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横浜市×ナンシーで特別支援学校の登下校を支援する 「通学支援モデル事業」スタート!①障害児家庭に新しいあたりまえを

「医療的ケアシッター ナンシー」は、小児看護の経験豊かな看護師が医療的ケア児や障害児のご自宅に伺いお預かりを行うシッターサービスです。

学齢期のお子さんもご利用いただけ、複数の制度を組み合わせることで、通常の訪問看護よりも長時間の訪問ができ、その時間を活かしてお子さんの発達を促す遊びや学習のサポート、移動支援などご家庭の希望に合わせた様々な支援を提供しています

今年1月から、ナンシーでは横浜市と協働し「通学支援モデル事業」をスタートしました

この「通学支援モデル事業」とは、特別支援学校に通うお子さんを対象に、市が学校への送迎用の車と運転手を手配し、ナンシーの看護師がお子さんと車に一緒に乗り送迎時のケアを行うことで、お子さんの通学を支援する事業です。

今回は全3回にわたり、このモデル事業の概要や実施に至った経緯についてご紹介します。

第1回は、このモデル事業の導入に尽力された横浜市立・東俣野特別支援学校 主幹教諭・中井 大輝様と、医療的ケアシッターナンシー事業部マネージャーの藤井との対談形式で、導入の経緯や実際の支援、今後に向けた課題などを伺いました。

自分を育ててくれた地域の皆さんと学校をつなぎたい――「特別支援教育コーディネーター」とは

横浜市立・東俣野特別支援学校 主幹教諭・中井 大輝様


Qまずは、中井先生についてお伺いさせてください。今の仕事はいつからご担当なのでしょうか?

中井)東俣野特別支援学校に異動してきて4年目になるんですが、異動してきてすぐに「特別支援教育コーディネーター」に指名されました。

「特別支援教育コーディネーター」というのは、子どもたちに適切な支援や教育内容が行われるために、福祉機関、医療機関や、放課後等デイサービスなどと連絡を取り合い、それぞれの働きを調整しながら、一人ひとりに沿った支援が得られるように働きかけていく、という役割です。

Qこの学校は、先生の地元でもあると伺っています。

中井)はい。私は、もともとこの学校に隣接する小学校の卒業生なんです。自分を育ててくれた地域のみなさんと学校とをつなぐ橋渡し的な役割ができればいいなと思ってこの仕事をしています。

Qコーディネーターとして、普段学校ではどのようにお子さんと関わっていますか?

中井)直接的に指導で関わることは少ないんですが、例えば、関係機関の方々が対応に悩んでいることを私が聞いてその子の担任とつないだり、私が直接関係機関へ出向き、対応について話をすることもあります。

あとは、保護者との相談窓口でもあるので、お子さんのこと、家庭のことなどの相談を聞いています。関係者の間を行き来しながら対応を一緒に考え、その結果をお子さんたちに還元するという形で関わっています。

【医療的ケア児の通学を取り巻く課題】

Q医療的ケア児の通学を取り巻く環境については、どんな課題を感じていますか?

中井)横浜市の特別支援学校では、スクールバスが基本的には運行していて、子どもたちの通学を支えています。令和元年度からは、医療的ケアが必要な児童・生徒の通学のため、福祉車両による通学支援への取り組みを進めているところです。

しかし、福祉車両の確保に課題があったり、同乗する看護師の確保が難航していました。たとえ車両があっても、看護師がいなければ医療的ケアを車内で行うことができません。結局保護者が自家用車などで送迎しないと通学できないのです。

一方で、「登下校の時間帯だけ」という短時間の利用のニーズに合わせる対応がなかなか難しいことが、看護師の確保のハードルとなっていました。

Qナンシー事業部の藤井さんも、ナンシーでお子さんの通学支援ができたらと考えていたんですね?

藤井)ナンシーは「お子さんにはケアと遊びの楽しい時間を提供して、その間に家族にはつかの間の休息を」ということを掲げています。

ナンシーがご家族に代わって学校にお子さんと一緒に行くことができたら、お子さんは学校で楽しい時間を過ごせて、家族はその間つかの間の休息を過ごすことができます。

自分たちが日々やっていることと一貫したサポートができるんじゃないかなと、最初に思ったのがきっかけです。

またケアを担っている看護師としても、通学の支援をすることで、お子さんとの関わりが増え、体調管理がしやすくなったり、学校との連携が進むのではと思っており、中井先生に相談してみました。

医療的ケアシッターナンシー事業部マネージャー 藤井

Q今回のモデル事業は、それぞれのニーズを話し合うところからスタートしたんですね。

中井)藤井さんから連絡をいただき、これはやった!いい機会だと思い、学校側が持っていた課題感と医ケア児のお子さんたちを取り巻く課題・背景をお伝えしました。

時を同じくして、横浜市で、医ケア児に対する通学支援のモデル事業に取り組んでいたので、それと合わせることで何かできないか、いい方向に変えられないか?と僕の方からも相談させてもらい、ナンシーさんもいろいろ提案してくださったんです。

藤井)先生と話した時は、「モデル事業」をどうしたらできるかということはあまり考えていなかったですね。

中井)そうそう。

藤井)今ナンシーができることは、自分たちが日々訪問しているお子さんに対してだけに限られてしまうと思っていたので、その中でできることがあったら、一緒にタッグを組めたらいいなとお話をしました。最初は、移動支援の制度を使って通学のサポートをするのはどうかという話をしていたと思います。

通学支援のモデル事業をスタートするまで

Q具体的に、どのような流れでモデル事業を進めていったのですか?

中井)当初は、すでにナンシーを利用しているお子さんが下校する時に「移動支援」の制度を使ってナンシーの看護師が同伴しようという話をしていましたが、検討していくうちに、ナンシーで抱えている課題や制度の課題、どうやって車両に実際に乗るかなどの問題も、横浜市でもともと行っていたモデル事業で解消できるのではないかとなりました。

藤井)モデル事業として進められるよう「じゃあこうしてみようか」とか「ここは難しいけど、これだったらいいんじゃないか」と実現に向けて前向きな意見交換ができたことがありがたかったです。

中井)もともと学校側で考えていたことを藤井さんに伝えて、「今スクールバスの子はこうしている、医ケアのない子はこうやっている」と、すでにある学校の取り組みを紹介して、今回の枠組みに落とし込んだ時にどうなるか、ということを一つ一つ作っていきました。

Qかなり細かい部分まで協議されたんですね。

中井)そうですね。看護師に車両に乗ってもらった時に行うケアの内容を決め、親御さんたちから引き継いだ内容をどう学校にお伝えするのかの調整を行いました。看護師用のケアの記録用紙を作ったりもしましたね。

お子さんに緊急のことがあった場合、車両が事故に遭った場合、自然災害が起こった場合など緊急事態の際に、どのように保護者や看護師に連絡するか、学校の対応の整備もしました。

また、どのようにナンシーの看護師を迎えに行き、お子さんの家まで行くか、という調整も必要でした。


お子さん・保護者の思いを汲み、学校・看護師の視点を入れる

Q医ケア児の親御さんからもケアの内容の引き継ぎを受けたと伺いました。

中井)実際に登校時にどういうケアをしてきたのか、親御さんにケアを見せてもらったりもしました。そこからも必要な内容を確認していきました。

藤井)登下校中の様子やケアの内容を記録する書式そのものから作っていくことは、ナンシーとしても初めての試みでした。しかもモデル事業なので、次に手を挙げてくれた事業所の人が同じマニュアルやチェック資料などを使いやすいようにということは意識しました。

今まで、家族が学校と引き継ぎをしていたことを看護師が担うとなると、引き継ぎ時に「伝えなければいけないこと」と、「マストではないが知っておいた方がいいこと」を分けて整理していきました。

中井)保護者がお子さんをどう安心して送り出せるか、というところが重要でした。そのために必要な確認とか、連携をどうしたらいいか考える必要がありました。保護者としては入学してからずっと我が子に付き添ってきて、思いとしては「一人で学校に通えること」ということを願っていても、いざそれをやるとなると心配。安心する材料が必要なんだと思います。

お互いに納得できる形で、どうしたら安心できるかを少しずつ整理していく中で、「もう大丈夫」だと、保護者に思っていただけることが重要なんです。

藤井)登校の場合は、学校で待っている先生、学校看護師、初めて我が子を送り出す親御さんの気持ちだったり、実際に車両の中で間近で見ている看護師の視点を揃えていくことが難しかったです。

中井)その都度、この項目はいるかな、いらないかな?と確認していきながら調整を進めていきました。でもすごくいい時間でした。

自宅から「いってらっしゃい」と送り出すことを、「あたりまえ」に

Q今後の展望をお聞かせください。

中井)自宅から子どもを送り出して、学校が終わったら子どもたちが帰ってくる。保護者は、そんな当たり前の経験を子どもたちにさせてあげたいと願っています。そういう経験は、どんな子たちであっても保障されるべきだし、そう思うことは自然なことかなと思っています。

私としてはその経験をお父さん・お母さんにもしてほしい。入学してからここまでずっと付き添ってきてもらったお父さんお母さんたちの状況を、今回のモデル事業を通して、変えたい、どうにか実現させたいと思いながら、ナンシーさんと取り組みを進めています。

藤井)私も「あたりまえ」がキーワードかなと思っています。

ナンシーは「新しいあたりまえ」というのをミッションにしています。モデル事業を利用するご家庭の方と話をしたときに、「今回の話を聞いて、『いってらっしゃい』と送り出せるあたりまえが叶うかもしれない、と思いました」と言ってくださいました。

あたりまえをあたりまえに描けるような社会になっていけばいいなと思いますし、ナンシーだけではその社会を作ることはなかなかできないですが、自治体や地域の方々と協力していくことで、その一助になればいいなと思っています。

「自宅から子どもを送り出して、学校が終わったら子どもたちが帰ってくる。そんなあたりまえの経験をしてほしい」という中井先生とナンシーがタッグを組んだ、この新たな支援事業。

一人でも多くのお子さんが「あたりまえ」に学校生活を楽しみ、親御さんもそれを心から喜べる、そんな事業にするべく、これからも取り組みを進めます。

ナンシーでは親子の「やってみたい」を叶え、新しいあたりまえを作るために、自治体や地域の方々と協力しながら、まだ前例のないチャレンジにも挑戦していきます。

ナンシーの事業の詳細やご利用案内はこちら

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