1
/
5

社会の矛盾を解き、価値を創る - Hacobu COO 坂田優が語る、スタートアップで実現する社会変革

「物流」は私たちの日常生活を支える重要なインフラでありながら、長年にわたり非効率性や業界特有の慣習に縛られてきた業界です。この状況を変えるべく立ち上がったのが、「運ぶを最適化する」をミッションに掲げるHacobuです。今回は、Hacobuの取締役COOである坂田 優さんに、設立10年目までの軌跡を振り返ってもらいながら、物流領域の変革と次世代リーダーの可能性について語ってもらいました!

社会で起こっている矛盾や不合理を、培ったスキルで、良い方向へ変えられるかもしれない

───坂田さんの経歴と、Hacobuに参画した理由を教えてください。

私の人生の転機となった出来事から話を始めます。まず、私が中学生の時に父の会社が倒産したんです。この経験から、ビジネスの厳しさと同時に、日本の企業が抱える問題や経営者とはどうあるべきか、ということを考え始めたように思います。その後、アメリカの大学に留学し、そこで初めて「弱者」や「マイノリティ」の立場を経験しました。これらの経験が、常識を疑うということや、社会の矛盾や不合理に対する私の問題意識の原点になっています。

社会人としての転機は、戦略系のコンサルティングファームで働き始めたことです。そこで様々な業界のプロジェクトに携わる中で、改めて日本の企業の課題に向き合うことになります。中学生の時に漠然と感じた企業で起こっている問題に対し、何を目指すべきかという課題設定をし、それを解決するお手伝いをする仕事でした。

そんな中、Hacobuの創業者である佐々木から「物流をテクノロジーで変革したい」という信念を聞き、「働いている人たちは一生懸命頑張っているのに、その頑張りが報われていないのではないか。第三者の自分であればこそ、社会インフラである物流の世界の矛盾や不合理を変えられるかもしれない」と感じました。コンサルティングでは提案で終わってしまうことも、Hacobuなら実際に社会を変えるソリューションを作り出せる。そう確信して、参画を決意します。

コンサルティングで培ったスキルや知識を活かしつつ、実践の場で社会変革に挑戦できる。そう思いました。これこそが、私がHacobuの創業に参画した最大の理由です。自分の経験を通じて感じてきた日本社会の矛盾や非合理を、具体的に変えていけると思ったんです。

Hacobu 取締役 執行役員COO坂田 優(さかた まさる)

2008年カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経済学部卒業。野村證券にて、債券・デリバティブ商品を中心に金融法人向けの営業を担当後、財務部門にて債券の発行等による資金調達業務やキャッシュマネジメントシステムの導入プロジェクトに従事。2014年よりA.T.カーニー東京オフィス及びロンドンオフィスにて、主にインフラ、通信・メディア・テクノロジー、金融領域における事業戦略策定、業務改革プロジェクト等に参画。2016年Hacobuに参画。SaaS事業本部長。

イノベーションは少数派から起こる

───Hacobuは創業から10年目を迎えましたが、この間の物流の世界やHacobuの変化をどのように見ていますか。

2015年に代表の佐々木が創業し、2016年に私が参画してから、ずっと「運ぶを最適化する」をミッションに掲げ活動してきました。しかし当時は、私たちの思いに賛同いただける方は少数派でした。 物流DXという言葉も一般的ではなく、物流の非効率に対する課題は感じながらも、社会アジェンダ化されていませんでした。それでも、信じてやり続けてきた結果、少しずつ世の中が変わってきたと感じています。

───物流DXツール「MOVO」の累計利用拠点が2万を突破しました。この“物流DX”の波を当初から予測していましたか。

いえ、正直なところ、9年前に物流DXにこれほど注目が集まるとは想像できませんでした。ただ、物流の問題に気づき、正しい課題設定をしたところに、大きな波が押し寄せてきて、結果的に事業が拡大していったというのが実際の感覚です。

2万の利用拠点という数字は、私たちの取り組みが徐々に受け入れられ、物流DXの必要性が広く認識されてきた証だと考えています。

スタートアップですから、当初はお金も人材も潤沢にあったわけではありません。しかし、組織づくりに真剣に取り組み、研鑽を積み、信念を持って事業を続けてきたことが、この大きな波に乗れた要因だと思います。

物流の世界には、まだまだ多くのアナログ業務や非効率が存在します。Hacobuには、そういった従来のやり方に違和感や疑問を持ち、業界を正しい方向へ導き社会課題を解決したいと考えるメンバーが集まっています。私自身もその一人という認識です。

この9年間で学んだ最も大きなことは、イノベーションは少数派から起こるということです。時代を読むということは、なかなかできるものではありません。ただ、社会の矛盾や違和感に対して、信念を持って愚直に取り組み続け、チャンスを確実に掴み取れるよう行動してきたことが、ここまで来られた要因だと感じています。

※利用事業所数:MOVO 導入拠点に加えてMOVO を利用する事業所数のアカウントを合計した数字※MOVO Berthシェア:デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2023年度版】』https://mic-r.co.jp/mr/02960/ バース管理システム市場の売上高および拠点数におけるシェア
※累計登録ドライバー数:利用者が「MOVO Berth」を利用する際に登録するドライバー電話番号の累計ID数

未来は自分たちが語り、行動することでしか作れない

───これから先の10年、物流の世界はどのように変化していくと考えますか。また、その中でHacobuはどのような役割を果たしていきたいですか。

正直なところ、10年先の景色を正確に予測することは難しいですね。たった1年でも、業界の様相が大きく変わることがあります。けれども、だからこそ未来は自分たちが語り、行動することでしか作れないとも思います。

まず、物流領域におけるファイナンスの革新は重要なテーマです。物流にはもちろん金銭的なやりとりが伴いますが、そこにも多くの非合理が存在します。テクノロジーを活用して、このプロセスを簡素化し、より透明性の高いものにしていきたいと考えています。

さらに、AIを活用した業務プロセスのアウトソーシングにも可能性があります。人手不足が深刻化する中、AIが人間の補助的な役割を果たすことで、物流業界全体の生産性を大きく向上させることができると考えています。

そして、物流ビッグデータの活用におけるルールメイキングにも積極的に関与していきたいと思っています。産業領域におけるデータ活用の可能性は無限大ですが、同時に考慮しなければならない問題もあります。業界のリーダーとして、適切なガイドラインづくりに貢献していく責任があると感じています。

最後になりますが、Hacobuとしては、これまで以上にグローバル展開に注力していきたいと考えています。物流の課題は日本だけでなく、世界中で存在しています。私たちの技術やノウハウを活かして、グローバルな物流の最適化に貢献していきたいですね。

───経営直下にCEO室とCOO室を立ち上げました。

はい、これらの取り組みを進めるために、CEO室とCOO室を立ち上げました。CEOの佐々木と、私がCOOとして担ってきた役割を組織として仕組み化するイメージです。CEO室で新しいアイデアをインキュベートし、COO室でそれらをグロースさせていくという役割分担で、SaaS事業にとどまらず、イノベーションのスピードを加速させていきます。

Hacobuの役割は、単なるテクノロジー企業ではなく、物流全体の変革を牽引する存在になることだと考えています。そのためには、業界内外の様々なステークホルダーと協力し、時には政策提言なども行いながら、持続可能な物流エコシステムの構築を目指していきます。

物流は社会のインフラです。その最適化は、単に企業の利益につながるだけでなく、社会全体の生産性向上、環境負荷の低減、そして働く人々の生活の質の向上にもつながります。その大きな可能性を常に念頭に置きながら、これからの10年、20年と挑戦を続けていきたいと思います。

───Hacobuの成長を支えてきた組織づくりやリーダーシップについて、大切にされていることは何でしょうか。

柔軟性です。組織づくりとリーダーシップについては、常に進化し続けることが大切と考えています。組織のフェーズや自分自身の成熟度合いによっても変化しますが、その時々で「こうしていこう」と考えたことを、柔軟性を持って実行することを心がけています。自分の中で軸は持ちながらも、しなやかに変えられるところは変えていくというスタイルが、良い結果をもたらしたのではないかと考えています。

───2019年のインタビューでは、「コミュニケーションコストが低い」リーダーになりたいと話していました。スタートアップのCOOとして、今でも意識されていますか。

コミュニケーションコストが低いというのは、要は「話が早い」ということだと思います。これを実現するために、目的に向かって組織の枠に囚われず柔軟にやり方を考える、ということを意識しています。

組織が大きくなると部門や部署でのKPIに沿って皆が動くようになりますが、「運ぶを最適化する」という大きな目的は全員が忘れず意識できるようにしつつ、その人の組織における役割・目標に何かしら結び付けてあげれば、少し枠を外れていたとしてもうまく動いてくれるはずです。そういった大きな目的と一人ひとりの役割をつなげるコミュニケーションすることを心がけています。

一方で、組織の拡大に伴う課題も感じています。役員という立場上、メンバーから声をかけづらくなる傾向があるのです。しかし、たった1分の会話で解決できることも多いんです。そのため、コミュニケーションのハードルを下げることも意識的に行っています。メンバーには、どんなことでも気軽に相談してほしいですね。

※2019年の坂田のインタビュー記事はこちら

AI時代に求められる、抽象と具体の行き来ができるリーダーとは

───AI時代における人材育成について、Hacobuではどのような取り組みをされていますか。

最近は、AIやロボットに指示を出すように具体的に指示をしないと動けない「具体病」に陥っている人も多いのではないでしょうか。しかし、これからの時代に求められるのは、具体の事象を抽象化して考え、全体を見ながら、「この部分は人がやる、この部分はAIがやる」と判断できる能力です。AIを使う側として、どのように頭を使っていくか、答えを探しながら成長していける人を目指すべきだと思っています。

Hacobuでは、論理的思考力を重視しています。私が毎月開催している新入社員向けの講座の中でも、抽象と具体を行ったり来たりできる人材になってほしい、と言っています。抽象度高く全体を理解しつつ、具体もしっかり見に行って、自分で検証して何をすべきかを考えられる人材が、これからの時代には必要不可欠であり、それがHacobuの習慣であり強みです。

このような人材を育成するために、社内での学習機会の提供や、実際の業務での経験を通じた成長を促進しています。また、AIツールの活用方法についても積極的に学び、それを業務に取り入れることで、AIと人間がうまく協働できる環境づくりを目指したいです。

結局のところ、テクノロジーがどんなに進化しても、それを使いこなし、新しい価値を生み出すのは人間です。だからこそ、人材育成とテクノロジー活用のバランスを取ることが、これからの組織づくりとリーダーシップにおいて最も重要だと考えています。

坂田が講師を務める社内研修「論理的思考力講座」より抜粋

───仕事をされているのを見ていると、本当に、仕事好きですよね(笑)

えっ!僕もちゃんと休むし、旅行にも行きますよ(笑)。でもやはりインプットして、行動して、「実践知」が自分の血肉になってくると、本当に、この矛盾に満ちた社会を良い方向に変えていけるかもしれない、と勇気が湧いてきます。その実感が楽しくて仕方ないのでしょうね。きっと。

───最後に、次世代のリーダーや、Hacobuに興味を持った方々へメッセージをお願いします。

はい、これまでお話ししてきたとおり、Hacobuは単なるSaaS企業ではありません。私たちは、物流という社会のインフラを変革し、そこから日本全体の生産性向上や、働く人々の生活の質の向上を目指しています。この大きな挑戦に興味を持ってくださった方々に、ぜひ伝えたいことがあります。

まず、Hacobuでは、思考とスキルを磨きながら実際の社会変革に挑戦できます。例えば、コンサルティング経験者の方々にとっては、これまで培ってきた分析力や問題解決能力を、実践の場で活かせる絶好の機会になると思います。理論を実践に移し、自分の手で世の中を良くしていく。そんな醍醐味を味わえる場所が、Hacobuです。

また、スタートアップならではの環境で、急成長する組織の中核を担うチャンスがあります。私自身、20代の頃はジェネラリストであることにコンプレックスを感じていましたが、30代でHacobuに参画し、COOという役割を通じて自分の可能性に気づくことができました。皆さんにも、仕事を通じて成長し、自分の可能性の大きさに気づいてほしいです。

さらに、AIやビッグデータなど最先端のテクノロジーを駆使し、物流の課題解決に直接携わることができます。抽象的な戦略立案だけでなく、具体的な実装まで一貫して関われるのは、事業会社ならではの魅力です。

物流領域には、まだまだたくさんの不合理や非効率が存在しています。これらの課題を解決することは、単に企業の利益につながるだけでなく、日本社会全体の生産性向上、環境負荷の低減、そして働く人々の生活の質の向上にもつながります。消費者の暮らしに直結する巨大インフラをより良いものにする。これこそが、私たちが目指す社会変革です。

日本の物流革命に、あなたの経験と情熱を注ぎ込んでみませんか。


番外編!COO坂田への8つの質問











株式会社Hacobuでは一緒に働く仲間を募集しています
42 いいね!
42 いいね!

同じタグの記事

今週のランキング