研究者から営業、マーケティングの世界へ。目指すは“人依存”からの脱却
ー今日はよろしくお願いいたします。まず初めに、前職での経験をお聞かせください。
浅井 「前職はRICOHの研究機関で、立体的なプリントができるような基礎研究をしていました。壁紙や絵画など、凸凹したものをきれいに見せるような研究を、大学院を卒業してから4年半ほどしていました。基礎研究がメインなのでアカデミックに近く、ビジネスから一歩離れて、10年後や20年後を見据えた研究をしていました。学会の研究発表などがKPIとして置かれていましたね」
ーなるほど。基礎研究をされていた健太さんが、どうしてTHECOOに入社されたのですか?
浅井 「アカデミックは楽しかったのですが、もう少しビジネス寄りなことに挑戦したいと思い、転職活動をしていました。初めての転職だったので、まずは大手人材会社にエージェント登録をしました。その帰り道、当時GoogleからTHECOOに転職した中山 顕作(現・インフルエンサー事業部 執行役員)からご飯に誘われ、転職活動の話をしたら『じゃあうちに来ればいいじゃん』と言われたので、そのまま入社を決めてしまいました(笑)」
ー展開が早い(笑)。顕作さんとはどんな関係なのですか?
浅井 「大学院時代の友人です。1つ上の学年の先輩で、出会いは大学のキャンパスでした」
ー学生時代からの友人なのですね。でも、「来なよ」って言われて入社を決めるのはすごいですね。
浅井 「あまりよく考えていなかったのもあるのですが、Googleで働いていたことに加え、人とは違う視点で物事を考えることができて、話もおもしろい。人間的にも魅力がある人だったので、そんな人が誘ってくれるなら入社してみてもいいかなって思い、入社を決めました」
ー入社後はどのような業務をしていたのですか?
浅井 「ずっと営業をしていました。研究ばっかりやっていたので、『何ができる?』という質問に対して研究以外答えられず……。なので、顕作さんが所属している営業部隊に配属となりました」
ーその頃のTHECOOの規模感は何人くらいだったのですか?
浅井 「30人くらいですかね。インフルエンサー事業は始まって1年くらいで、『Fanicon』は立ち上がったばかりですね」
ー営業から始まったTHECOOでのキャリア。その流れでどうしてマーケティングに?
浅井 「営業所属だったのですが、ビジネス感覚がなく結果が出ない日々が続いていたことに焦りを感じ、誰も拾わない案件や顕作さんの仕事をかき集めていました。そんな中、作業効率化の話やデータ分析の話がぽつぽつと出てきて。プログラミングを過去に経験したこともあったので、データアナリストみたいな形でクライアントと関わるようになりました。だんだんと仕事に慣れていくにつれて、上司である下川 弘樹(現・取締役COO)と『もっと大きいことできるよね』『こんなことしたいね』といった話をする機会が増え、テクノロジーの力を活用して人依存からの業務脱却に挑戦するためにマーケティング部へ異動となりました」
ー人依存とは?会社としてってことですか?
浅井「会社としてもですが、業界としてもですね。
THECOOの魅力は“人”なんです。リピート率が高く、既存のクライアントからの信頼がとにかくすごい。担当者のきめ細やかな営業の結果、コネクションが太くなり、ビジネスとして成長しているのが個人の感覚だけじゃなく、数字としても出ています。ただ、新規顧客に対して『THECOOの強みは人です』という回答だと弱く、新規顧客の獲得には繋がらない。今は、営業に顧客がついているので、万が一営業が辞めてしまったら、お客さんもいなくなってしまうかもしれません。だから、営業担当ではなくTHECOOに魅力を作る必要があると考えました。そうすれば、今までの強みである営業力にさらなら武器を持たせることができる」
成長を続けるインフルエンサーマーケティング。日本ではさらなる伸びしろも
ー次に、インフルエンサーマーケティングの業界や、将来性について教えてください。
浅井 「インフルエンサーマーケティングですが、日本では毎年30%くらいの成長率で伸びています。美容やゲームといった特定業界では、業界スタンダードになり、大手はだいたい導入していますし、中小企業も手を出し始めています。ただ、世界基準と比べると日本はまだまだです。世界で見れば、インフルエンサーマーケティングを使うのは当たり前。アメリカや中国は特に伸びています。中国では、Eコマースやライブコマースの独自プラットフォームが強く、普通に広告を打つよりもインフルエンサーマーケティングの方が売れる。人に依存した広告が強いのが、中国の特徴です。企業を信じるよりも『この人が言うなら買う』といった考え方が強い」
ー世界ではスタンダードなマーケティングなのですね。日本はどうなんですか?
浅井 「中国やアメリカほどではないですね。ライブコマースはしていますが、中国ほどじゃないです。まぁ、中国が異常なんですけどね。アメリカもまだまだ、中国ほどはできていないです」
ー日本だとターゲティング広告があまり歓迎されていないように感じるので、もっともっと伸びるように感じます。
浅井 「それはありますね。情報を残していくことが今後は難しくなるので、インフルエンサーマーケティングは伸びると思います。インフルエンサーを使ったマーケティング手法は大きく2つあります。1つ目が『知名度を使った施策』で、2つ目が『ニッチなターゲットへの施策』。1つ目は認知度を使った、『この人が言うから』みたいな施策ですね。YouTuberのHIKAKINさんやヒカルさんをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。2つ目のニッチな層に向けてのターゲット施策だと、サバイバルゲームがわかりやすいですね。サバゲー人口は少ないですが、コミュニティがある。その中の影響力がある方に発信してもらうことで、一気に広がる。インフルエンサーマーケティングの強みの1つだと思います」
ーなるほど。私もメダカの育成の時は、メダカYouTuberの飼育を参考にします。それも含めて、日本では伸びしろがあるってことですか?
浅井 「おっしゃる通り。伸びしろは全然あると思います」
営業力×テクノロジーで築くオリジナルの強み。それがTHECOOの武器になる
ー次に、エンジニアを募集するに至った背景を教えてください。
浅井 「2年前くらいから、THECOOの武器がないとまずいと思っていました。THECOOの武器は営業力です。ただ、その営業力が圧倒的に自分には欠けている。その中で輝くにはどうしたらいいかを必死で考えたら、武器を持つことが必要だと思うようになりました。営業力が強みなのは、THECOOじゃなく広告代理店全般で言われること。テクノロジーの力を使えば、もっと解決できることがあると感じていたので、作り始めようと思ったのが2年前です」
ーその時はエンジニアを採用して、一緒に作ろうと思っていたのですか?
浅井 「いえ。最初は自分で作りました。以前は、インフルエンサーマーケティングを実施した後、再生動画数やコメントをチェックして、スクショを張り付けてクライアントに伝えていました。ただ、再生回数が3万回だったから『よかった!』『悪かった……』という会話に意味を見出せず。それであれば見える化してしまえばいいと思うようになり、投稿動画やYouTubeチャンネルのAPIを使って再生回数をヒストグラム化したりしていました。1時間ごとに再生回数を記録して、2週間後の推移がわかるようなツールですね。最初は自分用のレポートでしたが、周りのメンバーも一緒に使うようになり、見栄えをよくするために同じチームのエンジニアである阿形 信雄に依頼をして整えてもらい、レポートツールとして作り上げました」
ー『iCON Suite(アイコンスイート)』とは違うのですか?
浅井 「違います。『iCON Suite』を活用しても良かったのですが、プログラムの中身をいじることができませんでした。Instagramのレポートもしたいと思っていたのですが、商用サービスである『iCON Suite』は触ることができなかったので、自分でレポート機能を作りました。その後、以前作ったレポートツールに導入しました」
ー自分で作ったのですね。すごい。もう十分なのではないですか?
浅井 「まだまだです。これでは強みにならない。できることがもっとあります。見える化はできるようになったのですが、そこから次がない。マーケターが知りたいのは、『いくら売れるか』ということです。動画再生回数が見えるだけでなく、効果測定や売り上げへの影響力が可視化されないと、本当の意味で強みにはならない。他社では取れていなかったデータが取れるようになっているのですが、THECOOのバリューとしてはまだ輝けていないです。
だからこそ、THECOOのバリューとなるようなプロダクトを作ってくれるエンジニアに入社していただき、一緒に作ってほしいと思いました」
ーどんなプロダクトをイメージしているか教えてください。
浅井 「まだまだ足りないなといった点と、もっと魅力を出せるといった点の2軸あります。まだまだ足りない部分は、インサイトの部分です。再生回数の履歴やコメントを自動で引っ張ること、見映えをよくするのはできるようになりました。ただ、『この人おすすめです』という理由がまだ言えない。まだデータを人が見て、判断しています。そこのレポート機能まで伝えられてこそ、価値になると思っています。次に、魅力の部分。THECOOにはFanicon事業部とインフルエンサー事業部が協力して作ったDBがあります。インフルエンサーをキャスティングする時のリストを見える化するために作りました。ある特定の人を基点として、その人のSNSアカウントを紐付けたDBは、他ではなかなかないです。また、THECOOには『Fanicon』というプラットフォームもあるので、SNS以外からも情報を取ることができます。コアなファンの動きがわかるデータも持っているので、DBと上手く掛け合わせて何かできないかなって思っています」
ーDBはどのくらいの登録があるのですか?
浅井 「詳しい数字は公開できないのですが、インフルエンサーは感覚値では10万人くらいいるので、半分以上はカバーできるリストを持っています。これらのデータを活かすことで『この人がおすすめです』という説明を根拠を持って伝えられるようになる可能性があります。実現できれば、THECOOオリジナルの強みになると思っています。頭の中にあった情報をきちんとしたロジックで提案ができるようになれば、リード集めにも活かせます。
『DBリスト』と『Faniconが持っているコアなファンの行動データ』、そして『インフルエンサー事業部の営業力』。これらを繋げ、新たな価値を提供できるプロダクトを作りたいと考えています」
未開発の領域でのプロダクト作り。0→1を楽しめる仲間と一緒に挑みたい
ー最後にですが、どんなエンジニアと一緒に働きたいと思いますか?
浅井 「一緒にディスカッションしてくれる方と働きたいと思っています。抽象的なことに対して、意見や提案をしてくれると嬉しいですね」
ー0→1の制作を「おもしろい!」と思ってもらえる方とかですか?
浅井 「そうですね。石橋を叩いて渡るタイプよりも『やってみようぜ!』と思える方。ここにおもしろいものがあるかもって思って、走り切るパワーがある方が理想です」
ーなるほど。少し話が変わるのですが、今まではエンジニアの阿形さんと、どのような話をしていたのですか?
浅井 「『こんなこと考えているのだけど、どう思いますか?この情報取れたらおもしろいと思っています』という話から始まり、『それいいですね』となれば僕が仕様を考えて、それをベースにディスカッションしています。最近だと、APIを使ってYouTubeのライブ配信データを引っ張ってきて、見える化ができるようにしました。これも、阿形さんとディスカッションしながら1週間くらいで作りましたね」
ーインフルエンサーマーケティングで、プロダクトを作るおもしろさを教えてください。
浅井 「SNSはすごい勢いで発展しており、誰でもやる時代です。mixiから始まり、TwitterやFacebook、最近はTikTok。どんどん発展していくSNSとマーケティングは、もっとリンクしていくはずです。企業と個人の出会いの場にもなっていくと思いますが、そこに効果的にアプローチできる会社はTHECOOの他にはないと思っています。他の企業も挑戦はしていますが、成功はまだしていない。私たちは、開発されていない未知の領域で、さまざまなSNSに対して横断的にタッチできるプロダクトを作りたいと思っています。テクノロジーがまだまだ発掘されていない業界にメスを入れること、裁量を持ってプロダクトを作ることができるのはおもしろいと思いますし、やりがいがあると思っています」
ー楽しそうですね!【「できっこない」に挑み続ける】というVisionを体現するプロダクトになりそうですね。
浅井 「そうですね。会社としても、新しいビジネスの創出が大事なので、その点に関してかなり期待されています」
ー私も楽しみです。長い時間、インタビューありがとうございました!
浅井 「こちらこそ。ありがとうございました」