READYFORには「キュレーター」と呼ばれるポジションがあります。
キュレーターとは、クラウドファンディングの実行者に伴走し、プロジェクトの立案から終了まで、成功に向けてサポートするプロジェクト専属担当者のこと。
“READYFORらしさ”を体現する、組織の中核ともいえる重要なポジションですが、裏方ゆえ、キュレーターが日々どんな戦略を立て、何に苦悩し、どのようにプロジェクトを成功に導いているのかは、あまり知られていません。
あのクラウドファンディングのムーブメントはいかにして生まれたのか。READYFORキュレーターの仕事の本質とは……?
そこで、キュレーターの仕事の舞台裏に迫るインタビュー連載「ムーブメントの裏側」を始めます。第一弾に登場するのは、医療カテゴリ担当として30を超える医療機関・研究機関のプロジェクトに伴走し、2021年1月から現在までに3億円以上の資金調達をサポートした実績を持つ、米本 拓さんです。
顧客と同じ目標を追いかけることに魅力を感じて
── 米本さんは、READYFORにジョインするまでどんなお仕事をしていたんですか?
前職ではリース会社で営業の仕事をしていました。主な顧客先が病院やクリニックなどの医療機関でしたので、医療機器のリースをメインに手がけていましたね。
── なぜREADYFORに入社しようと思ったのでしょう?
WantedlyでREADYFORのキュレーター募集を見つけて。キュレーターという職種はそのとき初めて知ったのですが、お客さんと同じ目標を追いかけられる点に魅力を感じて、応募しました。
というのも、この募集を見る少し前に、私にとって転機となる出来事があったんです。私の顧客先だったクリニックで移転計画が持ち上がったのですが、銀行から借り入れてもあと3億円足りないと。このままでは移転できないから、何とかお金を集められないかと相談されたんです。
他のリース会社に掛け合ったり、いろいろと泥臭く奔走して、無事に資金の目途を立てられました。このときクリニックの先生方と初めて同じ目標に向かって仕事ができたと感じた。個人的にもすごくいい経験でしたし、こういう仕事の醍醐味をまた味わいたいと。そんなきっかけもあり、キュレーター職でREADYFORに入社しました。
キュレーターに求められる、“守り”の視点と“攻め”の戦略
── キュレーターの仕事について聞かせてください。プロジェクトを進めるうえで、どんなことに注力しているのでしょうか。
たとえば、ある病気を早期発見するための研究を進めるプロジェクトを担当したんですが、その際に注力した点は大きく2つ。プロジェクトの「見せ方」と「広げ方」です。
プロジェクトの見せ方については、既存の診療方法を否定するような表現にならないように細心の注意を払う必要がありました。たとえば、その病気の死亡者数を減らすための本質的な課題が、検査の「受診率の低さ」にあるとします。
その課題設定を誤って訴求してしまうと、既存の診療を受けようとしている人が躊躇してしまうかもしれない。それは実行者さんの意思に反します。
だからこそまずは、このプロジェクトが向き合うべき本質的な社会課題とは何なのかを正しく捉え、適切な課題設定を行うことを重視しました。新しい研究の有用性を伝えながらも、誤解を招かないメッセージにしようと。
── ただプロジェクトの有用性をアピールすればいい、というわけではないんですね?
そうなんです。“守り”の視点といいますか……リスクを軽減できるようにコントロールするのも、キュレーターの大事な役割だと思っています。
一方、2つ目の「広げ方」については、“攻め”の視点で戦略を立てました。
プロジェクトをスタートする際に実行者さんが記者会見を開き、ひとまず告知はできたのですが、メディアでのプロモーションってインパクトが大きい一方で、効果の持続性がないんです。長くても1週間で終わってしまう。そこで継続的な情報発信ができるようにSNSを活用しようという話になりました。よりライトな層に広げられるTwitterで、プロジェクトのアカウントをつくってもらったんです。
実行者さんに打診した当初はためらっていらしたのですが、なんとか説得をして(笑)。プロフィールの設定やどのようなアカウントをフォローするかなどを提案し、実行者さんも、毎日投稿してくださいました。とても反応率のよいアカウントになり、プロジェクト終了後も、Twitterを活用しつづけてくださっています。
── ほかに取り組んだことはありますか?
はい、プロジェクト終了までラスト1週間というタイミングで、ゲストを招いて実行者さんとYouTubeでライブ配信を行いました。文字ではなかなか表現しきれなかった、実行者さんの熱意や研究にかける思いを伝えられる場になったと思います。こういった企画や台本づくりもキュレーターが担いました。
── クラウドファンディングの企画設計から募集ページづくり、SNSの仕掛け、配信動画の企画・台本・進行まで…! キュレーターが担う仕事の範囲はものすごく広いんですね。それだけ、さまざまなスキルを学び、磨ける仕事なんだなと感じました。
そうですね。クラウドファンディングの成功のためにあらゆることをやる仕事ですから。僕も、まだまだ勉強しなければならないことばかりです。
実はプロジェクト終了後に、実行者さんの研究が、メディアに取り上げられました。資金調達の一部としてクラウドファンディングのことも紹介されて。こんなふうにさまざまな形で世の中に広めていくきっかけをつくれる仕事なんだなと感じましたね。
クラウドファンディングは目標への「過程」、だからこそ
── キュレーターが仕掛ける戦略はプロジェクトごとに変わるのでしょうか。
プロジェクトによってまったく違います。たとえば、小児科医の吉岡淑隆先生が立ち上げたクラウドファンディングは、キュレーターがコンセプトづくりから行ったプロジェクトでした。
吉岡先生が、1年後に小児クリニックを開業することは決まっていて、そのクリニックに併設する新しい病児保育室をつくりたいと。ただ、どのようにクラウドファンディングを利用すべきかの構想はありませんでした。
私たちが提案したのは、1年後の開業を見据えて2回のクラウドファンディングを行うこと。吉岡先生の希望でもある「みんなでつくる病児保育」をキーワードに、1回目はそのビジョンに共感・賛同してくれる仲間を集める目的で、そして2回目は病児保育を利用してくれる方を集める目的にコンセプトを変えて、クラウドファンディングを行いました。
プロジェクトの「広め方」も、先ほどお話した事例とは異なっていて。今回のクラウドファンディングに興味を持ってくださる方はTwitterには少ないだろうと考えました。そもそも埼玉県越谷市のレイクタウン近くに建つ病児保育室なので、遠方に住んでいる方は利用できません。
吉岡先生と「地域の人に広めていきましょう」という話をして、ママさん向けのイベントを行っている方とつながったり、地元のお店にチラシを置いてもらったり。ローカル的にクラウドファンディングの支援を呼びかけていく中で、地元のメディアから取材を受けたり、「病児保育の研修をやってもらえませんか?」と依頼がきたりしたこともありました。
地域でのネットワークが広がっていったことは、クラウドファンディング終了後も継続して、病児保育室の利用者を増やす観点からも、良かったと思っています。
── 同じ医療カテゴリのクラウドファンディングでも、動き方はさまざまなんですね。今回のようにプロジェクトのコンセプトをゼロからつくっていくときには、どんな点に気をくばっていますか。
クラウドファンディングはあくまで“過程”であり、“手段”に過ぎないということを意識しています。実行者が本当に実現したいことは何なのか。その実現のためにクラウドファンディングでできることは何なのか。長期のビジョンをぶらさず、クラウドファンディングをどうリンクさせていくかが重要です。
ですから、ただ単にクラウドファンディングでいくら集めるとか、クラウドファンディングを行う数カ月だけを切り取った提案をすることは絶対にないんです。
── 最後の質問です。米本さんにとって「READYFORのキュレーター」とは?
実行者と支援者のベストを見つけにいく仕事、でしょうか。
実行者視点では、この実行者さんがどうやったら目指しているところにたどりつけるかをとことん考えます。そして担当するからには必ずプロジェクトを達成させなければなりません。
一方、支援者さんがクラウドファンディングの募集ページを読んだときにどう感じるのか、「支援してよかった」と思えるかどうかを徹底して考えることも私たちの仕事です。
双方にとってのベストは何かを考え、その橋渡しをするのが「READYFORのキュレーター」なのかな、と思っています。
米本拓 TAKU YONEMOTO
READYFORキュレーター / キュレーター事業部 /医療カテゴリキュレーター
リース会社/医療機関への法人営業担当を経て、READYFORに参画。医療カテゴリ担当として、30を超える医療機関/研究機関のプロジェクトに伴走。2021年1月より医療カテゴリのマネジメントキュレーターとして、現在までに3億円以上の資金調達をサポート。病院マーケティングサミット2020に登壇。
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