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「自閉症の弟を理解する」夢を叶えます。Apple,Amazonを経て一番やりたいことをやるためEmpathにジョインしたミサキさん|:松本 美咲さん(Head of R&D)インタビュー

プロフィール

松本 美咲 Head of R&D

兵庫県出身。カリフォルニア大学バークレー校へ進学し、脳神経科学・言語心理学を専攻。大学卒業後はビックデータ解析エンジン開発スタートアップでシンガポール国立大学感染症研究所で多次元医療データ可視化ソフトウェアの研究開発に従事。AppleでエンジニアとしてAI/ML開発に携わったのち、Amazonにてプロジェクト・マネージャーとしてAlexaの開発を担当。2022年11月にEmpathへジョイン。


私の夢は自閉症の弟を理解し、コミュニケーションを取ること

突然ですが、私には自閉症をもつ5歳年下の弟がいます。弟は喋ることが難しいため、自分の意思を相手に上手く伝えることができません。例えば、靴の中に小石が入っていて不快でもそれを周囲に伝えることができず、我慢して歩いてしまい、帰ったら足が血だらけだったということもあります。そんな弟を理解したいし、意思疎通が難しいことで苦しむ両親を助けたいと想いから、子供のころから「将来は医者になって、自閉症の研究をしたい」と思っていました。

結果的に医者という職種ではなくなりますが、これまでとこれから、目指していることは変わらず、自閉症の弟、ひいては同じように意思疎通が難しい症状をもつ方を助けたいという夢を持っています。そしてこの夢は自分だけのものではなく、弟の同級生やその家族からも応援されていて、周りのみんなの夢でもあると思っています。


医者を目指して渡米、エンジニアの道へ

高校卒業後、医者を目指してカリフォルニア大学バークレー校へ進学しました。この大学はエンジニアリングに強い学校だったので、脳神経科学という専攻もエンジニア寄りの分野になっていて、コンピューターサイエンスが必修でした。パソコンには殆ど触れたことのない田舎の高校生だった私はコピー&ペーストさえ知らず、周囲に唖然とされたのを鮮明に覚えています。周りには5歳からプログラミングを学んでいる学生がざらに居るような環境だったのでレベルが高く大変苦労しました。幸いにも友人に恵まれ、助けてもらいながら、卒業まで頑張ることができました。

その友人のうちの1人が「僕も医者になろうと思ったけど、医者は1対1でしか人を助けられない。エンジニアは1つのシステムを作れば多くの人を助けられる」と語ってくれました。

私はその言葉に衝撃を受けて、「確かに弟を助ける道は医者だけではないかも」と思うようになりました。さらに言うと、医療に関する研究は実際の治療に結び付くまで数十年かかることが殆どです。弟が生きているうちに助けられる技術を産みだすには、テクノロジー領域のほうが近道ではないかとさえ思うようになりました。

もう一つテクノロジー領域への道に確信を持てたのは、大学3年生の時に休学をして、さまざまなインターンやアルバイトを経験した頃です。日本に一時帰国し、スタートアップ企業をはじめ、Googleや介護施設など、プラクティカルに行動していました。

アメリカ帰りの19歳で髪はオレンジ色という、田舎町においては奇抜な存在だったとは思うのですが、特に地元の介護施設でのアルバイトをしていた時は、沢山のおじいさんおばあさんに可愛がっていただきましたし、自分自身も弟をサポートした経験を活かすことができました。靴に石がはいっていないか、コップの柄の位置は取りやすいか、発話は無いけど何かを訴えていないか、自然とそういう情報をキャッチする感覚が身についていたことは、「自分の経験を誰かに役立てることができる」という自信にもつながりました。

一方で、介護施設は事故等を避けるために、マニュアル作業が多いという環境の中、それに従うために多くの時間を取られたり、職員が疲弊しているといった現場を目の当たりにしました。このような苦しい部分についてもテクノロジーで解決できるのではと考え、大学に戻ってからはエンジニアリングの勉強に注力するようになりました。


スタートアップをきっかけにApple・Amazonで音声エンジニアリングの道へ

大学卒業後は地元企業でデータエンジニアとして働いていたのですが、ある時友人に誘われて気軽な気持ちでスタートアップイベントに参加しました。そこで出会った社長からビックデータ解析やデータ可視化の分野の魅力を教わり、就職しました。(この頃、スタートアップについて知る中で、Empathのことも認知しました。)

というのも、自閉症のような診断基準が難しい診察は、医者の主観ではなくビックデータ解析で客観的に診断できるようになるのではと考えたからです。そんな可能性を感じつつ、こちらの会社ではシンガポールに赴任し、感染症に関わる仕事をしていました。日本に帰国してから、もっと興味の持てる分野に直接的に携わる職場を求めていた時に、Appleの自閉症のアクセシビリティのCMをみて、応募したのが最初の転職のきっかけです。

AppleではSiriに関わる仕事をしていて、音声関連のエンジニアリングに携わるようになりました。また、尊敬するチームマネージャーとの出会いがありました。マネージャーは「自分の仕事はチーム全体がベストなワーク環境にすることだから、なんでも言ってね!」といつも言っている方で、その方のおかげで楽しく仕事ができたし、私もそういうマネージャーになりたいと思いました。この背景には、私自身、大学時代に自分より優秀なエンジニア(学生)達が、より作業をしやすくする役回りを担ってきた事があります。弟の生活をより良くしたいという夢を実現するには、自分が手を動かすよりも、私より優秀なエンジニアが開発をしやすい環境をつくる事で、彼らの作業速度を上げたいと思っていたんです。尊敬する上司のもと、充実した仕事をさせていただいていました。

ただ、私は「これ面白そう!」と思うと、すぐにチャレンジしてしまう性分でして、、、ある時アレクサ開発人材の募集を見かけて応募し、Amazonに転職します。Appleは大好きだったのですが、社内で開発組織が完結しているという特色がありました。一方、Amazonはパートナーも多く、その分開発にスピード感があるという魅力があったんです。

Amazonでの仕事も面白く、テクニカルな部分も含めて担当していたのですが、チームがアメリカに所在していたので時差が身体に堪えてしまい、安定して働ける次の職場を考えるようになりました。Amazonでの仕事をしながら、Emapthでは1年前から副業としてジョインしていたので、転職先の候補として検討していましたし、会社との対話を重ねて、社員として入社することを決意しました。結果として、一番やりたかったことができているし、自分を活かせる環境なので、Empathに入って本当に良かったと思っています。


Empathでの仕事とビジョン

大前提として、私のモチベーションは「自閉症の弟を理解したい」という夢を叶えることです。そのためには、例えば言葉になってはいないけど、「あ」といった声が喜んでるのか悲しんでるのかなど、音響解析を用いた感情解析を実現したいです。ほかにも合成音声、自然言語処理、音声解析などのスピーチテクノロジーのパズルを組み合わせることで、発話が難しい人のコミュニケーションがスムーズにできる世界を作ることが、私のライフミッションだと思っています。

この夢に向かいつつ、今目の前にある具体的な仕事は、音声認識等のモデルの調整、開発のロードマップを計画すること、データの土壌づくり、さらには研究者・エンジニア・インターン・アルバイトとの1on1の実施、など、多岐に渡っています。全てはメンバーが楽しく、貢献している実感を持ってモチベーション高く働けているか、そこに回帰しています。それが実現できれば、開発のスピードや会社の成長につながり、私の夢にも近づくことができると考えています。

そして将来的には、Empathが言語学データの日本代表のような存在となり、日本の言語学を活気づける、そんな存在になりたいと思っています。日本語のデータはそもそも少なく、研究者泣かせな領域です。世界と同じレベルになるためには私達が取り組まなければと思っています。

そして、私にとってEmpathの成功はマイルストーンの一つです。音響、感情、合成音声、スピーチテクノロジーのパズルを完成させ、将来的には、話せない人も話せる世界を作りたい。そのために、より研究者や開発者が「やってみよう」と思えるような環境づくりをしたいですし、実際に大学との共同研究なども積極的に仕掛けていきたいと思っています。

ちなみに、私は新しい環境や場所が大好きで、来月には中国の上海に引っ越して新生活を過ごそうと思っています。働く場所にとらわれずサポートしてくれる会社に感謝しています!

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