ダイレクト出版の社員に向けて書いたレターを転載しています。
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To: ダイレクト出版のみんなへ
From: 小川忠洋
「失敗はある日、突然起きるわけじゃない」
―これはP&Gの元CEOで、その後GM(ゼネラルモーターズ)の会長にもなったジョン・スメール氏が言っていた言葉だ。
GMという会社は、かつてナンバーワン・カンパニーだった。ところが09年に経営破綻、米政府の監督下で再建を進めることになった…。一体何が起きたんだろう?
外野から見ていると、「何かとんでもない間違いを犯したんじゃないか?」「何かの事件をキッカケに凋落していったんじゃないだろうか?」と考えがちだ。よくセミナーなどで「ブレイクスルーのポイントは何か?」という質問を受けるが、それとまったく同じ考え方。つまり、何らかの大事件をキッカケに急成長したり、逆に大惨事に陥ったりすると考えてしまうのだ。
しかし、この考えは基本的に間違いである。
ジョン・スメールはこのように言っている。
「失敗―つまり首位の座を失うこと―は突然起こるのではありません。
何年もかかって起こるのです。失敗は最後の重大局面にならなければ、
会社の財務上の結果に表れませんが、その何年も前から失敗の根源があったことが分かります」
つまり、失敗も成功もゆっくりとやって来るということだ。
以前、元スタバCEOの岩田さんと一緒に講演したセミナーで、
「ブレイクスルーはどこか?」という質問を受けたとき、
「スタバのブレイクスルーはどこだと思うか?」と返してやった。
スタバは1つのイベントで生まれたのではなく、20年かかって育ったのである。ウチも同じだ。
この1日、1日の平凡な活動が、われわれをエクセレント・カンパニーに育てているのか、それとも凋落の道を一歩一歩進んでいるのかを意識して考えなければいけない。
会社の将来なんて、オレには関係ない……と思うかもしれない。その気持ちも分からんではない。
しかし、自分が働いていた会社がどーしょーもない会社になっていくのと、尊敬されるエクセレント・カンパニーになっていくのとでは、自分の仕事に対する「誇り」はまったく違って感じられるだろう。
人間というのは何らかの大きな目的があったほうが充実するもの。
楽しもうが苦しもうが、それは自分自身の選択でできることだ。
世の中に起きていることなんて、たいした意味はない。
意味をつけるのは自分自身だということを忘れてはならない。
「ゆっくりとした凋落の道」という観点で見れば、個人的に思うのが、ウチの会社では「社内の話」が多く、「社外の話」が少ないこと。
ビジネスは社外で起きる。顧客も社外にいるし、競争相手も社外にいる。ところが、なんだか社内の話が多いよな? と感じてしまう。
あっちの部門がどーだこーだ、こっちの人がこーだあーだ。こんなことをやっていてはダメになる。
おそらく、業界の特性(成長産業であること)と、とても強い競合がいないことも一因だろう。
しかし、つねに会社の外を見て、ビジネスチャンスに備え、競合に備えて、顧客を理解してリードし続けなければいけないのだ。