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【夏目光学×東京大学】若手が研究に挑むための受け皿として共同研究室を設立

夏目光学株式会社は、今後の産業界を牽引する若手の育成を視野に入れ、東京大学三村秀和教授と同大学先端科学技術研究センターに共同研究室を立ち上げました。
光学素子の研究において夏目光学と十年来の親交がある三村教授は、光工学、精密加工などを専門とし、今春からこの研究室で次世代光学素子のための先端的な製造プロセスの研究開発に取り組みます。
そして、夏目光学代表 細江は、長年現場で技術開発に携わってきた、研究者・技術者でもある経営者です。この研究室に期待すること、同社が出資して研究の場を提供する理由、これからの産業界における光学分野の展望などをお伺いしました!

(左)東京大学先端科学技術研究センター 三村 秀和 氏

(右)夏目光学株式会社代表取締役社長 細江 国彦 氏

自由度の高い研究体制で次世代への一歩を探る

三村:夏目光学さんとは2012年頃から共同で研究を進めてきました。最近では毎週のように、基礎的な研究からビジネスに繋がるものまで、技術的な交流をしていますね。

細江:そうですね。実際に三村先生が考えた加工技術や、ミラー・レンズの製造プロセスを弊社で活用しています。

三村:特許化された東大の技術を活かし、夏目光学さんはビジネスとして展開しておられますね。今後、この共同研究室が、次世代に向けた光学素子の研究開発をさらに発展していく場となることを私は期待しているんです。

細江:同感です。私どもは、そのお話を伺い、純粋にご支援したいと思った。これまでの先生との長い関係や実績もあり、是非ともこの共同研究室の立ち上げを実現したかったので、大変喜ばしいです。

三村: 4月に工学系研究科からこちらへ異動し、この研究室を設立しました。新しいさまざまな研究を発展させたい思いです。今までは、私自身が夏目光学さんと共に開発してきましたが、これからは、若手を育てることや、若い方と共に考え、AIや機械学習といった新しい技術とも掛け合わせ、より積極的に進めていきたい考えです。

細江:はい。さまざまな研究を共に進めてきましたが、これまで以上に挑戦していきたいですね。

三村:そうですね。政府が出すファンドと企業が出すファンドには、実は大きな違いがあるんです。企業から出資は、大変自由度が高く、研究上多様なチャレンジがしやすい。そして、その企業の理念に沿った研究や教育も、理想に近い形でできる。また、夏目光学さんでは、若い方が育ってきているので、是非研究の中心になっていただきたいという将来のビジョンもあります。夏目光学さんの若い方と私のところの若い方が、より密接に研究できる環境を作っていきたい。

細江:研究を通して若い世代同士が刺激し合える場にもなるわけですね。

三村:はい。そして、大学として、基礎学問も大事ですが、社会での実益、現場で実際に役立つという『研究の出口』での結果も求められています。また、このように目に見える形で寄付研究部門が設立されると、他の研究者にも周知され、さらに幅広い共同研究にも繋がりうる。

細江:さらなる発展が見込めるのですね。

三村:科学技術の進歩は早く、若い方が挑戦していくための受け皿が必要だと思っていたので、今回共同研究という形で、自由度の高い研究の場が数年確保されるというのは、若い人達にとって最高の学びの場です。

細江:今、若い方の受け皿の話がありましたが、まず、光学素子の研究をしてる場がとても少なく、専門で学べるところは殆どありませんよね。そして、研究できる場が希少でありながら、分野としては非常に面白く、必要性もある。なので私は、この研究室に大きな期待を寄せています。

光学素子分野の未来は?日本人の強みが活かされるものづくりのこれから

細江:昨今、AIなどのソフト面に注目が集まっていますが、実際に『精密な物を作る』というハード面は、実社会でおろそかにできません。なんといっても、ソフトだけでは物事が成り立たない。実際に『形』があるものと相まって、初めてソフトが機能するものが多数ある世の中において、この研究室は貴重です。そして、先ほど少し触れましたが、光学素子の研究ができる場は少ないものの、分野としては面白くて必要性もある。この研究室を契機に、若者に光学へ興味を持ってもらい、深く学び、ゆくゆくは産業界で活躍してもらいたい。未来の産業へつながる場を提供していただけるのはありがたいです。

三村:ミラーなどの光学素子を専門的に研究できる場は、確かに少ないですね。だからこそ、この研究室には、希少な最先端の光学素子の研究ができる場を提供できるという価値、そして、世の中の変化に応じて光学素子を開発できる場としての社会的なニーズが、私自身はあると思っています。ですが、今の学生は、光学素子を含むものづくりに興味が向かっていない傾向がある。大学は流行りの先端的な分野を追い求めがちで、古くからあるものづくりの分野は、(技術的に)時間もかかり、また、教育にも手間がかかり、他分野に比べると派手さがないのかもしれない。

細江:そうですね。おっしゃるように、光学素子は一見地味に見えるかもしれないが、入り込んでみると奥深くて夢中になれる面白さがある。ものづくり大国日本と言われてきましたが、現状としては次第にものづくりから離れてきている。その中で、まさにこの研究室は、ものづくりの核心を学べる場です。時代に合った形で、もう一度ものづくり大国と言われるように産業を再興していける若者を、一人でも多く社会へ送り出したい。

三村:ですね。若い方に、この分野の面白さや重要性を伝えたいと常々思っていたので、研究部門という形にすれば、光学素子開発の研究が目立ち、多くの若者に興味を持ってもらう機会が生み出せる。これが大事なことだと考えています。

細江:なるほど。

三村:加えて、精巧なものづくりは、日本人の性格にもマッチしていると思うんです。私は、そこを強みとして伸ばしていくべきではないかと考えています。私たちは日々、海外のメーカーや研究者と競争していますが、経験的に日本人は精密なものづくりの分野に適していて、(競争する上で)強いんです。これから日本でどのような産業が生き残るか考えた場合、こういう細やかな調整が必要になるものづくりの分野は残っていくと思う。誠実さ、コツコツやる地道さ、小さなところに目が届くきめ細やかさなど、多くの日本人に見受けられる性格が、今後寄与していけるのではないだろうか。そこが欠けると、やはりものづくりはうまくいかない。地道な力が要されるところは、今も日本は強いままです。これは日本人の性格に起因する強みで、産業を支える力になると思うのです。

失敗してもいい、小さなことでもいい、若手が自ら考え続け成長する場に

三村:普段学生には、僕が考えてきたことや、物事の進め方などを伝えていますが、それだけでは不十分で、10年20年後を考えると、若者自身が将来こうあるべきだとビジョンを立て、『自分たちで切り拓く方法』を教えることも大事だと考えています。

細江:能動的に研究できる若手を育てる、ということですね。

三村:はい。僕自身が若い時に、今後大事になると思った分野や技術に狙いを定め、自分の信念に従って研究を進めました。三次元的な光学素子の高精度なものづくりに取り組み続けた結果、こうして夏目光学さんと共に、三次元でのミラー・レンズを高精度で作ることができた。

細江:年月を経て成し遂げましたね。

三村:はい。なので、若い方に期待しているのは、ビジネスになりうる将来のビジョンを考え、信念を持って進む勇気や自信を持つことなんです。すでに夏目光学さんの中で、そういう若手が育ってきている。細江社長も、若い時に考えたことを事業化して、今ビジネスとして成り立たせておられる。

細江:そうなりますね。

三村:世の中の変化は早く、社会環境やニーズも変化し、それに研究も左右され、ビジネスとして成立させるのは大変ですが、最初は小さい仕事でもいいので、将来何がビジネスになるのかを若い人には考えてもらいたい。考え続けないと駄目なんです。間違ってもいいから、考え続け、信念をもってコツコツ進めてほしい。それが将来花開くか開かないかは別です。本質的で大切なことは、そういうビジョンを持って進められる人を育てることだと考えています。私もまだやりたいことがあるので、ビジョンを掲げて研究を進めますが、私のビジョンにない新しい種が、若手から出てくることが大事だと思うのです。

細江:若手が新しいものを生み出せる場にしたいですね。この分野の面白さも知ってほしい。

三村:ミラーやレンズは、精度がものを言いますよね。誤差をどれだけ小さくできるか。シンプルですが、その一点に集約していくことが、学問としては興味深い。それを達成するためにさまざまな技術があり、到達点があるので達成感を感じられる。精度を上げていく学問。

細江:精度を追求する面白さですね。ミラー・レンズの製造に長年携わってきましたが、未知な部分も課題もたくさんある。「こんなのできるの!?」と思うような難題もありました。先生と一緒に取り組んだX線ミラーもですが、理論的にこういう形ができれば、こういう機能を持ったレンズができると言えても、それは普通に考えたらできないことだったりする。まさにこれまで先生と、『普通に考えたらできないこと』を繰り返し挑戦してきました。実際に形にしていく過程は、誰もやったことがなく非常に困難ですが、一つ一つ検討していくことで、形が生まれ光学素子が機能していく。その過程に学びと楽しさ、そして、やりがいがある。

三村:そうですね。

細江:光学素子の製造にはまだ多くの課題があり、先生も課題をお持ちで、弊社にもたくさんの課題がある。それらを解決していく過程には、研究の面白さが詰まっていると思っています。


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