜92年世代が多く活躍していて嬉しいですし、それよりもっと若い入社1〜2年目の世代も活躍できて、会社の方向性を決めていくと面白いですよね。

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