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【前編】「攻めの決断に早すぎることはないと思う」ゼネラルマネージャーが語るホテルスタートアップで働く理由と勝算

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大籠亮介。1992年生まれ。福岡生まれの北海道育ち。北海道大学在学中、バックパッカーをしていた際に旅先で出会った宿泊施設の多様で自由な空間に魅了される。新卒で大手メーカーに入社後、セカンドキャリアとして2016年4月より株式会社水星(当時、旧社名L&G GLOBAL BUSINESS)に参加。現在ゼネラルマネージャーとして会社の運営する4店舗のホテルをマネジメント統括を行う。

※この記事は前編、後編に分けてお送り致します。

常に冷静沈着 バランス型のエリートがとった大胆な決断


大籠さんは冷静な男だ。

取締役の龍崎翔子さんから初めて大籠さんの話をきいて分かったことは①ロジカルモンスター②とにかく仕事が出来て信頼されている。この2つの先入観は、その後、大籠さんと接していても覆されることはなかった。常に全体が見えていて、バランス感覚があって、めちゃくちゃ頼れる。旧帝大卒、元大手メーカー社員という経歴も(本人はほとんど表に出すことはないが)彼のそんなスペックの高さに納得感を与えている。

でも、そうだとしたら、何故この、一見どこの大企業でもやっていけそうな彼は、社員数万人、国外にも大きな市場を持つ大手メーカーを1年で退職をして、創業2年目の社員数当時数人の会社に転職するという、「一般的に見ると少し普通じゃない決断」をしたのだろうか。そんな個人的な興味もあり、今回は、現在ゼネラルマネージャーとして複数のホテルの経営管理をしている大籠さんにインタビューをしてみた。

そこには、普段あまり見ることの出来ない、大好きな旅行や将来の夢について子どもの様な笑顔で話す、普段冷静な男の意外な一面や、隠れた情熱、そして、キャリアや事業に対する筋の通った確固たる勝算があった。


学生時代、旅先の発展途上国で考えさせられた「幸せ」の意味。

金井塚悠生(以下、金井塚)
大籠さんはたしか大学時代にバックパックを背負って世界を旅していたんすよね。

大籠亮介(以下、大籠)
そうですね。旅行が大好きで、毎回長期休みはずっと海外にいっていたり、ヒッチハイクで日本を縦断したりしていました。旅行にハマったのは、大学時代一番仲良かった友達の影響が大きかったと思います。その友達が、1年生の夏休みに1人で1か月タイにいったみたいな話を聞いて、めちゃくちゃ面白そうだなと思って。その次の長期休みに、その友達と2人でインドとネパールに行ったんです。でも一緒に行動していたのは最初の1週間くらいで、残りはずっと一人で旅をしていましたね。そこで旅の魅力にドハマりしてしまってそれから長期休みの度に旅行に行くようになりました。

金井塚
旅行先で特に面白かったところとかありましたか?人生観変わったみたいなところとか。

大籠
人生観変わったところか。そうですね。今だからこそ当たり前みたいな感覚になっていますが、やっぱり初めていったインドや東南アジアの国々は衝撃の連続でしたね。発展途上国みたいなところばかりを旅していて、日本とは全く違うお金に捉われない幸せみたいなものに強い関心を持ちました。その興味が高じて工学部から経済学部に転部して、そこで開発経済という学問を学んでいました。

金井塚
学部でわざわざ転部してるんですね。めちゃくちゃ価値観変わってるじゃないですか。
そこから少しだけ普通ではない道に踏み出したんですね(笑)
ある意味リスクをとっている。でも転部して入った経済学部では卒業論文で学部の優秀賞をとっているんですよね。

大籠
まぁ、せっかく転部までしてるわけだし、真剣に勉強したいなと思って、幸福度について研究していたんですけど、計量経済など学部生にしては高度な解析手法などを使ってわりとがっつりやっていたのでそこが評価してもらえたのかもしれません。でも論文なんて教授のバックアップありきなので、100%自分の実力ってわけじゃないですよ。

グローバル、スタートアップ、ベンチャー、大企業。
現実と野望の狭間で選んだファーストキャリア。


金井塚
そうやって謙遜しつつさらっと凄い成果をだしているのが大籠さんらしいです(笑)
でも幸福度って面白いテーマですね。そんなことを学びながら、進路についてはどの様に考えていたのですか?

大籠
工学部にいた時から将来自分は多分エンジニアとかにはならないだろうと思ってました。それよりも多くの人と関わりながら一緒に何かをやる仕事がいいな、それだったら、事務系総合職かなと。そんな思いもあって転部したので、特に大学院に行きたいという様な思いもなく、大学3年生で普通に就職活動をはじめていましたね。あとは、よく海外にいっていたので仲の良い先輩は商社マンとかが多くて、商社、メーカー、あと海運などを見ていました
ただ、一方で海外を旅行していた際に出会った人達が、みんな凄く変わっていて、起業していたり、フリーランスだったり。そうした自由な感じに憧れがあって、漠然とベンチャー企業や起業なども視野にいれていました。

金井塚
優等生に見えて意外と冒険家な一面もあるんですね(笑)

大籠

どうでしょう(笑) でも、やっぱりいきなり起業したり、ベンチャー企業にいくという勇気はなくて、結局待遇が保障されていて教育もしっかりしている大企業をファーストキャリアで選ぶことになりました。

金井塚
最終的にはオーソドックスなところに落ち着いたんですね。そうして入社した会社は某大手メーカーでの仕事はどうでしたか。

大籠
前職は今でも凄く好きな会社です。辞める時も本当に辛かったぐらい、とてもいい会社でした。仕事は、需要と供給を予測して、在庫を調整をするという事をやっていました。営業と工場の橋渡しをするようなイメージです。元々数値管理などは好きだったので、強みを活かして楽しく働くことが出来ました。

金井塚
確かに数字に強くて分析に長けているイメージはありますね。
仕事で特にやりがいを感じたのはどういったところでしたか?

大籠
たくさんありますね。在籍期間は1年程度なのですが、本当にいろいろ経験させてもらっていたので。日本でナンバーワンのシェアのメーカーだったので、ルーティンの業務である在庫の管理に関しては、日本全国の在庫の管理なので数千種類、数十億規模の仕事に関わらせて貰っていました。また、ちょうど社内の在庫管理システムを新しくしようという時期で、そのプロジェクトにも参加させてもらえて、システム部門の人やグループ会社の人達と一緒に新しいシステムをつくったりもしていました。後は、アメリカの方の在庫削減のプロジェクトにも関わっていて、現地のヘッドクオーターが来た際には、在庫理論について英語でプレゼンをさせてもらったり。本来ならなかなか1年目では経験できないことに挑戦させてもらっていました。

男がキャリアで攻めるとき。
それは大企業で下積みを終えた30代半ばか、今か。

金井塚
凄いですね。大企業に入ったけど下積みばかりでイメージと違ったみたいな話はよく聞きますけど、むしろ対極で、1年目から大企業ならではの大規模な仕事やグローバルな仕事をバリバリやっていたんですね。一見、順風満帆に思えるのですが、そこから何故、今の会社に転職しようと思ったんですか。

大籠
なかなか言語化するのが難しい部分もあるんですが。会社で学べる社会人としてのスキルって、「その業界だから活きる専門的なスキル」と、「ある程度どの業界でも必要な汎用的なスキル」と2種類あると思うんです。前職の上司が凄く優秀かつ教育的な人で、仕事を通して、1つの事象でも常に他に応用がきく考え方や動き方を教えてもらっていました。そこで1年間いろいろやらせてもらっている中で、ある程度「社内で必要なスキル」と、「社外で必要なスキル」が一通り学べたという思いがありました。

そして、このまま働き続けた時に、これから先、社内で必要なスキル、商品知識や対人スキルなどは着実に伸びていくけど、社外で必要なスキルはこの環境で成長するのだろうかという疑問が芽生えました。社内で先輩の人達と話していても、自分は1人で食っていけるだけの力を持っているみたいに自信をもって言い切れる人はほとんどいなくて。将来的にベンチャー企業へのジョインや起業とかを考えているのではあれば、やはりその環境に飛び込むしかないのかなと思いました。あと、もう一つ、これはパーソナルな理由になるのですが、元々将来的に海外で働いてみたいという思いがあって、前職で海外に行けるのは早くて4年目とかで。結局計算したら、なにやかんやでやりたいことできるようになるのって、大企業だと30歳すぎとかになっちゃうんですね。でもその時になったら家族とかいるかもしれないし。最終的に今か30すぎかで考えると、挑戦するなら今かなと。一見大きなリスクをとっている様に思われるかも知れないですが、僕にとってはむしろリスクヘッジなんですよ。30代半ばとかで家族がいる状態で勝負するよりは、今勝負をした方が、引きの視点で見るとリカバリーの余地もあると思います。

金井塚
なるほど。なるほど。面白いですね。リスクヘッジのために、むしろ早期の段階でリスクテイクをして将来的に自分がやりたかったことに挑戦するという話は、今、大企業で働いている人達の多くに参考になる考え方なような気がします。でも、決断するの早いですね。悟るのが早いというか。(笑)僕のまわりでも、大企業で働きながら、将来的に起業してみたい、ベンチャーに行ってみたいという思いを抱えながらも踏み込めないみたいな人が結構います。

大籠
このままずっとこの会社にいるとどんどん居心地が良くなってしまって、外に出るタイミングを見失ってしまうという恐怖感がありましたね。そこで、将来起業などを見据えた時に一旦スタートアップに入って修行をしよう、どうせやるならやりたいことをやろうと決めて、いろいろ探していました。そこで出会ったのが龍崎翔子さんのUmeetの記事だったんですよ。

金井塚
おお。そこからすべてがはじまるわけですね。


後編では大籠さんがホテルプロデューサー龍崎翔子の記事をきっかけに、社員数万人の大手メーカーから社員数人の株式会水星に転職してから、あらゆる常識が通用せず、誰も正解を知らないスタートアップの現場で、コアメンバーとして事業を軌道に乗せるまでのストーリー、そして大企業からスタートアップへの転職を経験して見えてきた自身のキャリアの展望などについて語っていただきます。

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