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地球の文明活動の「コンパス」を目指して。コアプロダクト「天地人コンパス」5年間のあゆみ

JAXAベンチャー天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指してプロダクトを開発する企業です。2019年の創業当初から、宇宙ビッグデータを解析・可視化し、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするWebGISサービス「天地人コンパス」を開発してきました。

創業から5年を迎え、「天地人コンパス」の開発は今、新たなフェーズを迎えようとしています。この節目に合わせ、創業初期から天地人コンパスの開発を支えてきたメンバーと、プロダクトとしての飛躍の時期を支えたメンバー、そして、組織の成長を支えるために新たに加わったメンバーが集い、5年間のあゆみを振り返りました。

集まったメンバー

吉田 裕紀 / アプリケーション開発部門マネージャー :創業初期からエンジニアとして天地人コンパスの開発に携わる。

是枝 仁 / クリエイティブチームマネージャー:創業初期から、天地人がブランディングディレクションを依頼していたデザイン事務所の担当者としてロゴや名刺作成などに携わる。その後独立し、2022年からアートディレクターとして天地人に再度ジョイン。アートディレクターとして天地人コンパスの開発に携わる。

相原 悠平 / プロダクト開発部マネージャー:創業3年目に天地人にジョイン。主力サービスである「天地人コンパス 宇宙水道局」の開発マネジメントを担う。

高瀬 賢二 / アプリケーション開発部門マネージャー:創業5年目に天地人にジョイン。急成長するプロダクトと組織のマネジメントを担う。

蓙谷 香乃(ござたに かの)/ 広報:創業5年目に広報としてジョイン。天地人について勉強中。

今までに無い、使いやすいGISを目指して

「天地人コンパス」の開発の歴史を振り返るべく、時系列を追ってメンバーに振り返ってもらった。まず話を伺うのは、創業初期を支えた、エンジニアの吉田さんとデザイナーの是枝さんのおふたり。

蓙谷:そもそも「天地人コンパス」はどんなアイデアから生まれたのでしょうか?

吉田:内閣府が主催する宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2018」でトリプル受賞した「宇宙から見つけるポテンシャル名産地」というアイデアが原点になっています。僕が最初に見せてもらったのは、このペライチの資料でした。「ゼスプリさんと土地評価をする」ってところだけ決まっていて。「このアイデアをゼスプリさんや投資家に見せられるWebアプリにしてくれ」というところで、創業者の櫻庭さんのリファラルで僕がジョインしました。

▲創業期の企画書。トンマナが今とは大きく違い、歴史が感じられる。http://www.uchuriyo.space/model/2019/document/model01.pdf

蓙谷:「土地評価」という言葉は、今も天地人の紹介で使われています。5年間ブレていないコアなんですね。

吉田:地表面温度、地形情報、降水量などの、ベースになるデータは未だに主力として使ってるので、ほとんどブレてないですよね。天地人がすごいなと思うポイントのひとつです。

当時はまだお客さんもいない状態で、何をするかも決まってなくて。ニーズがわからない状態で、とりあえず動くものを作らねばならない暗中模索の苦しみはありましたが、今日まで繋がっているコアができていたと思うと、感慨深いですね。

▲初期のプロトタイプ。レイヤーを重ねることができ、今の「天地人コンパス」でも面影がかなり感じられる。

蓙谷:産みの苦しみですよね。その中でも指針になったものはなんだったんしょうか?

吉田:実は、UIを組み立てるときに参考にしたのはGISではなく、デザインツールでした。ただ地図を見せるのではなく、まずツールがあって、そのツールを見せるために地図がある、みたいなイメージで。

あとは、GISって実は色んなデータのフォーマットがあるんですよ。それをユーザー側に意識させないというのは、今も大事にしている部分ですね。そこの処理は全部コンパス側でやるから、ユーザーはそれを気にする必要なく、地形データを重ねたいとか、気候データを重ねたいという「やりたいこと」だけ意識して使えるものにしたいと。

編集部注:GIS(Geographic Information System:地理情報システム)とは、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術のこと

蓙谷:なるほど、その一番大事な部分がブレていないから、UIは初期のものが今も残っているんですね。一方で、左上の毛筆のロゴが今のロゴと違うのがなんだか新鮮で、目に飛び込んできました。

▲現在の天地人ロゴ。初期の毛筆スタイルと比較するとかなりモダンな雰囲気に。

是枝:「家紋」を連想させるような、和風の雰囲気を残したいという想いは今のロゴにも共通しているんですよね。社名も和風ですし。世界を目指すからこそ、日本らしさをアピールしたいという要望は強くありました。当初は毛筆のロゴだったんですけど、会社として「もうちょっと変えたいね」いう方向に変わってきて、所属していた事務所に声がかかり、そのタイミングで僕がジョインしました。

蓙谷:今のロゴ、すごく評判が良いですよね。では、UIの部分で是枝さんがこだわっていたところはありますか?

是枝:ロゴにもUIにも通じるんですが、宇宙やテクノロジーの雰囲気だけでなくて、人間味が感じられる、中間のいいバランスを模索していました。シャープさの中に、少し温かみが感じられるような。そこは今も変わりませんね。

あとは、UIもビジュアルも、とにかくすべてのクリエイティブに対して、櫻庭さんから「かっこいいものを」と口すっぱく言われてたのを覚えてます。当初はお客さんありきではなかったので、市場に合わせに行くよりも「自分たちの信念を持って、良いものづくりをする」という勢いが強かったです。デザイナーにとっては、それが難しかったりするんですけどね(笑)。

蓙谷:いいですね、なんだか職人たちの情熱が伝わってくるようです。初期は、衛星データと地上データ、人のデータを組み合わせて可視化するというアイデアを形にするだけで十分な価値になっていたし、そのコアは5年後の今にもしっかり繋がっていることがわかりました。

▲コンパス無料版のあゆみ

50以上の新規事業に種まき。バラバラのプロジェクトも、横で繋がってビジネスへ

コアとなる「天地人コンパス」が誕生し、2024年現在は「天地人コンパス 宇宙水道局」や「天地人コンパス 風力発電適地分析ツール」など、課題に応じたプロダクトがリリースされている。主力サービスの開発に辿り着くまでには、どんな紆余曲折があったのか。このパートでは、初期を支えた吉田さんにくわえ、この時期にジョインして開発を担った相原さんのおふたりに話を聞いた。

吉田:コンパスが完成したあとは、toB向けは有料、toC向けは無料で提供を開始しました。toC向けのフリー版のリリースは、結構時間がかかって、創業から約2年後になりました。

▲コンパス無料版のあゆみ

吉田:思い出に残っているのは、初期コンセプトを3年越しに実現した「類似度分析機能」と「条件分析機能」の搭載ですね。最初のプロトタイプから、左側で面積や温度でフィルタリングできるような構想を持っていたんですよ。ずっとやりたかったことが、新しく入ってきてくれたメンバーの力もあって実現できたのは、喜びもひとしおでしたね。


▲初期のプロトタイプ

▲実際にリリースした機能

吉田:もうひとつの転機は、「天地人コンパス MOON」のローンチです。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000045963.html

インターン生が中心になって進めてくれたプロジェクトで、「コンパスの技術を活かし、 同じことを月面に応用する」というものでした。月食に合わせて公開したのも功を奏して、yahoo!ニュースになったり、YouTubeで話題になったり、コンパスの登録者が急増したりと、楽しく開発したものに結果がついてきた良い例でしたね。GIS業界でも認知を獲得できたターニングポイントになりました。

相原:天地人が最初にバズった日ですよね(笑)。

▲「天地人コンパス MOON」のローンチ日、新規登録者は1,000人を超えた。slackで共有された思い出のスクリーンショット

吉田:開発面での進歩も素晴らしくて、今のコンパスに搭載されている「地形標高機能」は、もともとMOONで開発したものなんです。元々は地球の地面用に開発したコンパスの技術を活用して、月に応用して、月用に開発したものを地球のコンパスに戻すという、素晴らしいサイクル。

相原:コンパス本体を作り変えるよりも、派生して開発できるのは身軽でいいですよね。MOONが上手くいったので、同じ要領でやってみようと走り出したのが「天地人コンパス WaterWatch α」でした。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000076.000045963.html

指定した水域の時系列の水域面積割合の変化を表示できるもので、ESAが公開している事例をヒントに私からアイデアの提案をして、実際の開発は入社したばかりのエンジニア、庄さんに担当いただきました。

やっぱり、水域を監視したいとかダムを見たいという問い合わせが多いんですよ。ただ、その大半は非常に細かい変化や老朽化を追いたいという要望がほとんどで、衛星データの特性である「広範性」には上手くマッチしないことが多かったんです。WaterWatch α はそこの課題を上手くクリアしていて、細かすぎず、でも広い範囲で十分な解像度で変化を見ることができます。まず試してみる取り組みとしてはすごく良いと思っていて、こういう風にできることからスタートして、ゆくゆくは、衛星データの進化とともに、できることを増やしていけばいいかなと。

あとは、入社したての庄さんにシーダーシップを取ってもらったことで、この上ない成長機会にもなりました。庄さんは前職では衛星画像を扱ったことすらなかったんですが、WaterWatch α の開発で基本的な画像処理をみっちり獲得してくれて。結果、今は画像解析チームのリーダーとして大活躍してくれています。

蓙谷:MOONの開発を引っ張ってくれたのも優秀なインターンでしたし、研究開発を若手に任せてくれるのは、スタートアップならではの良い文化ですね。

相原:そういった環境を求めて入社されてる方もいると思うので、これからも挑戦しやすい土壌は守っていきたいですね。

吉田:一方で、toB向けのプロジェクトの方に話に移すと、農業から始まったコンパスが、きちんとひとつのプロダクトとして形になったのが、「宇宙ビックデータ米」と「月面アスパラガス」です。このふたつは今もしっかりと続いていて、外部と連携しながらしっかり実績を積み重ねています。

宇宙から米作りに最適な土地を探し栽培した米「宇宙ビッグデータ米」の栽培と収穫が完了。異常気象でも、1等米として高品質を維持。12月より販売開始。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000093.000045963.html

鳥取県・衛星データ活用サービス実証事業を令和6年度も継続。鳥取砂丘での高品質なアスパラガス生産に向け、現地で栽培実証へ。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000045963.html

▲toB向け新規事業の一部。リリースに出していないものも含めると、その数は50を超える。

相原:あとは、衛星データを活用して水田からのメタン排出量を推定する方法論を開発し、特許出願もしましたね。天地人が掲げる「持続可能な地球環境の実現」において、大きな意義があるプロジェクトだと思ってます。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000045963.html

もうひとつ、最後にターニングポイントになったプロジェクトは、「天地人コンパス for リニューアブルエナジー」でしょうか。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000082.000045963.html

実は僕、このプロジェクトに関連したプレスリリースがきっかけで天地人に入社したんですよ。2022年4月のリリースで、「極めて高頻度な地表面温度プロダクトの開発に成功した」という内容に惹かれて。このプロダクトを初めて適用するのが、リニューアブルエナジーなんです。自社プロダクトを活用しているので、天地人の技術力を代表するような重要なサービスになっていくと思います。

蓙谷:宇宙ベンチャーとしての看板サービスになっていくかもしれない重要なプロダクトということですね! それにしても、こうやって改めて聞くと、本当に沢山のプロダクトが生まれていることがよくわかります。

吉田:小さいものまで含めると、何かしら50以上は開発していると思いますね。

蓙谷:50! 凄まじい試行錯誤ですね……。

吉田:それで言うと、色々なプロジェクトをやっていると、同じようなデータを使うときが結構あるんですよ。だから、50の挑戦が無駄になっているわけではなく、レイヤーに蓄積され、横で繋がった時にビジネスになったりするんです。

相原:WaterWatch α なんて特にわかりやすくて、主力サービスの宇宙水道局と直結してます。自治体の規模が大きいほど、50年100年の長いスパンで水道メンテナンスの計画を立てるところが多いです。そうなると「100年後って本当にこのダムあるんだっけ?」という問いが、お客さんにとっては重要になってきます。水量や水質が変わると、その水を消毒するための薬剤の質や量も変わってきますよね。例えば、宇宙水道局のお客さんでもある東京都さんなんかは、管理する水量が膨大なので、源泉の水質も水道経営の中で非常に大きなファクターになります。こうやって、宇宙水道局とWaterWatch αが繋がるように、今後もそれぞれのサービスがデータで繋がる可能性は大いにあります。

蓙谷:まさか宇宙水道局に話が繋がるとは、思ってもいませんでした。ここまで開発してきた大小さまざまな50以上のプロジェクトが活きるかもしれないと思うと、プロダクトとしての広がりがすごく感じられますね!

主力サービス「天地人コンパス 宇宙水道局」の誕生

50以上のプロジェクトの試行錯誤を経て、2024年現在、天地人の主力サービスになっている「天地人コンパス 宇宙水道局」。その開発のきっかけ、現状、未来について、直近でジョインしたエンジニア高瀬さんを迎えてお話を聞いた。

相原:そもそものきっかけは、2020年の2月から始まった豊田市さんとの実証実験でした。その後、この実験が内閣府のプロジェクトとして採択された、という経緯です。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000072.000045963.htm

▲実証実験中、豊田市さまを訪問したときのようす

▲「天地人コンパス 宇宙水道局」のあゆみ

蓙谷:最初に開発に着手したときは、どんな印象でしたか?

吉田:正直、こんなに大きなサービスに成長するとは思っていませんでした。豊田市さんの「じゃあもっとこんなことできないの」という現場の声が今に繋がっていますね。今まで重いソフトを使ってたのが、コンパスだとブラウザで開けてサクサク読み込めるのが、お見せした瞬間からだいぶ好評で。

蓙谷:相原さんは、開発マネージャーとしてお客さんとやりとりする中で、どこに手応えを感じていますか?

相原:天地人独自の技術や指標で、お客さんの知りたかったことがパッとシンプルに可視化される瞬間は、すごく喜んでもらえますよね。お客さんが自分で難しい分析をするわけじゃなく、もう準備された状態でパッと出てくるのは、やっぱり素晴らしくて。次に目指すのは、リスクが高い場所がわかったあと、そのあとの行動をサポートするところですよね。今はそこを目指してプロダクト改善の最中です。

吉田:コンパスが普通のGISとちょっと違うのはそこで、お客さんが知りたいものを見せるだけでなくて、そのあとの行動をDXするのが目標なんですよね。分析結果を見せるだけじゃなく、日常の行動まで効率化できるツールを目指しています。解析結果を見せるだけだと、コンパスの魅力は半減すると思っていて。結果を見せたあと、どれだけコンパスを触ってもらえるか。触るうちに新たな発見が得られるという部分で、価値を提供していきたいんです。

蓙谷:是枝さん視点でも、今の宇宙水道局の開発で大事にしたい部分は吉田さんたちと重なっていますか?

是枝:デザイナーとして、強化していきたいと思っているのは顧客へのヒアリングの部分ですね。顧客理解を深めるために、直近ではデザインシンキングのワークショップ開催など、新しい取り組みもはじめました。

蓙谷:あのワークショップは、メンバー全体の目線合わせにもきっと有効で、素晴らしいなと思いながら横目で見ておりました!

では、高瀬さんは、今年ジョインされたということで、新鮮な目でコンパスや宇宙水道局を見ていて、どう感じられますか?

高瀬:天地人は「持続可能な地球環境を目指す」という壮大なミッションを掲げているけれども、実際やっていることがミッションにしっかりハマっているのが強みだと思ってます。で、ここから求められるのはサービスの強さだと思うので、「リスク評価が喜ばれる」の次のフェーズに行かないとならない。リスク評価が出た後、どうやってDXしますか?というのが課題だと認識しているので、しっかり取り組んでいきます。

蓙谷:心強いです!

いつか月に人が住む日が来たら、水道管を敷くのに使われるのは「天地人コンパス」かもしれない

蓙谷:では最後に、今後の開発で掲げているビジョンについてお聞かせください! まずは是枝さんからお願いします。

是枝:初期から関わらせてもらった身として、最初は本当にクライアントも見えてないまま、コンセプト寄りのものを作って、こんな遠いところまで来れたのはすごいなと感心してます。天地人は「ソリューションドリブン」なところが強みで、だからこそ、宇宙技術という特殊な分野にも関わらずビジネスとして成り立っているんだと思ってます。一方で、お客さんの課題を深く理解するという部分にはまだ改善の余地があるので、次のステージではきちんとそこに向き合っていこうという思いです。

相原:是枝さんと重複してしまうんですが、お客さんの実情をもっと泥臭く理解する必要は勿論あります。一方で、会社全体が同じ気持ちで「それ大事ですよね」「やっていきましょう」と一丸になれているのが素晴らしいと思っていて。もうやるだけって感じですよね。

あとは、今後の理想で言うと、「天地人コンパスを使っていたら、お客さんは知らないうちに最新技術を使っていた」みたいな状態を目指したくて。すでに宇宙水道局では、衛星データもAIも、1番いいものを選んでいるので、半分実現してるんですけど。宇宙水道局だけでなく、色々な業界のお客さんに同じ体験を届けられるようにしたいですね。

吉田さん:天地人コンパス、最初はデータを見せるだけだったのが、だんだんその後の行動までDXできるように成長してきました。次のフェーズは、例えば天地人コンパスに自分のデータを入れると取るべきアクションが返ってくるみたいな、「パートナー」のようなプロダクトになるといいのかなと。「天地人コンパス」で新しい発想を得たり、インタラクションすることで次の行動が見つかったり、そういう世界ができると面白そうです。

蓙谷:コンパスに秘められた可能性の大きさに、夢が膨らみました! では最後に、高瀬さんからもお願いします。

高瀬:宇宙水道局、今まさに試練のときです。今が勝負で、水道ソリューションの日本最高峰、世界最高峰になるための、強固な基盤作りができるかどうか試されています。これを乗り越えたら、今以上にもっと沢山のお客さんに広げられると僕は思っていて。宇宙水道局の次の主力商品ができても、基盤ができていれば無理なく対応できます。とても重要な時期だからこそ、相原さんに色々「こうしてください」とか「こうしなきゃダメですよ」とか、結構言っちゃってるのでしのびないんですけど。

相原:あと3倍ぐらい言ってくれても大丈夫ですよ!

高瀬:相原さんが強すぎる(笑)。

相原:宇宙水道局をやってても思うんですが、人口動態データや環境データ、つまりそこにいる人の暮らしを入れることで価値が大きくなると思っています。例えば、地球規模で考えると、東南アジアでは人口が増える一方、日本では減っていく。国内の話で言えば、地方自治体はどんどん縮小していく。そうなったとき、国境や県境をまたいで、M&Aみたいに寄せ集まって経営を維持する動きが絶対に加速するはずなんですよ。それなのに、マクロな視点で適地探索ができるツールって存在しないんですよね。まさに「人類の文明の最適化」のためのツールだと思います。

吉田:なんだか、Googleみたいな動きですね。彼らのミッションは「世の中の情報を整理する」で、実は彼ら自身が何かコンテンツを作っているわけではなく、あくまで世界中に散らばっている情報をまとめるプラットフォームをつくっているんですよ。

高瀬:そうですね。もちろん宇宙水道局も素晴らしいし、これからもソリューションドリブンで開発は進めるんだけども、こういう野望を持っていると、いつか副産物的に新しいコラボレーションが生まれるかもしれないなと。

相原:天地人は水道、再エネ、農業と色々な業界でやってるんですけど、土地の価値って多面的なので、すべての業界のデータを横串で刺してはじめて「その土地」の複合的な意味が理解できるんですよ。例えば、農業でも災害リスクやエネルギーコストなども考慮しないといけない場面が増えてきています。でも実際問題、きちんと考慮できてる事業者さんって、ほとんどいないんです。まとめてデータを見れるツールがないから。だからこそ、天地人コンパスはそこを目指していきたいですね。

高瀬:色んなデータを横串で差しまくった結果、例えば何十年か先、月に人が住むってなったとき、月にどうやって水道管敷きますか?みたいな問いを、天地人コンパスで解決できるかもしれない。宇宙水道局が生まれるまでに挑戦した50以上のプロジェクトは、今は「ビジネスとして成立しなかった」という状態だけれども、コンパスに蓄積されることで、あらゆるインフラ、エネルギー、産業の英知が結集したツールとして価値を発揮する可能性がありますね。

相原:まちづくりと文明づくりに辿り着きましたね。

高瀬:そうそう、ソリューションドリブンの行き着く先は、文明ドリブンなんですよ。ビジュアライゼーションは頼れるフロントエンドメンバーにお願いして、僕はデータ基盤を考えます。

吉田:楽しみです!

壮大なビジョンと、それを実現するための技術力、チームワーク。「人工衛星データで社会課題の解決を」という想いから生まれた「天地人コンパス」は、5年の年月を経て、着実にその目標に近づいていました。

徹底したソリューションドリブンで顧客理解を深め、ユーザーの使い心地と業務の効率化を最優先に。一方で「こんなことができたら面白そう!やってみよう!」の気持ちも忘れずに。二つの軸を持ちながら、真摯に技術と向き合い続ける。次の5年が経ったときも「持続可能な地球環境の実現」を目指して、「天地人コンパス」は成長し続けていることでしょう。これからの天地人もお見逃しなく!




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