プロフィール
久保田 敦(Atsushi Kubota)
大手不動産デベロッパー会社で業務経験を積んだのち、水族館の広報担当としてオープン前後のPR業務に従事。その後、京都府北部の美山町で観光広報・インバウンド・移住支援など多様な業務に取り組む。2015年オズマピーアール入社。現在は関西エリアの企業・自治体・大学など様々なクライアントの広報PR戦略の企画立案・実行をサポートしている。
突然の抜擢。
久保田の広報・PRとの出会いは、意外なものでした。大学卒業後、不動産関連業務に従事していた久保田は、入社4年目の秋、社内の新規事業として開業を目前に控えていた水族館事業部への異動を自ら志願します。そして、水族館事業の準備室に異動してきて初めて、自分のポジションが広報担当であることを知らされるのです。
一般的に広報担当者が何を行っているのか、全く知りませんでした。「どうやら大抵の企業には広報という部門があるようだ。ホームページの運営などをやっているのかな。」という漠然としたイメージしか持っておらず、この仕事の重要性・大変さ・やりがいをあまり認識していませんでした。
オープン前の目まぐるしい忙しさの中、水族館公式ウェブサイトの立ち上げ・施設の全体概要を発表するプレスリリースの作成・プレス向け内覧会などの実務を経験。久保田は走りながら広報スキルを身につけます。
1ヶ月前までオフィスビルの開発やマンションの売却を行っていたのに、いきなり水族館のティザーサイトづくりや、密着取材の調整をするわけですからね。とにかく万事未経験の仕事ばかりで大変でしたが、張り合いのある日々でした。今振り返ればもっと上手くできたこともたくさんあるのですが、当時のベストを尽くせたのではないかと思っています。職人気質ともいえる現場の飼育スタッフとの調整も、広報にとって重要な仕事です。
広報担当として全力で駆け抜けた水族館時代
水族館という施設は、飼育・企画・運営・飲食・物販など、様々な部門がチームとなり、力を合わせることで成り立っています。特に飼育スタッフから入る情報は広報担当にとって重要で、彼らとの協働なしには広報は成り立ちません。彼らとのコミュニケーションから私は多くのことを学びました。
例えば、飼育スタッフの早朝から多忙な仕事のリズムを理解すること。コミュニケーションを図る際は、事前に図鑑などで勉強し、できる限り知識を得たうえで臨むこと。協力をお願いする際は、とにかく腹を割って懐に飛び込んで、質問・傾聴をすること。そして感謝を欠かさないこと。これらを常に意識していました。
飼育スタッフの仕事ぶりを通じ、生き物たちが見せてくれる感動を目の当たりにできることは、広報担当の“役得”です。自分が得たその感動も含め、広報担当としていかに伝えていくか、試行錯誤しながら仕事に取り組んでいました。
ー PR・広報にとらわれない地域活性化の新たなチャレンジ
およそ2年間で、水族館2館の広報部門の立ち上げと、オープン後の広報業務を経験した久保田。初年度の目標入場者数を大きく上回るなどの功績に貢献するとともに、広報・PRの基礎を培いました。
その後久保田は、京都の山間部に移り住み、地域の活性化という新たなチャレンジに取り組みます。そこでは、広報・PRの分野にとらわれず、新しい試みにもどんどんチャレンジしました。
広報の仕事は、特に求められていなかったのですが、水族館での経験を活かして自主的に行ってました。
それ以外にも、宿泊施設のフロント業務の傍ら、公式ウェブサイトやSNSでの情報発信、ネイチャーツアーの企画運営、インバウンド誘致の企画、移住支援、さらには地域のライトアップイベントの実行委員会に参加して地域の人とイベント運営など・・・。
地方では、百姓が百個の仕事・スキルを持つように、一つの専門分野に特化してやっていればよいということはないので。様々なことに取り組みました。
1年目の冬を迎えると、お客さんがあまりに少なく、暖炉に薪をくべて時が経つのを待つしかないくらいヒマだったんです。そこで、2年目からは、冬の閑散期の来場を増やす施策に力を注ぎました。
例えば、スノーシーズンの魅力を発信するため、雪の中でも気軽に来ることができる送迎ツアーを企画しました。また、情報発信の多言語化によって、インバウンドの集客が倍増するなど、地域の観光産業を変える動きを作り出すことができました。
自主的に企画して実行した施策で成果を出すことができた経験は、特に自信に繋がっています。
経験や専門性を、創意工夫でアップデートして
次なるステージを探していたときに出会ったのが、関西に支社を持つオズマピーアールです。オズマピーアールの一員となった久保田は、ベーシックな広報支援だけでなく、デジタルPR・危機管理広報など、メンバーと協働しながら幅広い業務に取り組んでいます。
前職の2社で自社の広報を務めてきた久保田にとって、同時に複数のクライアント企業の広報・PRをサポートするPR会社の仕事は初めての経験でしたが、事業会社とクライアントワークとのギャップはなかったといいます。
オズマピーアールでは、それぞれ異なるニーズや課題を持つクライアントに対して、期待を上回る価値を提供することが仕事だと考えています。事業会社でも、担当する案件によって内容も全然違う中、それぞれに応じた仕事を並行して行っていたので、本質的には変わらないと捉えています。
もちろん、入社前はこれまでの経験が役立つだろうか?という不安もありました。
しかし、自分の実存をかけて取り組んできたことや、それによって培われた専門性は、分野が変わっても活きるというのが今の実感です。
ただ、それが自分の頭で物事を考え、新しいことにチャレンジする阻害要因になってはいけません。
これまでの経験のコピー&ペーストで、創意工夫なしにルーティーンで仕事をするようになったら、ただただ磨り減っていくだけだと思います。
むしろ今は、過去の経験にむやみに頼らず、なるべく1から物事を考えることを心がけています。
元・事業会社の広報だからこそ、力になれることがある
最近は、リテナー*の案件を数多く担当する久保田。様々な企業のコーポレートPRの支援をする中で、新たな挑戦や目標が見え始めています。
*リテナー:毎月定額フィーをいただいて長期にわたるPRコンサルティングを提供する契約形態。
これまで経験してきた水族館や観光地の広報は、認知・集客数・売上向上を目的とした、ポジティブな情報発信のマーケティングPRが中心でした。一方、コーポレートPRでは、企業にとってリスクとなる局面や、ネガティブな印象を与えかねない状況に対処するための「守り」の広報が必要となることも。これまで以上に多角的な視点が求められます。
企業の抱える課題やニーズはそれぞれ違うので、提供すべき価値も変わってきます。
今の私に必要なのは、近視眼的にならず、より事業経営に近い目線でクライアントや、クライアントの先にいる顧客・社会を見ること、そのうえで提案・実行することだと思っています。
リテナークライアントの案件を多く担当するようになってからは、「クライアントのパートナーとして力になりたい」という思いをますます強くしています。自身も事業会社の広報という当事者だったからこそ、今のクライアントの置かれた立場や状況を理解し、併走することができると感じています。
それは自ら水族館の広報として経験してきた苦楽が、原体験となっています。
実は水族館の広報のとき、2館続けて開業PRに全力投入した反動で、燃え尽きそうになっていました。「開業後は無理せず、京都の寺社仏閣めぐりでもして、少しゆっくりしようかな・・・」などと当初は思っていました。
でも、本当に大変だったのは、オープン後のPRのほうだったのです。オープン後、日々継続した広報活動を行っていくことの大変さを、身をもって実感しました。
リテナーでサポートさせていただくクライアントの中には、水族館時代の私のように急に広報担当者になって暗中模索されている方や、ずっと同じ環境下にいてなかなか新しい視点や突破口を見出しにくくなっている担当者もいらっしゃると思います。私も同じ事業会社の広報担当として悩んでいた時期があったからこそ、協働・提案できることがあるのかなと思っています。
ー この方たちと一緒に仕事ができて本当に良かった
様々なクライアントとのプロジェクトの経験を通して、久保田は日々のコミュニケーション活動の奥深さを一層実感しています。クライアントやビジネスパートナーとの関係のあり方への想いも変化してきました。
最近実感しているのは、リテナークライアントは、単に「継続して長期サポートするクライアント」ではなく、「継続して“共に変化を遂げていく”クライアント」であるということです。また、スポット(単発のプロジェクト)のご依頼をクライアントから頂いた場合も、「継続してサポートする上での“最初の一歩”」という気概で取り組みたいですね。
おかげさまで最近は「この方たちと一緒に仕事ができて本当に良かった」と心底思えるクライアント・プロジェクトにより多く携わることができています。プロジェクトをクライアントやビジネスパートナーと共にやり遂げることで、お互いの信頼感や絆が深まる機会にめぐり合えるのが、コミュニケーション活動に携わるPR会社の醍醐味だと感じています。
この縁を大切にし続けていきたいと思っています。そのためには、相反するようですが、1年後自分が何に取り組んでいるのか想像ができないくらいどんどん変わっていきたい。その変化を楽しみたいと思っています。
コミュニケーションの仕事は、正解のない世界。最適なコミュニケーションとは何なのか、過去に鑑み、未来に挑みながら、これからも進化を続ける久保田の姿がありました。
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