2005年に創業し、雑居ビルの一室からスタートした株式会社グラスト。しかし現在は全国にオフィスを構え、200人規模の組織へと成長いたしました。
そんなグラストですが、実は創業当初の社名はグラストではなく、「ライズ株式会社」という名前でした。その後、創業10周年のタイミングで社名はグラストとなり、新たに「GROW FOR TRUST. 全ての成長は、信頼を築くために。」という理念を策定します。
そこで今回、グラスト代表取締役CEOを務める井尾晃宗にインタビュー。なぜ社名変更したのか、またグラストを創業したキッカケ、そして理念に込めた想いについて、ご紹介いたします。
「人生を懸けてでもやりたいと思った」RISE創業そして人材事業がスタートするまで
―― あらためて2005年にライズ株式会社(現・株式会社グラスト)を創業した理由、またキッカケを教えて下さい。
創業前は、あるベンチャー企業で約3年半、サラリーマンをしていました。ただ、起業しようと思ったキッカケとしては、学生時代の就職活動にあって。
大学三年になり、まわりの友人と同じく、私も就活を始めるわけですが、どの会社も自分の人生を費やそうと思える会社ではなかったんですね。そして、当時の私は自分の将来についてあまり考えていなかったこともあり、「こんなふわふわした状態で就職しても、すぐに辞めてしまうだろうな」と。
また、あらためて自分の人生を振り返ったときに、常に人生の選択はワクワクするかどうかを基準にして選んできたので、それであれば就活はワクワクしないし、辞めてしまえと思い、そこからすぐに東南アジアに旅に出ました。
いま思うと、旅に出る必要なんてなかったんですけどね(笑)。
そして東南アジアを旅していて感じたのが、日本は安心安全だし、食事も美味しいし、とても恵まれている国なんだなということ。そして何をしても死なないんだと気づいて。
失敗したとしても、死ぬことはない。生きていけるんだと。それであれば、ワクワクしない会社に入るよりも、ワクワクする会社を自分でつくったほうがいいのでは、と思ったのが起業するキッカケでした。
ただ、当時はまだ1円起業ができるような時代でもなく、Googleドライブのような便利なツールも世の中になかったため、起業というのが今よりもハードルが高く、さらに当時の私には資金もないし、そもそもビジネスについても何もわかっていない状態。
そこでまずは経験を積むべきだと考え、起業することを目標に、ベンチャー企業に就職することにしました。
私が入社当時、とてつもないスピードで進化している会社だったため、実際に多くのことを学んでいきます。最終的には事業責任者として、採用から事業計画の作成、またマネジメントなども行っていました。
そして3年が経ち、その会社がIPOを果たして大手企業の仲間入りをします。上場までの道のりを中から見てきた私としては、ここで区切りをつけて、いよいよ自分の会社をつくるときがきたなと。
そこで2005年10月に登記し、ライズ株式会社(以下、RISE)がスタートしました。ただ、何をやるのかは決まらずに起業したため、実はRISEというのは、「とにかく上昇していくぞ」という感覚でつけた社名でした。
―― 人材ビジネスを始めることになったキッカケはなんですか?
当初は事業資金をつくるためにも、少資本で始められる携帯電話の卸事業を始めたのですが、キャリアショップの代理店窓口とやり取りをしていると、「人手が足りない」という話を頻繁に耳にするんですね。
ベンチャー企業に勤めていたときも、「ヒト」というのが売上に直結するというのを見てきましたし、「ヒト」というリソースは何にも代えがたい資源であり、優秀な「ヒト」が来れば企業は成長することを身にしみて理解していました。
逆に、どんなに良いビジネスモデルであっても、良い人材がいなければ成功しないわけです。
そして目の前にはすでに人手不足で困っているキャリアショップの事業者の方々がいましたし、RISEとしても何を軸にしていくべきかと考えていた中で、「人材ビジネスであれば、自分の人生を懸けてでもやりたい」と思えたため、2007年に人材ビジネスを手掛けるようになりました。
入社してくれる社員にとってもワクワクする、成長できる会社にしたかった。GRUSTへと社名変更した理由
―― 創業10周年を機に社名を「GRUST(株式会社グラスト)」へ変更されましたが、社名変更に至った経緯を教えて下さい。
RISE創業時は少数精鋭な組織を目指していて、手堅く、とにかく潰れないスマートな経営をしていこうと思っていました。いまのように、全国に支社を展開するような会社規模はまったくイメージしていなかったんです。
しかし、そうした経営観が大きく変わったのが、2011年の東日本大震災でした。突然家族が亡くなり、家も流されてしまい、多くの被災者の方々がツラい思いをされている中、何もできない自分がいて。
そして自分の会社経営のあり方を見つめ直したときに、ワクワクする会社をつくろうと思って起業したのにも関わらず、結局は自分の保身のためにやっているような、小さくまとまった会社経営をしていることに嫌気が差したんですね。
そこでRISEをもっとスケールさせていくことを決意し、全国規模の会社を目指す方向へと舵を切っていきました。
その後は順調に支店を増やしていったのですが、我々の人材ビジネスは、どうしても人数を増やしていかないと売上を伸ばせない労働集約型のモデルであったため、支店が増えると同時に直接私の声を届ける機会が減っていきます。
そうしたときに、会社としての明確なビジョンやミッションが大事になってきますし、社名もしっかりと会社のアイデンティティを示せるものに変えるべきだと思ったのがキッカケでした。
また、今後より組織が大きくなったときに、一貫性のあるブランドがなければ組織がひとつにまとまらないと思い、10周年という節目のタイミングで、企業理念や行動規範含め、ゼロから企業ブランドの再構築に取り組んでいきました。
そこでコピーライターの方と一緒に、事業に対する想いや今後やりたいことなどを話しながら、社名の候補をつくっていくのですが、整理していきながら気づいたのが、これまで私たちが大事にしてきたのは信頼関係であるということ、また、自分たちと関わる人たちの成長を支えたいという想いでした。
というのも、人材ビジネスは有形なモノを扱うビジネスではないため、常に大切にしなければならないのが、信頼や信用、成長といったキーワードで。そしてそれらは、対クライアントだけでなく、対社員に対しても大切にすべきものです。
自分自身が「ワクワクする会社に入りたい」と思っていたのと同じように、入社してくれる社員のみんなにとっても、ワクワクして働ける、成長できる会社にしたいなと。
そして会社として、特に労働集約型のモデルで業績を伸ばそうとしたときに、どうしてもブラックな労働環境に陥ってしまいがちですが、私は業績成長と従業員満足度のどちらも満たせる経営をしたかった。そのため、人数が少ない規模のときからも、社内制度や評価制度、福利厚生の改善に取り組んできました。
そういったことを振り返ったときに、あらためて「GROW」(成長)と「TRUST」(信頼)が私たちの軸であると確信して。そしてこれらを組み合わせた「GRUST」を社名とし、「GROW FOR TRUST. 全ての成長は、信頼を築くために。」という理念を掲げました。
成長の意味は人それぞれ違う。多様な個々の成長シナリオを実現できる会社を目指して
―― 信頼を築くために、成長が大切であると感じたエピソードがあれば教えて下さい。
そもそも信頼を築くって何かと考えたときに、実績が積み重なっていって、それが信頼構築へと繋がっていきます。そして実績を積み重ねていくためには、成長し続けることが重要。
しかし、創業当初はまだ実績もなく、メンバーに対しても「2、3年後、私たちはこうなるんだ」というビジョンに対して、疑心暗鬼のまま、ただ付いてきてもらうことしかできませんでした。そのため、私自身が成長し続け、実績をつくり続けなくてはいけなかったわけです。
当然、失敗することも多々ありました。取引先にお叱りをいただいたりすることもありましたし、社員にも怒られたり、辞めていった社員もいて。それでも、いまGRUSTは15年以上続く会社となり、GRUSTの中で自分が一番成長したという自負があるんですね。
昔であれば「100億円規模の会社を目指す」と他のメンバーに言っても、鼻で笑われるような感じでしたし、30人規模のときに、200人規模の会社を目指すと言っても多くのメンバーはイメージができないわけです。
それでも自らが成長し続け、ブレずにやりきること。その結果、増収増益を続けてくることができ、2021年9月期時点で売上高100億円を超え、従業員数も200人を超える規模へと成長することができました。
また、いまは社内制度や福利厚生も充実させることができていて、独身社員にはお米やカップ麺などの無償提供していたり、ビジネスマンに必要であろうアメニティを完備していたりと、一般的な福利厚生に加えて、ビジネスをしていく上で必要なものは社内制度でまかなえるようにしていきます。
創業初期からいるメンバーは「こんなふうになるとは思ってなかった」と飲みに行くたびに感謝してくれるのですが、そういった声を聞くと、やってきて良かったなと。
そして、こうしたGRUSTの成長がなければ、クライアントからの信頼はもちろん、社員からの信頼も得られていなかったと思います。
―― 変化の激しい時代において、会社として成長し続けるために大事にしていることは何ですか?
コロナ禍においても、GRUSTは増収増益を達成していますが、それはGRUST自身が変化し、成長し続けているからこそだと思っています。事業ドメインは人材領域にあるわけですが、その時々で成長が見込めるマーケットを見定め、対象とする業界や職種など含め、常にピボットしてきました。
どのビジネスも、いつかは利益が出せないフェーズというのがやってきます。そうしたときに、これまでやってきたことを手放し、新たなマーケットに飛び込めるかどうかが大切。
そのため、時代は変化することを前提に、バイアスを外し、自分たち自身も変化して成長していくことが重要だなと思います。
そして今後、企業が求めるものが単に労働力としての「人材」ではなく、「スキル」という切り口での人材ニーズが増えていきます。そうしたときにGRUSTとしても、企業に適切なスキルを提供できるプラットフォーム企業を目指していきたい、そう考えています。
―― 最後に、今後よりワクワクする会社を目指して、GRUSTをどうしていきたいとお考えですか?
GRUSTに入社してくれた社員が、他の会社に入るよりも成長できる環境をもっとつくっていきたいと思っています。ただし、成長というのは、人それぞれ意味が違うなと。
プレイヤーとして売上を伸ばし、成果を出して出世していくことが成長シナリオだと考える人もいれば、ライフワークバランスの取れた働き方の実現がキャリアとしての成長シナリオの人もいて。
そういった様々な成長シナリオに対して、それを実現できる受け皿がGRUSTにはあるという状態を目指していきたいと考えています。
そのためにも、社内制度や福利厚生も常識に縛られず、個々人の成長シナリオに対して何が必要なのかをしっかりと向き合い、各々の成長をサポートし、人生がワクワクする会社を目指していきたいと考えています。