受発注の領域に有る「情報の非対称性」
――「情報の非対称性」については、日本でも様々な場面で話題になります。ユニラボが取り組むBtoBの受発注領域における「情報の非対称性」とはどのようなものでしょうか。
「当たり前ですが受発注には仕事を誰かにお願いする”発注者さん”とその仕事を受ける”受注者さん”が存在します。それぞれ感じる情報の非対称性は違うんです。今回のお話では、日本を”都市部”、”政令指定都市”といった情報も人も多いエリアと、”地方”と呼ばれる、情報・人ともに不足しているエリアに分けて考えます。私達はアイミツを通じて、ゆくゆくは地方における情報の非対称性を解消できるのではないかと考えています」
――では、発注者さん側にとっての情報の非対称性について教えて下さい。
「経験の差による情報の非対称性は各所で発生しています。例えば大きな企業では、HPやシステム制作において他の会社に発注した経験が必ずと言っていいほど有ります。今までに発注した企業と行ったやり取りの知見が溜まっている状態です。一方、地方中小企業などの場合はそもそも、発注経験が少ないというケースが多く見られます。この経験の差によって、良い発注が出来ないという不が発注者における”情報の非対称性”です」
――なるほど、具体的に、どのようなケースでその「不」が発生しているのでしょうか?
「日本にはまだまだ、地方を中心にホームページを持っていない企業は多く存在します。今までホームページを作っていなかった会社がいよいよホームページを作ろうとしたとき、当然、社外のホームページ制作会社に依頼します。しかし、その領域での受発注の経験が無い場合、誰に頼めば良いのか、どう頼めば良いのか、どんな会社に頼んだら安心して良いものが作れるのか、何一つわからない状態から発注先選定を始めることになるわけです。さらにそこから発注先を見つけ、2・3社の見積もりを取ったとしても、どう比べたら良いのかわからない、という問題が発生します。A社は100万円、B社は120万円、C社は30万円で仕事を受けてくれる、という見積もりを見比べた時に、見比べる切り口を持っていないと正しく選ぶことができません。本来であれば、ホームページを作ったり、システムを構築することは会社の価値を上げるために重要な要素であるはずなのに、”経験がない”、”情報が足りない”ということが障壁になって発注に踏み込めないというのは機会損失につながっています」
――確かに、会社として外に出すものって本来であればとても重要であるはずなのに、ホームページ制作の知識がなければ「どんなホームページが良いものなのか」もわからないですからね。ありがとうございます、では、受注者さん側における情報の非対称性というのはどのようなものでしょうか。
「特に地方の中小企業だと顕著ですが、小さい会社ではなかなか営業の人員を確保するのって難しいですよね。他の会社とのネットワークやコネクションが構築されていないと、自ずと取れる手段は狭まります。また、地方に行けば行くほど市場は小さくなります。その会社がどれだけ素晴らしい能力や商品を扱っていたとしても、そもそも知ってもらうことが出来なければ価値を創出することは出来ません。営業経験が少ないがゆえに勝ち筋が見えなかったり、他の会社の戦い方を知らなかったりというのはもったいないことなんです。”どの様に商品の価値を伝えていくのか”、”他の会社はどう演っているのか”、それを知らないということが受注者さん側の大きな情報の非対称性ですね」
――地方企業だとむしろ、地方の商工会議所などと連携して繋がりを持っているというイメージもありますが……
「もちろん繋がりの強い地方もあります。とはいえ、地方と言ってもいろいろです。政令指定都市レベルのところもあれば、それに該当しないような県庁所在地レベルもあれば、もっと人口の少ないところもある。それによってかなり違いは出ると思います。もちろん、地方でもデジタルのネットワークは増えてきているのは事実です。ただ、地方の企業のオーナーは段々と高齢化してきています。いわゆる私達のイメージするデジタルネイティブではない世代が多かった中で、最近は事業承継も盛んになり若い世代にバトンが受け継がれていく。まだまだ情報の非対称性はなくなりませんが、これから地方のデジタルネットワークというものはもっと強固に成ってきます。だからこそ、都市・地方共に、ユニラボが運営するアイミツは受注者さん・発注者さん双方に役に立てるサービスに成っていくはずです」
地方と東京の情報格差
――ありがとうございます。では、今お話いただいたような「情報の非対称性」は、そもそも何故発生してしまうのでしょうか?
「複雑に要素は絡み合っているとは思いますが、情報の非対称性がさらなる情報の格差を生んでいることは間違い有りません。たとえば、東京にいれば中小企業でも他の会社と交流したりアクセスする機会はいくらでもあります。そこで情報交換をして、他社の取り組みを知り自社にも生かしていく。ただ、情報がそもそも少ないと、『周りもそんなことはやっていないからやらない』『今までの自分のやり方でなんとかなってきたからそのまま維持する』ということが起こりやすいんです」
――とはいえ、地方の限られたマーケットは縮小していきますよね。
「それに対する危機感は、地方経営者も強く持っていると思います。ただ、それを理解していても、どうしたら良いのかわからない、中々踏み込めないと感じてしまうんですよね。”自分たちの市場はこの地方だから、ホームページを作ったところで何の意味があるんだろう?”と疑問に感じてしまうわけです。システム・ホームページなど、外部のプロにお願いして作って、新しいものを活用していくことの価値への理解が進むそもそもの土壌が無い、というのは大きな問題です」
――地方経済が停滞して、地方から人が少なくなっていく問題は日本の経済を考えた時に大きな損失ですよね。
「そうなんですよ。今まではアナログでも出来てきたし、実際に出来ていることも多いので、どうしても危機感が薄れてしまんです。経済的に発展している時期は会社もそれに伴って伸びていきます。逆に、マーケットが伸びないと会社は大きくなりません。地方経済のマーケットが小さくなっていくということは当然、その会社も影響を受けます。例えば、地方の銘菓のメーカーがあったとします。凄く美味しいお菓子を作っているのに、売上が下がってきた。でも、外に売りたくても人がいない……と云う状況ってもったいないと思いませんか?」
――そうですね、地方のメーカーが突然SNSのインフルエンサーに取り上げられて大バズ、一気に売上が伸びたり、廃業寸前からV字回復! みたいなニュースも目にします。でもそれは再現性のないことで、本当にラッキーに頼ってしまう状況ですよね。知ってもらえば売れるのに、その手段がないから売れない、という状況があるのですね。
「世の中全体にリーチできなかったら、競争力の有るものでも埋もれてしまいます。だからこそ、外の力を使って上手くアピールしていったり、価値を上げるために新しいことを取り入れることが重要です。それによって、縮小していく悪いスパイラルから抜け出せますよね」
――ちなみに、工藤さん自身が、「これって地方との情報格差だな……」と感じたエピソードなどがあれば教えて下さい。
「凄くシンプルな、私の主観の話で行くと……地方と東京のテレビCMとかのクオリティの差は大きいと感じることが多いんですよね。地方の企業が、地方の映像制作会社に依頼してつくったCMは、やっぱり少し前で時が止まっているような印象を受けますよね。同じ様に、ホームページもかなり」
――確かに……あれはあれで味があって私は好きですが(笑)、発注先に依って成果物は大きく変わるものですよね。
「あとは、DXという言葉に対する認識の差でしょうか。いま大企業が推進しているDXって、単純作業を機械化・自動化してAIに置き換えるとか、ペーパーレスとか、ブロックチェーンを用いて……とか、そういうものなイメージですよね。ただ、今までデジタルに触れてこなかった地域・領域の方にとってはそもそも、全てのやり取りをメールでするのもDX、ホームページを作るのも立派なDXなんです。でもそれは、その会社が悪いという話ではなく、当たり前のようにまわりもやっていなかったから発生する非対称性なんですよね」
情報の非対称性を解消するユニラボの取り組み
――受発注領域における情報の非対称性について、かなり具体的にイメージできました。では、ここからは、それをどの様に解消していくべきか? というお話を聞かせて下さい。
「ユニラボが運営するアイミツのターゲットは、まだ基本は都市部です。なので、地方の情報格差を解消していくために、という意味ではユニラボにとってはまだもう少し先のチャレンジになります。ただ、カテゴリを広く持ち、コンシェルジュが発注者さん選びをサポートするという意味で、アイミツには十分に情報の非対称性を解消するポテンシャルが有ります」
――アイミツの特徴は、人の力を使った「コンシェルジュ」機能にあると思います。ただのカスタマーサポートとして受注者さん・発注者さんをサポートするだけではなく、かなりいろいろな取り組をしていますよね。
「そうですね、やはり我々のサービスを選んで使ってくださる方は、コンシェルジュを高く評価してくださっています。いろいろ相見積もりを取ってみたけれど、結局相場がわからない、選び方がわからない……という時にコンシェルジュに相談することが出来るのがアイミツの特徴です。実際に、”ホームページを作りたいんですが、いくら位から作れるんですか?”という質問があったとき、アイミツのコンシェルジュに電話をすれば相場や受注者さんを教えてくれるわけです。コンシェルジュと相談することに依って、リテラシーの差や経験の差を埋めることが出来るため、情報の非対称性の解消に貢献できていると感じます」
――それはアイミツがプラットフォームであるからこその妙、ですよね。
「そうですね、アイミツはプラットフォームとして、年間5万件から6万件、受発注に関する相談を受けています。プラットフォームならではの今までの事例の紹介などが出来るのは大きな強みです。その領域で何かを発注することが初めて、という方にとっては相場や事例などがコンシェルジュから紹介されるのは安心に繋がり、一歩踏み出す大きなきっかけになります。”システム開発領域ならこの会社!”というほど名の通った会社はありますが、発注者さんによって必要な規模はそれぞれです。だからこそ、多種多様な受注者さんが揃っているプラットフォームで比較をして、やりたいことに即した受注者さんを紹介できるのはアイミツだからこそできることですね」
――より広く、アイミツはどのような思想に基づいて作られたプロダクトなのか聞かせて下さい。
「今までの話で、受発注における情報の非対称性が、新しい価値創出を阻むこともあるというのはご理解いただけたかと思います。しかし、受発注とは今までの経験などに関わらず結構大変なことが多いんです。いろいろ調べて受注者さんを見つけたとします。そこから相見積もりを数社とっても、やり取りをした末に見積書は比較をするのは難しい事が多いんです。見積書の項目が揃っていなかったり、そもそも前提となる相場がわからなかったり。そういう苦しさはいろいろなところにあると思っています。今回は情報の非対称性という切り口からお話しましたが、受発注におけるプロセスの改善もアイミツが担っている領域です。技術の力と人の力を組み合わせて、マッチングの精度を上げていき、良い受発注を生み出していくことがアイミツのミッションです。スムーズに取引をして、企業のポテンシャルを最大限引き出す出会いを作っていきたいと考えています」
――企業のポテンシャル、という言葉が印象に残っています。受発注に依って企業のポテンシャルが引き出される、とはどういうことなのでしょうか?
「先程も少し触れましたが、会社によって扱っている商材は様々です。例えば、地方の銘菓を作っている会社が、”CMSとは”、”HP制作とは”ということを詳しく知る必要は厳密には有りません。外部のマッチするプロに仕事を任せることに依って、各企業が持っているポテンシャルを最大限発揮できることが理想です。アイミツが受発注を必要とするすべての会社に普及したら、会社は自分たちのコアビジネスを伸ばすことに集中することが出来ます。それによって、日本はもっと、経済的にも元気に、豊かになっていきますよね」
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