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須田 勝彦 2020年1月中途入社
BaaSプラットフォーム事業部 マネジャー
2020年10月、インフキュリオンはKyashから、企業向けカード発行サービスを事業譲受すると発表しました。このサービスは2021年3月、新名称「Xard(エクサード)」として運用を開始しています。その裏側で開発の体制がどのように引き継ぎされ、今後どんな課題に挑むのか、Xardのシステムのマネジャーを務める須田勝彦に話を聞きました。
先端技術の研究開発、PM、顧客との折衝など幅広い経験を活かせそうだと感じた
― 須田さんの、これまでのご経歴を教えていただけますか?
インフキュリオンの前は、SIerを2社経験しました。15年近いキャリアの中で、基幹システムの新規開発・保守開発、Webアプリの設計・コーディング、ミドル、AWSアーキテクト設計のほか、リーダー、プロジェクトマネジャーとして顧客折衝など幅広く経験しました。
前職での最後の1年は、先端技術の研究開発を行う部署にいて、さまざまな新しい技術に触れました。AWSを社内に導入する場合のセキュアな環境を構築するにはどういう構成がよいかを探ったり、データと機械学習で何ができるかを試してみたり、ブロックチェーンを使ったPoCなどもしました。
ただ、研究の成果を元に提案はしたのですが、セキュリティに関する社内のハードルが高くて、なかなか採用されず実際のシステムに結びつかなかったんです。経営層が研究開発の重要性を感じて立ち上げられた部署でしたが、そもそも新しいものを受け入れる体制ではなかった。これでは意味がないと思って、転職を考えました。
転職エージェントを探してみたり、自分なりにコンサルや事業会社などへの転職の可能性も調べてみたりはしましたが、あまりしっくり来なくて。そんなとき、前職の同僚で、先にインフキュリオンに転職していた人から話を聞く機会があったんです。その方の紹介という形で、2020年1月に入社しました。
― 入社の決め手は何だったのでしょうか?
決めた理由は、インフキュリオンが行っている社会を変革するプロジェクトに将来性を感じたことが大きかったです。現在所属しているBaaSプラットフォーム事業部の前身であるインフキュリオンデジタルは、2018年7月に創業したばかりで、これから自分たちの手で組織や事業を創り上げていけることにも興味がありました。
自社プロダクトに携わりたいとも思いましたし、前職で研究していたような新しい技術が好きなので、その知見を活かせそう、それでいてPM経験を活かせる場面もありそうだということで、入社を決めました。
― 入社後はどのような仕事をされてきましたか?
入社後は、プロダクト開発部のインテグレーションチームに配属されました。ちょうどその頃、弊社の「Wallet Station」を新しいお客様に導入するための要件定義が始まるところで、そのプロジェクトに参画しました。
2020年9月のローンチまではそのプロジェクトに携わり、その後しばらくは保守を担当していたのですが、10月に、インフキュリオンがKyashから企業向けカード発行サービスを事業譲受することが発表されました。
その時点で、すでにKyashからの引き継ぎプロジェクトは開始されていましたが、マネジメントを行うメンバーが不足していたためマネジャー陣で相談し、11月の終わり頃から私が参画しています。12月にはプラットフォームの新名称が「Xard(エクサード)」に決定し、引き継ぎから開発へとどっぷり入っている形です。
2021年に入ってから急ピッチで開発メンバーを増員し、3カ月足らずのうちにエンジニアだけでも20名を超えるチームになりました。2021年4月の組織改編でXard専任のチームになり、ビジネスサイドの人も含めると30人規模のチームになっています。私はその中で、システム面のマネジャーを務めています。
次世代カード発行プラットフォーム「Xard」開発に携わる
― Xardとはどのようなサービスなのでしょうか?
Xardは、オープンAPIによって企業が自社のVisaカードを発行できるほか、プロセシング(決済)、運営までワンストップで行えるプラットフォームです。
企業が自社ブランドのカードを発行できるようになると、例えばクラウドサービスの利用料やオンライン広告費の決済に使えたり、従業員一人一人にカードを持たせることにより経費精算を簡素化できたりするメリットがあります。「法人カードと同じではないか」と思われるかもしれませんが、従来の法人カード発行システムは、発行、決済、加盟店管理、ユーザー管理などを1つのシステムで提供する重厚な作りとなっており、ユーザー側の自由度がそれほど高くありません。
それに対して、Xardはカード発行、決済に特化してAPIを提供しており、残高管理はユーザー企業が自由に設定できます。例えば、リアルタイムに、且つカードごとに設定することもできるため、企業の使い方によって、前払い、デビット、後払いなど、さまざまな形態のサービスを柔軟に、スピーディーに構築できることが利点です。
ほかにも、レンディングや、フードデリバリーのようなシェアリングビジネスの報酬支払いに使えるなど、さまざまな使い途が考えられます。
― 引き継ぎ後はどのような開発を進めているのでしょうか?
基本的な部分の引き継ぎは済み、3月には弊社側での運用が始まっています。
事業譲受後に行ったことの1つは、カードの発行形態を増やすことです。既存のサービスでは、発行できるカードは磁気カードだけでしたが、Xardではそれに加えてICチップ付きのカードやオンライン決済に使えるバーチャルカードの発行など、さまざまな追加機能を検討しており、開発を進めています。
それと、ダイレクトファンディングという機能の開発も、現在進めている大きなものの1つです。もともとの仕様は、カード決済時に引き当てる資金を前もってXard上の口座に入金しておいて、カードで決済した時にはその資金から引き落とす形になっています。
ダイレクトファンディングでは、Xardに資金を入金することなく、資金源の管理を利用企業のほうでXardのAPIを通じてダイレクトに管理できるようになります。すると、例えば利用企業の銀行口座を引き当ての資金源に設定できたり、会計システムと連携して将来の入金予定に与信して引き当ての資金源にしたりということも可能になります。この機能を使うお客様への導入を、ちょうど今進めているところです。
その他にも、例えば利用企業がカード1枚ずつそれぞれ、1回あたり/1月あたりの決済上限額を設定したり、使える加盟店などに制限をかけたりといった制御周りの開発など、細かい機能の開発も並行して進めています。
― エンジニア視点で、Xardはどういう特色があるシステムだと捉えていますか?
使い方によって、プリペイドカードにもなるし、デビットカードやクレジットカードにもなるという商品性の部分は特徴的だと思います。
また、これまでVisaカードの発行は、金融ビジネスに携わっていない企業にとって極めてハードルが高いものでしたが、Xardによって非金融系企業が参入しやすくなるのは画期的だと思っています。
従来、クレジットカードの会員情報や取引情報を取り扱うには、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)という厳しいセキュリティ基準をクリアした認証を受けなくてはならず、企業にとってはとてもハードルが高いものでした。でも、その部分はわれわれが担保することで、企業は負担を抑えてカードを発行できるようになります。
エンジニアの視点で見た場合、Xardは基本的にAPIしか提供していないため、利用企業の側にも一定の開発スキルが必要とされる点が、一般的なSaaSサービスと大きく異なるところだと思います。お客様自身で、ユーザーインターフェースとしてのWeb/スマホアプリを作ったり、自社のシステムに連携したりする必要があります。
― 開発において現在抱えている課題としてどんなものがありますか?
たとえば、テストの自動化が一部分しかできていないため、そこはしっかり組み込んでいきたいところです。あとは、開発の体制としてそれぞれの担当領域が明確化されていなかったり、開発のサイクルをきれいに回せていなかったりするので、その辺りは課題だと認識しています。
Xardは、インフラ基盤にはAWSを使っていて、Go言語で開発されています。また、アーキテクチャはマイクロサービス化されていて、クリーンアーキテクチャやDDDの概念が採用されています。そういったモダンなアーキテクチャは、これまでの弊社のプロダクトでは取り入れていなかったので、そこが1つ大きなチャレンジではあります。
― 体制や人が課題という感じですね。
システム上の課題もあります。今後グロースしていくために、パフォーマンスがどこまで出せるのか検証が必要ですし、マイクロサービスの単位を見直す必要も出てくると思いますので、継続的に改善していく必要があります。
現在は基本機能を急ピッチで構築するために、開発チームには外部協力会社の方にも参画いただいていますが、今後は社内の知見を高めるためにも自社のメンバーを中心にしていきたいと考えています。
エンジニアにとって「Xard」開発に携わることの魅力とは
― 体制や人に関する課題が多い中で、どんなエンジニアに参画してほしいと思いますか?
技術面以外では、やはりインフキュリオンが掲げるバリューに共感していただけることが重要です。好奇心を持ってチャレンジングなことに対して前向きに取り組める人、チームで課題解決に取り組める人と一緒に仕事をしたいですね。
それと、インフキュリオンのエンジニアとして、他のプロダクトのエンジニアとも関わっていくことになります。われわれとしては、組織としてエンジニアのスキルの底上げをしたい思いがあるので、社内で勉強会を開きたいとか、そういったモチベーションがある方に参画していただけるといいなと思います。
技術面で言うと、先ほど課題としてお話ししたように、Go言語やAWSの経験者、あるいはマイクロサービス化されたアーキテクチャの経験をお持ちの方にジョインしていただくのが一番嬉しいです。ただ、そういうアーキテクチャの経験・スキルをお持ちの方は、転職市場になかなか出てこないだろうとも認識しています。
なので、すべての条件が合致していなくても、例えば「Go言語は触ったことがないけれどもマイクロサービスで開発経験がある方」とか、「クリーンアーキテクチャーやDDD(Domain Driven Design)に関心があって自分なりに勉強している方」であれば、Xardの開発現場にマッチする可能性が高いと思いますので、まずはお話だけでもさせていただきたいですね。
― Xardの開発に携わることの魅力を教えてください。
モダンなアーキテクチャでの開発を経験してみたいとか、カード決済の仕組みやVisaとの接続の知見を得たいという方にとって、それができる開発現場は、今の段階ではXard以外にそれほど多くないはずです。カードの知見は海外でも通用するスキルですし、エンジニアにとって「強み」の1つにできるものだと思います。
Xardはまだリリースしたばかりで「これから」のプロダクトですが、幅広い業種の企業で導入をご検討いただいています。いま参画していただければ、自社のプロダクトがグロースしていく瞬間を当事者として目の当たりにできるはずです。
逆に言うと、そうなるようにXardの機能を進化させ続ける必要があるので、エンジニアにとっては大変ではありますが、その先に得られる達成感はきっと大きいと思います。