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プロフィール
志村 侑紀
1991年生まれ。16歳で渡米、ミネソタ州の全寮制高校に入学。卒業後Santa Monica Collegeに入学し、1年後にUCLAへ編入。卒業後、2年間Harvard UniversityにてMina Cikara教授のもと社会心理学と神経科学の学際的研究に従事。契約満了後、PhD取得のため孫正義財団の一期生として渡英し、University College London(UCL)に所属。コロナ禍の2020年3月に日本帰国後、9月に博士課程を中退。2020年10月よりEmpathに入社。
私がやりたいこと
ーー1個のチームになって目標に向かって頑張る
はじめに
ーー何かを習得したくて16歳で渡米
私は16歳からアメリカに渡ったのですが、その前の日本での生活は、進みたい道といった将来の目標を見出せず苦しい時期がありました。そこで「英語が話せるようになる」といったわかりやすいゴールを決めて、大学では映画の勉強をしたいと思い渡米しました。アメリカに行くにあたり、両親に留学にかかるお金のこと、その後の進路などをプレゼンして、OKの出たプランで送り出してもらいました。
私と「共感」について
ーー映画監督の夢からはじまった共感への想い
私は昔から映画が大好きで、特に、違う価値観やバックグラウンドを持った人たちと同じシーンで泣いて「あのシーンよかったよね!」と話す瞬間に映画の楽しさを感じていました。同じものを観て同じことを感じたという体験が「世界平和につながる!」と思っていて、そんな体験をつくることができる映画監督になりたかったんです。でも、いざUCLAで学ぶ道が見えてきたときに「映画」はあくまで手段であって、映画を通じて得られる「共感」のしくみに興味があると気が付きました。だから、カレッジでは心理学を学んだり、大学では共感の研究を進めていました。
ーー研究者としての視点、人はどうしたらハッピーか?
博士課程で進学したUCLは、Computational Neuroscience(計算論的神経科学)に強く、数学的に脳の活動をモデル化する、という技術に富んでいました。ここでの知見から1つ面白い実験をご紹介します。
・人には利他的なヒトと、利己的なヒトがいる
・利他的なヒトが利他的なことを強制されてもハッピー、利己的なヒトは利己的なことを強制されてもハッピー、逆はアンハッピー
・一方、強制されてない状態では、時々利他的なヒトも利己的になることがあるし、利己的なヒトも利他的になることがある。いずれも“自分の意志”で自分の行動を決められたときはみんなハッピー
この研究からわかることは、人はフリーウィル(=自分の意思)が尊重された状況で、本来の価値観に沿った行動をとらなくてもハッピーということ。ただ、行動規範を強制される環境=例えば会社に所属するときは、所属する環境と自分の価値観が合っていないと人はアンハッピーになってしまう。だから、カルチャーフィットは大事なのだと思います。その組織の価値観に共感していれば、強要されてもハッピーで居られるからです。
普段私は「人は短い人生の中で、何%ハッピーでいられるんだろう」と考えています。個人的には、いっぱいハッピーで良いと思います。そして、そういう世界が実現するためにはどういうソリューションが提供できるんだろう、ということを常に考えています。
※お気に入りのヘッドセットを装着していつもミーティングしています
Empathでやっていること
ーー私の仕事は〇〇
まず、UI/UXのリサーチやディレクションをしています。私自身はデザイナーではありませんが、Empathの売りとなる商品を作るために、様々な企業における課題の共通口を見出すということを常に考えています。そして、その共通口に対するソリューションを設計するために働いています。それ以外にも、プロジェクトマネジメントや、研究者として扱っていたデータ解析を用いてプロジェクトに入ることがあります。そして、経営に近いところで会社に参画できているので戦略の部分についてサポートもしています。
Harvardに所属することになった訳
ーーみんなの困っている課題をみつけてブレイクスルー
UCLAを少し早めに卒業できることになり、その後の進路を考えるため、大量の論文を読んでいました。その最中でMina Cikara教授の論文に出会いました。あまりにもその論文が面白くて、子どものときゲームにはまって以来の「夢中になっていたら朝だった」という集中力で読んでしまったんです。その次の日にMina先生に「私はもうすぐUCLAを卒業するので、無給でも良いから1年間雇ってもらえませんか」とメールしました。実際に会いに行って所属を認めてもらえて、結果的には所属1か月で給与が発生しました。
何が起きたかというと、無給とはいえ机をもらってオフィスに所属することができたので、まずはMina先生以外の教授にも話を聞きに行きました。他の教授は10名程居てそれぞれのカラーのラボを持っているのですが、「新しく配属されたので、どんな研究をしているか話を聞かせてください」とアポをとって、各教授と1on1をしました。
そして、全員との面談を通して、彼らが共通して困っていることを一つ見つけました。強化学習という機械学習の手法を使って研究したいのに、誰もその情報を一元化してなかったんです。そこで私がセミナーをセッティングして、興味がある教授や学生を集めて一緒に勉強する機会を設けました。その馬力に「I've never met anyone like you, and I want you here as a full-time researcher!(あなたみたいな人は初めて。契約するからここにいてほしい!)」と言ってもらえて、2年間そこで研究することになりました。もちろん2年間の間に結果を出さなければならないので、論文の執筆に奔走して、いろんなプロジェクトを手伝って、1つの論文を出しました。しんどいこともあったけど、楽しかったです。こんな風に「みんなの困りごとを見つけて自分が解決に向けて取り組む」という方法はこれからも続けていきたいと思っています。
※都内でシェアハウスしています。写真の2人は会社のメンバーでもあり同居人。
将来に向けて
ーーライフミッションのヒントがここにあった
私のライフミッションとして「いじめが無い環境をつくる!」というのがあります。これにはいじめの撲滅だけではなく予防という側面もあるのですが、Empathに入って分かったことがあります。それは「そもそも、ここにはいじめが無い」ということ。私はのびのび働かせていただいていて、ありのままでいて否定されないし、私だけでなくお互いがそういう姿を認め合えていると感じています。もちろん、人間なので意見が対立することはありますが、対話をしたり、建設的な議論をしたりと、互いの感情や行動に対して理解しようという文化が社内に根付いているんです。そしてお互いを認め合えていれば、そこに「普通は~だよね」という言葉は一切出てこない。多様性に対してオープンマインドな人たちが集まる環境は必然的に排他的にはならない、ということをEmpathに来て改めて実感しました。
ーー起業します!
近い将来起業したいと思っていて、今はEmpathで修行させてもらっています。研究の道から企業に入ってわかったのは「ビジネスは本当に大変、難しい」。だからこそ、ここに居て学ぶことしかないです!バックオフィスやエンジニア、デザイナー、事業開発、経営など…すべての業種と一緒に働いて、どうやったらコラボレーションできるのかというのを常に考えること。そして、Empathは自由度が高くてタスクの前ではみんなが平等だからこそ、その状況で私はどういうリーダーであるべきか、チームと会社を成長させるにはどうしたら良いのか、そういったことを考えて仕事をしています。
特に最近実感しているのは、会社という組織で経営サイドが出す1つの指示は、エンジニアやデザイナーなどの手を動かす“専門家”にとって指数関数的に大きな影響力をもたらすということです。例えば「オンプレミスからクラウドにします」という一言で、現場の専門家の方はサーバーの仕組みやらインフラやら、膨大な作業量を伴って変更をしなければいけない。この「職人がなせる仕事」の内容を理解していないと、結果的にチームに軋轢を生んでしまう。私自身が開発やデザイナーの仕事をすることはできないけれど、今は隣で勉強させてもらいながら様々な業種について理解を深めて、最適な協業のあり方について研究しています。この経験を重ねて上手く仕事を進められるようになるほどEmpathに貢献することができますし、将来的にはこのスキルを活かして経営したい!と思っています。
侑紀さんは、かなりパワフルで自発性がすごい!と思ってるのですが、どんな教育を受けたか、よかったら教えてください。
お母さんは0歳のころから私を対等な存在として育ててくれました。やりたいことは絶対止められなかったです。ルールを明確に設定されて、例えば危険なことは禁止されていたし、それを破るとペナルティもあった。
けれどもそこに不条理は全くなかったです。言葉でコミュニケーションをして「これはだめ」と合意のあったものについてはルールが明確だけど、それ以外はなんでもやって良く、本当に自由に過ごしました。あとは、人が傷つくことはしてはダメというのはありました。
お母さんに対して矛盾を感じたことはほとんどなくて、こういう関係性にストレスを感じたことは全くなかったです。ノンストレスでした。
編集後記
侑紀さんの言葉は次から次へと溢れてきて、人生へのモチベーションに溢れていました。言葉の大洪水でこちらが溺れそうなくらいです。「経歴は華やかかもしれないど、実際には心も体もボロボロになったことは沢山ある」とも語ってくれました。このページには書ききれないことが色々あるので、ぜひ侑紀さんの話を聞きたい!という人はご連絡ください。一緒に溺れましょう。