良い文章を書くための言葉選びを考える
こんにちは、キカガク講師の大庭@oba_kikagakuです。
過去二回の記事では、アウトプットが大事ということをお話してきました。
今回は、実際に記事を出すときに気をつけたい文章の書き方についてポイントをご紹介します。
なお、参考にしてほしいタイミングとしては下の2つです。
– 何かを書き始めるその一瞬手前
– 初稿を書き終えたあと
端的であれ
よい文章(読みやすい文章・意味が伝わる文章)とは、何よりもまず端的なことが重要です。
そのためには、3つのポイントを抑えましょう。
1. 一文が短すぎず長すぎないこと
2. 意味の重複や係り先がわからない修飾語がないこと
3. 簡単に理解できる言葉で書かれていること
たとえば以下の文を見てください。
吾輩は猫である。名前はまだない。(夏目漱石『吾輩は猫である』)
冒頭のたった2文で、「主人公は猫」「野良猫である」など、様々な情報を与えています。上記の3つの要素を兼ね備えた、まさに究極に端的な文章と言えます。
さて、3つのポイントについて、具体的にどうすればよいのかということを見ていきましょう。
1.一文が短すぎず長すぎないこと
残り2つのポイントの大本となるポイントです。
一文の長さの目安としては、最大80文字がよいとされています。webライティングの世界でこうされている、ということなので、必要な場面ではもう少し長くてもよいかもしれません。
個人的には、80文字というのはかなり長いです。半分の40文字、少し多くて50文字でも十分だと思っています。
たとえば、以下の文のように、専門用語が入ると一気に一文が間延びしてしまいます。
ディープラーニングハンズオンセミナーは、AIの基礎となる高校数学から始まり、ニューラルネットワークの成り立ちと計算や、AIブームの火付け役となった画像処理の手法、時系列データを扱う手法や自然言語処理をたった3日間で一気通貫で学ぶことができる、初学者向けのセミナーです。
この一文は132文字もあります。
これぐらいの文ならみなさん手癖で書いているレベルだと思います。しかし実のところ、読者は「ニューラルネットワークの~」あたりで読むのをやめています。
本来のメッセージは、「3日間」「一気通貫」「初学者向け」であるのに、伝わりません。
しかし、実際に自分で文章を書いているときは、これほどの長さでさえ、長文と感じないものです。
こういうときは、細かい文に切り分けてあげましょう。
ディープラーニングハンズオンセミナーは、AIの初学者に向けた3日間のセミナーです。AIを学ぶための高校数学からわかりやすく解説しています。
3日間で、画像処理や自然言語処理、時系列データの扱いまでを一気通貫で学ぶことができます。
内容量は維持したまま、細かい文に分けることでストレスなく読み進めてもらえます。
2.意味の重複や係り受けがわからない修飾語がないこと
では、どうやって長くなった一文をスリムにすればいいのでしょうか。
長文の特徴として、意味の重複がある。また、係り受けがわからない修飾語があることが挙げられます。
それぞれ見ていきましょう。
意味の重複とは、例えば以下のような言葉です。
・馬から落馬する
落馬する、ということが「馬から落ちる」という意味なので、「馬から」と明示する必要はありません。
では、次の表現はどうでしょうか。
・まず初めに
・あとで後悔する
・すべてを網羅する
・To C向け
あげればキリがないですが、実はすべて意味が重複しています。
「まず」には「はじめに」という意味が含まれているので、どちらかでよい。
「後悔」には文字通り「後で」という意味があるので、「あとで」は不要。
「網羅する」とは「残らず集める・余さず取り入れる」という意味であり、「すべて」の意味を含んでいる。
「To C」ですでに「C向けに」と言っているので、「向け」は不要。
(実際には、強調したいときにあえて重ねる場合もあります。)
こんな細かいことを、と思われるかもしれません。しかし、これを重ねるとどうなるかというと、
まず初めに、このセミナーは主にTo C向けのセミナーとなっていることと、このセミナーでは代表性を意識しており、AIのすべてを網羅することはできないということを、受講生があとで後悔しないように説明しましょう。(102字)
と、こうなってしまいます。くどい一文になってますよね。
重複を取り除けば、
受講生が後悔しないように、次の内容を説明しましょう。まず、このセミナーはTo Cで開催しています。また、AIについて網羅することはできません。代表性を意識しているからです。
という風に、短文に切り分けることと組み合わせて短くできます。
係り受けのわからない修飾語は、長文でなくとも現れます。
大きくて丸い花柄のワンピースを着た女の人。
たとえば上の文は、いくつかの解釈ができます。
「大きくて丸い花柄のワンピース」を着ている、女の人。
「丸い花柄のワンピース」を着ている、大きな(=背の高い)女の人。
「花柄のワンピース」を着ている、大きくて、(体型が)丸い女の人。
形容詞のかかり先がわからない文は、得てして誤解を招きます。
では、このような意味の重複や係り受けの不明な修飾語を避けるには、何に気を付けるとよいでしょうか。
基本的には、一文の長さを調整する中で自然と削られていくものです。一文を適切な範囲に区切れば、意味の重複や、係り受けの迷子もなくなっていきます。
しかし実際には自分で気づけない部分も多くあります。そんな時に気を付けたいことを以下にまとめます。
✔チェックポイント1:「言わなくてもわかること」を書いていないか
「言わなくてもわかること」というのは、例えば、
応募者と面談し、~、ヒアリングする。
のような文です。「ヒアリングする」ということから「面談」していることはわかります。そのため、この文中で「面談し」というのは不要です。
✔チェックポイント2:「長い修飾語」は先、「短い修飾語」はあとに書く
日本語には、節と句があるので、文を前から書くと読解を妨げてしまうこともあります。
最初は勢いで前から書いても問題ありません。見直すときに、「係り受けが文の最後にあるのに、文頭に形容詞・形容動詞を置いていないか」というのをチェックしてください。
前から書くと「黄色く細長いディズニーのキャラクターが印刷されたティッシュ箱」という風に、何が何に係り受けしているのかわからなくなります。
この文章を、ポイントに沿って整理すると、
「ディズニーのキャラクターが印刷された、黄色く細長いティッシュ箱」
と、係り受けが明確な一文になりました。
3. 簡単に理解できる言葉で書かれていること
今更そんなことを言われなくても、と思われるかもしれません。
しかしここで一度考えてみてください。
自分で書いた文章について、すべての言葉を自分で説明できますか?
周りが使っているから意味が明確じゃなくても使っている言葉や、なんとなく書いてしまう敬語など。
「わかるんだけどうまく言葉にできない」は、わかっていないのと同じです。
日本語の文章を日本人が読むときには、文脈や字面からある程度意味を推定します。そのため、筆者も読者も何となく伝わったように感じています。
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。(太宰治『走れメロス』)
この文章を初めて読んだとき、「邪知暴虐」の辞書的な意味を知っている人はいないと思います。
邪知暴虐という言葉の字面や、前後の文から判断して、王がとにかく悪人であることはわかります。
このように簡単に判断できる場合は問題ありませんが、ブログを書いたり、何かの説明をするための文中ではこんな明確な言葉は出てきません。
説明できない言葉を書かないためには、一つテクニックがあります。
それはシンプルに、書いた文章を音読することです。
ただ声に出して読むということではなく、理解しながらその言葉を発声してください。音読していて気になったということは、自分が理解できていない証拠です。
また、音読することによって、誤字脱字のチェックも同時に行えるので、一石二鳥です。
そして、音読していてわからない部分、多少長くなってもいいので、理解できる言葉に変換しましょう。
例えば「邪知暴虐」なら、「悪知恵が働き、暴力で人々を苦しめる」のように変換します。
自分の言葉で書くということ
自分の言葉で書くということは、自分だけが分かる言葉で書くのではなく、自分にしかかけない言葉を書くということです。
いい文章というのは、良い言葉とオリジナルの経験が重なったときに生まれます。
みなさんが少しでもいい文章が書けるように、この記事が手助けになれば幸いです。
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