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東京郊外を森のような住まいにしたい

HITOTOWAの荒です。今日は新規事業「ひととわ不動産」についてお話ししていきます。「まちの記憶を受け継ぐためにプロデュース型の不動産仲介をするほか、不動産の利活用、グリーンデベロップメントを担うプロジェクト」として立ち上がってからまもなく1年が経とうとしています。

そもそもなぜ、HITOTOWAが不動産事業を始めたのか──?

それは都市部に暮らす人々にゆるやかなつながりをつくるネイバーフッドデザイン×不動産ビジネスの相乗効果でよりよい社会をつくることを目指したいと志したからです。

これまでもサイトやSNS、講演や交流イベントを通じて私たちの取り組みや思いをお伝えしてきました。その間、一つひとつ新しい出会いがあり、現在もまた広がりを見せています。

今日は、宅建業を取得してからまもなく半年を迎えるタイミングで、いったい私たちがどのような軌跡を辿ってきたかをふり返りつつ、この記事を読む皆さんにお伝えできればと思い筆をとりました。

「普通の不動産屋さんとどう違うの?」──お読みになっている人がいろんな想像を巡らせるなか、私たちの取り組みを知り「いいね」と共感をしてもらえたら嬉しいです。

建築条件付き住宅販売の取り組み

私たちは仲介業を通じて、ただ販売するだけではなく、思いに共感して購入する人や借りたいという人をまちに増やしています。このことで、まちのプレイヤーが増えて、共助が促進されるような好循環を生み出していきたいからです。

その一つのプロジェクトとして、まちのちょっと個性のある素敵な不動産を扱う東京R不動産と、西東京市で自然素材や緑を生かした設計・施工が得意で、家だけではなく環境ごとつくるプロとして活動をする工務店の岡庭建設と共に24年の6月より活動を開始しました。


敷地に緑が豊かに溢れる家たち、コモンスペースやコーポラティブ住宅が共存する未来を描く

活動内容は、このまちで土地を受け継ぎたいと思っている方々のサポートです。ただ販売するだけではなく、思いに共感して家を購入する人や借りる人を増やすために、建築条件付き住宅を提案しました。

建築条件とは、土地を購入した方がパートナーである岡庭建設と共に住宅を建設するというものです。単に家を建てるのではなく、学園町の緑豊かな風景を維持するために、一定数の緑地面積を保ちつつ、自然素材を生かした家をもうけることは、まちなみを維持することにも貢献します。

まだまだ歩み始めたばかり。しかしまちなみの風景を残したいと願うオーナーや緑豊かな住まい・まちに暮らしたいと願う買い手の方に確実に届く内容だと思っています。

地域のオーナー様と、次世代に手渡すためのお取り組みも

初夏の頃、私たちの元に地域のオーナー様からある悩みが寄せられました。学園町に複数存在する、歴史的建造物にお住まいの方から、土地と建物を次世代に受け継ぎたいと考えている、というご相談です。

学園町には「自由学園明日館」を建築したフランク・ロイド・ライトと、彼の弟子である遠藤新・息子の遠藤楽が手がけた建築物がまだいくつも存在しています。

これら遠藤建築以外にも、学園町には豊かな宅地風景があり、意匠にこだわった歴史のある建物などが多く存在します。こうした文化的な住宅の築年数は、50年程度からまもなく100年を迎えるものもあり建物の維持も容易ではありません。

しかしお住まいになる方々は建物を維持したい、どこかディティールを残しながらも次世代に受け継ぎたいと思っているのですね。今回ご相談いただいた方も、まさにそのようなご相談でした。広大なお庭と、文化的な意匠をまとう住宅を良い形で維持し、土地建物を次世代に受け継ぎたいという思いがあったようです。


学園町のある東久留米市には落合川や竹林公園など、自然あふれるエリアがそこかしこにある。

まずはオーナー様のもとに訪れて、じっくりとお話を伺うところから始まります。ただ、相続のために整理するのではなく、今ある風景をなるべく維持するためにはどのようにすべきか。建物改修の課題や、解体の方向性を考えるだけではなく、豊かな緑地を維持することを念頭に入れる。そして継ぎ手を探すために、思いを持った引き継ぎ者の方にお声がけする。そのようなことを考えながら行動をしています。

最近エリア内でこのようなご相談が増えてきました。一つひとつ置かれたシチュエーションは異なり、オーナー様のご希望も異なります。

売買額を優先する方もいれば、ロケーションを優先する方、思いを優先する方などさまざまです。こうしたオーナー様の希望と、まちの風景の維持を考えながらじっくりと取り組んでいければと願うばかりです。

時にはまちで営む他事業者の方々と手を組むことが必要だと思っています。単純にスピードや経済合理性だけを考えすぎずに、オーナー様の思いを大切にした上で、良き形を模索していけたら嬉しいですね。

地元農園事業者との小規模開発計画もスタート

個人の住宅の相談をいただくなかで事業を担う方からも相談が寄せられました。広大な農園を営む事業者さんです。

こちらの農園さんもまた、相続に悩んでいる方々でした。広大な敷地では植物や作物などを管理していましたが、今後を見すえて広大な土地の活用方法について考えている、と相談があったのです。

一部の土地の売却を検討していましたが、ただ売却するだけでは面白くない。この緑豊かな農園の風景を維持できる建物やスペースが隣接されて、エリア一体の景観が維持される環境を望んでいました。

まさに私たちが目指すグリーンデベロップメントそのものです。



四季の風景が感じられる、東久留米市学園町のまちなみ。

仮にまとまった土地を誰かに売却すると決めた際に、どのような手段があるのか。まずは一緒に考え始めています。

オーナー様が事業主として残り、建物を建設し、賃貸管理するという方法もあります。一方でまるっとどなたかに売却し、その際には建築条件付きで今ある景観を維持しながらもコンセプトにそった建物を開発してもらう、という手段も。

オーナー様が一番大切にしていることは、これまで農園さんが紡ぎあげてきた美しい風景と、植物や生物と人間が共存している世界観を壊さないことだと言います。

こうした思いあるオーナー様にとっての最適解として、できる手段の提案や、良き設計をする方、プロジェクトを誘導してくれる方をアドバイザーとして迎えました。

現在、土地を売却することを前提に、いくつかの手法を組み合わせる検討を始めています。画一的な建売住宅ではなく、庭に一定以上の割合で育つ植樹豊かな森のような住まい群、コーポラティブ住宅の建設、コモンスペースの組成など、複数のゾーンで形成していくことにしました。プロジェクトは今もなお進行中。これからどのような姿に変化していくのか楽しみです。


事業を通じて、不動産や経済に影響をもたらし、まちに思いある人増えていくことで好循環が生まれる。


手入れされた豊かな緑と道、建物が共存する風景。

講演会開催後、参加者が自由学園内を回る。年に数回こうした貴重な機会がある。

歩んだ先にある未来の姿

2年目に向けて、私たちは学園町を飛び越えて東京の郊外へと羽ばたいていきます。更なる広域との関わりを持つためです。まずは足元での関わりを大切に、ゆくゆくは承継に悩む人が暮らすあらゆる地域とつながりたい。不動産ビジネスを通じて広く深く、まちなみの継承や発展に寄与していくことを願っています。

HITOTOWAが事務所を構える東京都東久留米市・学園町は歴史のある町。学校法人自由学園をまちの中心にすえて、住まいやコミュニティ、憩いのスペースなどを100年以上かけてまちなみ形成してきました。しかし今、学園町では大切に守ってきた土地や建物の相続が多く発生しており、連日私たちの元にも相談が寄せられているのです。

自由学園の建造物。この場所で100年近く存在しており、趣がある。

荒は4月から自由学園最高学部の非常勤講師として、授業を担当している。

本来、まちのファンを作るためにはじっくりと時間をかけるもの。しかし相続を見据えた物件の売買は、スピード命。なぜなら家の相続は10ヶ月程度と限られた時間で実行をしなくてはいけないため、継ぎ手の気持ちを待つことなく急いで相続あるいは売却をしなくてはならないからです。

こうした悩みを解消していきたい。不動産のオーナーが家を手放なさなくてはならないと思っている時に、誰に相談するかでまちの風景はガラリと変わってしまいます。そうならないためにも、まちの風景を守っていかなくてはなりません。

共に取り組みませんか

お読みいただいた方で私たちの取り組みにご関心があり、特に東京の多摩地域にて一緒にコラボレーションをしたいという方。さらには歴史ある土地や建物、思いを持つオーナー様から土地建物を受け継ぎたい、購入したいという方がいらしたらぜひ一緒になって取り組んでいきませんか。今ある風景をまもりたいという理念に共感する人たちの輪が広がってくれることを願っています。

自主的にまちをつくる意義を次世代に伝えることこそ、このまちを守るために必要なこと。

(HITOTOWA INC.代表取締役 荒 昌史/編集 永見 薫/撮影 千葉愛子・石井隆真/グラフィック 高橋真美)

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