オランダ裁判所、シェルにCO2排出削減加速命じる (ロイター通信)
オランダ・ハーグの裁判所は5月26日、英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルの現行の温暖化ガス削減目標は十分でないとし、2030年までに2019年比で45%削減するよう命じる判決を言い渡した。
(記事抜粋)
シェルが今年発表した気候変動に関する戦略はエネルギー業界で最も野心的な部類に入る。温暖化ガス排出量を原単位(生産量当たり)で2023年までに16年比6%以上、30年までに同20%以上、35年までに45%以上、50年までに100%削減する目標を掲げた。
裁判所の判決文は、同社の戦略は「明確ではなく、さまざまな条件が付けられている。これは十分でない」とし、削減義務に違反する危険性があるとした。
シェルグループとサプライヤー、同グループの顧客も含め、30年までに二酸化炭素(CO2)排出総量を19年比で45%削減するよう命じた。
記事:https://jp.reuters.com/article/shell-netherlands-court-idJPKCN2D801D
計り知れないカーボンリスク
カーボンリスクは気候変動や温室効果ガス排出に起因する非物理的な企業リスクの総称で、企業の収益動向やコスト構造に著しい影響を及ぼす可能性があり、企業経営にとって大きなリスクとなります。
冒頭のニュースに見られるように、グローバル企業として脱炭素を独自の経営目標を立て推進していたシェルにおいても、想定を超えるカーボンリスクが顕在化したと言えます。
CO2の削減は、世界的に官民ともに最も重要性の高い課題となり加速しています。 カーボンリスクは、脱炭素社会への転換の黎明期における新たなトレンドであり、企業や不動産オーナーにとって、そのリスクは計り知れない大きな脅威に見えます。
不動産のカーボンリスクは超大
不動産運用の分野でのカーボンリスクは、企業責任、資金調達、炭素税、規制・罰則などが挙げられます。 不動産は潜在的なカーボンリスクが非常に大きな分野と言えます。
なぜなら、世界の温室効果ガスの約30%が不動産の日々の運営から発生しており、不動産を起点とした移動・交通からの排出量と合わせると世界の温室効果ガスの約50%に達します。
不動産は、人々や企業の多様な日常活動に常に結びついており、それらの活動から排出されるCO2とも密接に紐づいています。
しかしながら、不動産に起因する温室効果ガス排出量の僅か15%が不動産オーナーが把握してコントロールの及んでいる領域です。
残りの85%のカーボンリスクは誰が負うべきことになるのでしょうか? 不動産オーナーなのか? それとも、テナントなのか?
従来の社会や産業構造から考えると、少なくとも不動産オーナーとテナントが共にこの85%のカーボンリスクを削減するための方法やツールは、不動産オーナーが提供すべき範囲と言えます。
そして、この巨大なカーボンリスクの潜在的な影響力を鑑みれば、対策をとりはじめる事は急務と言えます。
新たなルールや枠組みだらけの気候変動対策
一方で、急激な気候変動対策やESGへの取り組み加速に伴い、世界的に様々な「新しいルールや枠組み」、「基準」、「規制」、「国際業界団体」なども急増しています。
EaSyGoのインタビューでは、とある海外の大手不動産運用会社のESG統括責任者は「雨後の筍のように新たなルールや枠組みが急増している。ルール・規格への対応や、目標を掲げることに多くのリソースを取られてしまい、本質的な変化への取り組みはまだ見えてこない。」と評しました。
不動産運用者や機関投資家は新たなルールや基準に適応することだけに、その殆どのリソースを費やしていかなくてはならない状況ともなっています。
ルールや枠組みは非常に重要ですが、脱炭素への実質的なアクションを各企業が取り組むためのものではありません。
また、冒頭のシェルの事例にあるように、「業界水準の取り組み」や「既存のルールや枠組みの範囲内」に沿っていても、カーボンリスクはヘッジできない状況へと進んでいます。
「実質的な取り組み」が、企業の脱炭素への核心へ
もはや企業や不動産運用者の脱炭素経営は「これをやっておけばOK」というアプローチでは収まらないラウンドに入ってきたと言えます。
トップダウンでの基本的なルールや枠組みに沿って「情報開示をし、認証をとり、目標を立てる」と同時に、ボトムアップでの「独自の実質的なESG効果を生み出す取り組み」の目を向ける必要があります。
不動産は施設、立地、テナント、文化、など多くの物件独自の固有要素を含む資産であり、CO2削減やESG実施についてもボトムアップの角度からの取り組みは必須と言えます。
この物件独自の実質的な脱炭素やESG施策のためのボトムアップの取り組みは、カーボンリスクをヘッジするだけでなく、不動産や企業にとっての新たな価値も創ります。
カーボンリスクが目立つが、カーボンチャンスでもある
温室効果ガスを削減することは、新しい社会の価値観として、様々なサービスやモノにとっての付加価値にもなります。
この次世代に求められる「不動産を起点とした新しい価値」については、今後のニュースレターでご紹介させていただきます。
株式会社GOYOH 代表取締役 伊藤 幸彦より
世界的なメガトレンドとなっている気候変動対策において、不動産は最前線での大きな責任を負うとともに、未来の世界を変える力を持っています。
私はグローバルな不動産投資の分野での15年以上の経験と、機関投資家との不動産ESGの導入といった経験から、気候変動対策やESGといったテーマに対しての、不動産における本質的な方法やアプローチが欠けていると感じており、2020年よりEaSyGoサービスを開発しました。
現在の不動産業界における気候変動対策やESGといった取り組みは、グローバル企業や機関投資家や政府・国際機関などを中心に、情報開示やルール策定、業界団体や認証機関の編成、といった大きな枠組み作りが進んでいます。一方で、より本質的な変化を生み出していく取り組みは進んでいないと考えています。
気候変動に対する「リアルな変化」を不動産から
脱炭素社会の実現へむけて、私達はスタートアップ企業こそ、「リアルな変化」を生み出していく役割を担っていると考えています。EaSyGoは世の中にとっての「リアルな変化」を生みだす一歩を踏み出していくスタートアップ事業です。
ビジネスコンセプトは、私達の長年のグローバル不動産市場での経験をもとに、国内だけでなくグローバルに発展できる設計となっており、海外事業者からも関心をいただいており、スマートシティのコンセプトなど、実証実験も進めています。
国内市場やグローバル市場への展開を進め、「持続可能性の選択肢を、全ての人に届ける」というヴィジョンを実現していきます。
弊社の展開する不動産ESGテックサービスEaSyGoは、不動産ファンドや事業会社などの不動産オーナー向けのサービスとして、主に以下の機能を提供します。
1. 不動産ESGの定量化
ESGの環境性(E)分野にとどまらず、社会性(S)やガバナンス(G)といった分野での定量化や最適化、トータルでの不動産の生み出す社会的インパクトの定量化、経済的価値との相関性分析など
2. 不動産テナントへのESGエンゲージメント
よりESGに則した方法や選択肢を不動産オーナーだけでなく、テナントやゲスト・利用者へもESGへの共同での取り組みや、機会を提供
3. グローバル機関投資家へのESG情報開示・アクセス
物件やポートフォリオ独自のESGへの取り組みや、定量化されたパフォーマンスを、EaSyGoとアスタリスク社の持つネットワークからグローバル機関投資家へシェアし、アクセス