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ロングライフなものづくりがしたい。留学経験を経て、たどり着いた場所

土屋鞄製造所のランドセル事業部で、販促企画を担当している木村。新卒で入社以来、ランドセル専門店で開催しているワークショップなど、ものづくりイベントを企画してきました。日本と海外でデザインを学んだ末に、なぜ土屋鞄を選んだのか。その背景には、“ものづくりのサイクル全体をデザインする”視点がありました。

留学して気づいた“日本のものづくりの素晴らしさ”

ー 土屋鞄を志望した理由を教えてください。

東京で美術系の大学を卒業してから、より広い視野を求めてイギリスに留学し、さらにデザインの勉強をしました。2年間の留学を終えて、日本に帰国。就職先を探していたときに、土屋鞄のことを知りました。そこから、土屋鞄に興味を持った理由は、いくつかあって。留学生活での体験が、大きく関係しています。

まず、日本の外に出てみて、日本のものづくりの良さを再認識しました。現地で知り合った海外の友達から、日本の製品やものづくりをとてもほめられたんです。日本建築の釘を使わない木の組み方が素晴らしいとか。伝統的なもの以外でも、「日本ののこぎり、とっても良いよね!」と言われたり(笑)。

またイギリスでは、日本のデザインや文化からインスパイアされたアート作品を見る機会もありました。そんな中で、日本のものづくりやデザインにどんどん興味がわいて、仕事として関わりたいと思うようになったのです。

ー 昔からものづくりが好きだったのでしょうか。

子どものころから工作が好きでしたね。ものをつくることに加えて、それを展示する空間やグラフィックを考えることも好きでした。なので、日本の美術大学では、既存の専門的なデザイン領域にとらわれず、つくった作品をどう表現していくのか、伝え方のデザインも含め、幅広く包括的にデザインを学んでいました。

その後、留学したイギリスの大学では、ジュエリーやセラミックなどの工芸デザインが中心。自分でデザインを考え、実際につくる作業もして。いわゆる手仕事的なものづくりを学んでいました。

留学中に印象的だったのは、自分がつくるものに対して、「なぜそれをつくるの?」「なぜそのデザインなの?」「なぜその素材なの?」と聞かれること。聞かれたら当然、しっかりと説明する必要がある。その答えを考えているうちに、「そもそも、なぜものをつくるのだろう」と、根本的なことを考えるようになりました。

ものをつくることは、決して悪いことではないけれど、いつかゴミになってしまう可能性がある。つくり手は、ものの終わりまでを意識して、責任を持ってつくるべきだと感じていたとき、「サステナビリティ」や「エシカルファッション」といった、地球環境に配慮した取り組みを知って、共感したのです。もし自分がものづくりに関わるのなら、長く使えるデザインにしたい、端材を無駄にしたくない。また、誰がどんな思いでつくっているのか、その背景まで伝えられるような、ものづくりに関わりたいと思いました。

そんなことを日本に帰ってきてから友人に話したところ、「土屋鞄が良いのでは?」と教えてもらったんです。出身大学に届いている求人情報を見ると、ちょうどそこに土屋鞄の求人情報が出ていて、募集職種は販促企画。既卒でも応募できるものだったので、エントリーしました。

悩んで決めた就職。働く人、ものづくりの姿勢に引かれて

ー 就職活動では、土屋鞄以外の企業も志望していましたか。

土屋鞄に応募したのは、就職活動の中でも後半で。他に、外資系の家具メーカーなど、数社の選考を受けていました。

最終的に土屋鞄ともう一社の内定をいただいて、どちらを選ぶか、本当に悩みました。もう一社の方は、規模の大きな会社で、制度が充実していました。海外研修の制度もあり、仕事で海外と関わっていきたいという思いがあった私にとって、その制度はとても魅力的だったのですが......。土屋鞄に入社することに決めました。

土屋鞄は、まだ発展途上のような感じがして、いろんなことにチャレンジできそうだと思ったんです。最終面接で、社長から海外展開の構想も聞いて、面白そうだとも思いました。

面接で会った土屋鞄の方々の人柄にも引かれましたね。すごく丁寧に会社のことを教えてくださいました。「ランドセルは、ただ販売して終わりというものではありません。私たちは、お子さまの6年間に寄り添っています。販促企画では、その思いを伝える取り組みをしているんですよ」という話を聞いて、「これこそ、自分が求めていたこと。“長く使えるものづくり”に携われる!」と思いましたね。

また面接の最後に、「就職活動、大変だろうけど、頑張ってね」と言ってくださって、他の企業の面接ではそんなことを言われたことがなかったので、とても印象に残っています。

ただ“つくる”だけではない。ワークショップの付加価値を追求

ー 入社後これまで、どのような業務を担当しましたか。

お子さま向けのワークショップや、職人のものづくりが体験できるイベントを企画、実施してきました。例えば、毎年秋から春にかけて、全国のランドセル専門店で毎日開催している「まいにちWORKSHOP」というイベントが、その一つ。ランドセルの余り革などを材料に、実際にランドセルの職人が使っているものと同じ道具で穴を開けたり、金具をつけたり、親子でものづくりを体験できるワークショップです。時期によって、つくるものを変えていて、これまでポシェットやノート、ブローチなどをつくる企画を実施しました。

その他、難易度の高いものでは、長野県の軽井沢にある工房で、小学生向けにインスタントカメラにつけられる革のストラップをつくるワークショップもありましたね。

またワークショップ以外にも、新1年生になったお子さまとランドセルの写真を募集するフォトコンテストも行いました。これも毎年実施している企画で、ユニークなのは賞品が、ものではなく「家族写真」だということ。大賞に選ばれた10組のご家族を工房にご招待して、写真家による家族写真の撮影会を開いています。

参加者の皆さんに大変好評なので、「家族写真館」の企画だけを切り出して、写真撮影イベントを開催したこともありました。撮影と合わせて、撮った写真を入れられるフォトフレームづくりのワークショップも同時に実施しましたね。

ー ワークショップを企画する上で、大切にしていることは何ですか。

つくるだけではないワークショップにする」ということです。つくったあとも普段の生活で使えたり、家に飾れたり。つくった先があることを大切にしていています。

また体験を通して、ものづくりの楽しさや難しさを感じてもらいたいという思いで、企画を考えています。その結果、身の回りにあるものが、どうやってつくられているかを想像したり、ものを大切にする心が育まれたらいいなという思いも込めて。

ー 子どもたちと触れ合う中で、印象的だったことはありますか?

ワークショップの現場で思うのは、一人ひとりの性格によってでき上がりはもちろん、つくる過程も違うんだなということです。例えば、ゆっくり考える子、どんどん決めて先に進む子、丁寧な子、いろいろなところに関心が向く子......。でき上がった時の振る舞いも、「見て見て!」と積極的に来てくれる子がいたり、シャイでもじもじと見せてくれる子がいたり。頭では分かっているつもりでも、子どもたちの個性の豊かさに驚かされることは多いです。

あとは、ワークショップで職人と同じ道具を使う時、見慣れない物を触る子どもたちの顔も印象的です。真剣に説明を聞いたり、使ってみたりしている時、すごく素敵な表情なんですよね。

たくさんの人に届けたい「土屋鞄のものづくり」

ー 土屋鞄のスタッフは、どんな風にものづくりに取り組んでいますか。

スタッフみんなが、「良いものをつくっている」と思っています。良いものをお客さまに丁寧に届けるために、つくる人、伝える人、支える人が、それぞれの領域で、こだわりを持って、ものづくりに取り組んでいますね。大量生産したものを安く売るのではなく、長く大事に使っていただけるものをつくっているところが素晴らしいと思います。

規模の大きい企業では、資金や社員数など、いろんな面から、できることが多いと思います。土屋鞄は、そのような大企業ではありませんが、「やってみたい」と思ったことの実現度が高い。中小企業だからこそ、個人で任されることの幅が広く、やりがいを感じられています。

ー 今後の目標を教えてください。

これから土屋鞄が海外展開していくことがあれば、何らかの形で関わりたいと思っています。もっといろんな国の人々に、製品を届けたいですね。どこかの国の家族が、土屋鞄の製品を気に入って使っていてくれたらいいなと。引き続き、ものと体験を合わせたコンテンツづくりにも取り組んでいきたいです。

「これからやってみたいこと」としては、他にもあります。フランスの世界最高峰のラグジュアリーブランドが、素敵な取り組みをしていて。製品を製作する過程で余った革や、傷のついた部分など、製品に使えない素材を使い、オブジェをつくって展示したり、アイテムをつくって販売しています。しかもデザインは、さまざまな国のアーティストが担当していて、どれも独創的で遊び心あふれるデザインなんです。

素材を無駄なく活かしたいという思いが素敵だし、アーティストのサポートにもなる。個人的には、土屋鞄でも、これから成長していく中で、このような文化的な活動ができたら良いと思うので、何か面白い企画に挑戦してみたいですね。

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