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より良いユーザー体験のためにできることの全てを。UXデザインの質を高める思考と行動

クライアントとユーザーの双方から本質的な課題を抽出し、サービスやプロダクトの成長を支援するニジボックスのUX・ディレクション室。

今回はディレクターの馬渕さんにマイクを向け、UXデザイン業務についてインタビューを実施。リサーチからデザインまでの流れや仕事のやりがい、必要とされる能力や適性などを語っていただきました。

リサーチとデザインから生まれるユーザー体験

– ニジボックスでのUXデザイン業務について教えてください

ニジボックスの場合ですが、大きく分けて2つあります。ユーザーの行動やその行動に至る心理、感情、課題などを調査するUXリサーチと、リサーチ結果をもとにしたユーザーの体験デザイン業務です。

UXリサーチでは、探索的リサーチと評価的リサーチの2つにカテゴライズしていて、私はそのどちらも担当しています。例えば新規事業の場合は、そもそも市場にニーズがあるのか、ユーザー層はどれぐらいいるのか、といったマーケット探索および顧客や課題の探索を行うことを目的とした探索的リサーチから始まります。そして既存サービスの場合は、既に世に出ているサービスが対象となりますので、それらのサービスのユーザー体験を評価して改善することを目的とした評価的リサーチが主となります。

UXデザインのアプローチとしては、大きく言うとリサーチ結果を踏まえたユーザー体験の設計や課題改善を行います。新規事業の場合はユーザーの課題やニーズにどのように価値提供を行うかをビジネスとユーザーの両方の視点から検討し、体験コンセプトを設計します。

既存事業の場合は、サービスを利用するユーザーの体験をより良くするための具体的な施策やエンハンスを目的として、制作メンバーと一緒に改善策を検討することが多いです。

– UXリサーチとデザイン、それぞれ異なる醍醐味がありそうですね

そうですね。最初はリサーチの方が、ユーザーとの接点も多く、実際の生の声を聞けるので面白そうだと思っていたのですが、実際にはじめてみるとユーザーの課題をどう改善するかという、ユーザーの体験を設計する一連のプロセスにも興味を持つようになりました。もともとディレクターとしてサービスの制作に携わっていた時の知見を生かせることもありますし、リサーチとは違った楽しさを味わっています。

– 馬渕さんとUXデザイン業務との出会いは?

ストーリーボードを使ったコンセプト検証の案件で、ボードの構成と制作をお手伝いしたことがきっかけです。UXデザイナーの方と初めて一緒にお仕事をしたのですが、こういう領域もあるのかと興味が湧いたんです。制作は上流工程があってのものだと以前から思っていたので、それを経験しておくことは自分にとってもプラスだなと。それで自ら志願してUXデザイン業務に携わるようになりました。

– クライアントはどういった業界業種が多いのですか

本当にさまざまで金融関係やメーカー、ゲーム、アグリカルチャーまでかなり幅広く担当してきましたね。ニジボックス全体ではさらに多種多様な業界からご相談いただいています。

– 新しい案件の度に業界知識や商品知識が必要になりますね

そうですね、新しい案件に入る度に、最新情報のキャッチアップは欠かせないですね。関連記事に目を通すことや類似のアプリを使ってみたり…。

新しいご依頼のたびに引き出しが増えるのは面白いですし、クライアントワークの良さだなと実感しています。一つの業界や業種に限定されることなくいろいろな案件に携われる点は、受託案件を多く手掛けるニジボックスならではの魅力だと思います。

ユーザーに選ばれる価値を生み出すために

– ニジボックスの実施するUXリサーチについてもう少し詳しく教えてください

私たちの実施しているUXリサーチは、大きく探索的リサーチと評価的リサーチの2つがあるということを先ほどお話しましたので、そこをもう少し分解して説明しますね。

探索的リサーチは、市場におけるユーザーの課題、つまりユーザーニーズを発見し、その中でも特に切実なニーズを持つユーザー(アーリーアダプター)は誰なのか?を特定することで、ユーザーニーズをつかみ市場に受け入れられるサービス開発を目指すものです。マーケティング用語で言うマーケットインの考え方を前提としています。

評価的リサーチは、探索的リサーチで明らかになったユーザーニーズに沿った事業アイディアが受け入れられるか?や、一連のサービス体験の中で提供価値の妨げとなっている課題はないか?を検証します。

– 調査の手法としてはどのようなものがありますか?

さまざまな手法がありますが、私はインタビューをはじめとした定性調査を担当しています。イシューによって対象者の集め方は異なりますが、基本的にはあらかじめ仮説を持って臨みます。例えばですが、「こういう課題を持っている人の中で、特にAという属性のユーザーはニーズが強いのではないか?」という仮説を持っていたとします。これを検証するために、「Aの属性のユーザーはもちろん、BやCの属性のユーザーも集めて全員に話を聞いてみることで仮説検証をしてみよう」といったかたちです。仮説が間違っていたとしても、得られた示唆をもとに仮説を構築し、再びチャレンジします。

– とても丁寧なプロセスを踏まれているのですね

そうかもしれません。ただニーズが合致していないプロダクトを作っても売れる可能性は低くなってしまうわけなので。それよりリサーチを実施してあらかじめ求められるものを作ったほうが、クライアントにとってもユーザーにとっても喜ばしい結果になると思うんです。

最近はモノも情報もあふれています。にも関わらず、本当にユーザーが使い続けてくれるサービスはどんどん少なくなってきているように感じます。UXデザインが重要視されているのはそういった背景もあるのかな、と。

クライアントに寄り添いつつ提言する

– プロジェクトを進める上で大切にしていることはありますか?

最近は以前に比べて新規事業に携わることが多いのですが、まだ形のないアイデア段階のものをクライアントと一緒に考えながら形にしていく中で、彼らに寄り添いながらプロジェクトに取り組むことを意識するようになりました。その姿勢でクライアントの依頼に臨むことは他のお仕事でも大切にしています。

– クライアントに寄り添うスタンスが大切なんですね

そうですね、ただチームメンバーとして寄り添うだけではなく、クライアントのビジネスの最大化をプロとして請け負っていることは常に意識しています。サービスの提供側ではこう思っていたけどユーザー視点は違っていたと、ビジネス改善に向けて検証から導き出した示唆を適切にお伝えすることも重要です。

– 中には難しいご要望などもあったりするのでは?

私がまったく疎いジャンルの、とあるサービスのコンセプトづくりからお手伝いする案件がちょうどいま動きだしたところで…。 ユーザーがかなりプロダクト愛の強い方ばかりなので、まずは世界観を一から勉強することからはじめたんです。インタビューを通してベストなコミュニケーションの取り方を探るべく試行錯誤しています。

– いままででいちばん印象に残っている案件は?

子ども向け食育のWebアプリで、ゲーミフィケーションを取り入れて楽しく食が学べるという新規事業サービスの案件です。この時は子どもたちに実際にアプリの試作品イメージを触ってもらったんです。どこで飽きちゃうんだろうか、って。

– 子どもは正直ですね

本当にびっくりするぐらいすぐ飽きちゃって(笑)。私はすでに小さい頃の感覚を失っていますし、子ども目線からプロダクトを最適化するのは難しかったけれど、非常に面白かったです。あらためて子どもってこうだよな、と再確認することが多かったですね。アニメーションがいっぱいついてると喜ぶとか、文字より動画のほうが興味を示すとか。

子どもたちの体験の様子をクライアントにも見ていただいて、改善点などの気づきをご提供できました。調査結果の報告後に「リサーチをベースにブラッシュアップをかけていきます」と感謝の言葉もいただけて、大きな手応えを感じられる仕事になりました。

UXデザイン業務は設計が9割

– 感覚よりも思考が求められる仕事のようですが

考えることが仕事の大部分を占めます。まず、リサーチで何を明らかにして、どのようなネクストアクションにつなげたいのか、ゴールを設定します。その上で、「ゴールを達成するために必要なアウトプットは何か」「アウトプットを作るためにどんなことを質問しないといけないのか」を逆算して考えていきます。

やってみたら分かると思うのですが、思い付きや感覚で質問設計をしてしまうと、期待するアウトプットが作れないんですよね。しかも、集める対象者選びの段階で間違ってしまったら、聞きたい質問さえできない可能性があります。そのため、あらかじめ仮説を持っておき、「こういう人に話を聞いたら明らかにしたいことが検証できるね」という前提の考えのもとに組み立てていくわけです。

– 仮説構築力はかなり重要なスキルなんですね

なぜなら、質問でその内容を聞かないとジャーニーの中身が埋められないんです。ただ、ユーザーによっては、体験の流れが異なることもありますので、そうすると横軸が異なるジャーニーが何パターンか出てくることになります。このようなことをあらかじめ予想立てておき、必要な質問を漏れなく行えることが肝になって来ると思います。

例えばカスタマージャーニーを作る場合、あらかじめジャーニーの外枠(縦軸と横軸)を決めておくわけです。なぜなら、質問でその内容を聞かないとジャーニーの中身が埋められませんからね。ただ、ユーザーによっては、体験の流れが異なることもありますので、そうすると横軸が異なるジャーニーが何パターンか出てくることになります。このようなことをあらかじめ予想立てておき、必要な質問を漏れなく行えることが肝になって来ると思います。

– 仮説に基づく設計が大事であると

リサーチは設計で90%結果が決まるといっても過言ではありません。仮説構築力については私もまだまだ完ぺきとは言えないので、もっと磨いていかないとなと思っています。一方で「体験をつくる」以上、感覚的な能力も重要なファクターです。その点では好奇心がいちばん大事なのかもしれません。クライアントに対する好奇心、ユーザーに対する好奇心、携わる業界業種に対する好奇心。もっと知りたいという知的探究心はUXデザイン業務に限らずクリエイティブワーク全般に必要だと思います。

ー今後のキャリアビジョンは?

UXリサーチをもとにした体験設計を極めたいと思っています。例えば集団インタビューやフィールドワークなど経験したことのないリサーチ手法を経験することはもちろん、リサーチをもとにした体験コンセプトの設計や具体化にチャレンジしていきたいです。

実は、その第一歩は踏み出せていまして、先ほどもお話したコンセプトワークから携わる案件ではUIデザイナーと協業してコンセプトを世界観としてどう表現するかといった、体験コンセプト設計からの具体化に挑戦しています。こうした本人が希望する取り組みにどんどんチャレンジさせてくれるのがニジボックスの風土でもあると思います。

こういった挑戦を経ながら、ユーザーの思いや声をピックアップして、クライアントのサービスやプロダクトのグロースに貢献していきたいですね。


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