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“経営者が既存業務を手放し、社外執行役員を迎える”ことは必然だった?平安伸銅工業のネクストステージ。


※暮らすがえジャーナルから転載しています

こんにちは、暮らすがえジャーナルです。

今回は、平安伸銅工業の中のお話。
先日行われた全社総会で、経営者の竹内香予子とその夫の一紘が、既存業務を「手放す」とメンバーに宣言。新しい組織体制にすると発表しました。
新たに執行を任された執行役員は、平安伸銅工業の社員ではなくreborn株式会社の代表、羽渕。

そこにはどういった意図があったのか、平安伸銅工業はこれからどこを目指していくのか、その真意を3人に聞きました。

(写真左から 執行役員:羽渕 彰博 代表取締役:竹内香予子 常務取締役:竹内一紘)


「業務を”手放す”宣言」したのは、タイミングが揃ったから

――まず、先日の全社総会でメンバーの前でこれまでの業務を「手放す」宣言をされました。

竹内香予子(以降:かよ):これから3年で50億円の売り上げを目指すって言ってるのに、その部分の業務はしないって急ですよね(笑)

――メンバーはびっくりしたのですが、その意図をお聞かせください。

かよ:私たちは、今の売り上げから、3年で50億円、10年後には100億円の成長をめざしています。数字に固執しているのではなく、ようはそれくらいの規模で世の中に価値を提供してお客様を喜ばせたいということです。

50億円には、これまでの事業の成長で、平安伸銅工業の過去最高の売り上げを達成したい(過去最高は90年代の48億円)。
100億円には、新規事業などさらなる事業拡大でもう一つステップアップしていきたい、という意味を込めています。

ただ、これまで、経営者が既存事業に注力していると、将来への種まきができないという課題がありました。

竹内一紘(以降:かず):業務はどちらかと言えば僕が主に見ていたんですが、僕がボトルネックになっているのでは、という感覚もずっとあったんです。僕がなんでも決断をする、みんなが僕に判断を仰ぐという形を続けていると、会社の規模は今以上に大きくならないし、みんなが自分たちで考える成長機会も奪ってしまっているのではないかと。

――次のステップに進むために、既存事業の成長をメンバーに委ねていく、ということですね。では、なぜ今このタイミングだったのでしょうか

かず:一番は、メンバーの成長です。安心して執行を任せられる優秀なメンバーが育ってきてくれている。
コロナ前には1人しかいなかった最上位等級のメンバーも、今では4人に増えました。
今なら、皆にバトンを渡していくことで、より再現性のある強い組織を作れるのではと思ったんです。

かよ:あとは、あるメンバーと喋っていたときに「50億円までは何とかなるイメージが沸くんだけど、100億円まで成長するにはどうするんでしょう。」と聞かれたことがあって。
これはチャンスだ!って思ったんですよね。

――50億円分の成長はその方のなかでもなんとなくイメージが沸いているんですね。

かず:彼女は長年一緒に働いているメンバーなのですが、売り上げが今の半分くらいの頃、「めざせ30億!」と僕たちが言っても絶対に無理だと思っていたらしいんです。
でも、「LABRICO(ラブリコ)」や「DRAW A LINE(ドローアライン)」を生み出してそれが達成できた。そして今は50億をめざすイメージができている。
自分や周りのメンバー、環境がレベルアップしていることを彼女も感じているんだと思います。
だったら、僕たち経営ではなく、メンバーが決めて事業をしていくことで、次の成長やチャンスにつながるのではないかと。

――次のステップに向けて、メンバーの成長というタイミングが揃ったわけですね。

社外も社内も関係ない、"社外執行役員"は自然な結果

――新しい体制を作るにあたって、執行役員として羽渕さんを迎えられました。平安伸銅工業の社員ではなく社外のパートナーですが、どうして羽渕さんを選ばれたのでしょう。

羽渕:それは僕も知りません。
かず:僕も、知らないっちゃ知らないですね。

――え、誰も知らないんですか?

かよ:というか、あえて社外の人を執行役員にしたという訳ではなく、自然な流れなんです。

羽渕さんには10年近く前からリボーンとして平安の人事や組織開発をサポートしてもらっていました。
そんな中、去年の年末に人事の責任者を務めてくれていたメンバーが、より人事的な専門知識を深めていきたいと会社を去ることになって。
後任を急いで探さないといけない、どうしよう、誰か良い人いないかな?と彼に相談したんです。

かず:そう。そしたら、色々検討してくれたのですが、最終的に「いろいろ考えた結果、自分がやるのがいいかも」って提案してくれて。
確かに、人事や組織開発は内情を分かっていてこそなので、全然知らない人を採用するより、これまでずっと平安を見てきてくれた彼に任すのが適任じゃないかなと。
それに、羽渕さんなら、会社全体を見て僕らがめざす新しい組織体制を作ってくれるんじゃないかなと。

かよ:執行役員はこれまでなかった役職ですが、お願いしたいのってもはや人事の責任者というより、執行全体じゃない?と後から期待したい役割に対して役職名がついてきた感じですね。

羽渕:最初は人事の責任者までで、役員までは断ったんですけどね(笑)
平安伸銅には長い間関わってきましたが、ビジネスモデルは全く知らないですし、自分の会社も経営しながらだったので、人事を見るだけで精一杯で、そこまでの役割は果たせないんじゃないかなと。
だから最初の半年間は人事グループのグループ長としてコミットしました。

でも、かよさんかずさんの言うように、10年で100億円規模の売り上げをめざすのであれば、多少アクセル踏んで組織を整え変えていくことも必要なんですよね。
だから、僕にとっても挑戦ですが、よりスピード感を持って全社的な組織体制の構築にもコミットしていきたいなと。

――新しい組織にしていくにあたって、新しい風を入れるために敢えて社外の人を執行役員に迎えた、という訳ではなく、自然な流れだったんですね。

かず:そもそも僕たちは別に社内や社外ってあんまり気にしていないんです。
ビジョンに向かっていくにあたっては、どんなメンバーで進んで行くかが大切で、価値観に共感してくれている方なら、どんな繋がり方でもいんじゃないかなと。
だから、これまでも社外の人に、さまざまな業務で関わってもらってきました。
正社員を蔑ろにしているという訳ではなく、今回の場合は、会社を他にも経営しているからたまたま業務委託という形になっているだけなんですよね。

羽渕:こういった働き方は、今後どんどん当たり前になっていくと思っています。
会社ではなく社会という組織の中で人事異動が行われていく。
オープンポジションや業務委託契約の整理も始めていますが、そういった多様な働き方の在り方も平安伸銅の中で設計していきたいと思っています。

共感で仲間を集め、価値提供の輪を広げていく

――平安伸銅の働き方も、またどんどん変わって来そうです。経営のお二人は、今後どんなことに注力されていく予定ですか。

かよ:私、経営を継ぐときに、父に「この会社を社会の公器したい。」って言ったんです。
ビジネスが、経済的な恩恵を生むだけで終わるようなものでは無くて、ステークホルダーの人たちがハッピーになったり、私たちの製品やサービスを通じてより社会を良くしていくようなことができればと思っています。
「暮らすがえ」も、概念をもう少し広げてみたらビジネスの川上から川下まで、いろんなところにそのチャンスがあるんじゃないかなと。そこを探求していきたいです。

かず:僕は、まずは外の世界をどんどん見たいですね。
この10年で、つっぱり棒を作っているだけの会社から、ラブリコやドローアラインができて、販路も増えました。
社内外問わずたくさんの人が関わってくれるようになって、メンバーも成長して、会社としてできることは昔よりかなり広がっています。

じゃあ、今の体制ならば、さらにどんな価値提供ができるかというのは、今の僕が見えている範囲の外にあるんじゃないかなと。
きっと今なら、想像を超えるような「やられた!」というアイデアも商品もサービスも生み出すことができると思っています。

かよ:「暮らすがえ」の理想を叶えていくにあたっては、私たちの会社だけで完結する必要もないと思っています。
先ほどの働き方の話もそうですが、価値観を共有している人たちを増やして、一緒に理想を実現していくこともやっていきたいです。
今、とある大学の先生が「暮らすがえ」に共感して、研究を始めてくれていて。
つっぱり棒マスターの皆さんもそうですし、そんな風に私たちの理想に対して共感して、一緒に活動してくださる方を増やしていければとも思っています。

かず:今ってそういう時代だなとも思うんです。
会社単位ではなく、社会の中で価値観を共有する人たちどうしが最適な単位でつながって社会に新しい価値を提供していく。
ビジネスのノウハウやロジックはもういくらでも世の中に出回っています。
でも、運用するのが一番大変なんですよ。だから、誰とやるか、仲間の熱量が一番大事なんです。
その意思が、最終的にお客さんに届くのだと思っています。

――「暮らすがえ」の概念を広げたり、共感する仲間を集める、というのは新しいステージだけどすべてこれまでの平安伸銅でやってきたことと地続きでつながっている考え方ですね。

羽渕:そうなんです、働き方も目指す未来も、突拍子もないことはなにもないんですよね。
そういう意味では、僕は組織を整えて、その動きをどんどん加速させていきたいです。


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