こんにちは、inaho株式会社代表取締役の菱木です!
今回は、トマト自動収穫ロボットのロボット制御をメインに担当している機械制御エンジニアの唐子さんへインタビューを実施しました。
inahoへ入社した経緯や、野菜収穫ロボット開発のリアルと魅力を語っていただきました。
この記事を読むことで、inahoの開発現場についてイメージが湧くような内容となっておりますので、ぜひご一読ください!
プロフィール
唐子 征久(カラコ ユキヒサ)/機械制御エンジニア
オムロン株式会社にて、産業用ロボット制御の研究開発に携わる。東京大学石川妹尾研究室との共同研究に参加、高速センサフィードバックを用いた次世代の組立用ロボットを開発し、国際学会や展示会などで発表。
フェニクシー(起業家育成プログラム)第一期生。ロボットは友達。
目次
最初にinahoへ入社する前のことを教えてください。
ロボットは総合格闘技。実際にものを動かせる楽しさ。
inahoへの入社理由と業務について教えてください。
自社で作っているからこそ、工夫がロボットへ直接反映させやすい。
真面目に考えない逆の発想で生まれたアームの形
今後について教えてください。
実際にお客様に使ってもらえる状況まで必ず持っていきたい。
inahoで活躍するエンジニアとは?
現場主義で臨機応援さが求められる開発環境
ここまで読んでくれた方へ一言お願いします!
最初にinahoへ入社する前のことを教えてください。
前職ではどのようなことをされていましたか?
前職のオムロンでは、工場の部品を組み立てるためのロボットの基礎技術研究をやっていました。
一般的に普及しているロボットは決まった動作をするためのものですが、私がやっていたのは人間で言うと触覚をロボットにももたせられないか。人間も組み立てをするときは、目だけでじゃなくて、手応えのような触覚も活用していると思います。この感覚をロボットにもたせる研究をしていました。
唐子さんは新卒でオムロンに入社されていますが、いつからロボットの開発をされていたのですか?
機械制御システム専攻の大学院を出ていましたが、そこまで専門的にやっていた訳ではありません。新卒でたまたま配属されてロボットの世界に本格的に入りました。実際にやってみたらとてもハマりました。
ロボットは総合格闘技。実際にものを動かせる楽しさ。
ハマった理由はどういったところにあったのでしょうか?
ロボットは専門ではありませんが好きではありました。
私は子供の頃からガンダムが好きで憧れがあり、東京工業大学に入学しどのコースか選択するときに、その憧れからロボット系をやりたくて機械系を選びました。そのくらい好きではありました。(笑)
さらに専攻を選ぶ時に、機械といってもいろいろあることを知り、最終的には流体力学を選びました。
自分の性格的にも合っていたと感じています。
ロボットは技術の総合格闘技です。
一つの技術で成り立っているのではなく、色々な技術の組み合わせで成り立っています。
自分の性格的に、一つのものをトコトン突き詰めるよりも、広く浅くても色々と探っていくのが楽しいので、その点が自分の性格にも合っていました。
あとは、実際にものを動かせるのが楽しいという理由もあります。
ものを動かせるのが楽しいというのはどのような感覚なのでしょうか?
大学では、研究手法としてはシミュレーションよりの研究をしていて無機質な感じでした。
一方で、ロボットは自分がプログラムしたように動いてくれるので、自分の工夫次第ですぐに結果が出るし、工夫の余地もたくさんあります。
同じ組み立てをするにもいろいろなアプローチがあって、画像認識に頼るのか、メカ的に頼るのか、センサーをどうするか、ソフトウェアの制御で判断するアプローチもあり、工夫の幅が広くやりたいことができるからこそ、動かせられた時の感覚が楽しいと感じます。
inahoへの入社理由と業務について教えてください。
まず初めに、inahoに入社しようと思った理由について教えてください。
前職でのロボット開発はすごく自分に合っていて楽しかったですし、ある程度成果を出せていた自信はありました。一方で、研究開発の成果なので、実際に生産して現場で稼働しお客様の役に立つところまではいかず、もどかしさを感じており、徐々にその思いは強くなりました。
また、前職で開発していたのは工場向けのロボットなので実用的なレベルで普及しているものでしたが、まだ実用化されていない分野の方がチャレンジできる領域が広いのではないかと思いinahoに転職しました。
自社で作っているからこそ、工夫がロボットへ直接反映させやすい。
実際にinahoに入社してみて、inahoが開発しているロボットについてどのように思いますか?
自社の中で作っている部分がかなり大きいので、自分の楽しさと仕事が直結していて、自分の凝らした工夫などをロボットに直接反映させやすく、やっていてとてもしっくりきている印象です。
真面目に考えない逆の発想で生まれたアームの形
具体的にはどんな工夫をしていますか?
一番は、なるべくシンプルにしようと心がけています。
トマトを収穫するにしても、どういう基準で収穫しないといけないか、周りの環境がどうなのか、などなど複雑な環境の中で、複雑なまま対応しようとすると技術的に難しかったりコストも上がってきます。
ビジネス的には良くない要素が出てきてしまうのです。
まずは解きたい問題をどうすればシンプルになるかを考えています。
具体的には、トマト自動収穫ロボットであればハンド部分の例が分かりやすいです。
一つずつ掴むと複雑になりますが、まとめて収穫する形にすることで、機構はシンプルになりますが収穫するスピードは一つずつ収穫するのに比べ数倍になり、狙う位置もそこまでシビアじゃなくてよくなります。人間の動きで考えないことで道がひらけました。
アームの形が特徴的ですよね!他の会社はやっていない形ですが、どうやって思いついたのですか?
チームで話し合いながら形作られたものだけど、思いついたときはキタコレ!って感じでした。
思いついたその瞬間はテンション上がりましたね。(笑)
いきなりアイデアが降ってきたのではなく、どうすればスムーズに収穫できるのか手で触ってみたり、スポンジをトマトに当てて擦ってみたり、さまざまな試行錯誤をする中で、この当て方だと単純な動作でトマトが取れることが分かってきました。そのあとに、「機械的にも実現できそうだ」という話をみんなでしながら見つけていきました。
良い意味で真面目に考えすぎないのが良かったと思います。
「一つずつ真面目に取るのではなくてもっと雑にできないか、シンプルにできないか」という発想の転換があり、今のアームの形に辿り着きました。
今後について教えてください。
inahoはオランダに現地法人があり、唐子さんも何度かオランダに行って仕事をされていましたが、将来的に海外で仕事をすることについてはいかがでしょう?
農業界の中でもオランダは先進国の立ち位置ですので、最先端の環境にいることでやりがいも感じられます。
いざオランダに行ってみると日本との違いを色々と感じる場面がありましたね。
例えば、オランダの人たちはすごく合理的に考える人たちが多い印象です。ロボットの精度がまだ粗いところもあり、トマトを落としてしまうことや、まだ緑のものを取るときもあります。そういったところを気にするのではなく、もっと多く・早く取れるようにはどうすべきか、できる工夫を一緒に考えてくれます。細かいところは経済的に合理性があるのであれば問題にしないような反応です。オランダ人の気質がそうだと知識では知っていたが、実際に行くと前に進む強いパワーを感じます。
仕事をする中で大変なことはありますか?
先を見通すことが大変だと感じています。
元々私は愚直に開発行為をしていくのが好きなタイプです。なのでエンジニアになったと思っています。
本来は何も考えずにロボットと向き合って、コーディングをカタカタしているのが楽しいのですが、仕事上はそれだけだと成り立ちません。
「どの時点までにどういう開発をしていかないといけないか」「周りの人達とどのように協力して進めないといけないか」「この開発にはどのようなリスクが潜んでいるか」等々を考えないとあとで痛い目を見るし、実際に痛い目をみることもありました。
純粋な開発行為だけでなく、プロジェクトの先を見据える時間も多くあり、その点が私にとっては大変な部分だと感じています。
大変だと思う部分に対してどのように向き合っていますか?
分かりやすい解決策としては、得意な人に任せるのが良いかなと思っています。
一方で、そのような管理面が得意な方がいたとしても、エンジニアが先のことを考えなくていいことになりませんし、多かれ少なかれそういった考えをエンジニアも持たないといけない場面があります。
解決策の積極的な方面としては、工夫を凝らすことをもっと模索してみることです。
工夫を凝らすと私は楽しくなるので、苦手なことでも楽しく出来るのではないかと思っています。
一方で、消極的な考え方としては、仕事として割り切るですね。苦手だったとしても目的達成のために必要なことであると割り切る、この考え方は人によって合う合わないがあるとは思いますが、私の性格や経験を加味すると一つの解決策としてあり得ると思います。
実際にお客様に使ってもらえる状況まで必ず持っていきたい。
今後やりたいことはありますか?
完全に目の前の仕事の話にはなりますが、今開発している自動収穫ロボットを、実際にお客さんが使ってくれるところまではなんとしても持っていきたいと思っています。
「自動収穫できるロボットを開発する」ことと「実際に実用的で経済的に役に立つロボット」の間にはかなりのギャップがあるのも事実です。
野菜の選択収穫は一つ一つの作業に対して、収穫量などリターンが大きくなく、そこのギャップはまだまだあると思っています。
収穫ロボットというものが将来的にどのような形になっていくかは未知数であり、20〜30年後にあるスマート農業の形と現状の形が仮に違ったとしても、今必要で今の状況にマッチしたロボットを出せた、という状況まで持っていくことができたのであれば、大きな達成感が得られると思っています。
私はそこを目指していきたいです。
実際にロボットが何台動いていると唐子さんは達成感を得られそうですか?
1台でも達成感を得られると思います。
自分の手を完全に離れて、お客様先でロボットを使っていただけるか、適切にロボットが動くかどうかが大きいと感じています。
もしかしたら最初は私達が期待したような使われ方にならないかもしれません。ただ、お客様自身でどう使っていくかを考えてくれていただけたら、その時に自分の手から離れた感覚があり、きっと私は嬉しくなると思います。子供が巣立っていく親の感覚ですね。(笑)
inahoで活躍するエンジニアとは?
現場主義で臨機応援さが求められる開発環境
inahoで活躍できるエンジニアはどのような人だと思いますか?
抽象的ですが2つの要素があります。
一つ目は現場主義的な考え方ができる人。
なぜなら、日々相手にしているのは現場の環境条件次第で変わるものばかりです。実験環境で上手くいったとしても、現場に持っていくと上手くいかなかったり、現場Aでは上手く行っても、現場Bでは上手くいかない、このようなことが頻発します。現場で試して試行錯誤をしていくことがロボット開発においてとても重要となります。
二つ目は臨機応変さがある人。
先程の話と少し重複するかもしますが、立ち向かっている問題が状況や環境によって変わることが多く、考えるべき条件が多種多様なためです。
inahoだからこそ感じる仕事の楽しさなどありますか?
一つは、誰も未だ成功していない新しい分野でチャレンジできることです。
もう一つは、自分が開発したものの成果が目で見て分かりやすく、お客様からのフィードバックも得やすい環境だということです。
実際にトマトを収穫してみたり動作テスト等をさせていただいている農場の方とは、かなり密にコミュニケーションしながらやっていますので、農家の方がすぐ横にいて、フィードバックを得やすい環境でやれることはinahoならではの環境だと思います。
ここまで読んでくれた方へ一言お願いします!
自動収穫ロボットの開発はすごく難しいことです。ですが、絶対に世の中に必要な技術だと思いますので、難しいけれど未知の課題に対して取り組んでやろうという気概のある人と一緒に働けたら嬉しいです!