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2019年5月現在、クラスメソッドで唯一のAlexaテクニカルエヴァンジェリスト / VUI アーキテクトとしてAlexaのテクニカルな面を中心にお客様を支援している清野剛史。昔から人を笑わせることが得意で、常に「おもしろいこと」「人がやっていないこと」を求めてきたという清野が歩んできた道をご紹介します。
確かな実力と技術への愛。それが入社の決め手だった
もともと、コンピュータの道に入ったのは、完全に見た目。「超かっこいい」「なんか未来っぽいものが好き」という想いからです。
高校時代はピアノを弾くのが得意で、ピアノを教える資格を持っていたので、音大に進学し、ピアニストになろうと考えていました。
しかし、自分の理想的な環境と現実をふまえて考えた末に音楽の道は断念。「だったらプログラムをやりたい!」と思い、この道に進むことを決めました。
ちょうどこの頃、DTM(デスクトップ・ミュージック。今でいうDAWを使った作曲)やMIDI環境が整ってきていて、コンピュータを使って音楽を作ることがプロ以外にも広まっていました。音楽を通じてコンピュータに触れていた事で、自然とコンピュータそのものを使った仕事をすることにも興味を持ちました。
クラスメソッドとの出会いは、エンジニアとして別の会社で働いているときに、札幌でクラスメソッドが主催していた勉強会でした。たまたまそこに参加して、単純に楽しそうだなって思ったんです。
話す人にもよると思いますが、勉強会ってボソボソ言っていて何を伝えたいかわからなかったり、やたらマニアックな内容で理解しにくく感じたりすることがありますよね。
でも、その勉強会はしゃべり慣れている人が話していたので、基本的に自分がわかる内容の半歩上みたいな、先を行っている感じがしました。わかりやすくゲームでたとえると、“裏技集”みたいな話ですね。
技術がないとできないような話を、楽しそうにわかりやすく話している姿を見て、「この人は高い技術力があって、それをこんなに楽しそうに話すってことは技術が大好きなんだろうな」と思いました。
結局、これがきっかけで私はクラスメソッドにジョインしました。技術力の高さと自由さに強く惹かれ、楽しそうだと感じたんです。
入社して最初はAWS事業部(今のAWS事業本部)に配属され、AWSの案件を担当していました。また、よくブログも書くようになりました。
クラスメソッドは社員がブログを書くことに制限がほぼなく、レビューもありません。仕事をしながらKinectやLeap Motionなど、そのときおもしろそうな技術について、好き勝手にブログをつづっていました。
なので、仕事と同時に、気になるデバイスを手に入れては趣味でブログも書くという日々を過ごしました。そのうち事業部内に「IoTチーム」というのができ、普段そういったデバイスを触っているという理由でそちらに配属になりました。
IoTチームに配属後は、IoT案件を中心にこなす中で、社内に「清野はとにかく新しくておもしろそうなものは一生懸命やる」というキャラクターイメージが浸透していました。そして今までの経歴とそのキャラクターもあってか、会社内で「Alexaを試してみよう」となった際に出向という形でAlexaを担当するチームに加入し、後に正式に異動となったのです。
「おもしろい」で止まってはいけない。相手に価値あるプレゼンってなんだろ
実はクラスメソッドは、Alexaを事業部として組織にした、おそらく日本初の会社なのですが、どうしても「AWSの技術者集団」というイメージが強く「Alexaを事業として行っている」という認知度があまりありませんでした。
そこで「日本でAlexaといえばクラスメソッド」と言われるように、Alexaに関する発信を強化していこう、となり2018年6月に「Alexa Salon」を立ち上げました。
Alexaエージェンシーとしての業務と並行して、クラスメソッド単体としてAlexaの技術からビジネスまでのすべてを網羅する勉強会「Alexa Salon」と、コミュニティとしての「AAJUG(Amazon Alexa Japan User Group)関東支部」を開催するようになりました。
こうして、新チームに異動してからは単に発表するだけではなく、発表を聞いた参加者にアクションを起こさせることが仕事になりました。
プレゼンには、「くだらないけどおもしろい!」と笑えるけど、そこで終わってしまうプレゼンとわかりやすく内容を伝え、相手の役に立つプレゼンの2種類があります。
クラスメソッドには完全に知識を教えるような後者のプレゼンをできる人がいます。でも、それが僕は全然できませんでした。人を笑わせるのは得意で、盛り上げはできるんだけど、そこに「相手の役に立っている」という実感が湧かない……。
だんだん、「なんで役に立つかわからないものを1カ月も準備してやっているんだろう?」とか、「長い準備期間をかけているのに『楽しかったね、くだらないね』で終わっていいの?」と何度も考えるようになりました。
そして、考えた末に出た結論が「僕は伝え方が下手なんだ」ということでした。喋る仕事をやる時には何か最後に残るものを話さなきゃいけない。自分の言葉に説得力が出るような工夫をしなきゃいけない――。
これらに気づいてからはエヴァンジェリストの本や動画をみて、目線・手・スライドの分量などをひとつずつ学びました。そして、それをプレゼンの時に1個ずつ実践してみて、お客さんの反応とかアンケートを見るようにしました。たとえば「ためになった」ってコメントがあれば「これは正しかったんだ」と判断して、次回以降にも生かしていく。このような感じで勉強と改善を繰り返し、スキルを身につけていきました。
互いが互いを支える関係がクラスメソッドにはある
やはり、最初は「これ大丈夫かな?」と思うこともありました。単純にウケてないかもと。おもしろいことをしないから、ウケないのは当たり前なのですが、これで参加者を集め続けられるのかな、なんか路線変えたほうがいいのかなと本気で悩み続けました。
でも、努力の甲斐あってか、半年くらい経過してようやくAlexa Salonのお客さんがどんどん増えてきたんです。勉強会を開けば、一定数の参加者がいる状態に変わっていきました。
日頃、振り返ってみて、葛藤することが未だにあります。「おもしろい?」と、自分に問いかけています。
でも多分僕は、やればやるほど他の人と同じようにはできません。もう自分ではわかっているので、仲間の力も借りながら自分流にアレンジして自分らしくやるのが今のやり方です。
この会社にいるとますますそう思うのですが、自分の能力には限界があります。だからこそ仲間と一緒にひとつのものをつくるのが楽しいんです。クラスメソッドには、バックボーンが多岐に渡り、なんでそんなに詳しいの?っていう人がいっぱいいます。
その専門家に頼った方がいいんですよね。たとえばセキュリティーのことならこの人に聞くとか。こういうデザインが欲しいと思ってもデザインの能力がない、そんな時、クラスメソッドにいるすごいデザイナーさんに頼むとなんでこんなのができるの?っていうくらいすごいものが2~3日で仕上がってきます。
その分、自分の得意なところを重点的にやっていく。助けて欲しい人がいたら、全力で協力する。そうやってみんなで協力しながら、ひとつのものをつくっていくっていうおもしろさを、とても楽しく感じています。
今日の“おもしろいもの”を“未来のご飯”に
今後もエヴァンジェリストとして、引き続きイベントの企画やカンファレンスでの講演を続けていきます。新しい目標としてはなるべく自社主催ではなく外部のカンファレンス、展覧会、書籍執筆などの今まで入っていかなかった領域で皆様にAlexaの楽しさやビジネスでの活用法を伝えていければと思っています。なるべく人にものを伝えるチャネルを増やしていきたいですね。
書籍に関しては、2018年にAlexaの本を書きました。今『AWS SageMaker』についての本も書いています。頑張って夏休みくらいまでに出版したいですね。
Alexa関連以外では相変わらず「新しくておもしろいもの」に興味をもっています。AWSですとSageMakerやDeepRacerはやっていて大変おもしろいので、こちらでもブログを書いていきたいです。AWS以外だとHoloLensやLINE Thingsはおもしろいと思っています。他にはXRといわれている、VR、ARのプログラミングとAlexaをつなげることにも挑戦したいです。
とにかく「おもしろそうなことをやってみたい」「人がやっていないことをやりたい」という気持ちが僕の根底にあるんですよね。
現代日本の方向は、ロボットに偏っています。Amazon Echoに向かって何かを喋るとそこの世界が変わっていく……など、バーチャルな世界に変化しています。こういう機械的なところや人工知能でいうと、最終的に、可愛らしい顔でしかも二足歩行するロボットが日常的に存在する時代もそう遠くはないのかもしれません。
クラスメソッドでよく言われる言葉に「今日のごはん、明日のごはん」というのがあります。最近だと「明後日のごはん」まで言われるようになりました。これは「今すぐ人の役に立つ、お金になる仕事と、今はお金にならないが、将来世界の役に立つかもしれない仕事は両方大事」という意味が込められていて、この考え方に個人的にとても共感しています。自分の中でも会社に貢献して、自分のお給料の元となるような仕事と、エンジニアとしてのアンテナに引っかかる「おもしろいもの」に触っていく仕事を両立していきたいと考えています。
クラスメソッドはその勤務形態だけではなく、業務内容も非常に自由度の高い会社です。いつか自分が見つけた「おもしろいもの」が会社の「明々後日のごはん」くらいになったらいいな、と思います。