インターン生運営企画「新しい医師のカタチ」第1回
〜ゲストスピーカー:野村章洋医師に聞いた新しいカタチとは〜
CureAppでは所属する学生インターン生が、大学や医学の臨床現場とはまた違ったベンチャー企業という環境で医療とは何かを考え、自身の将来、そして医療の未来を模索しながら日々活躍しています。
その中でも、インターン生が企画運営している「新しい医師のカタチ」は、医師の働き方が多様化していく現代において、様々な新しいキャリアに興味を持つ若手医師や医学生がゲストスピーカーにそのキャリアについて聞き、交流する機会を作ることを目的に開催されています。
今まで限定公開で行ってきた企画ではありますが、この新しい医師としての多様な働き方や考え方に多くのヒントを得たインターン生が、学生ならではの視点で印象に残ったことを中心に、より多くの方にお伝えしたいと記事化してくれることになりました。
CureAppにもCEO兼医師、CDO兼医師、CMO兼医師、デザイナー兼医師、などたくさんの医師のキャリアと新しい働き方をしている社員がいます。この企画を通して、さらなる新しい医師のカタチとしての魅力をご覧いただければと思います。
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CureAppでインターン生をしております、早稲田大学人間科学部3年の小野日向です。今回はCureAppインターン生主催「新しい医師のカタチ」の第1回として野村章洋医師をゲストにお呼びし、「アカデミアとデジタルヘルス」というテーマをもとに、弊社CMO谷川とのトークセッションを行いました。
インターン生が主導となり企画したもので、医師の働き方が多様化していく中で、様々な新しいキャリアに興味を持たれている若手医師が気軽に色々なスピーカーの話を聴き、また交流する機会を作る目的の会です。
前半は、ゲストの方がどのようなキャリアを歩んできたのか、また転機はどのタイミングで訪れたのかなどをお聞きした後、実際に参加者の質問に答えていただきます。後半は、オンラインでの懇親会と称し、さらに気になっていることや深掘りしたい話題についてカジュアルに交流を深めることができます。
近年、「医師=臨床一筋」という考え方が変わってきており、臨床を経験したからこそ何かできることがあるのではないかと考える医師が増えたように感じます。それぞれの貴重なご経験や考え方の変化、医師だからこそできる挑戦やその先に広がる世界観について伺います。新しい医師のカタチ企画とは?
ゲスト 野村章洋医師について
金沢大学医学部卒、金沢大学附属病院 先端医療開発センター / 循環器内科。
聖路加国際病院、小倉記念病院循環器内科などを経て、ハーバード大学医学部 マサチューセッツ総合病院などで勤務。
帰国後、現職。総合内科専門医・指導医、循環器専門医、日本臨床試験学会認定GCPエキスパート。循環器ゲノム医療およびヘルステックの臨床応用に携わる。
野村先生は金沢大学で臨床・研究に従事しながら、学術アドバイザーとしてCureAppの研究に関与されています。私自身はそれまで直接お会いしたことはなかったのですが、同じくCureAppでインターンをしている金沢大医学部の仲間からは、悩んだときに最後まで相談に乗ってくれる優しい方であると伺っていました。実際に医師のカタチでお話を聞き、その物腰の柔らかさと、冗談も交えながらお話されながらも真剣に参加者の質問にも耳を傾けてくださる姿に、人を惹きつける魅力がある方なのだと感じました。
今回お話いただいた内容
① 自分自身の適性はどこにあるのか
野村先生ご自身がボストン留学時代や帰国間際にどのようなことを考えていたのかというテーマで話していただいた際に、「あえて一度も学んだことがない分野に飛び込んでみた」「直感や空気感を大事にした」という体験談を聞くことができました。一見すると直感のみを頼りに選んだようにも取れるれる内容ですが、循環器内科を選んだ理由や、デジタルヘルスの道に進んだ理由を聞くと、野村先生は今後伸びるであろうポテンシャルを見極めながらも、自分の興味を持ち続けられることかどうかということを大切にされていました。物事に取り組む際に何を一番大切にするかという軸をしっかり持っておられるように思いました。
そのような経緯もあったため、症例の多い病院での豊富な臨床経験を積んでいる中で、今まで挑戦してこなかった基礎研究という分野に飛び込んでみたい、興味をひかれるような内容であるのかどうかを判断し、また自分自身適性があるのかを試したかったと仰っていました。新しいことに挑戦するときにお話を聞いた際の「実際にやってみなければ自分に適性があるかどうかわからない」「ダメであれば方向を変えればいい」という言葉は、これから多くのことに挑戦しようと思っている我々にとってとても勇気づけられるものでした。
② デジタルヘルスの原点と留学について
大学院に進学してからは、研究に励んでいましたがちょうどその頃ヒトゲノムの解析がなされたことがきっかけでデジタルテクノロジーと医学の融合に興味を持たれたそうです。自分の研究解析はこれらのテクノロジーを駆使すれば解決できるようになるのではないかとも思い、多少この膨大な解析作業から解放されたい気持ちも持ちつつ、新たな分野に触れてみたいというきっかけになったといいます。その後、恩師や先輩とのご縁もありボストンへの留学を手にしましたが、その時感じる「想い」というのは、後々振り返ると大事だった、と話していただきました。
留学してできた目標
留学してアメリカで経験したことは、自身の価値観の変化、考え方に大きく影響があったそうです。研究室の環境は研究資金的にも、施設面でも、そしてそこで研究している人達も含めとても恵まれていたといいます。さらに、教育面においてもセミナーやディスカッションの頻度は多く、そこで講演議論する人たちは有名誌に論文をたくさん出している方やノーベル賞級といったすごい方たちばかりだったようです。研究界のトップを見ることができたことはとても貴重な経験であり、良い眺めだったと同時に、日本でもこのような環境を整えることができないのか、若手育成や今後の医療発展のために自分も貢献していきたいと思うようになったといいます。
留学を終えて考えたこと
トップの環境を経験した後に大事なことは一旦離れることだといいます。離れた際にどのようにしたら自分自身はまたあの環境に肩を並べることができるかということを考えると自ずと自分の進むべき道が見えるという内容でした。野村先生は留学を経験し、アイデアと繋がりさえあれば日本に戻ってきたとしてもデジタルの領域であればインパクトを与えることができるのではないかと考え、自分の進むべき道は「デジタル療法」だと感じたそうです。
私はスポーツ観戦を趣味にしているのですが、引退した選手が、一度現場を離れて多くのことを見て回り、さらに成長したいというコメントを目にすることがあります。医療とスポーツの世界で挑戦する分野は違うものの、一流という環境に身を置き成長した人の考えることは似ているのかなと感じました。
専門を突き詰めるか多岐に渡る道に進むか
Q&Aのコーナーでは【多岐に渡る道に進んでいると専門を極めている人と渡り合うことは難しいのではないかと不安に感じる】という質問がありました。
その質問に対し野村先生は 「医師×何か」というものが流行っている世の中であるが、掛けるものが多ければ多いほど縦ではなく横に広がることで独自性を出すことができる、そういった個性を出すことで専門性を極めた人と渡り合う強みになるのではないかと教えていただきました。
印象に残ったこと
海外の研究室は、小さなベンチャー企業のようなもの。資金や人材を獲得できなければその研究室は終わってしまう。もちろん自分の研究も閉ざされてしまう。だからこそ皆、研究に本気で取り組んでいる。そこには、最後は勘や運の要素はあるものの、圧倒的な知識量と情報量をハンドリングできる前提が存在するということを教えていただきました。トップジャーナルに研究が論文掲載されることがどれほどのことなのか、全力で何かに取り組む、努力することの大変さと怖さ、そして大きな魅力を感じる内容のお話でした。
最後に
私は今回のセッションで野村先生が循環器内科を選んだきっかけが「一生勉強し続けることができる分野だから」とおっしゃっていたことがとても印象に残りました。冒頭にさらっとお話された内容だったのですが、野村先生のような医師であっても日々研鑽を惜しまないのだなと鳥肌が立ちました。私も今後キャリアの方向性を決めなければならない時に、常に勉強をし続けられるかという問いを自分自身に課してみたいと思います。
今回は、デジタル療法をテーマに定めたセッション企画でしたが、多くの臨床経験を積み、その後研究の世界でもトップの世界を体験した野村先生が、そこからなぜデジタルの道に進んだのかとても興味深い内容となりました。一流になるために一流の真似をしているだけだと冗談まじりにさらっと笑った野村先生もとても格好良かったなと思います。
最後になりましたが、お忙しい中お時間を作っていただいた野村先生、並びにご参加いただいた方々、誠にありがとうございました。
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「新しい医師のカタチ」は今後も継続していくことを予定しています。現在もインターン生が新しいキャリアに取り組む医師にアポイントを取り、「新しい医師のカタチ」をシリーズ化させています。
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