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「生徒は先生から教わるものだという価値観を無くしていきたい」ICTを活用し、時代に合った学びのスタイルを提案するEdTech企業コードタクトの創業ストーリー


初めまして。株式会社コードタクトの吉野と申します。
みなさま、よろしくお願い致します!

先週からwatendlyでの採用活動をスタートしました。この場を通じて、私たちのことを少しでも知ってもらい、興味を持ってもらえたら嬉しいです。私達と一緒に教育の変革、こどもたちの今と未来に向けた事業を世の中へ一緒に届けてくれる仲間と出会えるのをとても楽しみにしています。

最初の投稿となる、今回は

コードタクトの創業から今に至るまでのストーリー

をお届けします。

代表の後藤がインタビューを受け、まとめられた記事です。ぜひ読んでみてください。

生徒が主体的に学ぶ環境をICTによって創り出す

株式会社コードタクトが提供する授業支援サービス「schoolTakt(スクールタクト)」。教育現場において、「みんなで学び合う」学習環境づくりを支えようと、ICT教育に関わる様々なサービスを提供している。

スクールタクト は、いわば、先生や子ども達にとっての「文房具」。一枚の紙が、メモ帳や、紙飛行機に姿を変えるように、スクールタクトも様々な使い方が開発者・使用者の双方から発見されることで、全国各地で様々な学び合いが生みだされている。スクールタクトが教育現場にもたらすものは何か。そして、目指す未来とは。

予備校や高校での教師経験、高校生の時から始めた音楽の指揮者、そして、最先端を走り続けてきたIT分野での経歴。「教育・音楽・IT」という異色のバックボーンを持つ、代表取締役の後藤正樹にスクールタクトにかける思いを聞いた。


デジタル教科書の開発からスタートした創業期

・・・コードタクトの創業のきっかけは何でしたか。

1番のきっかけは、2010年に「未踏IT人材発掘・育成事業」へ応募したことですね。当時はデジタル教科書が登場し始めた時期でした。紙の教科書からデジタルの教科書になった時に、現場がどのように変わっていくのか、考えてみたかった。デジタル教科書が導入された現場を想像した時、例えば、先生がデジタル教科書を大型ディスプレイに提示して、単に音や動画が出る教科書になるというような使い方が想定されていました。しかし、これではICTの長所が活かしきれていません。ICTの長所は、インタラクティブな関係性を生み出せること。その長所を生かした教科書を作りたいと思ったのです。先生が一方的に教える「一斉授業」ではなく、「みんなで学ぶ」環境を実現させたいと思っていました。

・・・デジタル教科書から事業の着想を得たのですね。

そうですね。結果的に、1年後に「デジタル教科書用後付けLMS( Learning Management System )」というソフトウェアを完成させました。普通、教科書やノートは、1人で読むためのものですよね。先生が生徒のノートを確認したい時は、ノートそのものを生徒に提出させてきました。

私が作ったのは、デジタル教科書のページごとにリンクをつけた LMS です。例えば、生徒が過去にどんなノートをとったのか、先生がどんな宿題を出したのか、そのページに関連した課題の生徒の理解状況はどの程度か、という情報が、そのページに全てマッピングされています。デジタル教科書に色々な情報を集約して、それを先生と生徒、先生同士がシェアできるものを作りました。

・・・なるほど。反応はどうでしたか?

このLMSで一度起業してみようと思い、デジタル教科書のサンプルを作って、色々と投資家を回ったのですが全然ダメで…。「そんなの全然お金にならん」と色々な方から言われました。このLMSは、「子ども達が1人1台タブレットPCを持っている」という前提で開発したのですが、当時はまだ、その環境にはハードルが高い時代でした。さらに、デジタル教科書の市場もまだできていなかった。そのような中で、起業するのは当然難しいですよね。

そこで、一度起業を諦めて、週末プロジェクトとして、1人で開発を進めることにしたんです。現場の先生に使ってもらいながら改良を続けていると、生徒が課題を解く状況を、先生がリアルタイムで見られるという機能が、とても評判がいいことがわかって。そこで、2013年頃、この部分だけを切り出して、さらに開発を続けました。

そうしたら、このソフトウェアを使ってくださった学校の取り組みが、総務省の実証事業を担当する電通の目に止まり、国のICT教育の実証実験に使われることが決まって。それまで、法人を持って活動をしていなかったので、この実証実験をきっかけにコードタクトという法人を設立したというのが、会社の創業の経緯です。

・・・その当時、教育に対してはどのような想いがありましたか。

当時は、一斉授業をいかにインタラクティブなものにするかということを考えていました。僕が先生をやっていた時の経験なのですが、生徒に対して色々話をしても、全然反応が返ってこない時があるんです。それって、このまま授業を進めていいのか、難易度を上げたほうがいいのか、下げたほうがいいのか、わからないから辛いんです。私は、生徒の状況をきちんと知って、適切に教えたいという想いがすごく強かった。こういう経験もあったので、当時は、先生が子ども達の様子を適切に把握して、教えられるようなツールを開発することで、もっと教育をよくしたいと思っていました。

学力観の変化に挑む

・・・今、スクールタクトでは、協働学習やアクティブラーニングを支援するツールを充実させていますね。会社の創業当時の想いが、どう変化してきたのでしょうか。

大きな変化でいうと、先生主体の授業から生徒主体の授業にしていかなければという思いが強くなったところですね。そして、その教育効果をいかに多様な観点から測っていくかという点を意識するようになりました。

今、学力観が、大きく変わりつつあります。これまでは、知識の量を問うテストでいい点をとれば、それが「教育効果が上がった」ということでした。でも、テストで、全ての能力が測れるわけではありません。例えば、サッカーの技やルールを問うテストで満点を取っても、サッカーが上手とは限らない。

私は、学校も社会も、あまりにも従来型のテストに支配されていると感じています。もっと、子ども達の能力を、多様に評価する指標があってもいいはずです。今後の事業では、これまでの枠組みの中で評価されなかった観点も、評価できる仕組みを入れていこうと考えています。

・・・そもそも教育効果とは何かを問い返す取り組みですね。大変な労力がかかりそうです。

そうですね。でもそこに挑戦することには大きな意義を感じています。高校入試や大学入試で使われるような従来型のテストは、他者に評価されるための仕組みですよね。そうではなくて、自分を見つめ直すような評価が重要になってくると思っています。「今はこのレベルだけど、こうしていくと上がりそうだ」といった自己認識を深めるための評価が、もっと教育の現場で取り入れられるべきだし、その仕組みを作りたいと強く思っています。

・・・教育の現場に対してはどのような思いがありますか?

文部科学省の新学習指導要領は、良い指針になると思っています。ですが、現場では、「今が転換期である」という認識がまだ深く浸透していないように感じています。先生方は、「先生主体から生徒主体の教育に変わる」ということを、色々な講習でたくさん聞いているはずです。でも、本当の意味での生徒主体にするということは、これまでの先生の授業スタイルを変えることにもつながりますし、なかなか容易なことではないですよね。

同様に、高学年の子ども達になってくると、過去6年間以上、先生主体の授業に慣れているから、先生が何か答えを提示してくれるものだと思っている。この状況を変えたいです。教育にテクノロジーをきちんと入れることで、先生は教えなければいけないとか、生徒は先生から教わるものだという価値観を無くしていきたいと思っています。

ICTで地方の子ども達に「興味の種」を蒔いていきたい

・・・ホームページで、福島県新地町での取り組みが紹介されているように、地方の学校での導入も進んでいます。地方の教育については、どのような思いがありますか。

過疎地や中山間地域は、豊かな自然に触れる機会が多いので、五感にとても良い部分がありますよね。都市部では中々得られない機会が、豊富にあります。一方で、人材の多様性が低いという課題もある。身近なロールモデルが少ないので、子ども達の将来の選択肢が狭まってしまう危険があると思います。

ICTはその解決に大きな役割が果たせます。インターネットを使えば、人がいない過疎地域でも、そういった多様性の低さを補うことができます。その利点を、教育の現場にきちんと活かしていきたいですね。

また、過疎地域だと「何かやってみたい」と思っても、それを実現できる環境にないことも多い。「やってみたい」という子ども達の興味・関心が、ちゃんと続くように、専門家やプロと子ども達をつないでいくような取り組みをしたいなと思っています。

・・・一方で、子ども達とインターネットをめぐっては、課題も多いですよね。

そうですね。ICT教育についていえば、先生はフィルタリングとファシリテーションの役目があると思っています。インターネットの世界の中で、子どもが不用意に傷ついてしまう 可能性がありますし、先生がある程度フィルタリングした上で、ICTの環境を届けてあげるというのが必要だと思います。私たちは、子ども達が、安心した状態でICTに関するリテラシーを獲得できるよう、先生方の支援体制もしっかり構築しています。

・・・今後、実現させたいアイディアはありますか? 

先ほど申し上げたような、子ども達の「やってみたい」という気持ちを伸ばしていくような助言をする専門家を「学びのナビゲーター」と呼び、いつでも、どこからでも、コンタクトを取れるような環境を作りたいです。例えば、「未来の車を作ってみよう」という授業をする時、学びのナビゲーターである自動車会社のエンジニアやデザイナーに見せるということができるような環境です。

そのような刺激を受けて、子どもがエンジンや車に興味をもって、自分で深く調べ出したらいいですよね。地方では、こういった刺激が弱いので、興味の種の芽が出るようなきっかけを与えていきたいですね。今の社会だったら、興味があれば自分で調べることができますが、興味そのものを持つきっかけを与えるような仕組みは、作らなければいけないなと思っています。

「自由」と「みんなの幸せ」を考えられる子どもを育てたい

・・・今後、事業を通して達成していきたいことはなんでしょうか。 

国によって違いはありますが、少なくとも今の日本は、個人の自由がどんどん増えている社会だと思います。自由が増えるということは、自分で選択しなければならないし、責任も広がっていきますよね。

それなのに、これまで教育の現場で主流となってきたのは、先生主体という価値観です。これでは、子ども達の自由が制限されてしまっています。子ども達にしても、先生主体の価値観で育ってきたのに、社会に出たら、「急に主体性をもって働いてください」と言われても困ってしまいますよね。

学齢期の子ども達は、人世の中で1番、物事を吸収し、成長する時期にあります。この時期に、「自由であること」を学ぶ場が学校には必要です。それは、自由な社会の中で、自分がどう振る舞うとみんなが幸せになるのかということを学ぶことでもある。これが、生徒主体の教育の本質だと思っています。こういったことを、協働学習やそれを支援するICT教育のツールを通して、学べる環境をつくっていきたいですね。

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株式会社コードタクト
代表取締役 後藤正樹

<プロフィール>
東京大学大学院総合文化研究科、洗足学園大学指揮研究所を卒業。
大学院在学中より代々木ゼミナール物理科講師やNPO法人FTEXTにおいて検定外数学教科書の開発に参加し、その後サイボウズ、ベストティーチャー、総務省先導的教育システム実証事業プロジェクトマネージャーを経て、現在、株式会社コードタクト代表取締役、株式会社スタディラボ取締役、日本デジタル教科書学会の役員などを務める。


慶應義塾大学特任招聘教授 夏野剛氏のもと、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「未踏IT人材発掘・育成事業」において未踏スーパークリエータに認定、日本e-Learning大賞奨励賞。
一方、オーケストラ指揮者としても活動しており、琉球フィルハーモニックオーケストラ指揮者、那覇ジュニアオーケストラ指揮者、アレグレット交響楽団常任指揮者などを務める。

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