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薬剤師業務をRe-engineeringする(②機能と価値編)

医療というサービスが消費されるプロセスを考える

私がこれからお伝えする内容は、医療関係者によって行われる“医療という行為”について言及するのではなく、消費者によって“医療というサービスが消費されるプロセス”について言及するということを頭の片隅に置いてください。

まず、命題である「リエンジニアリング」をするにあたってのポイントをおさらいしましょう。

・今日的課題は原価削減、品質/サービス向上、スピードアップ
・従来の標準品大量生産に適した、職能別に細分化された分業制アウトプットから、多品種少量に適した職能横断的な顧客志向・プロセスベースの仕事の進め方に革新する
・リエンジニアリングするためにはアウトプットが完了するまでのプロセスにおいて、職能を横断する(他の人間の専門的担当業務範囲を侵す)ことから、ITの活用による合理化の必要性がある

これまでの医療サービスが消費されるまでのプロセスは、「外来」と「入院」がメインでした。

外来は、医療機関に直接自分で受診して、診察・処置・処方をしてもらい、帰宅します。
入院は、医療機関に入り、全てを管理してもらいます。

そんなもんわかっとるわ!という声が聞こえてきそうですが、これらに共通しているのは、「医療機関の中(病院近くにある薬局を含む)で医療サービスの消費プロセスが完結している」ということです。

どういうことかというと、医療機関で「病気を治癒」させることができていたということです。

??? What are you talking about?

ですねよ。

要は、病気になったら病院に行って診断してもらって、薬もらって、0(ゼロ)→100に“戻って”終わり。
治癒=元の状態に戻すことが前提です。

しかし、これから高齢化に伴い、必要とされる医療は「治癒しない複合的な病気」への対応なのです。

これから病気は治すのではなく、人生100年時代と言われる寿命を見据え、付き合う時代に入っていくのだと考えています。

見えない、聞こえない、知らない、覚えていない、起き上がれない、歩けない、噛めない、飲み込めないなど、高齢化に伴ったこれらの症状は残念ながら治癒する(元の状態に戻る)ことは難しいでしょう。

高齢者への医療の現場ではこういった病気と複合的に付き合うことが多く、さらに個々人の持っている病気はそれぞれバリエーションも異なる上、対象者が今後ますます増えていくことが想定されていますが、既に病院や介護施設だけでは対応できず、在宅医療へと流れ始めています。

在宅医療は医療の消費プロセスの観点からすると、「外来」や「入院」とは異なり、訪問する医師や看護師だけで従来通りの医療サービスの消費プロセスが完結しないということになります。

つまり、在宅医療の現場にはこれまで適用されてきた「外来」や「入院」の仕組みや考え方では通用しないということです。

薬剤師という資格の「機能」と「価値」

話しが少し変わりますが、1989年(平成元年)に約0.5兆円規模だった調剤薬局市場が、2015年(平成27年)には7.8兆円を超える規模にまでなぜ発展できたか?

医薬分業という概念そのものは明治時代からあり、当時ドイツで採用されていた医療制度を参考に取り入れられたとされています。

しかし、実態として本格的にスタートしたと言われているのが1974年(昭和49年)の診療報酬改定の年と言われており、その年に、医師の処方箋料が前年まで6点(60円)だったのが、50点(500円)に引き上げられ、その結果、日本式の医薬分業が本格的にスタートしたと言われています。

これにより病院やクリニックの前で決まった診療科に適した薬の在庫を確保し、処方箋に記載された決まった薬を渡せばお金になるという新しいビジネスモデルができ、業務独占的な側面もあり「割にあったビジネス」として規模経済の論理が働いて広がっていったことが、市場規模拡大の大きな要因の一つでもあります。

この様な話をすると、政治的な背景や職能的役割についての観点からご批判が多いのは承知しておりますが、これは医薬分業の制度そのものやそれによって起きた現実の良し悪しの話しでは、一切ありません。

最初にお伝えした「消費者によって“医療というサービスが消費されるプロセス”について言及する」ことを改めてご留意ください。

話を戻しますと、医療機関の中で医療サービスの消費プロセスが完結している「外来」と「入院」カテゴリーであれば、薬を渡す「機能」が医療機関の外に行ったとしても、消費プロセス自体は基本変わりません。

むしろ外にアウトソースすることで、経済合理性としても医療機関側(特に中小規模)のリソース分割が無くなり、処方箋料も上がり、人件費や薬剤等のコスト管理も楽になるなどメリットが多くあります。
(他にもダブルチェック機能など“医療行為”に関するメリットもありますが、上記の通りサービス消費プロセスについて言及していますので、ここでは出しません。)

しかし、残念ながら私たちが収入を得ている市場規模がどれだけ大きくなろうと、経済合理性があったとしても、その市場にあるお金のほとんどは「医療費=社会保障費」、そう国の財源なのです。
(この点については後述します。)

さて、先ほど“薬を渡す「機能」”という表現をしましたが、薬局や薬剤師をそのように表現して気分を悪くされた方もいらっしゃるかもしれません。
表現の仕方によって気分を害されたなら、申し訳ありません。

ここで今回の本題です。

薬剤師の資格は「機能」なのでしょうか?「価値」なのでしょうか?

薬剤師という資格は業務独占資格です。

この一部の業務を独占できる資格を持っていることは、「機能」を有しているのでしょうか?それとも「価値」を有しているのでしょうか?

この問いは極めて本質的でシンプルな質問だと思います。

機能と価値の違いは言葉の意味の違いは理解できても、意外と物事に当てはめると理解するのが難しかったりします。

例えばスマートフォン。

あなたが持っているスマートフォン、なぜそれを選びましたか?
操作しやすいから、デザインがいいから、容量が大きいから、使えるアプリが多いからなど、様々な理由があると思います。

その挙げた理由は、消費者であるあなたにとって「機能」ですか?「価値」ですか?
(例:あなたにとって“操作しやすい”は「機能」ですか?「価値」ですか?)

その挙げた理由は、スマートフォンを売る側からすると「機能」ですか?「価値」ですか?
(例:売り手にとって“操作しやすい”は「機能」ですか?「価値」ですか?)

これらの例題を基に改めて伺います。

あなたが持っている“薬剤師という資格”は、医療サービスを受ける消費者にとって「機能」なのでしょうか?「価値」なのでしょうか?

「機能」とお答えいただいた方:
ぜひどういった機能があり、その機能がどういう価値を作っているのか、逆に機能をどう使って現状を打破、または新しい価値を作っていくかなど、ご意見やアイデアをメッセージいただきたいと思います。

「価値」とお答えいただいた方:
ぜひどういった価値があるのか、またその価値を提供する方法や機能について、ご意見等をメッセージをいただきたいと思います。

※メッセージを送るには以下にある、いずれかお気に入りの求人にある「話しを聞きたい」からまずはご応募ください。

次回(③バリュー・フォー・マネー編)に続く。

バックナンバー:①問題提起編

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