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仕事はあるが職人おらず

■青田刈りによる地方のハゲ山化■

 僕は帰ってくる(10年前)にあたって、地元の同業他社がどのような状況なのか?調べた。それは、社長の年齢と後継者、大工の人数と40代の人数。

 工務店数17社
 社長の年齢70代3社、60代8社、50代5社(ウチ含む)、40代1社。
 そのうち後継者がいる、又は戻ってくる可能性があるところ4社(ウチ含む))
大工1人3社、2~5人13社(ウチ含む)、5~10人1社
そのうち40代以下17人


■なぜ50代の建築業界従事者がいないのか?■

やはりバブル期に外へ出て行ったことが大きいと思う。その時期は就活へ行ったら交通費がでたり、入社式を船上でやったりと羽振りの良い時代だった。その頃に入社した方々がある程度経験を積み30代前半で、「親父も60に近づいてきてそのままが良いか?帰るべきか?」

と考える時期にバブルがはじけ、急激に景気が悪くなった。1997年に訪れた。アジア通貨危機にをきっかけに訪れた深刻な不況で、山一証券や北海道拓殖銀行(拓銀)が倒産した。就職氷河期のはじまりである。
 そんな不景気において、公共事業は縮小に向かった。都市部より地方へおりてくるお金はより減っていく。北海道の片田舎で思うのは、景気が良くなった気配を感じるのは最後で、不景気の波は地方からなのだ。そんな不景気・将来が不明瞭な折りに田舎へ帰って事業を引き継ぐというのは、中々ハードルが高かったと想像できる。


■ロスジェネ故の気概と大きな誤り■

 僕らは就職氷河期での社会人入りだった。北海道人なので、拓銀が潰れるなんて思ってもみなかった。だからこそ、終身雇用なんて無いと思ったし、働く会社がないなら起業すれば良いと思っていた。なので、会社に不満を募らせ、やりがいを感じられないから、帰って継ぐ道を選ぼうと思った。継ぐのだが、起業する気概で帰ってきた。

 帰ってくるにあたり、上10歳くらいがいない。という事は、事業承継して10年で独り勝ちできるような状況にするためには、どのように会社を持って行けば良いのか?と色々勘案していた。営業エリアを拡大する事、大工は元より他工種の職人をどう増員するか?など。要はなにかしら大きくする事。また、新しい規格の住宅の提案だとか、画一化して効率化を目指すのか?など。要は新規ブランディング。
 完全に間違っていた。
 僕らの下の世代が全然いない事の問題というのが根深いのであった。

■空洞化による弊害■

 建築業界における新規参入者(新卒者、中途入社、新規起業者)が、この10年において僕を含めて3名しかいない。それ以前10年を見ても5名しかいない。帰ってきて地元高校に求人票を出したが全くだった。
 地元の一番大きい土木会社はほぼ毎年新卒者、中途入社を取っていた。
 原因は明確であった。待遇が全く違った。通年雇用、初任給の差、賞与および福利厚生の充実。全く違うのだ。この差が生じているのは新しい人をいれる事をしてこなかった点に尽きると思う。「新しく人を入れる」という事は、時代に合わせなくてはいけない。のだが、「新しく人を入れる」という部分に焦点を合わせる事をしていないためである。

■人間社会において唯一確実なもの■

 僕の前の会社もそうだった。バブルがはじけた後から僕が入社するまで10年間毎年5名程度の新入社員を採用していたが、僕らのあとでは次年度1名、その後3年あいて2名程度の採用であった。しかし、建設業の新卒者における定着率は3年後で70%弱(厚生労働省『建設労働者を取り巻く状況について』より)と出ているように離職率が高い。実際僕らの代で入った5人で現在残ったのは1名であり、僕の上の世代も在籍時2名ずつしか残っていなかった。
 僕らが入ってから下が入ってこない状況ではやはり変化が起こりにくい状況だったのだと思う。下が入ってこない点で基本の雑務をこなさなくてはいけない。初めて現場所長となった時も下に付いたのは自分の親と同い年。色々お願いするも「おじさんだからなぁ」と疲れを見せるので、自分でヤルことが多かった。おかげで年上の人との仕事の仕方を学んだけども。また、ベースアップもかなり緩やかであった。おかげで10年後の大卒とあまり変わらないという賃金ベースだった。
 新しい人を入れるためには今のまわりの状況を鑑みなくてはいけない。外へ焦点を向けなくてはいけなくなる。それが、自分達の立場を確かめる動機となる。それは同業他社だけでなく、他業種へも向けるべきである。
 と、『下がいない=下が入ってこない』ことの問題点とその解消をすることが、その他の問題よりも根が深く、そこの解消をすることは他の問題解消にもつながるものだと5年ほど経ってようやく気付いた。


 今は変革の途中。『自らを変革できない組織は明日の変化に生き残る事はできない』(ピーター・F・ドラッガー)と言うように、明日へつづく、未来へ繋ぐために変革しているところです。それぞれが自分らしく働ける環境をつくりたいと思っています。自然豊かなところで一緒に創造しませんか?

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