突然ですが、皆さんは「児童相談所」と聞いて何を思い浮かべますか。虐待対応ダイヤルの#189、漫画やドラマの描写、虐待で子どもが亡くなってしまった事件…「なんだか怖いところ」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、児童相談所がどんな機関で、何をしているのか、その実態はあまり知られていません。児童相談所の役割やそこで働く人たちの想い、そして現場の過酷な状況を、ぜひ知ってもらえませんか?
子どもの安全を守り、支援する存在
児童相談所は、都道府県・指定都市(政令指定都市)に設置される行政機関です。2016年に児童福祉法が改正され、特別区(東京23区など)も開設できるようになり、区が設置する児童相談所も増えてきました。「児童福祉司」「児童心理司」と呼ばれる専門職が配置され、原則18歳未満の子どもに関する相談に応じ、個々の子どもや家庭の支援を行っています。
“子どもに関する支援機関”という意味では、「市の子ども家庭支援センター」「市役所の子ども支援課」など市区町村の窓口も同様の存在ですが、大きな違いは、児童相談所が「一時保護」を行う法的権限を持つ点です。児童相談所は「子どもの福祉を図るとともにその権利を擁護する」機関とされ(※1)、命の危険だけでなく、現在の環境下では子どもの権利が侵害されるような場合に、一時保護によって子どもの安全確保を行います。
通告や相談を受けた児童相談所は、まず相談者から詳しい情報を聞き取ります。そして、関係者への聞き取りなどの調査を行い、子どもの安全確認を実施します。
調査・確認の結果、一時保護を行うこともあれば、行わないこともあり、一時保護の有無にかかわらず、さまざまな方法で家庭を支援します。子どもが所属する学校や地域、心理士・保健師・医師などの専門家とも連携しながら、子どもが家庭で安心して生活できる状態を目指していきます。
また、児童相談所が受ける相談の内容は、虐待だけではありません。相談内容は、大きく「虐待相談」「養護相談(虐待相談を除く)」「障がい相談」「非行相談」「育成相談」「その他」に分かれ(※2)、児童相談所の“相談援助活動”は多岐にわたります。
決して、保護者を取り締まるような存在ではなく、子どもの最善の利益を追求する立場から、子どもと家庭を支援する人たちなのです。
※1:厚労省|児童相談所運営指針「児童相談所の性格と任務」
※2:厚労省|児童相談所運営指針「相談の種類とその対応」
現場はパンク状態
そんな児童相談所が、今、深刻な人手不足に陥っています。この20年で虐待相談件数がおよそ18倍に急増する一方で、対応する児童福祉司の人数は4倍にも満たない(※3)のが現状です。さらに、2020年には勤続3年未満の児童福祉司が全体の50%(※4)を超え、人材育成も追いついていません。
虐待死を防ぐためには、危険な状態にある子どもを見逃さないことが重要ですが、児童相談所の職員は、“子どもが幼くて話せない” “親が嘘をついているかも”といった状況で、一時保護を行うかどうかを迅速に見極めねばなりません。「判断そのものの難しさ」も課題となっており、“ベテラン職員の経験”に頼らざるを得ない実態があります。
このように逼迫した状況においては、業務の効率化は勿論のこと、個人の資質・経験だけに頼らず「職員の専門性」を担保できるような“仕組みづくり”が必要です。
※3(グラフは、以下資料をもとにAiCAN社が作成)
厚労省|令和2年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数 p2「児童虐待相談対応件数の推移」
厚労省|児童虐待防止対策について p12「児童相談所と児童福祉司数の推移」
厚労省|全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料
児童相談所関連データ「児童福祉司、児童心理司の配置状況」より、前年度配置実績の合計数値
H29(2017)年、H30(2018)年、R1(2019)年、R2(2020)年、R3(2021)年
※4:厚労省|全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料
R2(2020)年 児童相談所関連データ p13「児童福祉司・児童心理司の勤務年数」
データ利活用で、課題解決へ
AiCANでは、まさにこのような課題を、データサイエンスで解決する取り組みを行っています(弊社主要事業である、子ども虐待対応支援システム「AiCAN」については、こちらのCEOインタビューをぜひご覧ください)。
そしてこの度、8月28日(日)に開催されるシンポジウム『虐待と向き合う児童相談所の新たな役割と可能性』に弊社代表・髙岡の登壇が決定しました。
虐待と向き合う児童相談所の新たな役割と可能性
―地域における安心の子育て支援の基盤整備に向けて―
日程:8月28日(日)9時〜12時(オンライン開催)
参加:無料。申込はこちらから
主催:東京大学 大学院教育学研究科 附属バリアフリー教育開発研究センター
共催:東京大学産学協創フォーラム「臨床心理iNEXT」
シンポジウムでは、児童相談所が直面する課題や今後の展望について、最新の動向やデータを紹介しながら、登壇者たちが議論を交わします。2022年6月に成立したばかりの改正児童福祉法では、裁判官が一時保護の必要性を判断する“司法審査”が導入され、附帯決議では、支援事業等の取り組みについて科学的な効果検証が求められました。代表の髙岡からは、「児童虐待対応におけるDXとデータ利活⽤」をテーマにお話します。
弊社代表の他にも、児童相談所の職員・子ども虐待の問題に取り組む研究者・データサイエンスを専門とする大学教授などなど、多彩なパネリストが登壇します。子どもや福祉に関わるお仕事の方はもちろん、学生や、一般市民の皆さんまで「誰でも・無料で」ご参加いただける、オンラインイベントです。
AiCANの事業に興味のあるあなたはもちろん、「そういえば児童相談所がどんなところか知らない」「行政や自治体の課題解決に興味がある」というあなた!この夏は、子どもや子どもを支援する人たちに目を向けて、「子どもたちが、安全に・健やかに輝ける未来」を一緒に考えてみませんか?
▼オンラインシンポジウムのお申し込みはこちらから!皆様のご参加をお待ちしております。
https://select-type.com/ev/?ev=lVlgb7zQti8&eventPageID=
※記事中の写真はすべてイメージです。実在する団体・人物とは関係ありません。
(文/Akane Matsumura)
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