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【金融業界→スタートアップCFO】ファイナンスの経験を活かし医療の未来を変革する ー ファストドクターCFO中川修平の挑戦(前編)

今回はファストドクターのCFO中川さんのご経歴についてのインタビューです。金融のプロフェッショナルとしてどのような経験をしてきたのか、なぜ今医療DXスタートアップを選択したのかについて語っていただきます。

中川 修平(なかがわ しゅうへい) プロフィール
慶應大学院卒。2003年、三井住友銀行入行、市場営業部門で金融派生商品の開発とディーリングに携わる。2007年、みずほ証券入社。TMTセクターを含む主に企業向けのコーポレートファイナンス、M&Aファイナンスに携わり、後に Mizuho Securities USA Inc.出向。証券化を中心にデットファイナンスの引受け業務に携わる。2018年、ココナラ入社。CFOとして2019年プレIPOラウンドでは、海外機関投資家のみから資金調達を実施。また2021年東証マザーズ市場(現グロース市場)への上場では、日本初となる、親引けによるコーナーストーン投資と、旧臨時報告書式方式で過半数金額の海外投資家への販売を実現。2022年6月、CFOとしてファストドクターに入社

ルーツは激動期・日本金融機関への危機感から

ーーー まずは、中川さんの原点からお伺いしたいと思います。金融業界を志したきっかけから、お聞かせいただけますか?

中川:私の金融業界への関心は、学生時代の日本の金融機関の危機、激動期に遡ります。当時、山一證券や北海道拓殖銀行の破綻、さらには日本長期信用銀行や日本債券信用銀行の国有化など、日本の金融機関の危機が相次いでいました。また、アジアやロシアの通貨危機、世界最先端とされていた(金融工学でのノーベル経済学賞受賞者を有する)米国のヘッジファンドLTCMの破綻なども目の当たりにし、日本の金融水準の向上が喫緊の課題だと強く感じるようになりました。

ーーー 大学では工学系を専攻されていたと思うのですが、そこから金融にはどのように繋がったのでしょうか。

中川:専攻していた電気・機械工学の一部である制御工学の最適制御や強化学習といった研究分野が金融工学に応用できることを知ったんです。幸運なことに、電気工学の研究室でありながら金融工学の研究を許可してくれる教授と出会うことができ、そこから本格的に金融の道を歩み始めることになりました。

ーーー 新卒では三井住友銀行を選ばれたんですね。そこでの経験についてお聞かせください。

中川:就職活動時は、小泉・竹中構造改革の真っ只中で、りそな銀行の国有化や、あらゆる資産価格が暴落しており、ハゲタカと呼ばれた外資系ファンドが活躍する一方で、外資系金融機関の日本撤退が相次ぐなど、金融業界は大きな逆風に直面していたんです。金融機関の採用枠が激減していた中で、掴み取ったポジションの一つでした。商業銀行が当時の日本の金融の中心であったこと、金融の専門性を高める必要性が高いのも銀行だと考えており、日本の金融のレベルを高めたいという思いから、三井住友銀行を選びました。

入行後は支店での融資業務を1年経験し、その後市場営業部門で金融派生商品の商品開発とディーリングを3年担当しました。ブラックショールズモデルやモンテカルロ法など金融工学の手法を活用しながら、主に原油や金属などコモディティを原資産としたスワップやオプション、それらを預金や融資に組み込んだ複合商品の開発に携わりました。自己勘定でポジションを持ち、顧客向けのプライシングとマーケットメイク、リスクの計測とモニタリング、積み上がったポジションのヘッジなどにより損失リスクをコントロールしながらポジションテイクによって利益獲得を行うディーラー業務をしていました。

金融業界からスタートアップへと舵を切る

ーーー その後、みずほ証券への転職を考えたのはどのような理由だったのでしょうか。

中川:市場取引はダイナミズムがあり、自己勘定では担当者個人の判断や取引ができる点に魅力を感じていて、マクロ的な学びや自立性や独自性、責任感を成長させてくれたと思っています。
他方で、個別企業の視点やミクロ的視点の大事さも感じており、また、開発した商品を届ける先との対話が間接的であることにもどかしさがあったんです。自分の開発した商品が企業全体の事業戦略や財務戦略にどう貢献しているのか、より直接的に理解したいと考えるようになりました。

きっかけになったのは、その頃に三井住友銀行時代の先輩から、M&Aのアドバイザリーや、そのファイナンスとして通常のコーポレートファイナンスだけでなく、買収先企業のキャッシュフローに依拠した事業証券化やLBOファイナンスを扱う部署のみずほ証券の方を紹介されたことです。企業向けにコーポレートファイナンスをやっていく時に、資本市場と企業の間に立ってデットもエクイティも扱い、ストラクチャードファイナンスを通してアセットも扱う証券会社が面白いと感じたことが決め手となりました。

ーーー みずほ証券ではどのようなことを経験をされましたか?

中川:様々なことを経験させていただいたのですが、新興の大手通信企業で、創業社長向けのアドバイザリーチームに所属できたことは私にとって大きな財産です。
クロスボーダー含めた国内外のM&Aに検討開始前から多数関与でき、ディールのクローズまでご一緒することができました。社長自身が社会変革への強い課題意欲を持ち、社会課題解決のためにもファイナンスを積極的に活用する姿勢に深く感銘を受けました。多数の実現したいことに対して検討のゼロ段階から携わらせていただき、社長と一緒にお仕事をしたことで、
・社会に課題意識を持ち、より良く変えるという大義を持つこと
・その解決のために社会的インパクトの大きな成長事業を起こすこと
・持続可能な成長のために柔軟にビジネスモデルを仕立てること
・グロースのためにファイナンスを最大限駆使すること
など、ファイナンスで事業成長を支援する面白さを感じることができました。

また、事業証券化やLBOといった、コーポレートファイナンスとストラクチャードファイナンスの融合的なプロダクトも手がけ、世の中にない仕組みを考案し、資本コストの大幅な削減や信用補完効果の向上を実現してきました。

某塾の言葉を借りると「シカクいアタマをマルくする」経験をし、そういった動き方を身につけることができたと思います。特に金融、法務、税務、会計といういわゆる”おカタい”知識や専門家・当局などの集団の持つ知識を結集し、自らが指揮をとって彼らの知識と知恵をこねくり回して新しい叡智とプロダクトを産み出す。業界の常識や慣行にとらわれず、大きな目的に沿って大胆に発想し、緻密に積み上げていき、新しいものへの反対派も含めて関係者を丁寧に説得することによって、顧客が成し遂げたいことを従来以上に大きく実現できるということを経験できました。

ーーー その中でも特に印象に残っている案件について具体的に教えていただけますか?

中川:ニューヨーク駐在時に主導した、日米クロスボーダーでの金銭債権の証券化案件が特に印象に残っています。日本の金銭債権を米国の債券市場で流通させるという、当時としてはまだ一般的ではない取り組みでした。

クロージング前夜は、まさに一刻を争う展開でした。プロダクト設計とエクセキューションがかなり難航し、期日通りにクロージングできるかが極めて悲観的な状況で。
米国側において、唯一のストラクチャリング経験者かつ責任者だった自分が最後までやり切るしか道がない状況でした。深夜ぎりぎりまで事務引受けの米銀(信託銀行)と最終交渉した結果、再度複数関係者を巻き込んだ合意形成のために、日を改めなければならない論点が出てきて、ほぼ詰んだ状況となってしまって。
その状況下で、「最後は責任持って関係者を説得して、御社の合意できないことは回避するから、この論点をポストクロージングで交渉する前提で、事務引受けをしてクロージングさせてもらえないか」とダメもとで依頼をしたんです。おそらく、その日まで関係者からの論点に向き合い解決して進めてきたことをご評価頂けたのだと思いますが、その依頼の結果、自社と当該米銀が初取引にもかかわらず、自分の渾身のお願いに共感してリスクを取っていただくことができました。
どんなステークホルダーや取引先でも相手の利害も理解して尊重し、自分の本気を全力で伝えて巻き込みながら推進すれば打破できるという貴重な体験となりました。

ーーー その後帰国され、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?

中川:
帰国後、投資銀行本部で従来から日本の産業界を牽引してきた大手企業をバンカーとして担当しました。財務戦略を提案しながらM&Aのアドバイザリー、株式や債券などファイナンスの引き受けを受注、獲得する担当です。
これは、三井住友銀行からみずほ証券に転職したときには、最終的にやりたいと思っていた業務ではあったんですが、次第に米国での経験を通しよりダイナミックかつスピーディな環境で日本の産業を牽引できる企業を自ら産み出していきたいと感じるようになっていったんです。

その中で、先ほどお話ししたようなファイナンスで事業成長を支援する面白さを感じたり、世の中にないプロダクトで顧客への付加価値を産み出してきた経験から、スタートアップでファイナンス面から会社の成長を牽引できることが自分に合っているのではないかと感じていました。

※前半では、主に中川さんの金融業界での経験について伺いました。後編では今ファストドクターで取り組んでいることや、やりがいについて伺います。(後半の記事はこちらです)



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