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公正なダイナミックプライシングの社会実装を目指して ~共同研究4年間のあゆみ~

こんにちは。広報の見原です。

フォルシアでは、DX事業の一環としてダイナミックプライシングに取り組んでいます。ダイナミックプライシングとは、需要と供給の状況に応じた価格変動によって、収益の最大化および、繁閑の平準化を実現する仕組みです。Withコロナにおける様々な社会課題を解決する手法として、近年様々な企業で導入が進んでいます。

フォルシアは、2018年から京都大学の梅野研究室と共同研究を行い、2019年に出願したダイナミックプライシング技術の特許が今年の7月認定され、また、9月末に新たに1件特許を出願しました。

今回は、4年間にわたる京都大学との共同研究をリードし、自身としても9月末に同テーマで博士号を取得したフォルシア技術研究所の新谷さんに、この4年間のダイナミックプライシングの取り組みについて話を聞きました。

新谷さん入社2年目のインタビューはこちら

フォルシア×京都大学の共同研究について

所属会社と出身研究室のコラボレーション企画が始動!

ー どのようにフォルシアと京都大学でダイナミックプライシングの共同研究が始まったのでしょうか?

私は院生時代、京都大学大学院の梅野教授の研究室でデータサイエンス関連の研究を行っていました。フォルシアに入社して1年が経過した頃、梅野教授とデータサイエンス系の研究をしながらそれを生かした事業ができないかという話になったことが発端ですね。

ー ダイナミックプライシングの研究室ではなかったのに、テーマにダイナミックプライシングを選んだのはなぜですか?

どのようなテーマなら研究を生かした事業ができるか・・・と考える中で上がってきたのが未来進行のテーマ「ダイナミックプライシング」でした。「いつ価格を変更したらどれだけ売れた」という観測を基にモデルを作ることはデータサイエンスにも通ずるだろうと考え、そこから具体的な検討が進みました。
梅野教授は「ダイナミックプライシングに関する実用的な理論や技術はまだ存在しないので研究する価値がある」と賛同してくださり、フォルシアとしても事業にポジティブに働くと考え、両者による共同研究がスタートしたのです。

ー 自分の所属している会社と自分の出身研究室がタッグを組むって、貴重な経験ですよね。それにしても、入社2年目にして大学院での研究、そしてそれを生かした新規事業を考える・・・と一気に大きなことを任せられて不安ではなかったのでしょうか?

不安はあまりなかったですね。当時はまだ何もわかっていなかったから「できるでしょう」と思って始めたんです(笑)。でも、私自身もダイナミックプライシングに関して持っている知識はゼロに等しかったですし、会社としてもこの分野に関して実績があるわけでもなかったので、手探り状態でのスタートでした。


博士課程と共同研究と新規事業の3本柱立て生活に突入

ー そのような状態で特許取得できるまでにたどり着いたのはすごいことですよね。何もない状態からどのようにして研究を進めていったのですか?

最初は知識もデータもなかったため、まず様々な業界の方から何度も入念に話を聞いて分析しました。その際にはフォルシアがお取引のある旅行会社様や、研究に興味をもって賛同してくださった事業者様がヒアリングやデータ提供に協力してくれました。データがなかったらそもそも研究ができなかったので、協力してくださった事業者の皆様には感謝してもしきれません。

ー ビジネスを行いながら大学院で研究を進めることにはこのように企業様の協力を得られやすいというメリットも多分にあったかと思いますが、逆に博士課程と共同研究と新規事業の3本を同時に進めていくうえで大変だった点は何ですか?

最も大変だったのは互いのギャップを埋めることです。どういうことかと言うと、研究は大学にとって意義のあること。でも、実際に儲けとして結果が出るのは事業です。研究としては、汎用的かつ普遍的な理論や技術の確立を求めたいけれども、事業側に寄れば寄るほどより具体的な課題解決が求められていくので、そのギャップを埋めていくことが大変でした。正直、自分はどの立場の人間として考えれば良いのか、と混乱することもありました。ですので、研究室、フォルシアの双方とコミュニケーションをこまめに取ることを意識して「3本柱生活」を送っていました。

ダイナミックプライシング技術について

「なぜこの価格になったのか」の裏付けがある

ー 本年7月に取得した特許技術について、どのような技術なのかわかりやすく教えてください。

「人々の予約行動における数理的普遍性を活かした需要予測アルゴリズムと、それを用いたダイナミックプライシングシステムの構築」です。全国宿泊施設に対して予約が行われた日と予約件数、キャンセル件数の関係を示す予約曲線が普遍的に指数関数で与えられるという数理的特性の発見を用いた汎用的なダイナミックプライシングアルゴリズムの基本技術です。

ー 「世界初」(※2022年7月当社調べ)の技術ということですが、どのようなポイントに独自性があると考えますか?

予約の行動原理を発見したという点でしょうか。すでに、AIによって価格を決めるというダイナミックプライシング技術はありますが、これらは過去のデータのみが起因となっています。

一方、今回の特許技術は、期限に対して直前になるほどアクションが増加するという行動パターンを応用した説明可能な技術。データを使いながらも、人間行動特性に立脚しているという点が大きな差だと思います。

まだまだ願望ですが、この技術の先にある未来は、「公正な価格設定」だと考えています。「この価格であることの理由がある」ということが、消費者、事業者の双方に納得感をもたらし、フェアな世の中に貢献できるといいなと思います。


フォルシアの歴代特許証に並ぶピカピカの特許証

顧客属性ごとに対する需要予測や適切なタイミングでの価格政策が可能に

ー 技術のポイントを理解できました。では、9月末に新たに出願した特許技術はどのような技術なのでしょうか?

今回出願した特許技術は、前述の特許技術を応用した新技術です。数理的な普遍性を維持したまま、事業ニーズにマッチするよう、具体性の粒度を向上させました。代表例としては、従来観測することが難しかった顧客の計画性やロイヤルティといった特徴に着眼し、顧客の予約パターンを指数関数性の観点から分類することで、属性ごとの需要予測・プライシングの精度が向上します。

ー 顧客の行動特性によって価格を設定できたらよりプライシング効果が高まりそうですね。具体的には、どのような場面で活用できるのでしょうか?

年齢や地域などの基本的な属性に加え、販売チャネルや行動時間、ロイヤルティに至るまで、顧客はさまざまな要素で分類できます。それぞれの顧客属性ごとに対する需要予測や、適切なタイミングでの値上げ・値下げなどの価格政策につながります。これをさらに応用すると、既存商品の価格設定だけでなく、需要と供給のバランスを鑑みた新しい商品の設計に役立てることもできます。

ー より顧客ニーズに沿った商品設計・価格設定ができるのですね。この技術は幅広い業界で応用できるのでしょうか?

そうですね。この技術が活用されることによって、混雑緩和と需要喚起の両立や、繁閑の平準化を通じた働き方改革など、さまざまな社会課題を解決する手段になることが期待できます。ですので、これまでダイナミックプライシングが実用化されなかった業界でも幅広く活用が進んでいったら嬉しいです。

プライシングに関わる社会課題を解決したい

ー 改めて、ダイナミックプライシングを通じて新谷さんが実現したいことを教えてください。

ダイナミックプライシングが引き続き広がっていくというのは疑いがなく、プライシングとデータサイエンスの相性が良いという考えも変わっていません。とはいえ、この分野では特に、技術だけでは社会の変化を生み出しづらいというのも事実です。実際、コロナ禍のような外部環境の変化によって、ダイナミックプライシングの浸透は促進し、昨今では、文字通りの価格変化を超えて、需給調整のための商品設計のあり方を変えてきています。公正な価格設定や、需給調整のための商品設計などを含め、各業界・事業者の方々の課題に寄り添いながら、今後もダイナミックプライシングの適切な社会実装を追求していきたいです。


さいごに

新谷さん、お話ありがとうございました。

この数年で、繁閑の調整、在庫ロス、働き方改革、物価上昇など様々な社会課題が生まれています。
今後様々な業界にダイナミックプライシングが広く活用されて、これら社会課題の解決につながりますように。

ダイナミックプライシングについて詳しく話を聞きたいという方は、下部の「話を聞きに行きたい」よりお気軽にお問い合わせください。


この記事を書いた人

見原 麻里子

経営企画室・広報担当。
今週末はクリスマスツリーを飾る予定です!

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