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百合川 真人
株式会社インフキュリオン
Embedded Fintech事業部 Winvoice部
慶應義塾大学法学部を卒業後、大手邦銀にて法人営業を経験後、2019年にインフキュリオン コンサルティングへ入社。金融・決済関連企業の新規事業企画立案、マーケティング戦略策定やUX/UIデザイン策定など、キャッシュレス領域を中心にコンサルティングを行う。
2022年4月からインフキュリオンのグループ横断戦略チームで事業戦略策定に関わり、同年秋から新規プロダクト「Winvoice」のプロダクトオーナーとして事業立ち上げを推進している。
2023年9月、インフキュリオンは、スマホ決済プラットフォームの「Wallet Station(ウォレットステーション)」、国際ブランドカード発行プラットフォームの「Xard(エクサード)」などに次ぐプロダクト「Winvoice(ウィンボイス)」をリリースしました。企業間(BtoB)決済領域のキャッシュレス化を進め、企業間(BtoB)決済の課題を解決するWinvoiceのプロダクトオーナーとして指揮をとる百合川さんに、開発の背景や、新規事業立ち上げに関わる面白さについて話してもらいました。
さらなる成長の軸となる新規事業を起案
─ はじめに簡単な自己紹介と、新規プロダクト「Winvoice」のプロダクトオーナーになった経緯を教えていただけますか。
私は大学卒業後に新卒で大手邦銀に入り、1年半ほど法人営業をしていました。そこでの仕事も楽しくやりがいを感じていましたが、銀行ではクライアントがM&Aなどの意思決定をした後にファイナンスで支援する「How」の関わり方であったため、クライアントの根本的な問題「What to do(何をすべきか)」に対してはあまり力になれないこと、そして、自分自身が社会にインパクトを与えるような事業創造に関わりたいと思っていたことから転職を考えました。
当時は、PayPayが誕生して1年経ちQRコード決済が盛り上がりを見せ始めた年で、間違いなくこの市場は伸びていくと実感していました。ただ、銀行時代の経験で、金融・決済はすべての購買行動に係る重要な体験なのに、現存しているサービスがあまり洗練されていないことを課題に感じていました。そうした中で、金融・決済分野での新規事業の創出に携われるインフキュリオン コンサルティングに出会い、2019年11月に入社しました。それから2年半ほど、コンサルタントとして主に金融・決済分野でクライアントの新規事業企画立案、立ち上げなどを支援しました。
2022年4月、インフキュリオンが今後さらなる成長を遂げるために、全社及び各事業の中長期的な戦略の策定を検討するグループ横断戦略チームが立ち上がり、そこへ私も参加しました。
その検討の中で、BtoB決済領域での新規事業を提案し、2022年9月に会社としての正式なGOサインが出てWinvoiceを開発することが決定。私がプロダクトオーナーを務めることになりました。現在はインフキュリオン コンサルティングとインフキュリオンの両方に籍を置く形で、事業立ち上げを進めています。
BtoB決済のキャッシュレス化・DXを促進するWinvoice
─ Winvoiceとはどのようなプロダクトなのでしょうか。
Winvoiceは、請求書のカード決済の仕組みを、自社サービスに低コストかつスピーディーに組み込むことができる「請求書支払いプラットフォーム」です。
例えば、クラウド会計ソフトを提供するSaaS事業者があるとします。そのサービスには請求書を発行する機能があり、通常であれば請求する側の企業は請求書に銀行口座を記載して、支払う側の企業はそこに代金を振り込みますよね。
そのクラウド会計ソフトにWinvoiceを組み込むと、請求側は請求書にカード決済用のURLを記載して送付し、支払う側はそのURLにアクセスすることによりクレジットカードで支払えるようになります。
─ なるほど。企業間の決済取引で問題となるのはどのような事柄でしょうか。
今、企業間で取引する際の支払手段は「銀行振込」が主流で、決済全体の約9割を占めるといわれています。クレジットカード決済を受け入れているのは、たったの6%ほどです。BtoCの領域ではすでにキャッシュレス化が進み、割合としては30〜40%といわれていますが、それと比較するとBtoB領域ではキャッシュレス化が「ほとんど進んでいない」のが現状です。
その一方で、BtoB領域の決済周りにおいてどのような課題があるのかを調査しました。すると、請求者(売り手)側の企業が感じている課題の上位4つは、すべて支払者(買い手)への与信に関するものであることが分かりました。1位は「新規取引先の与信審査」で、「取引先の倒産」「売掛金の貸し倒れや支払遅延」「既存取引先の与信管理」が続きます。
一方、支払者(買い手)側の企業が感じている課題は、「資金繰り」「キャッシュフロー」に関するものが中心でした。
─ それらの課題を、Winvoiceはどのように解決することになるのですか。
請求書に対してクレジットカード決済が可能になると、売り手側は取引先に対して与信審査をする必要がなくなります。カード発行会社がすでに審査済みだからです。これはある意味、与信確認をカード会社にアウトソースすることになるため、新規取引先と手間なくビジネスを始めることができるようになり、ビジネス機会の拡大にもなります。
一方の買い手側は、カード払いにすることで支払を一本化できるため、支払管理業務の効率化につながります。また、事実上の支払日、つまり会社の財布からお金が出ていくタイミングを、請求者への支払期限よりもさらに先、カード会社への入金日まで30〜60日程度延ばすことが可能になり、資金繰りの改善に寄与します。
このように、BtoBの取引がクレジットカードで決済できるようになると、請求者と支払者の双方が抱えるさまざまな課題が同時に解決できるようになります。このカード決済の仕組みを、低コストかつスピーディーに組み込むことで世の中に広げていければ──そう考えたことがWinvoiceを開発する契機になりました。
社会の価値観や常識を変えるプロダクトをつくりたい
─ 今後の事業展開をどのように考えていますか。
日本のBtoB決済の市場規模は1,300兆円ほどで、BtoC決済の市場規模300兆円の約4倍にもなる広大なマーケットです。Xardで法人カードを普及させるアプローチをしつつ、Winvoiceでカード決済できる場所を広げて、BtoB決済領域のキャッシュレス化を進めていく、そんなイメージを持っています。
リリースしたばかりのWinvoiceは、プロダクトとしては未完成です。というのは、「SaaSとしてこれからも改良を重ねて、価値を高めて続けていかなければならない」という意味が一つ。そして、今回リリースした機能は、Winvoiceが目指すところへ向かう長い道のりの1歩目に過ぎないという意味でもあります。
─ 「Winvoiceが目指す」のはどのようなところですか。
今回は、「請求書のカード決済」の部分だけを取り上げていますが、これだけで広大なBtoB領域の課題を深く解決できるとは思っていません。今後は「BtoB決済プラットフォーマー」として、カード決済以外の部分でも「決済」にまつわるあらゆる業界/企業のペインを解消していきたいと考えています。
世の中にはいろいろな新規事業がありますが、その中で、社会の大勢を占める価値観や常識、行動習慣を大きく塗り替えるようなビジネスはそう多くはありません。
今、BtoB決済の9割は請求書に記載された銀行口座への振込で、それが「常識」になっています。その「常識」を変えて、社会に広げていくという仕事は、機能の提供に徹して直接的な競合をつくらず、あらゆる業界の企業に対して決済を組み込んでいく「イネーブラー」という立場だからこそ成し得る仕事だと私は思っています。
チーム内では、最終的には「No Winvoice, No Business」な世界を目指したいねと話しています。あらゆる業界/企業のプロダクトに組み込まれ、Winvoiceなしでは企業のビジネスが回らないといえるような世界です。
未完成のWinvoiceには、これからも新しい機能を追加していくことになりますし、新たなサービスが加わる可能性もあります。ですから、BtoB決済の領域で常に新規事業の立ち上げが続いていく、そんなイメージで捉えていただければと思います。
思い通りに進まないこともあるが、日々新しいことに挑戦できる
─ 新規事業に関わることに、どのような面白さがありますか。
社会に大きなインパクトを与える仕事ができることだと思っています。特に、自らをイネーブラーと定義する我々は、あらゆる業界にFintechを組み込んで、新しいビジネスをつくっていく立場ですから、社会に対して与える影響・変化は非常に大きいものになります。その手応えを感じながら仕事ができることは、面白さの一つだと思います。
もう一つは、成長を実感できることだと思います。新規事業の立ち上げは不確実性の高い仕事です。日々、思い通りに行かないことばかりに直面して、人によっては嫌気が差すかもしれません。しかし、そのような状況を上手く“自分ごと”として捉えることができれば、新しいモノやコトにキャッチアップしながら着実に成長していける環境だと思います。
事業を立ち上げる苦しみはありますが、そういうところが新規事業の面白いところなのかなと思っています。
─ 金融・決済領域の新規事業だからこその醍醐味はありますか。
金融ビジネスは関連する各種法令と切っても切れない関係にあり、新規事業の立ち上げにおいて法令遵守は必ずクリアしなければなりません。ただ、法令に寄り過ぎると良いサービスがつくれないこともあるので、上手く折り合いを付けながらサービスやプロダクトを設計していく必要があります。
Winvoiceについても、資金決済法や貸金業法、割賦販売法などが関わってくるため、社内の法務や弁護士と連携しながら関係省庁と問答を繰り返してリリースまで漕ぎ着けました。厳しい制約がある中でいかにやりたいことを実現するか。そうした難題に挑むことは、金融ビジネスならではの大変さであり、面白さでもあると思います。
カオスな環境を楽しみながら新規事業を前に進める
─ Winvoice部はどのようなメンバー構成ですか。
現在、Winvoice部のメンバーは私を含め8人いて、「BizDev」「業務オペレーション」「エンジニアリング」の3つのチームに分かれています。
現状ではまだ小規模の組織ですが、業務オペレーションチームでは業務推進担当者を、エンジニアリングチームではテックリードとテクニカルプロダクトマネージャーを募集しており、プロダクトの成長を見据えて組織を拡大していく予定です。
─ どのような方と働きたいと思いますか。
インフキュリオンのMissionとVisionに共感してくれる方ですね。我々は、決済を起点にこれまでできなかったビジネスをつくり、そのビジネスを通じて社会に新しい価値を提供し、貢献していきたいと考えています。そこに共感を覚えていただけることが第1の条件だと思っています。
Winvoiceはインフキュリオンの中でもとりわけ新しい事業であり、毎日のように課題や困難にぶつかります。新規事業というイメージに惹かれるだけでなく、日々直面するカオスな環境を前向きに捉え、楽しみながら進んでいける方がフィットすると思います。
─ 最後に、インフキュリオンへ入社を考えている方へメッセージをお願いします。
これからますます、BtoB領域のFintechが盛り上がっていくでしょう。BtoB領域の決済をアップデートできるかどうかは、日本の経済成長の行方を大きく左右する重要な点だと考えています。
Winvoiceに携わることで間違いなく成長できると思いますし、特に今は非常にやりがいのあるフェーズです。Winvoiceを通じてBtoB決済の大きな課題を深く解決し、日本の法人金融をアップデートしていきたいと思う方は、ぜひ我々と一緒に新しいビジネス、新しい社会をつくっていきましょう。