「やりたいことが見つからないんです」
日ごろ、新卒や学生と話してて、一番多く受けるお悩み相談。
「やりたいことをやる」がいまどき。
昭和平成みたく、受け身になって言われたことやってるだけじゃだめ、が過剰にインプットされた結果、やりたいこと見つからない症候群に陥る危険性あり。やれAIだクリエイティビティだとかの世論が拍車をかける。。
1.やるべきこと
現実の社会では、まず、上司や先輩から言われた「やるべきこと」をやらなければならない。
問題は、この「やるべきこと」にどんな姿勢で取り組むのか?
「やるべきこと」は受け身で自分のやりたいことじゃないからパス、は論外として、多くの人が最小の時間で、終わらせようということだけに頭がいきがち。効率化という聞こえのいいことばとともに。
ただし、この「やるべきこと」も取り組み方によっては、「できること」を増やせる可能性を秘めています。
前職UDS創業者の梶原さんはリクルート新卒時代、先輩から言われたコピーに明け暮れる毎日。ただし、コピーする企画書を盗み見熟読、先輩にコピーを渡す際、「企画書に書いてあった○○ってどういう意味っすか?」「この企画面白いです!」とコメントを添えていたところ、先輩から企画書の背景や意味を教えてもらえて、企画のコツを少しずつ盗んでいったそうです。
「やるべきこと」の多くは単純作業ですが、やり方によっては「できること」が増えていきます。
楽しい仕事は少ないけど、仕事の楽しみ方は無限大、いかに楽しみ方や面白がれるか、も大切なポイント。
2.できること
「できること」を増やすことが、「やりたいこと」を見つけるための一番の近道だと個人的には思っています。
インターンや新卒だと、「できること」はほぼなくて、あったとしても先輩に勝てるレベルのものは稀。
ですが先輩に比べて固定業務が少ない分、いろんな人の雑務や依頼ごとを細切れでもしていくうちに、「できること」の幅は広げられます。
もちろん、深さは経験、センスに比例する部分もあるのですぐにはむずかしいですが。。
ぼくが20代のとき所属していたコンサルティング会社で一番の若手だったため、その部署にあった10件近いプロジェクト、すべてに入らされました。
もちろん理由はコピーや製本、お使いなどの雑用係です。でも、それぞれの専門分野に長けた先輩たちから、直接教えてもらう機会も多かったため、かなり横断的な知識をつけることはできました。
意外に先輩同士は自分の仕事が忙しいのと変なプライドもあって、横のつながりが少なかったので、そんな先輩たちをみてて、若気の至りですが、この人、いつもおんなじノリで幅広がんねーなとか感じちゃってました。
3.やりたいこと
「できること」が増えてくると、話せることも変わってきますし、会える人も変わってきます。そうすると、いままで気づかなかったことや、魅力的なものにふれることができ、結果、「やりたいこと」を見つけるきっかけが増えるのではないでしょうか。
新卒や学生のうちから「やりたいこと」をあせって見つけようとして、頭でっかちになったり、フワリとした妄想家になるよりは、「やるべきこと」に全力で向き合い、結果的に「できること」を増やしていった先で見つけていくやり方もあるんじゃない?と。
問題は「やるべきこと」が量的に負荷が多く、最近では働き方改革の影響で、総時間数も限られるため、いつまでたっても仕事のほとんどが上から言われた「やるべきこと」でいっぱい、みたいな状況に陥いること。
「やるべきこと」に埋没せず、時間はとられつつもその先にある「やりたいこと」につなげて考え続けられるかが、「やりたいこと」が見つかるかどうかの分岐点かもしれません。
ここまでは新卒や学生向けの内容でしたが、ここからは全世代共通のはなし。
4.やりたいことの先にあるもの
「やりたいこと」をできるようになってくると、その先に「やるべきこと」が見えてきます。
言葉は同じですが、最初の「やるべきこと」は他者からの指示によるものでしたが、「やりたいこと」の先にある「やるべきこと」は、自分の意思で決定したもの。もしくは、社会にとって必要と自分が判断したこと。
言い換えると、使命(ミッション)や天命です。
起業する際に問われるのは、「何をやりたいのか」以上に、「なぜ自分じゃなきゃいけないのか」というやるべき必然です。
ぼく自身を振り返っても、53歳で都農町への移住を決めたのは、「地方で小さなまちづくり」をしたいという「やりたいこと」以上に、過疎地のこどもたちに選択肢や可能性を増やすべき、という「やるべき」感の方が強かったです。
5.できること×挑戦のフロー理論
「できること」に「挑戦度」を加えて考えられているのが、心理学者のチクセントミハイさんが提唱した「フロー理論」です。
フローとは、何かにのめり込み、没入する状態。
マネジメントする上では、いかにフロー状態に持っていくかだと思っていますが、その構造がスキルレベル(できること)と挑戦度のマトリックスで整理されています。
(Wikipediaから引用)
①スキルレベルが低くて挑戦レベルも低いと無感動
②スキルレベルが低いのに挑戦レベルが高いと不安
③スキルレベルが高いのに挑戦レベルが低いとリラックス
④スキルレベルが高くて挑戦レベルも高いとフロー
前職で経営している際に、こんな観点でたえずウォッチしてました。
②の不安になると、メンタル的にやられる危険性をケア
③のリラックスになると、転職・独立退社などをケア
「できること」を増やしていく先には、その人の「挑戦レベル」も考慮して重ね合わせて考えていくことが大切だな、と実感しています。
6.理想のしごと
「やるべきこと」→「できること」→「やりたいこと」というように、あえて順序立てしました、実際には3つ同時に起きることですし、最終的にはこの3つの重なる部分が、その人にとっての理想なしごとだと思います。
参考までに、2つ重なるだけだと
①「やりたい×できる」だけ→単なるワガママ
②「できる×やるべき」だけ→単なる作業員
③「やりたい×やるべき」だけ→単なる理想論者
「やりたいこと」を見つけることはもちろん、自分らしい仕事のためには大切ですが、最終的に3つの重なり合いを見つけることが一番、理想のしごとに近づけるのではないかと思っています。